一日休みで成すべき事
双皇甲虫ことティラネードギラファ&カイゼリオンコーカサスとの戦いから一夜明け、午前八時に目を覚ました梓は大きな欠伸と共に身体を起こす。外は朝にも関わらずジワジワと蒸れる様な暑さが襲い、網戸にしていても風が中々吹かない事も相俟って、少しでも気を抜けば熱中症で倒れてしまうだろう。
蛇口を捻って温めの水をマグカップに注ぎ入れて飲み干し、ジットリとジメ付いた身体を清潔にする為に、着替えと下着を持って浴室へ。寝間着を脱いでシャワーを浴びて身体を洗い、確り流して水気を拭き上げて衣服を着付け。ドライヤーで髪を乾かす前に洗剤を洗濯機に適量入れて、スイッチオンからの早洗いコースを選択し洗浄を始めた。
髪を乾かして炊飯器に残っていた白米を全て茶碗に取り、釜はシンクに入れて水を張って洗いやすくしておき、炊飯器のコンセントを外して、冷蔵庫から野菜ふりかけと牛乳の取り出してマグカップに注ぎ。箸とマグカップと野菜ふりかけ・白米入りの茶碗と二回に分けてテーブルへと運び、ふりかけを白米の上に掛けて「いただきます」と合掌。そして十分掛けて完食し、合掌と共に「ごちそうさまでした」と片付けに入る。
茶碗と箸にマグカップ、そして炊飯器の釜を洗い、適量の米を入れて洗米を行い。粗熱が取れた炊飯器に入れて蓋をしておき、コンセントと電源を入れれば何時でも炊ける状況にしておいた。そして洗濯機が回っている間に、ホコリ取りのワイパーと専用の綿を取り出して部屋の彼方此方を掃除し、掃除用の濡れタオルで床や隙間を拭き上げ、綺麗で清潔な状態にしていく。
「ふぅ………数日に一回は綺麗にしておけば、ゴキブリやらも出ないで済むな」
窓を開けて風通しを良くしつつ丁度のタイミングで洗濯が終わったので、以前に乾かしていた洗濯物を外し。洗濯機から取り出した衣服を、ハンガーや物干しに交代する様に掛けていく。そして乾いた衣服は全て畳み、タンスの中に在る衣服入れに収納し終えた事で梓は漸く一息付いた。
「さて、と。今日はどうしようかな」
一日休みはとても貴重だ、天音 永遠が来るとしたら前日の夕方辺りになるが、昨日彼女は来なかったので昼間に突撃訪問………という可能性はかなり低い。
シャンフロをやるとして、何をするのが一番自分にとって有意義になるか?其れを暫く思考した果て、梓は一つの結論を出した。
そうだ、新大陸でレベルキャップを解放しよう──────と。
「という訳で、キャッツェリアの国王陛下に戴いた空き家をリフォームして、シャンフロのプレイヤーによって大体の目星が付いたという『レベルキャップ解放の祭壇』に突撃掛けて、レベルアップをしようと思います」
「ペッパーはん、また唐突なのさね………」
『ワンッ』
ラビッツの休憩室にて
「御久し振りです、メラゼイトさん。早速なのですが、此方で取り扱っている『家具』………其れを買わせて頂けませんか?勿論全て現金で」
エンハンス商会会員証を見せつつ、ニッコリ笑顔&ズシンッ!と置かれたマーニの山と共にそう言って。其の光景はメラゼイトを含む、エンハンス商会の面々を唖然させた後、商会は最高峰の家具を用意して其の総額は『およそ二億マーニである』と伝え。
ペッパーは「ありがとうございます」と頭を下げた後、一億マーニの革袋を二つに分けて取り出して手渡し。購入した家具達をインベントリアに収納して、エンハンス商会本店を後にして裏路地へと走り込み。
アイトゥイルが開いたゲートを潜り抜け、キャッツェリアに向かったのであった…………。
国王ニャイ十三世との謁見に置いて、信頼を勝ち得て与えられた空家に設定したランドマークを座標とし、アイトゥイルが繋げたゲートを越えて到着するや、早速ペッパーは出入口の方向や土の質等を踏まえつつ、土だらけの部屋の床にシート(白)を敷いていき。
続いて玄関にカーペットを、窓と出入口にはカーテンを掛けつつ広げ、万が一にも雨が降った時に濡れない位置にテーブル・椅子・ベッド・タンスを含む、最低限の生活が機能出来る様に調節してセット。
テーブルには以前にエンハンス商会で買っておいたカンテラを置き、オブジェクトや部屋の情報量の増加を狙うべく、雑貨物入れとして木箱を二つ程設置し、アイトゥイルとノワ用のベッドも二人の好みの場所を選んで置いた事により…………。
「出来た!ペッパーの別荘 in キャッツェリア、此処に完成だ!」
「やったのさ!」
『ワゥルン!』
国王陛下から与えられた直後は、何も無い殺風景で陽の当たり等くらいしか利点の無かった、キャッツェリア内では最高峰の穴住居がペッパーの手により、過ごしやすい部屋に大変身。
レトロゲームで秘密基地を作るタイプのジャンルもやった感覚が、記憶と身体に残っていたのが功を奏した…………土の上で寝るよりは、紛い形にも室内を整備した方が過ごしやすくなるって寸法さ。
「さて…………レベルキャップ解放の祭壇は『樹海の中央地』に在るらしいとの、先行組の開拓者達の献身によって判ったとか何とか情報が出たらしいし。先ずはアイトゥイルが持っている『単眼鏡』で樹海の位置を特定し、一気に向かっちゃおう」
そんな訳でキャッツェリアの一番高い場所を目指して移動。途中道行く他の猫妖精がビビりながら挨拶をして来たので、此方もちゃんと挨拶をしておく。やっぱりノワと、リュカオーンの愛呪の
「此処か…………日向ぼっこには最適と言うか、陽当りは最適な場所だな」
シャンフロの季節感は大体四月辺りの気候で設定されている。全体的に暖かい場所は暖かく、山の上の高所は寒い
アイトゥイルから単眼鏡を借りて、自身のスキル・
「方角は把握した、後はモンスターに遭遇しない乱数を祈る事………!アイトゥイル、ノワ、行くよ」
「はいさ!」
『ワンッ!』
黒兎と黒仔狼を黒いコートの内に隠し、開拓者は走り出す。目指すはシャングリラ・フロンティアの新大陸の樹海、謂わば『チュートリアル』に該当する地域たる『ペンヘドラント大樹海地帯』だ。
探索開始