ペッパー、遺跡散策準備をするの巻
「ああああ!!ああああああ!!!ああああああああああああああああ!!!!!」
新しい武器、ビィラック作『
「ペッパーはん!?どないしたのさ!?」
そして其の悲痛な声がトリガーとなったか、何処から途もなくアイトゥイルが帰還してきて、休憩室の窓より現れてきた。
「おう、アイトゥイル。ペッパーはな、わちの作ったガンドレッグの出来栄えに感極まって、男泣きしちょるんや」
「ビィラック姉さん、多分コレは違うのさ……装備出来なくて叫んどるさね……」
彼の世話役となり、其の傍で人と成りを見てきたアイトゥイルは、何となくではあるもののペッパーという人間を理解している。故に此の状況と雰囲気から、大体の事を察したのだ。
「ああああああああああ!あああああああああああああああああ!!!ああああああああああああああああああああ!!!…………よし、調った!喚き散らし終わり!切り替えて次行くぞ!」
「ワァ!?ワリャいきなり落ち着くなァ!?」
先程の喚き散らしから一変、人が変わったようにスンッ…と、落ち着きを取り戻したペッパーに、ビィラックは思わずツッコミを入れる。
「おお~。ペッパーはん、切り替え早いのさ」
「あ、アイトゥイル。此れから『
「はいさ~」とアイトゥイルが準備しようとした時、ビィラックは駆動鉱石の名前に目を丸くした。
「ペッパー…、今ワリャ駆動鉱石と言うたか…?」
「え?まぁはい。フォスフォシエの女鍛冶師曰く、マッドネスブレイカーはサードレマから行ける、3つのエリアで採れる鉱石で『3つの成長派生形態』が存在する武器みたいです。
其の内の1つが、鐵遺跡に有るらしくて此れからアイトゥイルと一緒に採りに行こうかなって」
事情を説明すると、ビィラックは目を輝かせている。やはりマッドネスブレイカーの秘めた可能性を、製造秘伝書から感じたのだろうか。
「成長先が変化する武器…か!やはり人間が考えて作る武器は、わちとも全く違って面白い…!ペッパー、わちを鐵遺跡に連れて行ってくれ。少しばかりじゃが、力になってやれるけぇの」
『NPC『名匠鍛冶師のビィラック』からパーティーの申請が来ました。受諾しますか?』
『Yes』or『No』
そうして提示されたパーティー加入申請の画面に、ペッパーは迷わず『Yes』ボタンをクリック。そしてビィラックのステータスを確認した。
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NPCN:ビィラック
レベル:98
メイン
サブ
ヴォーパルバニー・マスタースミス
体力:175 MP:530
スタミナ:120
筋力:130 敏捷:30
器用:120 技量:130
耐久:169 幸運:130
スキル
・ベストステップ
・クエイクスタンプ
・ギガトンスイング
・タイタンブラスト
・フォートレスブレイカー
・マテリアルデストロイ
・クリティカルフォーカス
・アナライズ:レガシーLv.4
魔法
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・ランダムエンカウンター:レベル3
・エンチャント:ハイロブスト
・ミラクルマイニング
・レガシーセンス:レベル3
装備
武器:
頭:火見の巻布
胴:兎式鍛治装
腰:兎式鍛治装
足:兎式鍛治装
アクセサリー
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うわヴォーパルバニーの鍛冶師滅茶苦茶強い。其れがビィラックのステータスを見て、ペッパーが抱いた第一印象である。
敏捷を最小限に留め、前線で戦えるだけの筋力と耐久。そして鍛冶魔法関連に比重が置かれた、鈍足重量アタッカー。アイトゥイルの……兎御殿のヴォーパルバニー達の長女というだけあり、生半可な強さじゃない。
「流石アイトゥイルのお姉さんだな…パワーが段違い過ぎる」
「ペッパー、そりゃどういう意味じゃ」
「アイトゥイル共々頼りにしてますって事」
アイトゥイルが機動力型の前衛なら、ビィラックは重攻撃型の前衛だ。無論、自分自身も前衛を張れなくはない………が、後衛職で一発の被弾=ガメオベラに直結している以上は、後出しを狙う形で攻撃するしかない訳だが。
「あ、でもどうする?旅人のマントだと2人が入ると嵩張りそうだけど……」
パーティーが増えた事で、普段ならアイトゥイルだけ隠せば良かった所が、ビィラックも隠して行動しなくてはいけない。自分を隠すことが可能なスキルはビィラックとアイトゥイルには無い為、出歩くにしても目立ってしまうだろう。
「其処は考えがあるから安心せい。わちは此れから出立の支度するから、ちょいと待ってな」
「あ、ビィラックさん。其の前にちょっとお願いしたい事が有って」
用事を思い出したペッパーが、鍛冶場に戻って準備をしに行こうとしたビィラックを引き留め、アイテムインベントリから四苦八苦の沼荒野で採掘ポイントマラソンで掘り出した、数多の鉱石達を取り出し積み上げていく。
「…また随分と掘り出しおったな。しかも沼豊穣の岩まで在るとはのぉ」
「鐵遺跡に行く前に、マッドネスブレイカー2本の製作依頼の予約をしておきたく…。必要数は秘伝書で見て貰って、制作費は鉱石を売却したマーニで補う形で良いですかね?」
「おし、解った。一先ずコイツ等を鍛冶場に置いてくる。少し待ってな」
鉱物アイテムを受け取り、自分のインベントリに仕舞ったビィラックは、出立支度の為に鍛冶場へと戻っていく。ペッパーはビィラックが創った甲皇帝戦脚を眺め、装備したかったなぁ…と静かに感傷に浸って、自身のアイテムインベントリに収納する。
「……さて、ビィラックさんは何を考えてるんだろうか」
そんな事を考えながら、神代の鐵遺跡はどんなエリアなのかと想いを馳せる。シャンフロのオープニングでも有った、遠い遠い昔の時代を神代と呼んでいたらしいが、其の名残が其処に在るのだろうか。
「戻ったで、ペッパー。そいじゃ行こうかの」
「あ、お帰りなさい。早かったですね」
「一流の鍛冶師は、準備も行動も早いものじゃ。オヤジがそうであるように、わちもそうありたいんじゃ」
そうこうしている内にビィラックが戻ってきた。やはり出来る女…ならぬ出来る兎は行動が早い。
「わちは他の兄弟姉妹と違って『人間の姿』にはなれん。ピーツや『エムル』なんかは其れが出来るが…代わりに、こういうんなら出来るけぇの」
そう言いつつ、アクセサリーの手袋を外したビィラックは、胸に巻いた晒しを弛め始める。すると彼女の身体の毛がモコモコと成長し始め、ふっくら柔らかな毛玉の様な状態になった。
「じゃ、ちぃとばかし失礼するけのペッパー」とビィラックは言い、ペッパーの首に毛を巻き付けて左腕を覆い隠す様にくっ付いた。
「なにこれ」
「ビィラック流擬態術、ヴォーパルファーコートじゃけ」
「ペッパーはん、ビィラック姉さんの毛は暖かいさね?」
「うん…ホカホカしてる。何時も鍛冶場に居るからかな、温かくて良いね」
ファーコートのようになったビィラックの毛並みは、肩や腕の肌から伝わっており、肌触りはまるで高級羽毛布団に匹敵している程の柔らかさだ。
実際に掌で触ってみたい気持ちは有るが、其れをやった場合はビィラックに100越えの筋力と如何にも強力な武器たる大鎚で、頭をぶん殴られて頭蓋骨が粉砕される未来しか見えない。
アイトゥイルがサードレマに続く扉を開く。目指すはマッドネスブレイカーの成長派生形態の1つに必要な素材、
2羽の黒兎と、遺跡を踏破せよ