VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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特殊クエストのキーアイテム




空を夢見る願い、其れ即ち翼の歌

「あいっててて……尻を思いっきり打ったわ……」

 

ヒリヒリと感じる尻餅の痛みを感じながら、ペッパーは自分の体力を確認する。最大HPである15が6まで減ってこそいたが、重体…では無いにしても生きてはいた。寧ろ尻餅で死んでいたら、其れは其れとして笑えない話になるのだが。

 

「ビィラックさん、アイトゥイル、大丈夫?」

「わちは何とかな…」

「ワイも大丈夫さ…」

 

抱き抱えたビィラックとアイトゥイルの安否を確認すると、2人とも無事であり一安心するペッパー。円状のフィールドは何処かに突っかえているのか、此れ以上は先に進む事も無く止まったまま。

 

そして目の前には此の遺跡では一際異質な、綺麗に整備された扉が立ち、周りの間取り的に考えても隠し部屋であるように、ペッパーには見えた。

 

「何じゃけぇ、此処は……」

「今までの所と違う感じが匂うのさ…」

「だな…。しかし、どうやって帰れば良いのか解らん…」

 

脱出の為の方法は後で考える事にしたペッパーは、念の為にポーションによる回復と周辺確認を行う。周りには敵の気配は無く、ペッパーはマッドネスブレイカーを取り出して、採掘ポイントを掘り始め。出てきたのは、黒鋼色の鉱石の中に小さな歯車の様な紋様を残す鉱石だった。

 

 

 

駆動鉱石(ギアメタル):神代の鐵遺跡に住むサプレスドローンが寿命を迎え、組まれたシステムに従って一ヵ所に積み重なる事で産まれた物。

 

遺跡のドローンにとっての其れは、同胞達の亡骸であり。遺された者にとっては、其処で確かに存在した同胞達の残示である。

 

 

鉱石の説明文からして、開拓者が完全に墓荒らし認定を食らっている事を理解するには十分で。例えリュカオーンの呪い(マーキング)であろうが、組まれたシステムが闘争を選択させていたのだと気付く。

 

「………すいません。同胞の亡骸をいただきます」

 

ペッパーは合掌と一礼を行い、マッドネスブレイカーを湖沼(こしょう)小鎚(こづち)に切り替え、円状フィールドの採掘ポイントを1つも残らぬように、全て採掘し終えてみせた。

 

「おーい、ペッパー。此方に来ちょくれや」

「ペッパーはーん」

 

と、ビィラックが自分の事を呼んできて、ペッパーは湖沼の小鎚をアイテムインベントリに仕舞って、彼女達の元へと向かう。

 

「どうしました?」

「此の扉じゃけ。さっきから押せども引けども、どうにも開く気配がせんのじゃ」

「一層の事、此の扉を壊して入っても良いのさねと、ビィラック姉さんが言い出してな?ペッパーはんの意見を聴きたいのさ」

 

一同の目の前には、頑丈なロックが施されているであろう扉。仮に神代の技術が用いられているならば、攻撃した瞬間にサプレスドローンが物量で押し寄せたり、強烈な電流が流れたりと、迎撃用のシステムが生きている可能性が高い。

 

「こういうタイプの扉って、案外『認証システム』が鍵になったりする事有るんだが、まぁそうはならんでしょ……」

 

試しにペッパーは旅人のマントを捲り、リュカオーンの呪い(マーキング)が刻まれた右手と、首に巻き付いた致命魂(ヴォーパル魂)首輪(くびわ)を見上げるようにして、扉に見せる。

 

「……うん、まぁそうなるよね。こりゃ別のエリ『……認証:識別コード『リュカオーン』、『ヴァイスアッシュ』…………。及び証たる『マーキング』並びに『首輪』を………確認。━━━ロックを解除します』…………あっるぇ?」

 

ハズレだと思った行動が、まさかの大当たり(クリティカル)だった事に、ペッパーはすっとんきょうな声が洩れる。

 

そんな彼を置いてきぼりにするかのように、扉は重い金属音を立てながら、ゆっくりと開いて。アイトゥイルとビィラックは興味津々の様子で入って行き、ペッパーもまた黒兎達に遅れる形で、部屋の中に入ったのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重く堅く閉ざされていた扉が開ききり、ペッパーとアイトゥイル、そしてビィラックの視界に映るのは、埃を被る『小さな研究施設』だった。

 

『現代社会』のオフィスに似た机やディスクチェア、横には溶接機材を含めたロボットアームと作業エリアが区分された空間であり、机には分厚いファイルが幾つか積み重なって置かれている。

 

其の部屋の一角には、成人男性が一人余裕で入れそうな『大きな金属製の箱』……形状的に見れば『タイムカプセル』に似た物が鎮座し、中身は外からも確認出来ないようになっていた。

 

「何じゃ、一体コレは……」

「随分とごちゃごちゃしてるのさ…」

「こりゃまた、とんでもない所に来ちゃったよ」

 

神代の鐵遺跡…もしかして昔は『研究所』だったりしたのか?システムが組み込まれたサプレスドローン達、下層部に行く程に荒廃した異質さ。

 

疑問と考察が浮かぶものの、謎が謎ばかりを呼び続けており、何処かで区切らないと永遠に終わらない蟻地獄に突入すると感じたペッパーは、一旦思考を真っさらにして散策を行う。

 

「ん?」

 

辺りを見回しながら散策していたビィラックが、何かに気付く。ノイズが走りながらも青い僅かな光を透写し、空間に描かれている其れには『レディアントシリーズ』なるSFアーマーが表示されている。

 

「ペッパー、こりゃ何じゃけ?」

「何ですか、ビィラックさん………レディアントシリーズ?何でしょうかコレは」

「考古学者のわちにも、解らん代物じゃ…。じゃが此の青い光は『ほろーぐらふぃっく』なる、立体物を創るとか言う、昔の技術らしいのはオヤジから話を聴いたけぇ」

 

ペッパーはビィラックの発言から、此れはホログラフィック技術であると察する。解らないのは此の『レディアントシリーズ』なる存在で、舞台背景が中世時代の世界観であるのに、何をトチ狂ったか近代的スーツというミスマッチ。

 

此れも、神代の時代で造られた物なのだろうか?そう思っていた時だった。

 

「ペッパーはん、ペッパーはん!此方来てさね!」

 

アイトゥイルの声が聞こえて、彼女の元へと走り寄ったペッパーとビィラック。どうやら彼女は、開かずの大箱の丁度横に置かれていた透写機に触ったらしく、其れが起動ボタンに触れたのか、映像が再生されたようだ。

 

開始して暫くの間、ノイズと砂荒らしが起きていたのだが、漸く画面が正常となって落ち着き、鮮明となり其処に映し出されたのは、暗い部屋の中で女性が1人、椅子に座りながら話をしている場面だった。

 

現代風の科学白衣に、腰まで伸びたオレンジのボサボサツンツン長髪、黒の縦ニットセーターと赤のミニスカート、黒タイツを身に付けた彼女は足を組んで、独白の様に画面に向かって話をしている。

 

『今此の瞬間…此れを見ているのが、誰なのかは解らないけれど。……此処を訪れたという事は、私が産み出した『答え』を受け取りに来たのでしょうね』

 

ヴァイスアッシュが語った『蒼天に夢を抱いた人間』。おそらく彼女こそ、世界に其の答えの示した存在である事が解る。

 

『残念だけれど……私が産み出した物は『(アーマー)』・『機構(ギア)』・『(エンジン)』の3つに分割して、別々の場所に封じたわ。此処にあるのは、其の答えの内の『器』に当たる物よ』

 

彼女は首を縦に振ったが、ペッパーにとっては寧ろ有り難い情報だった。千紫万紅の樹海窟の奥地にてティラネードギラファ&カイゼリオンコーカサスが何世代にも渡り、今尚守護し続けている『魂』。

 

そして此処に存在する『器』、残り1つの『機構』を探し当てれば、全て揃うことになる。

 

『私の答えは3つ全て揃う事で、始めて其の力を『取り戻せる』。けれど、其れ等を全て揃えたとしても『神の御業を持つ者』以外で、其の翼を『甦らせる事』は叶わないわ』

 

予想通り、3つ全てを揃える事で空を飛ぶ力は手に入るようだ。しかし問題も有り、神の御業を持つ者にしか直せないと言う台詞から、其の条件を充たす者を探し当てて、修繕を依頼しなくてはならず、其れまで空は飛べないらしい。

 

『最後に1つ……私が遺した願いが、心正しき者に紡がれる事を切に願う。唯々自由に、純粋に蒼空を夢見た私の願いが、其の者の手に託される事を……』

 

そうして遺された映像メッセージは途切れ。其の直後、一同の真横に在ったタイムカプセルらしき箱のロックが解除。白く冷たい煙が足元に流れ込み、床一面を雲海の様に埋め尽くしていく。

 

煙が晴れて箱の中に在ったものは、ビィラックが見せたホログラフィックの映像と同じ形状をした、蒼空をイメージするスカイブルーに、霹靂のような稲妻を模した金色の雷マークが刻まれた、昔に大ヒットを記録したSF映画の主役が開発した、メカニカルスーツ一式に似て非なる姿形をしていた物。

 

此のスーツは見るからにとんでもない逸品だと、本能的に感じたペッパーは、畏れながらもスーツの内容をチェックする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レディアントシリーズ(ユニーク遺機装(レガシーウェポン)):神代の時代に、ある科学者と鍛冶師により産み出された、人が蒼空を舞う為の(よろい)籠脚(ガントレッグ)。其の中の1つでも身に纏えば、人は短時間という制約の下でも、天を飛翔する事を可能にした。

 

其れを産み出した者の、穢れ無き蒼天に夢を抱いた願いは、願いを紡ぐに相応しき者が全てを纏う時に紡がれ、装備者は天を駆ける翼を授かるであろう。

 

(しか)して此れは、答えの『(うつわ)』であり、分かたれた『機構(きこう)』と『(たましい)』を揃える事無くして、目覚める事は叶わず。

 

 

 

頭装備(あたまそうび):レディアント・ヘルメイト【EMPTY】

胴装備(どうそうび):レディアント・アーセナル【EMPTY】

腰装備(こしそうび):レディアント・オルサーグ【EMPTY】

脚装備(あしそうび):レディアント・クラリオン【EMPTY】

籠脚(ガントレッグ):レディアント・ソルレイア【EMPTY】

 

 

 

 

 

 

 

(遺機装(レガシーウェポン)って何?全部装備したら自由に空飛べるってどうゆうことなの?そのまんま?そのまんまの意味として受け取って良いのかコレ??

 

というか、まだ序盤の序盤なのに何かとんでもない防具一式安置されてるってマジなの?大丈夫?俺以外で呪い受けた別のプレイヤーが、此処にやって来て中身持ってったりする可能性無かったの??)

 

神代の鐵遺跡の地下3階から落ち、滑走した円状のフィールドに乗って辿り着いた扉。

 

其れが開かれた先に在った部屋でペッパーが見付けたのは、見たこともない防具と自分がビィラックに頼んで創った筈の籠脚という、カテゴリーの武器であり。

 

しかし、此れこそが特殊クエスト:【颶風を其の身に、嵐を纏いて】に置いて、ヴァイスアッシュが言っていた『人が空を飛ぶ為の答え』であり。同時に分かたれた3つの要素の内の1つたる『器』であったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勇者は神代よりの願いを託された』

『称号【夢を紡ぐ者】を獲得しました』

『特殊クエスト:【颶風を其の身に、嵐を纏いて】が進行しました』

 

 

 

 

 






斯くして先人より、夢と願いの翼は託された


レディアントシリーズ:【ユニーククエスト:インパクト・オブ・ザ・ワールド】の第三段階【颶風を其の身に、嵐を纏いて】に置いて、鍵を握る神代時代の遺機装(レガシーウェポン)であり、防具と籠脚からなる一式装備。

全身に纏う事によって蒼空を自由に飛翔する事が出来るが、其の力を狙った者との争いによって、唯一(たった1つ)を遺して全てを破壊し、遺った其れを3つの機能に分かたれたとされる遺物。

ヴァイスアッシュ曰く『世界に示した答えで、人が空を自由に翔べる様になった物』であるらしい。

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