VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

548 / 1074


出逢った其の娘は




性癖は人の垣根を越えて意志を統一出来る要素

今、自分には『二つの感情』が在る。

 

一つは己の目の前に居る征服人形(コンキスタ・ドール)産み出(デザイン)したであろう、製作者に対する『ゲーマー特有の感心』。

 

二つは己の目の前に居る征服人形(コンキスタ・ドール)のデザインを押し通(ゴリ押)したであろう、製作者の『性癖に対する唖然』だ。

 

理解出来ない訳では無い……………ゲームというのは往々にして、創造主や制作陣の性癖が色濃く反映されている事が良く有る。鬱展開やストーリー性にキャラデザ等々の要素が、ゲームには諸に現れると一体誰が言ったのだろう。

 

「…………良音(安らぐ):其のコートより聞こえる音、成程『オルケストラ』との接触を果たした証であり、同時にオルケストラに『認められた』逸品を所持している。其れを身に着けているという事は、征服人形的に見れば貴方の回収目標重要度(ターゲットランク)は『特例級(スペシャル)』に相当。故に当機()は現在の環境及び生態調査の任を中断し、貴方との迅速な合流に至れたという訳で有る」

「成程……………」

 

目の前に居る征服人形ことカルネ=103で、カルネ=ヒトミと名乗ったメカ少女………少女と断じるには些か背が高い彼女は、どうにも『王子様系女子』の姿勢で話している。

 

実際、刺さるプレイヤーには滅茶苦茶突き刺さる、ある意味男女問わず殺しに掛かる程に強力な、劇物級の破壊力を秘めた存在と言って良い。自分の性別反転も似た様な物なので、人の事を言えたクチでは無いのだが。

 

そして一番に気になったのは、彼女の口から回収目標重要度なる気になるワードが出て来た事。征服人形は開拓者を含めて『何か』を調査・回収したりするのが、システムで定められた役目だったりするのだろうか?

 

「えっと、ヒトミさん。取り敢えず何処かの日陰まで移動しませんか?流石に太陽に砂漠の熱だと、身体が持たないと思いますから」

成程(確かに):次世代の開拓者は環境の変化による耐性は低く、適度な水分や栄養を摂取しなくては何れ倒れてしまう」

「あいや、そうではなくて」

 

そう言ってペッパーは征服人形を、ヒトミを見ながらに言った。

 

「ヒトミさんも心まで(・・・)無機質では無い筈です。任務や使命も大事な事ですが、自分が斃れてしまっては『必ず悲しむ人』が居ます。誰かが見ていなくても、太陽や月に星々が、そして貴女と同じ征服人形の誰かが。きっと貴女の死で心を痛めると思います」

 

手首足首等の関節が球体(・・)である事を除けば、目の前に居る彼女は『人間』と見間違う程に近しいのだ。ロボット系の登場人物や主人公を扱う場合、御約束と言っても良い程に『人間かロボットかの境界線で悩む』という、一種のシチュエーションが取り上げられる事が多い。

 

プログラムされた最適解な行動とは別の、自分が知り得ぬ感情(バグ)に振り回されて、悩んで考えてまた悩んで。軈て一機の人型から完全なる人形へと変わっていく………という、昔のアクションRPGにそんな物が有ったのを思い出した。

 

「────────────」

 

そんなペッパーの言葉を聞いていたヒトミは、目を丸くしていた。感情が感じられない故に驚愕なのか、唖然なのかはペッパーには判らない。

 

「えっと、どうしました………?」

「…………誰かが悲しむというのは、稼働してから今此の瞬間まで一度たりとて、考えた事は無かった。開拓者よ、貴方は随分『興味深い思考』を持っているのだな」

「はぁ……………あ、あと名前はペッパー。ペッパー・天津気(アマツキ)と言います」

 

真名を明かし、名前隠しの機能をオフにして頭上にPNを表示すれば、ヒトミは機械の瞳孔(フォーカス)をキュルルルと、静かに動かして言ったのだ。

 

「次世代原始人類ペッパー・天津気(アマツキ)。此れより当機()は貴方を対象とし、貴方の調査を開始──────付きましては、貴方に同行する許可を求めます」

 

突然何を言い出したのかと思えば、自分を対象とする調査とパーティーへの加入の申し立てであり。同時にペッパーの前には一つの画面が表示される。

 

 

 

征服人形(コンキスタ・ドール)〔カルネ=103〕をパーティーに加入しますか?【Yes】or【No】』

 

 

 

(自分を対象にした調査って、どういう事なの?というより此処で同行許可しないと、またさっきの巨大虫に襲われる可能性が在るし、環境及び生態調査の任に就いてたとか言っていたから、此の地域に詳しいかも知れない。メリットは有りそうだが、ペンシルゴンやらが気付いたら面倒な事に成るだろうし、奏でる者の旋律羽衣(ダ・カーポ・シェイルンコート)に関しても追求されそうだ………)

 

脳内で暫くリスクとリターンを思考し、彼は「よろしく御願い致します、ヒトミさん」と言ってパーティーへの加入を許可する。同時に彼の目の前には、パーティーに加わった事を報せるリザルト画面が表示された。

 

「……………取り敢えず日陰に向かいましょう」

「賛成なのさ〜…………」

『グルゥ…………』

停止要求(おい待て):当機()は今明らかに異質な声質を感知したが、コートの中に何を入れている?」

「其れに関しては、日を避けられる場所に着いてから話します。とても長くなりそうなので」

 

当然というかコートの中に入れているアイトゥイルとノワに関して、此方に問い質しに来たヒトミにペッパーは努めて冷静に、かつ真摯さを以て答えて。一行は彼女の案内の下、大砂海に点在する日を避けられる岩場に移動するのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャングリラ・フロンティアというゲームはタイトルにも在る通り、理想郷(シャングリラ)開拓(フロンティア)するのが大まかな目標であり、開拓者(プレイヤー)は思うがままに自由に生きられるのが、此の世界の『良い点』だ。

 

だが開拓とは本来『未知と可能性を切り拓く事』を指す。そして其れを成し遂げる力や勇気、或いは恐れ知らずの者にのみ、此の世界はユニークシナリオやユニーククエストを報酬に到る為の『鍵』として授ける。

 

そして自分という開拓者は、時々ユニークに惹き寄せられているのか、其れともユニークが自分に引っ張られて来ているのかが、解らなくなる事が有る。

 

思考停止(なんじゃそりゃ):…………当機()の演算機能では、ペッパー・天津気(アマツキ)の偉業に対し評価が出来ん」

「まぁ、そうだよね……。でもコレ全部事実なんですよ、ヒトミさん」

 

日を遮る岩陰にて、ペッパーがコートの中に隠したアイトゥイルとノワをヒトミの前に出し。事情を詳しく抜かり無く嘘偽り無く話した結果、ヒトミは自身の情報処理能力をオーバーする程の情報量によって、彼女は演算を途中で止めてしまった。

 

「ヒトミはん、ヒトミはん。ペッパーはんと一緒に行動してると、こういう事が次から次に来るのさね。柔軟かつ臨機応変に対処しないと駄目なのさ」

『ワゥル』

「…………つまりは、演算だけでは計測不可の事柄も在る──────と」

「悲しい事に何時の世も、理屈だけで回ってたら戦争は起きないからね…………」

 

パーティーメンバーが増えた事で食料や水の消費も増したが、予め用意してインベントリア内に置いた備蓄は、まだまだ沢山残っている。

 

「ペッパー・天津気、此れから何処へ向かう?」

「実はね…………お、見えた。彼処の樹海に在るらしいレベルキャップ解放の施設に向かう予定でね」

 

大砂海を走る事、およそ数時間。すっかり御昼時になってはしまったものの、最大高度(スカイホルダー)所持者のペッパー、ヴァイスアッシュの娘たる黒兎のアイトゥイル、夜襲のリュカオーンの分け身のノワ。

 

そして新たにパーティーに加わった、小麦褐色肌白銀髪赤目アイドル衣装メカ女子ヒトミの、イロモノのスパイスでカレーの濃厚ルーを作り出した様な一行は、遂に新大陸の実に1/5を覆う『ペンヘドラント大樹海地帯』に到着したのである…………。

 

 

 

 






征服人形(コンキスタ・ドール)を仲間に加えて


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。