VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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入場した者達が見たのは




象牙(ゾウゲ)のクエスト 〜駆け抜けろ、暗闇のトンネルを〜

恒星間航行(バハムート)級アーコロジーシップ・ベヒーモス。

 

ペッパーによって其の正体を暴かれた、巨大なる宇宙(そら)渡りの鋼鐵獣(スペースシップ)………レベル50以上を入場条件とする其の場所で、クラン:旅狼(ヴォルフガング)のメンバーにサバイバアルを抜いたティーアスちゃんを着せ替え隊、そしてアージェンアウル含む極僅かなプレイヤー達が乗り込み、残りは謎のバリアで弾かれて篩に掛けられた。

 

そして条件を満たし、入場を許可されたプレイヤー達が進み、彼等彼女等が其の先で見た物は…………巨大で深淵へと続く深い深い『大穴』と、離れた場所にベッドルームが在る不思議な空間だったのである。

 

「穴…………というかコレ、天頂地朽(てんちょうちきゅう)の大穴に似てるな」

『えぇ、部分的には正解です。アップル・コット。此れは『試練』であり、同時に『再現』であり、そして『試験』なのです。我が子達よ』

 

アップル・コットなるプレイヤーが呟いたと同時、大穴の中心たる虚空に顕れた『ホログラフィックの女性』。其の姿は首から上は仕事が出来る女性という印象なのだが、逆に首から下は一昔前の『割烹着』というインパクトの有る見た目だった。

 

『私の名は『象牙(ゾウゲ)』。貴方達の旅立ちを見守り、そして帰還を待つ者……………おや?其処の子よ、名前が有りませんね?』

 

そんな中、象牙は唯一人名無し(・・・)のプレイヤーである『ペッパー』に気付き。他の者達も一斉に視線を向けると、彼は周りを見て。何時の間にか前に出なくてはならない、そんな雰囲気が構築されていた事に頭を擡げつつも、一人で前に出て自己紹介を行う。

 

「初めまして、象牙さん。自分はペッパー、ペッパー・天津気(アマツキ)と言います」

 

奏でる者の旋律羽衣(ダ・カーポ・シェイルンコート)のPN隠し機能をオフにし、頭上に名前が示されたのを見た象牙は目を丸くしている。他のプレイヤー………正確にはペッパーが其の名を得るに至る、過程を知らない者達は全員例外無くざわついて。

 

『……………其の名前は誰から(・・・)?』

ウェザエモン(・・・・・・)天津気(・・・)さんから」

 

象牙の問い掛けに確固たる事実を以て答えてみせれば、彼女は暫し沈黙し…………軈て口を開く。

 

『そう、ですか…………。きっと『アンドリュー』が此の事を聞いたら、貴方に色々話を聞きたがるでしょうね』

「アンドリュー?」

『此方の話ですよ、ペッパー・天津気。えぇ、でも………今の私はとても『歓喜』しているのです。貴方は彼が見定めた『英雄』なのでしょう』

 

象牙は微笑みながらに言う。其れは成長した我が子が、誰にも真似出来ない『素晴らしい偉業』を成した事を。其れも一瞬、象牙は此の状況に関しての説明を行い始めた。

 

『現在ベヒーモスは、レガシーモードとして稼働しています。構造は()()()()()()()()…………見れば解る通り大穴型です。そして此の大穴を、貴方達自身が此処まで培った『知恵』・『勇気』・『力』の三柱を以て、十在る層を踏破する事………。其れこそが、私が貴方達に課す『クエスト』なのです』

「…………ん?」

 

象牙の言葉にサンラクが疑問を抱き、そして問い掛ける。

 

「なぁ、象牙よ。俺達の重力方向(・・・・)ってどうなってんだ?ベヒーモスの構造的に俺達は鼻から入って来た、となりゃあ今は『口から尻に向かって行こうとしている』んじゃ無いか?要するに『下に落ちる様に見せ掛けて』、其の実は『前に進もうとしている』………違うか?」

『……………素晴らしい。よく気付きましたねサンラク、御褒美をあげましょう』

 

そう言った象牙、同時にサンラクに振り込まれたのは『5000リザルト』なる物。

 

「リザルト?」

『此処ベヒーモスで使える『通貨』です。フフフ………此の先のエリアで買い物をする時だったり、()()使えますよ』

 

何やら『含み』が有る言い方をした象牙に、皆疑問を覚えつつも本題たる大穴に視線は向き直る。

 

『どうか見せてください、愛しき我が子達よ。貴方達が旅の中で培い、育んだ其の強さを』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で始まった、象牙クエスト・大穴攻略。

 

セーブポイントを更新し、複数人のプレイヤーが飛び込んで見たものの、全員例外無く『謎の攻撃』を受けて死亡からリスポーンして来た。

 

「灯りが無いと内部構造が判らねぇな」

「いや、此の場にマジックトーチ使うヤツ居るか?」

「取り敢えず『打撃』で殺られたのは間違い無い」

「どーしたもんか…………」

 

攻略法に悩む開拓者達を見つつ、隙を見つけてセーブを行ったペッパー達旅狼メンバーは、離れた場所でどうするべきかを考える。

 

「取り敢えずペッパーには光るアクセサリーが有るから、其れを使えば良いと思う」

「そりゃそうなるか…………」

 

ルストの意見は御尤もである。あの大穴を照らす程の光に、シャンフロの空中戦におけるエキスパートの彼ならば、打撃で死亡した理由を確かめに行けると踏んでの発言。ペッパー自身も薄々だったが、『コレ自分がやらなきゃいけない流れじゃな?』と考えていた所だ。

 

「じゃ、ちょっくら行ってくる。ペンシルゴン、ノワとアイトゥイルを預かってくれ。くれぐれも仲良く、ね?」

 

下手に喧嘩して象牙含め、他のプレイヤーに何を言われるか考えたくも無いので、パパパッと終わらせるに限る。アイトゥイルとノワをペンシルゴンに預かって貰い、ペッパーは脚を上げ下げしての心拍数を高め、短距離全力ダッシュをしつつ両手を合掌。

 

起動条件を満たした超星時煌宝珠(クロック・スタリオン)が光を放ち、ペッパーを温かな白光が包み込んで真っ白な姿へと変わるのを見た旅狼以外のプレイヤー達は、全員揃って目を丸くし。アージェンアウルに関しては、逆に目がキラッキラな状態になる。

 

「未知を拓くは勇気の灯火ッ──────!」

 

星天秘技(スターアーツ)ミルキーウェイと三桁スキルへと進化を遂げたグラビティゼロ、プレイヤーの任意により重力の方向(ベクトル)を変更する『無重律の恩寵(スペースチャージ)』を点火。足裏に描いたマナ粒子の道に重力方向を設定しながら穴の中へと飛び込んで、前へ前へと進んだ光り輝く彼が見た物。

 

 

 

 

其れは『何かの液体に漬け込まれ、しかし個性の有る人間達の標本』だった。

 

 

 

 

そして此の瞬間。ペッパーの脳内にて情報が繋がり、連鎖し、構築する。象牙の言葉、二号計画、人間の標本………此処に『答え』は導き出された。

 

「嗚呼、成程……………そういう事か!」

 

直後に背筋を走る悪寒。ミルキーウェイで踏み込み、回避すれば高速で飛んで行くのを目撃。サキガケルミゴコロを起動すれば、脳内にて『下から飛んで来たエレベーターに打ち上げられた後、錐揉回転しながら地面に落ちて首の骨を折って死ぬ』という未来を目撃。

 

入った穴を頭上に見据えて、トゥワイス・ジャンピングが進化により、三桁スキルへと至った事で跳躍時の高度や距離を、プレイヤーが自由に調整可能となった『星天昇向跳躍(アーシェン・エトワール)』を使い、一回のジャンプ(・・・・・・・)で穴からの脱出を完了させた。

 

再度合掌して白光を解除し、ペッパーは象牙に答えを突き付ける。

 

「象牙さん。此処ベヒーモスは『開拓者である俺達を産み出した地で在り』。そして二号計画は『予め開拓者の素体に封臓と役割を与えて創り、成人に近しい状態で産み出す事で此の世界における開拓を優位にするのが目的』では無いですか?」

『…………とても素晴らしい考察です、ペッパー・天津気。そう………此処は風と共に現れ、風と共に去る貴方達が生まれし『子宮』にして、旅立った『産道』です。此の場所を進む事が出来たならば、貴方の考察に対する『答え合わせ』をしましょう』

「言質、取りましたからね」

 

大型施設かダンジョンかは解らないが、ペッパーは此の時点で一徹する覚悟は決めている。やるなら徹底的にやり切ってこそ、自分というゲーマーは初めて『納得』出来るのだから。

 

 

 






開拓者の産まれた場所


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