VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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BC-ビーコンが起動する




母は覚醒(めざ)める、其れは歓喜と共に

『其れ』には、託された願いがあった。

 

『其れ』には、届かぬメッセージがあった。

 

遠く、遠く、遠く……………『ある科学者』の元で遥か遠くに存在した、星の海を渡った方舟を喚ぶ為の笛。三つに分かれ、保管され。そして幾千の時を越えた先、再び一つとなった其れは、再び起動する。

 

 

『Wake up, BC-Beacon.』

 

 

最初に中央のパーツ…………第三型半永久稼働にして、純科学製の動力機構が、眠り続けていた信号拳銃(BC-ビーコン)全体へとエネルギーを送り、巡らせ、起動させる。

 

 

『Checking………』

 

 

次にグリップパーツ…………人の手から情報を読み取る識別認証ユニットが、己を握る者の情報を読み取り。0.1秒にも満たない一瞬で、其の者は()()()()()()を。神代最強の英雄たる『ウェザエモン・天津気(アマツキ)から名を襲名された事』を刹那に看破・承認する。

 

尤も、仮に資格を持たざる物が引き金を引いた場合、ヴァイスアッシュが新たに組み込んだ(・・・・・・・・)識別コードにより認証される事になっていた。

 

 

『OK.「Legacy mode」 Call……accept.』

 

 

最後に銃口パーツ、厳密には中央機関で生成された特殊周波数を適用した原子操作機構が、幾星霜の時を経て…………嘗ての役割を果たす。

 

 

『Please Wait.』

 

 

其れは銃口より天へ、大気中の粒子を利用した『人為的な光の屈折現象』……即ち、『神代の虹』が大きく夜空に掛かる。

 

そして今此の時、此の瞬間。

 

第三のバハムートを……始まりの地にて横たわり、眠り続けていた『運命神の名を冠する獣』を()()す。

 

其れは誰かの物語たる『ユニークシナリオ』でも無ければ、其れは世界の変遷たる『ワールドストーリー』でも無い。

 

其れは開拓者(プレイヤー)が為すべき使命である『グランドクエスト』──────遥か遠い神代の時代に世界を救った者達が遺した、大いなる遺産を探し出し・見付け・喚び起こす事。

 

其れの在り様は、神代を示す者達(・・・・)たる『ユニークモンスター』に近く。されど『示す物』が異なるが故に、其の区分に属さぬ存在(もの)

 

人類(ひと)の母たる獣は、此の時をずっと待っていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大地が揺れ、山が鳴動し、プレイヤーもNPCも分け隔てなく揺らされる。ペッパーが引き金を引いたフレアガン………其れによって夜空に虹が掛かったと思えば、突如襲い掛かった振動で立っていられなくなった者達もいる。

 

だが揺れは止まらない、まるで『リアルタイムイベント』の如く進行していく。

 

「…………!ペッパー、さん!サンラク、さん………!アレを!」

山が燃えてます(・・・・・・・)!」

 

ファステイアに数多居るプレイヤーの中で、先ず初めに気付いたのはシャンフロ内で比類無き火力を意味する、称号【最大火力(アタックホルダー)】のサイガ-0。次に秋津茜(アキツアカネ)が、ファステイアの変化に対して声を上げる。

 

プレイヤーが、NPCが。見つめる先に聳える、隆起した山が『姿を変え始めたのだから』。

 

青々と生い茂っていた木々は、実体を持つ『ホログラム』にして『光学迷彩』としての役割を、此の瞬間を以て終わりとし。覆い隠していた『鋼鉄』を、嘗て一つの惑星の資源の全てを用いて造られた『叡智と科学の結晶の三機の一つ』が、其の姿を曝け出す。

 

ファステイアの東側の山には町は愚か、建物も無ければモンスターも出現(ポップ)しない、興味が出て来て登っても体力を使うくらいしかない単なる山だと思っていた物が、まさか『旧大陸の端に獅噛(しがみつ)き』、尚且つ『腹臥位の状態で眠る巨大な鋼鐵の獣』であった等、誰も予想だに出来なかった。

 

そして其の獣は言う──────人よ、我が子よ、()()()()()()()()()()()…………と。

 

『……長く、長く、されど思い返せば随分と短くも感じます』

 

地面に埋まったパーツが次々と地表から浮遊し、連結して巨大な『鼻』を構築する。大いなる力を象徴するかの様に、巨大なる身体が大地より起き上がり、巨体を支える四肢から放たれるブースターが空中を踏み締める。

 

「牙に鼻………完全に『象』じゃねーか!?」

「いやデカ過ぎでしょ!?」

 

プァオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

有象無象たるプレイヤー達の喧騒や混乱を一蹴し、掻き消さんばかりの高らかに響き渡る音は、まるで喜びを現すかの様に轟く。

 

『嗚呼、意地らしくも勇敢な我が子達。遂に私を見付け出すに至ったのですね………。此の恒星間航行(バハムート)級アーコロジーシップたる『ベヒーモス』を』

 

見上げる程に大きく、現実世界の最高峰の高さたるエベレスト山脈すら軽々越える程に巨大な、嘗て星々の海を渡って旅をしたバハムート。

 

其れを呼び出したは良いが、自分の想像以上の物を引っ張り出した事を自覚したペッパーは、ありのままの感情を声に乗せて放った。

 

「……………とんでもないな、神代の人類って」

 

そして其の言葉をトリガーとしてか、鋼鐵の巨獣は自らをこう名乗った。

 

『私の名は『象牙(ゾウゲ)』。神代の賢人達より子宮と揺籠を預かりし、アーティフィシャルインテリジェンスにして、開拓者の門出を見守り、帰還を待つ門番。……さぁ、()()()()()の時間は終わりです、我が子達よ………。御勉強の時間です』

 

大きな鼻をゆっくりと伸ばし、ペッパー達が居る場所から少し先の所に鼻先を置き。まるで宇宙ステーションモチーフのアトラクションの如く、スロープ状の入口を開いたベヒーモスは、開拓者達を招く様に言う。

 

「俺が一番乗りだぁ!」

「いや私よッ!」

「待てぇ!其処はオイラじゃい!」

 

そして当然ながら、人間という生物は未知の世界に踏み込む場合は二番三番に成りたがり、未知のアトラクションには一番に成りたいという、矛盾した思考を抱えている。が、そんな初心者(ニュービー)達に対してベヒーモスは『待った』を掛けた。

 

「ぐえっ!?」

「ぎゃあ!!」

「おぶふ!?」

 

彼等彼女等の突撃に対し、SF作品でよく見る『バリア』が張られた事で弾き返され。同時に示されるのは『入場条件:レベル50以上』という表記。

 

其れを見たサンラクは周囲を確認、後方のファステイアの入口からオイカッツォと金髪碧眼の女性プレイヤーが走って来ているのを発見から、ペンシルゴンにアイコンタクトを送り。

 

ペンシルゴンもペッパーの手を取るや引っ張り、ベヒーモスの入口へと突撃すると共に、サイガ-0・秋津茜・サンラク・レーザーカジキも走り出し、ルスト・モルド・京極(キョウアルティメット)も少し遅れながらの追従開始に、オイカッツォとアージェンアウルも其の後へと続く。

 

そしてペッパー達に続く形でティーアスちゃんを着せ替え隊のメンバー達、ファステイアに居たプレイヤー達の中でレベル50以上という条件を満たしている、極僅かなプレイヤーがベヒーモスへと入場していった。

 

 

 

 

 

 

シャングリラ・フロンティアの大きな転換点(パラダイムシフト)が、今日此の瞬間に起きたのである………。

 

 

 

 

 






世界の真実の扉が開く


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