VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勇者、向き合う




生物の改造の果てに待つは、世界を壊す狂気の産物

サイガ-100………………狼双戦争(デュアルウルフウォー)の大将戦にて相対し、聖剣エクスカリバーを振るう修正前剣聖勇者。そして打倒リュカオーンに心血を注ぐ、アーサー・ペンシルゴンのマブダチたる女性である。

 

リュカオーンと切っても切れない因縁を持ち、此のシャンフロという世界に置いて何よりもリュカオーンを優先する姿勢は、ある意味『プレイヤー』として健全な資質を持ち合わせていると言って良い。

 

そんな彼女は現在、リュカオーンの分け身たるノワに鋭利な視線を注いでおり、答え方次第では腰に吊るしている金色の剣が向けられる事は不可避な上、フィールド的に考えても此処で暴れるのは正直に言って宜しく無い。図書館や資料館では御静かに&火気厳禁だろう。

 

モモ(・・)ちゃーん?私の(・・)あーくんと家のノワちゃんに何用なのかなぁ〜?ん〜?ノワちゃん討伐に来たんなら、此方も此方で出るとこ出るぜ〜?」

「其の名前で呼ぶのはタブーだろうに、全く……………。私が話したいのは、ペッパー君に付き従っているリュカオーンの分け身であるノワ、其の仔犬はリュカオーンであるがリュカオーンとは『違う存在』なのだろう?」

「えぇ、其の通りです」

 

ペッパーが真っ直ぐにサイガ-100の目を見て答えた所、彼女は暫くジッ………と見つめて。其れから数十秒の沈黙の後、唯一言「…………そうか」と答えた後、其の目付きは落ち着いた物へと変わった。

 

「ありゃ。私てっきり、ノワちゃんを斬るかと思ってたけども?其れは其れで好都合だけどさ」

「おい、ペンシルゴン」

『ガルルル………』

「ジョークだよジョーク。ペンシルゴンジョークだって、あーくんノワちゃん」

「……………以前の私だったなら、斬り掛かったのは否定しない。少なくとも今の私は、以前よりかは分別は出来ている」

「サイガ-100さん…………」

 

会談の時にノワが自分に付いてきていたら、間違い無く血みどろの大惨事は不可避で。イリステラが居る状況で事を起こさんとする程に、彼女は切迫していたのだろう。

 

「ペッパー君。あの時、君と君の仲間達が大いに暴れてくれた事。そして私はクランリーダーとして()()を取る形で、黒狼(ヴォルフシュバルツ)から黒剣(シュバルツシルト)へとスムーズに移籍出来た。──────改めて感謝する」

 

そうして深々と頭を下げたサイガ-100は、ライブラリが解き明かした答えを次々と問題用紙に記載して、全問正解を勝ち取って其のまま第三階層を目指して進み。ペッパーとペンシルゴンも遅れる形で全問正解し、先に進んだプレイヤー達を追い掛けたのである………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベヒーモス・第三階層。

 

先に行ったプレイヤー達やサイガ-100を追い掛け、辿り着いたペッパー・ペンシルゴン・アイトゥイル・ゼッタ・ノワ・ヒトミが見たのは、照明や空調によって初夏の環境に整えられた事で、草達が青々延び延びと育つ『のどかな草原地帯』たる空間が形成されており。

 

しかしながらそんな『のほほん』とした雰囲気とは全くの真逆な、別のゲームでなら『ラスボス』やら『裏ボス』に果ては『真ボス』を張れそうな『生物兵器』達が現在進行形で鎮座しているという、何がどうしてそうなったのか?な状況が広がっていた。

 

他の面々が作戦会議をする中、象牙(ゾウゲ)がペッパー達の前に現れて、此処のクリア条件を話し始めた。

 

『此の場所は私の趣味(・・)と言いますか……。御恥ずかしながら、惑星環境に関しては『勇魚(イサナ)』の領分である事は承知していたのですが、其れは其れとして生態系のシミュレートがしたくなりまして………。『シンプルな摂理のみで食物連鎖を繰り返し続けたら、生物は一体どの様に進化するのか?』というシミュレートを行った結果、ああなってしまい………外界に出せない系統の生態系が出来てしまいました』

 

蠱毒すらビックリの、ヤバい実験じゃないかとペッパーは思う。仮に此れが脱走したら、どんな被害が出るのかは想像したくない。在来種が外来種の襲来で生態系が滅茶苦茶にされるともなれば、SF-Zooやレーザーカジキは黙っていないだろう。

 

事実としてAnimaliaとSF-Zooの面々はセーブテントを設営後、環境生物の一体のバランスボールとドラゴンの要素が融合した結果、ずんぐりむっくりな見た目をしている『マクスウェル5-1』をスクショで撮影、スキンシップという名の偵察を開始している。

 

「つまりあのモンスター達を全て(・・)倒してみせろ………と?」

『いいえ、ペッパー・天津気(アマツキ)。此処のモンスター………『人為的環境生物』は()()倒せればクリアになります。其れと討伐に際して『参加人数』は問わない事、一体討伐したなら討伐参加者に『100,000リザルト』を報酬として御渡ししましょう』

 

つまり此の先にて買い物をする際にも、此処で確実に生物兵器を倒してリザルトを稼ぐのは必須である様だ。

 

「で、だ………サンラク達は此処で荒稼ぎする?」

「いや、先の階層が気になるから其のまま進む」

「あ、私そろそろ寝ます!」

「僕も眠くなっちゃって………でも、此処であのモンスターを食い止めないと、動物やお魚さんに被害が出るかも知れないので、頑張ります…………!」

 

深夜帯になっている影響も有ってか、秋津茜(アキツアカネ)に他のプレイヤー達はログアウトを申し出て、象牙の案内で第二階層へと戻って行った。

 

「象牙さん、あのモンスター………じゃなくて環境生物って『素材』は落ちるんでしょうか?」

 

ペッパーの問い掛け、其れはシャンフロのドロップアイテムに関わる重要な要素。モンスターを相手に大人数其れも複数パーティーで挑めば、当然ながら取得経験値と報酬たるドロップアイテムは少なくなる。おそらく袋叩きにしたとしても、出て来るのは甲殻やら皮程度の物にしかならないだろう。

 

無言で頷いた象牙を見つつ、さて何から攻めるべきかと考えていれば、SF-Zooのメンバー達の悲鳴が響き渡り。其の方角を皆が見ればマクスウェル5-1に焼き払われたり、歪形の爪に多段ヒットで吹き飛ば(ノックバック)される彼等彼女等の姿が。

 

悲鳴が狂乱を呼び起こし、設営されたセーブテントから顔を出したSF-Zooの面々はと言えば『取り敢えずマクスウェルなるボールドラゴンは、近接職殺しだから後衛職の矢を引けるプレイヤーが居ないとキツい』との事で、サイガ-100・SOHO-ZONEを中心とした遠距離攻撃手段持ちが対処に当たるべく、階層外にセーブテントを設営して行動を開始。

 

因みにアージェンアウルも、マクスウェルとは別のモンスターに狙いを定めて、単身で突撃を開始して行った。

 

「複数体モンスターが居るのは確定として、目標は階層突破である以上、撃破対象を『一体』に絞り込んで狙おう。場所と射線によっては敵が『複数強襲』するだろうし」

「そうだな、そうなると地上と空中の両方から叩いて倒すのが良いか。と言う訳で、だ……………ペッパー・オイカッツォ・ペンシルゴン・京ティメット、此処でルストとの『約束』を果たしちまおうぜ?」

 

ニンマリと笑うサンラク、ルスト&モルドの『ネフホロチャンピオンコンビ』がシャンフロに復帰した最大の理由。其れ即ち墓守のウェザエモンの遺産たるロボットスーツと武装による操作及びバトルを、此の瞬間に成し遂げるのだ。

 

同時にサンラクが動く、インベントリアを操作して展開された其れは、全員の目を見開かせ丸くする。

 

 

 

 

 

 

「此処が初御披露目!今日の夕方に完成し、ブッ壊れアクセサリーのインベントリアによって()()()()()となった秘密兵器!其の名も『魔導推進征海船ブリュバス』ッ!」

 

 

 

 

 

 

まるで現実世界の、億万長者のみが持つ事を許されたブルジョアジーの具現化にしてアイテムの一つ『クルーザー』の様で在りながら。船体の左右から翼のように備え付けられた、ある種の『胸鰭』は水晶の如き透き通ったブレードに、イッカクとノコギリザメの融合した衝角を掲げ。

 

其れは嘗てサンラクがクターニッドの根城たる、反転都市ルルイアスにて死闘を演じた『アトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角(プロモスピア)"』を彷彿とさせる姿形をしていたのだった。

 

 

 






打ち倒せ、環境生物


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