VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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とあるプレイヤーの話




奮える程の灼熱よ、穿つ程に突き抜けて

PN:イムロン。

 

其れはシャングリラ・フロンティアというゲームに置ける、非常にポピュラーな生産職である『鍛冶師』──────其の中でも最上位職業の『名匠』に到達した開拓者の名前にして、同時に槌の勇者武器(ウイッシュド·ウェポン)こと『聖槌(せいつい)ムジョルニア』の所有者として知られてる。

 

()の実力や腕は言わずもがな凄まじく、嘗ての黒狼(ヴォルフシュバルツ)や午後十時軍、ウェポニアが自軍のクラン陣営に引き入れんと交渉していたのだが、当の本人は『自由にやりたいからクランには属さないが、依頼とかならば受けてやる』と、大規模クラン全てを遠回しに『袖に』した事でも有名なのだ。

 

そんなイムロンを語る上で欠かせないのが、何を隠そうシャンフロ世界に六種のみのユニークの何たるかを証明する、武器にして鍛冶道具たる聖槌ムジョルニア。此の武器は他の勇者武器同様、条件を満たす事で初めて所持者として認められる。

 

例えば剣の勇者武器・聖剣エクスカリバーは、強大かつ凶悪なモンスターが闊歩する迷宮の深層隠しエリアまで、単独(ソロ)で辿り着く事が条件で。

 

例えば盾の勇者武器・聖盾イーディスは、一定以上のプレイヤーとNPCで組んだパーティーと共に、危険度S以上のエリアで敵モンスターの遭遇率が十倍近くに跳ね上がった状態で、一人の脱落者を出す事無く越える事が条件で。

 

例えば槍の勇者武器・聖槍カレドウルッフは、一定レベル以上の複数のプレイヤーが同じ場所に集まる事で初めて出現し、其処で行われるPvPの末に最後に生き残った一人が所有権を得る条件で。

 

例えば弓の勇者武器・聖弓フェイルノートは、旧大陸某所の巨大岩山で紐なしバンジージャンプをしながらに流鏑馬(やぶさめ)を行い、ユニークモンスター・天覇のジークヴルムが審判を務める、落下死確定新感覚エクストリームスポーツで最高評価を出す事が条件である。

 

ではムジョルニアの取得条件とは何か?答えは至って単純(シンプル)、ムジョルニア()用いて武器を製作するという、あまりにも理解り易い(シンプルな)条件だ。

 

だがしかし、其の武器製作の場所(・・)は『大量のモンスターがポップするモンスターハウスの中心地』、かつ『生理的嫌悪を含んだモンスター』や『プレイヤーの身体を欠損させる残虐な攻撃方法を用いるモンスターが一斉に襲い掛かる』という、そんな前提条件の中で…………である。

 

そしてそんな渦中に置いて、聖槌ムジョルニアが所有者に求めた要素(もの)は鍛冶師として鍛冶に向き合う『真摯さ』であり…………其れは敵に身体を喰い千切られようが、数多の状態異常に侵されようが、残り1フレーム後に死に絶える運命が定められていようが、其の刹那すらも鍛冶に対して『姿勢を貫ける者』を、聖槌ムジョルニアは求めていた。

 

数多の鍛冶職が挑んで散って、無理やら何やらと諦めていった中、当時レベル45のプレイヤーだったイムロンは此の試練に挑み。体に無数の風穴が開けられ、顔の半分が消し飛び、片腕片脚を茂木取られながらも、ムジョルニアを振るい続け、作り上げた物……………結果からすると『何も能力を搭載していない一本のナイフ』で。

 

されど死によって意識が暗転・リスポーンする其の瞬間まで、一切の妥協を許さずに『己の全身全霊を以て作り上げた一本のナイフ』により、真摯なる鍛冶師としてイムロンは聖槌ムジョルニアに所有者と認められたのだ。

 

揺るがぬ心と、鍛冶師としての真摯さ。己の全てを鍛冶に捧げられるプレイヤー…………其れがイムロンなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう………!本当にありがとうッッッ………!!色々言いたい事は沢山有るけれど、貴方が指し示した其の『答え』に五文字の!万来の想いを乗せて言うわ…………!本当にありがとうッッッッッッ…………!」

 

感涙に咽び泣き、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった壮年男性から、()()()()()()()()()()()()()を放っては両手を掴み、ブンブンブンブンと振るイムロンを見ながらペッパーはドン引きに近しい感情を以て、五文字で収まってないじゃんと彼を見ていた。

 

イムロン…………おそらく軟派を避ける為に『ネナベ』を、そして此のシャングリラ・フロンティアという世界で鍛冶を極める者、という設定の下に『ロールプレイ』を重視している者だと思われるプレイヤーは、今現在は『素の状態』に在るらしい。

 

「あ〜………其の、そろそろ涙やら拭きませんか?」

 

ペッパーが握手の手を優しく外し、スッと手拭い(新品)をイムロンに差し出せば、(彼女)はむんずと手に取り、鼻を押し当ててチーン!と思いっ切り噛んだ。

 

「はぁ〜………泣いた、人生で久し振りのガチ泣きだった………。とと、コホン…………で、今の時点でシャンフロで一番有名人になったペッパーが、何で旧大陸から新大陸に来ているのかについちゃ『敢えて』聞かねぇが………俺みたいな一端の鍛冶師に、何か用でも有るのかい?」

 

わざとらしい咳き込みから、ロールプレイ状態に入ったイムロン。ペッパーからすれば此処にイムロンが居て、遭遇出来たのは単なる偶然でしか無い。だが合縁奇縁に一期一会はゲームの華とは良く言う物、寧ろ此れは見方を変えれば商機(チャンス)なのでは?とそう考えて。

 

「実は樹海地帯で狩りをしていたんですけど、武器の耐久値が削れてて少し不安でして。偶然とは言えどシャンフロ最高峰の鍛冶師に出逢えたので、修繕を御願い出来ないかなと。あ、御代は確り御支払致しますので」

 

そう言いながらにペッパーが金弓宝剛剣(ゴルト・ヴァーシュ)を含む武器の数々を取り出せば、イムロンの目の色が一瞬で変わる。其の視線は正しく、金銀財宝の山々を見る冒険者の物に等しく。

 

刹那、ガシィ!と両手でペッパーの肩を掴んで来た。

 

「ちょわ!?」

「武器の性能を…………。金色の剣と弓の複合武器と、銃の機能を搭載してるハルバードと、巨大な片腕用の籠手の性能を。──────聞かせて」

 

瞳の奥にメラメラギラギラと滾る炎と熱は、ある意味でサイガ-100に近しい其れであり。

 

「解りました。取り敢えず落ち着きましょう、ちゃんと説明しますから。其れと有事の際にはクラン:旅狼(ヴォルフガング)や、七天極星(グランシャリオ)へ協力して頂けると嬉しいです」

 

今後何らかの形で関わる可能性も在り、そして種類は違えども同じ勇者武器の所持者として、此処で義を通して置くのは悪い事では無い筈だ。

 

 

 

 

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ペッパー、説明中……………

 

 

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「──────という事なのですが」

 

一通り話し終えた所でペッパーがイムロンを見ると、(彼女)は満足気に「はぁぁぁぁあああん…………!」と息を吐きながら、地面でのたうち回って。

 

「OK、御代は情報で頂いたから全部キッチリ直したげるし、其の時になったら連絡を頂戴!修復中は動けないから、護衛を頼んだわ!フレンド申請も送っとく!」

「任せて下さい。あ、そう言えばロールプレイは大丈夫ですか?随分と荒振ってるみたいですけど…………」

「あ!ゴホン!護衛は任せるぞ!」

「言い直した…………」

 

いきなり真剣な眼差しで起き上がるや、自作の金床をインベントリから取り出して、聖槌ムジョルニアを握り締め。ペッパーが取り出した武器を【損傷修復(ダメージリペア)】という鍛冶魔法で回復し始め。

 

ペッパーは色々とイロモノなイムロンを見ながらも、送られて来たフレンド申請を承認して、護衛に就くのであった………。

 

 

 

 






イムロンの御仕事、ペッパーの御仕事

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