VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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第五階層へ




死の権化に捧ぐ鎮魂歌(レクイエム)

「『晴天流には複数の奥義が有る』…………かぁ。コレ僕からしても、爆弾情報なんだよねぇ。ペッパー御兄様」

 

晴天流(せいてんりゅう)(かみなり)奥義(おうぎ)成神(なるかみ)」の事を一通り説明しながら、第五階層を目指すペッパー達一行の一人である京極(キョウアルティメット)が呟いた。

 

其れもユニークモンスターの一体、墓守のウェザエモンを討伐した事で手にした報酬の一つ、天の絶技が記された半透明の超未来的キューブ状のアイテム『晴天流奥義書(せいてんりゅうおうぎしょ)』を見せながら…………である。

 

「此れは神代の設備で習得可能って有るから、多分ベヒーモスの何処かで中身を解放して習得出来る筈だ。そうすれば…………」

「因みに京ティメットさんや、其の神代製の設備は無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)にも在ったぞ」

「えっ、そうなの?」

「マジで」

 

つまり京極は現時点で習得出来る筈だった要素を、ずっと見逃し続けていたという事なのだろう。ぐぬぬ………顔で悔しさを滲ませていれば第五階層の扉を発見、流れるままに開けば其処に在るのは『某国民的バトル漫画』で見た様な、或いはオセロの如き正方形のタイルが羅列しているフィールド。

 

周りには研究所で有りがちな難しい機械達が羅列するという、第三及び第四階層の自然じみた空間とは様変わりした場所で。ペッパー達一行の前に象牙(ゾウゲ)が出現し、此の階層でプレイヤー達が成す事を説明し始めた。

 

『此処は第五階層………。我が子達よ、次に貴方達には『死神』を倒して貰います』

「死神、ですか?」

 

サイガ-0の問いに象牙は『えぇ』と述べると、同時に機械が一斉に稼働を開始、盤上型のフィールドに『血肉の腐敗臭と戦火の熱風』がプレイヤーの鼻に襲い掛かり、嫌悪感と吐き気を逆撫でする。

 

同時にフィールドの中心地に黒い靄が集まり顕れるは、ドス黒い瘴気をドレスというか『喪服』の様に纏って顔を黒いヴェールで隠す、生気を一切感じない『アンデッド』が一体。其の細い指を、手を翳して虚空から握り締めるは、『赤黒く変色した巨大な鎌』で。一体幾つの生命を奪い取れば、此処までに成るのかと言わんばかりの物。

 

何より、ペッパー・サンラク・ペンシルゴン・サイガ-0は此の死神を『知っている』……………何なら此の死神を相手に、秋津茜(・・・)が十を越える死を経験したのを見ていたからこそ、其のモンスター…………『黒死の天霊(トゥルー·クワイエット)』に対する()()()を知っているのだ。

 

『アレは死の蓄積によって現れる、人智の死神です。我が子達よ…………人より出でたモノを、人の手で越えられますか?』

「サンラク、さん………!アレって………」

「ですね、レイ氏。皆、回復ポーションを用意だ」

「え、何で回復ポーション?」

「あの死神………確か『黒死の天霊』だっけか。出現時点で『体力がマイナス状態』だから、体力を回復………つまり『体力をプラスしてマイナスからゼロに戻す』と倒せるって事だよ」

「はぇー………そうなりゃ、早速やりますか」

「あ、因みにあの死神の影掴みは滅茶苦茶速いから、常に影の位置に気を付けた方が良いよ〜」

「アイトゥイル、ヒトミさん。ポーションを渡しますので、あの死神に投げ付けて下さい。あと常に影に気を付けて、其れじゃ…………!」

「全員回復ポーションを有りっ丈ブッ放せ!!!!!」

 

アイトゥイル・エムル・ヒトミに回復ポーションを渡し、象牙が試練として呼び出したのか解らない、黒死の天霊に向けてポーションを雪合戦にて相手チームにぶつける様に、薬品液体入の硝子瓶を投擲しまくった結果、黒死の天霊はいとも簡単に倒せてしまい。

 

消えていく黒死の天霊に対し、ペッパーは「黒死の天霊よ。死を撒き散らし、生きとし生きる数多の生命を狩り取る天霊よ。また会えたなら、今度は一対一で戦おう」と述べた所で消滅、同時に戦いに関わったプレイヤーの手元にドロップアイテムが出現する。

 

「『黒死(こくし)怨涙(おんるい)』…………素材だね、コレ」

「私も黒死の怨涙だよ」

「僕も涙だった」

「えっと、私は『黒天無塵鎌(ノーブルー·サイスレント)』………大きな、鎌………ですね」

「黒死の怨涙じゃねーか、乱数の女神ィイイイ!!!」

 

ハズレ枠な気配漂う涙を引いたオイカッツォ・ペンシルゴン・京極は溜息を、サンラクは乱数の女神に対して責任転嫁という雄叫びを上げ、サイガ-0はおそらく一番のレア物である血塗られた大鎌をゲットし。

 

そしてペッパーが手にしたのは『掌サイズの黒いクリスタル』であり、名前を『黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト・イン・パーケ)』なるアイテムであるらしい。こういう時はうだうだ悩むより、フレーバーテキスト諸々含めてチェックするに限る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト・イン・パーケ)

 

 

 

黒死の天霊(トゥルー·クワイエット)の概念が物質化した事で生み出された「喪」を「服」する黒気。

 

[特殊裁定(システムウィンドウから確認可能)]

 

此の装備は現在装備中の頭・胴・腕・腰・脚の、其々の装備の耐久値を全て消費する事で、女性のみが装備可能となる。其の場合の装備のステータスは耐久度を除く、消費した時点での装備のパラメータと同値となる。

 

[特殊裁定(システムウィンドウから確認可能)]

 

この装備は耐久度を持たず、通常の破損状態にならない。この装備は装備者が死亡判定が決定した際に解除され、再度の死亡判定を受ける事で再装備が可能となる。この装備を装備している間、装備者は常にデスペナルティと同様のステータスダウンを受ける。

 

装備者が関与する即死判定に対し、大幅なボーナスが付与される。

 

装備者は回復アイテムを使用出来なくなり、装備者がモンスター・NPC・プレイヤーを打倒した際に、一定量の体力及びMPを回復する。

 

装備者がモンスター・NPC・プレイヤーを打倒した際に、此の装備のステータスに強化補正が付与される。

 

 

 

嘗て一人の黒騎士がいた。嘗て騎士を愛する一人の女がいた。黒騎士は女が待つ小さな家へと帰る為に死ぬ訳には行かず、故にこそ常勝無敗の将軍として名を馳せた。だがある日、戦場へ赴いた彼は帰る事は無かった。

 

女は待って、待って、待って………全てを悟り、狂った。黒騎士は彼が仕える王と、其の娘によって謀殺されたという真実を知ったから。彼女は喪服を纏い、黒騎士が残した一本の剣を手に取り……殺戮の道へ堕ちた。

 

隣人を殺し、親兄弟を殺し、何時しか彼女の喪服は血を吸ってなお黒く昏くなり。皮を裂き、肉を断ち、骨と臓物を砕いた刃は何時しか鎌の形へと変貌し。

 

そして女の足跡は惨たらしく惨殺された国王親娘と、亡び去った王国を最後に消える。其れから今に至るまで、死の蔓延した場所に現れる死の化身を伝える伝承が存在する。其れは死を撒き散らす者にこそ死を与え、何かを探すように彷徨い最後には消える。

 

黒死の天霊に性別があるのか否かを知る術はない、だが奇跡的に黒死より生き延びた者が最後に言い遺した言葉は「あれは嘆きだ」であった──────と。

 

 

 

 

 

 

 

 

フレーバーテキスト含めて説明文がグランシャリオ並に長い、そして色々と前提条件から厄介な匂いしかしてこない。

 

要するに此れは女性限定の装備中であり、現時点で装備中の防具全てを破壊する事で新たな防具とし、虐殺行動(スローター)を行う程に能力値がプラスされていく………そんな所だろう。

 

だが虐殺行動を行えばカルマ値が高まるらしく、其れが溜まり過ぎれば面倒な事にしかならない気配がする。使えるかどうかは別として、使い所が有るなら其れを探すのもまた、ゲーマーとしての努めだ。

 

「まぁ、何にせよだ。おぅ、象牙。此の五階層もあっさり突破してやったぜ?」

『えぇ、サンラク。そして私は今、私の中で一番の『歓喜』の感情を抱いています』

 

そう言ってドヤ顔を噛ますサンラクに対し、象牙はニッコリと笑って言った。

 

『黒死の天霊は『一号人類種』より発生したイレギュラーであり、同時に人類としての『型』を持ったまま『マナに近しい存在』となった興味深い観察対象でした。しかしながら其の性質は、ありとあらゆる『戦う者』達にとって天敵に等しいものであり………。しかしながら、貴方達は『完封』に等しい成果を示しました。貴方達は死の顕現すらをも踏み越えている…………其の足取りは、私にとって至上の喜びなのです』

 

彼女の言葉の意味をよくよく考えれば、此れは自分が産み出した開拓者が自分の育てたモンスターと戦い、勝利する事を至上の喜びとしている可能性が高い。愛着や愛情を持ち合わせているが、其れは其れとして戦わせてみたいし、見事踏破出来たならば嬉しいという事だろう。

 

「要するに俺達は、彼女に育成されてるって訳だ」

「成程な………お前の事が少し解った気がするぜ、象牙」

『嬉しい事を言ってくれますね。ペッパー・天津気(アマツキ)、サンラク。其れでは愛しき我が子達よ、第六階層へと転送しましょう』

 

そうして象牙が指パッチンをすると同時に、一行は次なる階層…………折り返しとなる第六階層へと案内された。

 

 

 

 

 






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