時は来た
旅狼のチャットで深淵の雫に関する注意喚起を呟き、
其の脚で真っ直ぐに、ヴァイスアッシュが居る謁見の間へと向かえば、其処にはどっしりと座りつつ年代物の煙管を片手に、升酒を飲むヴァイスアッシュの姿が在り。まるで自分達が帰って来たのを解っていたかの様に、下手な肉食獣をチビらせる獰猛な笑みを浮かべて言った。
「おぅ、ペッパー。おめぇさん、どうやら『殻』ァ破ったみてぇだな」
「はい、先生。新大陸の地にて、限界を越え。掛かっていたリミッターが外れたレディアント・ソルレイアを、再び装備出来るまでの強さに至りました」
ペッパーの答えに対し、ヴァイスアッシュは「そうかぁそうかぁ」と頷いている。
「先生、実は御紹介させて頂きたい方がいらっしゃるのですが、よろしいでしょうか?」
「構わねぇ」
「ありがとうございます。ヒトミさん、自分が何時も御世話になっている先生です」
そうペッパーが言えば、インベントリアからヒトミが現れる。
「ほぉ、
「はい。砂海地帯でモンスターに追われている所を救助し、共に行動をして契約しました」
「
「おぅ、オイラァは此のラビッツで
一先ずヒトミの紹介が出来た所で、ヴァイスアッシュは本題を切り出して来る。
「さて、ペッパー。オイラが言った事は覚えてるな?」
「はい、先生。クターニッドさんから贈呈された物、ゴルドゥニーネが投げた剣、そして先生が打った業物を此処に」
インベントリアとインベントリを操作、取り出し目の前に居るヴァイスアッシュの前に示すは、深淵のクターニッドの報酬『深淵の雫』に、無尽のゴルドゥニーネの本体が投げた片手剣『
そしてヴァイスアッシュが打った、ペッパー専用の武器『
「二日後にオイラの鍛冶場に受け取りに来なァ。キッチリ仕上げとくぜ」
「……………よろしく御願い致します」
立ち上がり三つの品を持って退出するヴァイスアッシュに、ペッパーは深々と頭を下げて見送った。時刻は十一時を過ぎる中、
「あらぁ、ペッパーさぁん。そろそろ来るって思ってたわぁ」
「御見通しですか……エルクさん」
此方が何を求めているか解っている様に朗らかに笑う、パジャマ姿のエルクに遠い目をしつつも、ペッパーは彼女に向きつつ言葉を紡ぐ。
「エルクさん、俺はレベルキャップを取り払って三桁に上りました。そして同時に『神代最強の英雄』が放つ、
「うふふふふ……。見えているのね、ペッパーさんは…………」
「えぇ。同調連結の『同系統スキル』の連結上限である
特技剪定所の受付カウンターを埋め尽くさんばかりに、八億マーニが入った袋がドスン!という重みを含んだ音と共に積み重なる。
「あっはぁー!八億マーニ〜!お金お金〜!」
両目をマーニマークにしたエルクが、涎を垂らしながらマーニが収まった革袋の山に一羽で攀じ登った後、頂上の袋の中に徐に頭を突っ込んでから、暫く静止してしまい。
其れから一分程其の状態だった彼女は、頭を出すと先程までのダラケ顔から一変して、随分と真剣な表情で袋から飛び降りるや、ポフポフと拍手するかの様に手を叩けば、以前彼女に
そしてマーニの入った袋を、神輿を担ぐかの様に運んで行ったので、御疲れ様ですの意味を含めた会釈をすれば、全員から会釈を返された。
「毎度ぉ〜ペッパーさぁん…………。それじゃあ此方に来て〜」
案内されてやって来たのは、剪定所の奥。其処には戦国時代に総大将が座る本陣のアレに近しい空間と、床には大きく刻まれた『八芒星』と、何とも奇妙で同時に神聖な空間でもあった。
「ペッパーさんは、其の魔法陣の中央に立っててねぇ〜?」
「解りました」
再びエルクがポフポフと手を叩くと、八羽のヴォーパルバニー達がやって来て。其の小さな両手で大事そうに運んでいるのは、浅く広く液体を受け止める日本の婚礼行事にヤクザの兄弟やらが家族として、繋がりを作る際に用いる
そして其れ等を魔法陣の中央に立つ、ペッパーを包囲する様に置いて去って行った。
「エルクさん。始める前に一つ質問が有るのですが、同調連結時に自分が習得しているスキルを見ながら、其れを選ぶ事は可能ですか?」
「大丈夫よ〜」
「ありがとうございます」
スキルを間違えて付けない様に出来るだけ、本当に有り難い。習得済のスキルが百を既に越えた以上、此処からは育成が必要なスキル以外を同調連結で繋ぎ、スキルダイエットで自身の可能性を広げる事が重要になってくる。
「───其れでは開拓者よ、繋ぎ紡ぐ技を想起せよ」
真剣な顔付きのエルクの問い掛けに、ペッパーは習得したスキル達を確認。想いを馳せて浮かべるは、ユニークモンスター・墓守のウェザエモン。本名をウェザエモン・
龍をも絶ち切る窮極の一刀両断、一撃確殺の超絶なる斬撃の『
「決めました。
己の持つスキル達。其れ等を加味して言霊にして紡げば、エルクの言葉が響き帰って来る。
「─────大いなる獣、斬り祓う
「─────裂きて斬りて、刻みし斬撃」
「─────速く疾き極なる剣技」
「─────陽を携え、闇を断つ
「─────百にして一、一にして百の一刀」
「─────曇を裂き、空に光齎す一太刀」
「─────巨重なる者を斬る武神の剣」
「─────気高き神の一閃」
同時に視界に置かれていた盃に青い水が。其れもまるで大海の様に青く光り、水源の如く湧き出して盃から溢れて、魔法陣を青く染め。其れは軈て青同士が混ざり合い続け、其れは青から紺碧を経た後に、紫から黒へと変わりながらペッパーの下へと這い寄る様に迫って来る。
「───底の底の果て、遠き空をも孕むもの。無垢なる慈悲に語り乞う、捧ぐは対価、価値の輝き」
黒い水が足元から身体に染み込み、其れは軈て身体の中へと溶け込み、己の中で『一体と化す』のが少なからず解る。大いなる力を神から授けられた勇者の様な、或いは仲間達から世界の命運と全員の想いを受け止めた主人公の様な、そんな『強い力』を感じる。
「───繋げ、紡げ、混ざる事なく重なり合って、別離の定めを受け入れて尚結び束ねよ。──────八つ輝き、重なり光るは唯一つの光。【
エルクの言葉が〆ると同時に、ペッパーのスキル欄には新たに【
彼は其の後、彼女にスキル合成を依頼・十五分で済ませた後、休憩室にてセーブ&ログアウトを行って本日のシャンフロを終えたのだった…………。
手にした力