VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦闘の其の先にて




果てる事無き情熱に、限界を砕くパワーが宿る

さて、どうしたものか。

 

討伐した双皇甲虫の素材をインベントリアに纏めて収納し、クエスト受注プレイヤーがクリアして退場するまで、風雷のフェンスで隔絶された空間であり、勝利者は此の戦地の奥に在るレア鉱石『皇樹琥珀(おうじゅこはく)』を採掘出来る。システムが定める規定量まで掘れる褒美が与えられた中、ペッパーは己の背中に突き刺さる視線の数々をどう乗り切るべきかで思考を重ねていた。

 

先ず間違い無くスキルに関して聞かれるのは確定として、次点は双皇甲虫とぶっ通しで戦い続けた金弓宝剛剣(ゴルト・ヴァーシュ)の事。後は此方的に困るのは、双皇甲虫のドロップアイテムを買わせて欲しいと頼むプレイヤー達だろう。スキルに関しては上手く誤魔化せられれば御の字だが、金弓宝剛剣は搭載している能力が能力なので、開示すれば面倒な状況に成り兼ねない。

 

何より最も厄介なのは何の苦労どころか、互いに利の有る取引もせずに、只々『実利のみ』を得ようとする者………例えるなら『ギャラリーに紛れてPKを仕掛けて、双皇甲虫の素材と此方の持ち物を纏めて強奪するプレイヤー』が確実に居そうな予感がしている事。そんな命知らずな大馬鹿野郎が居たと、自分がペンシルゴンに報告し(チクッ)たが最後、奴はあらゆる手練手管を以て包囲網を構築からの地の果てまで追跡から捕縛、大々的に処刑(見せしめ)を敢行する所まで容易に想像出来る。

 

(まぁ他のプレイヤーに目撃されたら情報が出回るだろうし、新大陸行きの船は完成して無いらしいし、逃げ切るのは難しいとは思うが…………)

 

そうこう思考している内にシステムにより、決められた規定量到達の画面が表示されたので、惜しみつつも採掘した皇樹琥珀をインベントリアに収納・バトルフィールドから退場していき。案の定出て来た所をライブラリやウェポニア含めた他のプレイヤー達が殺到、瞬く間に囲まれてしまった。

 

「…………………取り敢えず、全員落ち着いて。あと信用していない訳じゃないですが、PKを仕掛けるPKerが居ないとも限らないので、全員着席の上で質問を。其れと質問の内容は『被らない様に』御願い致します」

 

轟襲鷲獅子(ジェット・グリフォン)・双皇甲虫達との戦いでの疲労が、一周回って全身の神経を研ぎ澄ましてくれている。ペッパーの御願いに対し、ライブラリやウェポニアが座ったのに続く形で他のプレイヤー達も座った所で、ペッパーは口を開く。

 

「では、質問を──────」

 

バババババッ!!!!!(全員挙手)

 

「…………では、そちらのプレイヤーさん」

「はい!ペッパーさんって男性なのか女性なのか解らないんですけど、正しい性別はどっちですか!?」

「男性ですね。今はクターニッドさんの報酬で、元の性別と逆の状態なので。次は………奥に居るライトベレーの帽子を被った方」

「名前隠しの装備ってユニーク由来ですか?」

「跳梁跋扈の森に居る嘲り嗤う影法師(グルナー・グリンセリン)のドロップアイテムが色々有って、三部位一体の装備になった感じ。影法師が何時現れたかを推理して、色々試していけば自ずと答えに辿り着ける筈です」

 

其の後も『サイン下さい!』やら『握手して下さい!』やら『リュカオーンは居るのー?』やら『アイトゥイルちゃん何処ですか!?』やらと色々と有り、其れ等にキッチリ対応していって。ペッパーはそろそろ面倒な雰囲気を醸し出している、ライブラリやウェポニアのプレイヤー達の質問に答える事にした。

 

「えっと…………ライブラリのプレイヤーさん」

「ペッパーさんの所持しているスキルって幾つ有りますか?ティラネードギラファ&カイゼリオンコーカサスとの戦いで、かなりの数を使っていた様でしたし」

 

予想通り此方の所持しているスキルの数について聞いてきた、ライブラリ所属のプレイヤー。此れは答え方に気を付けなくては、面倒な方向に発展すると注意しながらに彼女()は答えた。

 

「職業にエクゾーディナリーも合わせると、所持スキルは『百』は持っていますね。其れと所持スキルも()()()()()()、何処で何を切るべきか()()()()()()()()戦っています。後は………」

「ペッパーさん、ペッパーさん。私もそうですが………此の場に居る皆さん戦慄(ドン引き)してます」

「えっ?」

 

セートの言葉で周りを見ると、ライブラリやウェポニアに他のプレイヤー達も全員纏めて、口が開きっ放しになっている。当然だろう、ペッパーがやっている事──────其れは『百の手札全てを把握しながら、敵モンスターの情報に合わせ、最適解で最高火力を叩き付ける事』に等しき事だ。

 

「……………ペッパーさん、昔から頭の容量がオカシイとか言われませんでしたか?」

「いや、特には。強いて言うなら………脳に貯めた知識を『復習する様に引っ張り出して、記憶に定着させるって行為を何十何百繰り返してる』って感じかな。コツとしては『寝ている間に体は休めて、頭はイマジナリーの学校教室を作りつつ自習をする』………って奴?もう『十年』は続けているから、大分慣れてはいるけども」

 

口で言うには『容易い』が、其れを実際に行うのは『簡単な事』では断じて無い。ならば其れをサラッと言い切るまでに、此のプレイヤーは──────ペッパーは何れ程の努力を重ねて来たのか。

 

凡人・凡夫・凡才…………『そちら側の人間』が『天才側の領域』に踏み込む迄に、()()()()()()()を積み重ねなくては至れない。そういう境地にあのプレイヤーは立っているのだと、セート含めてライブラリ所属のプレイヤー達は否応無しに理解させられた。

 

ペッパーがサイガ-100との戦いを繰り広げ、ほぼノーダメージ勝利を収めた強さは、ほんの僅かな『一欠片』でしか無かったのだと。

 

「次に質問がある方はいらっしゃいますか?」

 

物静かに、朗らかに笑い。知ってしまった事でもっと知りたい欲望と、此れ以上知れば深淵に引き摺り込まれるという、ある種の『境界線に立たされた感覚』を彼等彼女等は知ってしまったのだから。

 

「………………………では、そろそろログアウトしますね。皆さん、夜遅くまでゲームをするのは身体にも響きますから、程好く切り上げて一日でも長くプレイ出来る様にしましょう」

 

そう言ってペッパーは、キュルアの元で購入した『使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)座標転移(テレポート)】』を使用して、ラビッツへと帰って行き。

 

「あ、ちょっ………!」と、ウェポニア所属のプレイヤーが武器の事を聞かんとし、声を掛けるより早くペッパーが消えてしまった事で、ガックリと肩を落とす事になったのであった…………。

 

 

 

 






ギラリ輝く、心を引き寄せる太陽



※アクセサリーの効力は採掘中に切れています



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