VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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攻略しよう




ヒトと人を母は語る

一先ず判ったのは進むべきと思っていた大穴は罠だという事。エレベーター…………もとい二号人類素体を乗せたベビーカー(・・・・・)でブン殴って交通事故させようとするのは、救急車を運転して救急搬送するレトロゲームじゃ『一発ゲームオーバー』に該当するので止めて欲しい。

 

そして今現在、目下の問題と言えば。

 

「ほへぇ〜……………此の子が噂の」

「可愛い!」

「確かにリュカオーンだな………」

「ユニークモンスターエンカウントが発生してない………リュカオーンと違うのかな?」

「ちっちゃいなぁ………」

 

他のプレイヤーに囲まれて、探索が進まなくなっている事だろう。

 

きっかけは単純明快、象牙(ゾウゲ)が『ペッパー・天津気(アマツキ)。今まで見ていましたが、貴方はリュカオーンを従えているのですね』と口走った事であり、同時にペンシルゴンに預けていたリュカオーンの分け身・ノワが走り寄って来るというダブルパンチが炸裂した事だった。

 

「ペッパーさん、此の子って夜襲のリュカオーンですよね?どうやってテイムしたんですか?」

「リュカオーンであり、リュカオーンでは無い………かな。実は自分も詳しくは解らなくてね……最初に遭遇したのがレベル16で、負けはしたけど片目を穿って「次は勝つ」って宣言したんだ。次に遭遇したのはレベル96で其の時はクランメンバーの力を借りて何とか勝てたんだけど、呪いが愛呪に変化してクターニッドさんの根城に引き込まれたのがトリガーになってか、自らテイムされに来たよ」

「待って其れ再現性皆無じゃないですか!?」

「御気付きになられましたか………」

 

改めて考えてもリュカオーンは何を以て自分に愛呪を与え、自らテイムされに来るという行動を起こしたのかが解らなくなる。ペンシルゴンが他のプレイヤーやノワに睨みを効かせ、自分がヘイトを一身に受けていれば、遠くに居た秋津茜(アキツアカネ)が声を上げた。

 

「あの象牙さん!コレって何ですか?」

『おや、秋津茜。見付けた様ですね』

「マジで?うわマジだ!?」

 

秋津茜が見付けてサンラクが声を上げた物、其れはSFチックな床の模様に混じって存在している『三〜四人分は入れそうなハッチらしき物』だ。流石リアルラックカンスト忍者ガール、やはりリアルラックこそがシャンフロ最強の人権武器の可能性が有るのでは?と、些かそう思ってしまう程度にはヤバい。

 

秋津茜に注目が移り、周りのプレイヤー達もハッチに視線が向いたタイミングで、ペンシルゴンに預けていたアイトゥイルを受け取り、ハッチの方へと向かう。

 

「コレってどうやって開けるんだ?」

『其れを開ける方法も自分で考えるのですよサンラク』

「オーケー解った、ギミック系ね」

 

神代製の超科学宇宙船である以上、破壊の手段を取るのは芳しくは無い可能性が有る。爆破やらの衝撃をセンサーがキャッチ、全員漏れ無く外にブッ飛ばされる………なんて事も有り得そうだ。

 

ともなれば此れだけ巨大な船で問題が起きた場合、御約束も御約束な顔や指紋に虹彩を確認する、認証システムが現時点においても稼働している事等、何らおかしく──────認証(・・)

 

「…………あ、もしかして!」

「あーくん、どうしたの?」

「象牙さん、象牙さん。此処は貴方にとって『マンション』みたいな物ですよね?という事は俺達を新たに受け入れる住民みたく、此のベヒーモスに乗り込んだ俺達を『新規登録』する事って出来ますよね?」

『フフフ………ペッパー・天津気、よく出来ました。約束通り、貴方の考察の答え合わせをしましょう』

 

朗らかに母親の様に笑った象牙、次の瞬間にはペッパーと彼が抱えていたノワとアイトゥイル、そして此の場に居る全てのプレイヤー達の周りに淡い光が満ちて、優しく身体を包み込み。

 

「うぇっ!?」

「わっ!?!」

『ルゥガ!?』

「「「「「「えっ」」」」」」

 

ハッチを通り抜けて下へと落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『抑制進化機構クェンチ・エヴォリューション・ドライブ。識別コードは其の頭文字から取って『Q.E.D.』と名付けられた。…………神代における生物として、此の星に人類は()()()()()と結論が出され、そして其の果てに生まれたのが此のQ.E.Dという技術でした』

 

アカウントか何なのかは知らないが、象牙によってベヒーモスに新規登録をされたペッパー達を含むプレイヤー達は、試験管らしいスロープを滑り降りて底に辿り着いた事で、ホログラフィックの彼女から説明を受ける事になる。

 

『この星における旧人類種の()()()()()()()()()()()()()()…………即ち『封臓』を生態に組み込む事で、新たな人類種として定着させる事。其れが貴方達とは異なる人、我が手を離れて此の地に()()()()()()…………其れが『一号計画』なのです』

 

つまり一号計画が『NPC』を産み出す事と、彼女からハッキリと自分達に示されたと見て良いだろう。

 

「という事は、だ。二号計画(セカンドプラン)の存在である俺達『開拓者』は、此の世界を『拓く者』としての責務を全うするべく、予め『職業(ジョブ)という役割と封臓という追加臓器の要素』を組み込み、そして『出身等を含めた人生を経て』、ベヒーモスから産まれ出て来た…………という事なのか」

『其の通りです、ペッパー・天津気。勉強し考察し、よくぞ此処まで辿り着きましたね』

 

そう言った象牙はペッパーへ、御褒美として5000リザルトのベヒーモスの通貨が振り込まれた。象牙は再び話を始める。

 

『貴方達二号人類は、ペッパー・天津気が言った通り『拓く者』としての役目たる『環境踏破』…………。即ち一号人類が長い時を掛けて育む『強さ』を生まれつき持つ事で、より効率的な惑星開拓を期待されて生み出された存在です。其れはマナの吸収と肉体還元の効率において、一号人類の上位互換であり…………噛み砕いて言えば、貴方達は『努力が必ず報われる肉体』を持っているのです』

「成程な………要するに『レベルアップ』や、其れに伴う『新スキルの習得』、或いは『魔法の発現』が当たるって事だな?」

 

象牙の説明からサンラクは考察し、象牙もまた『其の通りです』と答えて。しかし『ですが』と一度区切り、其の上で話を続ける。

 

『此の世界に存在する『前へ進むという意思』が減衰してしまうと、風の様に消滅する『デメリット』は解決しきれませんでした』

「つまり『引退』って訳ね………成程」

「何だ、俺達開拓者ってとどのつまり『欠陥生物』扱い?」

「いや引退=死って、オープニングの文章で説明されてたじゃん」

「長過ぎてスキップしたんだよなぁ…………」

「私も」

「実は……其の、私も………です」

「俺も」

「仲良かったNPCも半年経つと『誰だお前』みたいな反応するって、ライブラリの調査報告書がシャンフロwikiに在ったぞ」

 

象牙の説明に各々が抱いた感想を語らい合うプレイヤー達。其の中でペッパーはルストとモルドが関わったスチューデも、あと数ヶ月再ログインするのが遅れていたなら、クターニッドへのフラグが消滅・振り出しに戻っていたのだと考察する。

 

「つまり二号計画って、一号計画のNPCが生きられる環境を作る為の『捨て駒』だったりするんか?」

「まぁレア素材の為になら、命投げ捨てられるし」

「ティーアスちゃんの写真撮る為ならば、どんな罪さえも背負えるぞオレァ…………」

『それは違う、違うのですよピースファイヤー。アーティステン。ミニッツアー。貴方達は開拓者である前に、一つの『生命』なのです。だから其れだけはどうか忘れないで……貴方達の尊厳は他でもない『象牙(ベヒーモス)』が保証しましょう』

 

女性のアバターながら男性の声がするピースファイヤー、男性アバターから女性の声が聞こえるアーティステン、貧相な装備ながら歴戦のPKerにしてティーアスちゃんを着せ替え隊のメンバーのミニッツアーなるプレイヤーの言葉に、象牙が真剣な顔付きで答える。

 

彼女の視線は息子や娘を心配する、正しく『母親』の視線其の物で、其れを見ていた誰かが「ゾウゲマッマ………」とバブ味に堕ちた声を聞いたが、ペッパー含めて一部のプレイヤーは無視した。

 

そんな訳で仮称エントランスから、本当の意味(・・・・・)で第一層へと辿り着いた者達は、現在進行形で『キャラメイキングを行っている新規プレイヤー』を目撃。試験管の中で創り上げられていく様子たるや、舞台裏から見ている気がして何とも言えない感情が湧き上がる。

 

新規プレイヤー………『円凸円』なる読み方が解らないPNを設定し、男性アバターを作って装備を決める姿を見ていた所、オイカッツォが何かに気付く。

 

「なぁ、象牙。何か空いてる試験管が在るんだけど?」

『其れは再計算の為の装置ですよ、オイカッツォ』

「再計算?」

『そう。Q.E.D.は『バトンタッチ計画』の一端であり、次世代型人類種の創造の為に製造され、此のベヒーモスに搭載された装置です。フラットステータスの人類種……すなわち一号人類、其の『最少集落』を東大陸全体に設置し、さらに新大陸の()()(もと)に同様の転送を行なっていましたが……。其のプロトコルが終了した時点で、ベヒーモスは『二号人類の生産作業』を続けています』

 

象牙の言葉を聞き、脳内に蓄積した情報を引き出して精査、其の果てにペッパーは答えを出す。

 

「…………もしかして此の旧大陸の各街に居るNPC、アラバさんが言っていた鉱人族(ドワーフ)森人族(エルフ)、他には鳥人族(バーディアン)も。基礎はベヒーモスが創っていた………という事ですか?」

『正解です、ペッパー・天津気。其処まで気付くとは………中々ですね』

 

どうやら此のベヒーモスは思った以上に、とてつもない役割を担っていたらしい。周りのプレイヤーの視線がペッパーに向く中、象牙から再び5000リザルトが振り込まれるのを見ながら、バハムートを呼び出した事で凄まじい状況になったのだと、否応無しに理解させられていく。

 

『二号人類は生誕段階で成長金型『ジョブシステム』、及び境遇金型『ロールシステム』を刻印した状態で生産・()()されます。そしてあの空いた試験管は二号計画に基づいたレギュレーションであり、私は『リセット・カリキュレーター・システム』………頭文字を取って『R.C.S.』と名付けました。簡単に言えば、肉体の再構築を可能とする『後天的アバタービルド』が可能なのですよ』

「えっ、そうなの?」

『えぇ。此処では『ブーケ・パズル』とでも名付けましょうか。其れを第五段階(ランクファイブ)まで上げて、一定量のリザルトを要求しますが…………()()出来る様になりますよ』

 

そう答えた象牙に対し、此の場に居た全てのプレイヤーが誰一人の例外も無く、等しく同じ感情を抱くに至る。

 

 

 

 

 

『バハムート恐るべし』──────と。

 

 

 

 






母が成した事


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