VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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深く、深く、潜り行け




神代の神秘は、悠久の刻に揺蕩う

神代の鐵遺跡、地下2階……━━━━━━

 

「おどりゃあああああああ!」

「どっせぇぇぇぇぇい!!」

 

ビィラックの王鬼の戦鎚(スレッジ・オーガ)とスキル:マテリアルデストロイが、ペッパーのマッドネスブレイカーとスキル:バルガストライクが、ピラミッド型とは同じ色で異なる形の円球体型(スフィアタイプ)に各々炸裂し、球体に皹が迸って砕き割れた。

 

球体を構築するポリゴンが爆散し、ペッパーの足元には小さな破片が転がり落ちる。

 

「っし!硬かったな、さっきから遭遇するボールみたいの」

「ビィラック姉さんもペッパーはんも、ほんまパワフルさね」

 

エリアを往復浮遊している巨大な鉄板の上での戦闘を繰り広げ、ビィラックとアイトゥイルにハイタッチをし合いながら、ペッパーは1つずつ鐵遺跡のエリアを越えていた。

 

地下1階の最初のエリアから始まり、此処に来るまでにピラミッドタイプが。地下2階に降りると今度はボールタイプが、リュカオーンの呪い(マーキング)が在るにも関わらず、自分に襲い掛かって来た事で、ペッパーは少なくとも、呪い(マーキング)は『視覚を持ったモンスター』にしか効果が無いか、自分のレベルが此処に居るピラミッドやボールより『低い』可能性が有ると予想する。

 

「ドロップアイテムは…『神代の鉄辺』、鉱石系統のアイテムかな?」

「そうじゃけ。コレを大量に用いた鉄装備は、ちょいと頑丈じゃ。ただまぁ…数が揃うまでに根気がいるけの」

 

ビィラックの説明に「成程」とペッパーは言い、マッドネスブレイカーを使って迷うこと無く、鉄片を砕き割る。

 

「ペッパー、ワリャ何しとるんじゃ!?アイテムじゃぞそりゃ!?」

「マッドネスブレイカーの耐久回復ですけれど…駄目でしょうか?」

「いや、止めはせんが…。そうか、マッドネスブレイカーの特性か………」

 

ペッパーの発言に少し肩を落とすビィラック。おそらくだが、ユニーク武器たるマッドネスブレイカーを一度、自分の手で直してみたかったのだろう。

 

「………うーん、どうしようかなー。マッドネスブレイカーの耐久値を、完全に回復させたいなー。こんな時、頼れる一流の鍛冶師に、お願い出来ないかなー?」

 

チラッチラッと目線をビィラックに向けてみると、彼女の顔が太陽みたいに明るくなった。うーん、チョロい……大丈夫か先生の長女よ。

 

「そんなに気になるか?じゃったら、わちに任せんしゃい!応急処置になるが、メンテナンスしてやるけぇ!」

「其れでは御言葉に甘えさせて貰います」

 

そう言ってマッドネスブレイカーを手渡すペッパー、ビィラックは嬉々としてユニーク小鎚を受け取り、早速鍛冶師スキルを使ってメンテナンスを開始する。

 

「にしても…まだ地下2階とは言え、あちこちにダメージが在るみたいだね」

「諸行無常の響き…形在る物は何れ滅びて無くなる、其れが自然の摂理なのさ」

 

アイトゥイルの言う事は至極であり、此の遺跡も何れは風化によって無くなる運命に有るだろう。

 

「ペッパー、マッドネスブレイカーの応急処置完了じゃけ!」

「うおっ、流石名匠ビィラックさん。仕事が早い」

「ふふん。また修理したくなったら、わちに頼め!確りじっくり直しちょるけぇ」

 

ドヤッと言った具合で、晒しを巻いた胸を張るビィラック。やはりマッドネスブレイカーを修理する傍らで、人間が産み出した技術を見てみたかったのだろう。

 

と、自分達の乗る巨大鉄板が独りでに止まり、目の前には地下へと続く階段が在る。

 

「どうやら、地下2階とも此処で御別れらしいな…」

「ペッパーはん、こっから先は足場が崩れやすくなっとるさ、足元にも気ぃ付けんとな」

「落下したらわち等でも助けに行けん、慎重に立ち回れよペッパー」

 

2人の忠告を受け、ペッパーはコクリと小さく頷いて歩き出す。此処から先は神代の鐵遺跡の折り返し地点、地下3階の新しいエリアだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ…こりゃエグいレベルで荒れてるな…」

 

 

地下3階への階段を降りた先、ペッパーの視界には一際広い空間が広がっており、フロアを形成する壁や天井には無数の穴が空き、床は僅かな衝撃が加わろう物なら、一瞬で全体が崩落しそうな脆さが匂う。

 

そして天井をよく見ると、ピラミッドやボールと同じ黒鋼色の無数の『歯車』達が突き刺さっており、不思議な雰囲気を醸し出していた。

 

「ペッパーはん、ペッパーはん。彼処に在る『山』は何さね?」

「山?えっ何処に在るの、アイトゥイル?」

「彼処に在るさ、ほら彼処…」

 

アイトゥイルの発言とに目を細めて、エリアを汲まなく見渡して見ると、エリア中央辺りに如何にも『採掘ポイントだから掘ってね~』と主張する、複数の大きな盛り土と如何にもな大きめの、円状のフィールドが在った。

 

「あ、見えた。ありがとうアイトゥイル」

「彼処にペッパーの求めとる『駆動鉱石(ギアメタル)』が在る訳じゃな」

 

早速向かおうとするビィラックだったが、ペッパーは彼女の前に手を翳し、停止を促す。

 

「ペッパー、どないした?」

「……何か『嫌な予感』がするんですよね。あからさまというか、顕著というか……」

 

ペッパーは此のフロアのシチュエーションが、嘗てプレイしたレトロゲームの中盤ダンジョンに似ている事に気付いた。

 

其れは、ストーリーに関わる重要アイテムがあるダンジョンに潜り、目当てのアイテムが在るフロアに到着。いざ入手……といった所だったが、悪い予感が頭を過って別のアイテムをフロア入口から投げ込んでみた。

 

そうした時、アイテムが在った場所と自分が立っている所以外の全てが、崩落するという初見殺しのギミックが発動。選択次第では、自分は落下死してガメオベラする所だった経験がある。

 

「アイトゥイル、ビィラックさん。万が一が有ると思うので、俺の肩に乗ってください」

「……分かった。なら失礼するけ」

「心配性なんよな、ペッパーはんは。でも其処が良い所なのさ」

 

2羽の黒兎達が肩に乗り、ペッパーは先ず手始めに神代の鉄片を床に向けて投擲。コロンカロンと音が鳴りこそしたが、床が崩れる気配は無い。

 

ならばとスキル:アクセル及びハイビート、更にアクタスダッシュを起動。床が崩れ落ちる可能性が発生する其の前に、中央の採掘ポイントまで駆け抜ける事にし、一気に掘り出して此のエリアから脱出する事にする。

 

ペッパーが一心に、真っ直ぐに走り出した。其れがトリガーだったのか、天井に刺さっていた歯車達が一斉に振動。天井から抜き出され、一気に襲い掛かってきた。

 

「げぇ、二重トラップかよ!?」

 

あからさまに崩落しやすいフィールドを目の前に提示し、地下1階と地下2階で緩い動きでも反応してきた、同じ色のピラミッド型やボール型との戦闘で思考に刷り込ませる。そうする事によって知らず知らずの内に、ペッパーは『此のフロアは早く走り抜けないと崩落する』という可能性に、思考を誘導させられていた(・・・・・・・)

 

そして彼は歯車型の起動条件に『一定速度以上で移動する存在の検知』が在ったのだと、此の一連の中で製作者側が仕掛けた『ミスディレクション』なのだと気付く事となる。

 

「此のフロア作った奴、絶対ミスディレクション系のマジック好きだろ!嗚呼もう、マジでやられた!!」

 

頭上や後方を狙うように、歯車型がペッパーを狙って来た。人間の視界は頭部の構造上、首を回さなくては後方を確認出来ないようになっている。

 

俗に言う『死角』と呼ばれる其れを補う為、人の耳は左右の真ん中に陣取るように、感知した『音』をダイレクトに脳へ伝えられるよう、数千年の何百世代に渡る命のバトンを重ねながら、最適化するように『進化』したともされている。

 

だが、ペッパーは現時点で頭を回して振り向く必要は無い。何故ならば。

 

「ペッパーはん!後ろ側の見えない部分は、ワイとビィラック姉さんで補うのさ!」

「ワリャは真っ直ぐに、其のまま採掘ポイントまで移動するけぇ!そして茶々っと駆動鉱石を掘り出すんじゃ!」

「はいっ!」

 

万が一に備え、両肩に乗せたビィラックとアイトゥイルが、死角を補う観測者になってくれる。中央に在る盛り土まで移動し、アイトゥイルとビィラックが歯車型の注目(ヘイト)を集めるべく、今にも崩壊が起きそうな床の上で戦闘を開始。

 

一方で注目を集めた2人の働きに応えるべく、マッドネスブレイカーで採掘ポイントたる盛り土を叩くペッパー。しかし其れが、其れこそが。此のフロアに秘められていた『最大のギミック』だった。

 

採掘ポイントたる円状のフィールド、其の『真下』。フィールドを一心に支えていた、一本の『支柱』が━━━━━衝撃により『ピンポイントで崩れた』。まるで一昔前に流行っていたプッチンプリンのような、綺麗で重力に従うような落下で。

 

「へ…?!嘘、だろッ!?」

 

更なるミスディレクションの攻撃に、ペッパーは反応が完全に遅れた。だが、よくよく考えれば『こうなる可能性』は大いに考えられた。

 

あからさまな崩壊手前のフロア、ダメージを受けている床、此方の移動速度で反応する敵、そして中央に置かれた採掘ポイント。

 

触らぬ採掘ポイントにギミックなし━━━そんな格言がペッパーの脳裏を過った。

 

「ペッパーはん!」

「ペッパー!」

 

アイトゥイルとビィラックが走り出し、此方へ手を伸ばしてくる。だが、兎達の其の行動を見た歯車達は何を思ったのか、はたまたシステムが定めた挙動なのか。

 

彼女達がペッパーの異変に気付いた瞬間に、死角を狙うようにして背中を押して、彼の方に飛ばしてきたのである。

 

「な、んじゃ…と!?」

「やられた…さ!!!」

「アイトゥイル!ビィラックさん!」

 

飛ばされる彼女達に、ペッパーは目一杯に腕を、指先を伸ばして腕を握り取り、胸元に引き寄せて包み込むように守る。

 

大円状のフィールドが採掘ポイントを抱えたまま、ペッパーと2羽の兎を乗せて落ちていく。地下4階を抜け、地下5階にまで落ちようとした直後━━━━『何かに乗っかり』滑走して。

 

風を切り裂き、無数のカーブを描いた其の果てに、一同が辿り着いたのは、地下に行く程に荒れ果てた遺跡の特徴を真っ向から否定するかの様な、此の空間で一際綺麗に整備された隠し扉の前であったのだった。

 

 

 






胡椒と黒兎達は、神秘なる場所に辿り着く

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