VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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混乱収束から始めよう





神代の天才、または重度のドルオタ

アンドリュー・ジッタードールと名乗ったホログラフィックの男と、ペッパー・天津気含むアイトゥイル・ノワ・ヒトミの異種族混合の一団の対面は、ペッパーと共に居るリュカオーンの分け身とペッパーの真名開示という、ダブルビッグパンチによる先制奪取によって開幕し。

 

半信半疑なアンドリューに対してペッパーは、自身が名前を継承した証として悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)を一式纏って見せた事、其処に至る経緯と世界に遺る程の強い想いを宿したセツナ・天津気の事。

 

そして彼女の墓を守り続けて、死に損ない(アンデッド)と化したウェザエモンとの死闘を真実を絡めた吟遊詩人の如く語り、最期にバンガードはグランシャリオの素材と成って共に在る事を伝え切った時には、時刻は午前四時に近付いていた。

 

『そう、か………。君はウェザエモン・天津気将軍から其の名前と鎧と魂を……。彼に『未来』を託された……………という訳か。象牙(ゾウゲ)、此処ベヒーモスはお前の腹の中だ、居るんだろう?』

 

そう言ったアンドリューに応える様に、何処からとも無く象牙が現れた。

 

『三千年振りですね、アンドリュー。おはようございます、良い目覚めになりましたか?』

『無論。宇宙創生の大爆発を目覚まし時計代わりに叩き付けられた気分さ。して、ペッパー・天津気。話の続きを』

「はい…………。最後はセツナさんの霊魂と出逢い、一緒に天に昇って逝きました。俺一人では決して彼は止められない程に、仲間達の協力無しでは決して勝てない程、ウェザエモン・天津気さんは凄まじい武人と、そう断言出来ます」

『彼の武勇伝は、彼の纏う鎧(・・・・・)を共同開発したセツナから聞いている。破天荒な人だと言っていたが…………君も嵐の様な生を送っている様だね』

「え?そうなのですか?」

 

ウェザエモンの鎧………即ちパワードスーツ製作に関わったというアンドリュー・ジッタードール。そう考えれば彼もまた神代の天才達の一人であり、世界の明日と未来を繋ぐ為に其の人生を捧げた人物であるらしい。

 

尤もペッパーは彼のラボの中に在る()を見た事で、彼に対する評価は現在『乱高下』を繰り返しまくっている状態なのだが。

 

『コホン………。さて、改めて自己紹介をしようか。私の名はアンドリュー・ジッタードール……正確には『アンサーコード・トーカー Type アンドリュー・ジッタードール』………なのだがね』

「要するに『人格や思考を搭載したアンドリューさんのAI』、という訳でしょうか?」

『其の通りだ、ペッパー・天津気。そして………カルネ型103号か』

「訂正:私はカルネ=103では無い、カルネ=ヒトミだ」

 

そんな中、アンドリューの視線はヒトミの方へと向く。対するヒトミは真っ直ぐに見つめ、己を産み出した父親に自身で決めた名を伝えれば、アンドリューも目を丸くする。

 

(1)(0)(3)、か。成程、とても良い名前だ。其処に立ち、強さを含む雰囲気と視線………素晴しくも嘆かわしい。カルネ・アーヴェンハールの美貌が103体存在する事は、世界の充実しているに等しい………が其の全てが無事という訳では無い筈。ヒトミ、現在稼働しているカルネ型は幾つ在る?』

「解答:カルネ型は此れ迄180機生産され、当機()を含めて現時点で75機が現存している」

 

アンドリューの質問に事実を含めて答えるヒトミだったが、此処でペッパー達一同は彼の本性(・・)を目の当たりにする事となった。

 

『105機も!?嗚呼、何という事だッ!!単純計算で世界が106回も絶望を迎えているッッッ!!!』

 

あ、此れはアレだ。アンドリュー・ジッタードールは、重度の『ドルオタ』だと。其れも唯のドルオタでは無い………頭のネジが外れている、所謂『オカシイタイプの天才』なのだとペッパーは確信した。

 

しかし何故百五の損壊に対して、百六の絶望と言った事。カルネ型が『カルネ・アーヴェンハール』を模した存在とするなら、大元となった彼女の死を含めた分を加算したと言う事かと、ペッパーは納得し。そして本題たる征服人形とカルネ・アーヴェンハールの事を、アンドリュー・ジッタードールから聞き出しに掛る。

 

「アンドリューさん、俺は貴方に聞きたい事が有って来ました」

『うむ、答えよう。其れが私、アンサーコード・トーカーとしての役目だからね』

「ありがとうございます。では…………『征服人形(コンキスタ・ドール)』と『カルネ・アーヴェンハール』の事を教えて欲しいです」

『良いだろう、ペッパー・天津気。だが先ずは、征服人形を語る上で『シュテルンブルーム』について、説明しなければなるまい。当然『基礎知識の履修』は済ませているだろうね?』

 

あ、ガチなタイプでやって来た。初手からアイドルグループ………かは解らないが、おそらく其れについて問い掛けたのは間違い無い。

 

「御恥ずかしいながら………。自分はシュテルンブルームに関する知識は、唯の一つも有していないんです」

「フムフム………つまり今の君は『何者でも無い』、と言う訳か。いや結構結構、人間『ほんの些細な興味』から始まる物。興味を持ち、踏み込む事は大事な事だ」

 

アンドリューの言い分は解らなくも無いのだ。其の小さな興味から始まって、色々な事を知っていき、軈てはトッププレイヤーとまで成ったゲーマーの話が在ったのを、雑誌で読んだのを記憶している。

 

「そうですね………其れが『キッカケ』になって、天才と呼ばれるまでに至った偉人も居ますから」

『其の通りだ、ペッパー・天津気。実の所、私もそうだったからね。後でシュテルンブルームのコンサート動画を貸し出そう』

「ありがとうございます、時間を見付けて観させて頂きます」

 

事実を絡めたロールプレイを展開して行けば、アンドリューは満足気に頷いて。そして本題たる征服人形の事について話し始めた。

 

『征服人形とは私、アンドリュー・ジッタードールが開発した『三号計画(・・・・)』の主題たる、至高の創造物なのだ』

「三号計画?」

 

一号人類種が『繁殖と繁栄を持って此の世界に根付き』、歴史を創り出す事。

 

二号人類種が『開拓と踏破を成す事で此の世界を拓き』、歴史を先へ進める事。

 

ならば三号計画とは一体何なのか?だが、アンドリューの口から繰り出された『答え』は、ペッパー達の予想を遥かに超えた物であったのだ。

 

 

 

 

 

 

『三号計画とは征服人形という『文化的不死性質』を持つ()()()を、一号及び二号計画人類種と並行して定着。そして『シュテルンブルーム』を未来永劫に渡り、此の世界の『()()()()』として後世に遺す。そんな偉大なる計画なのである』

「貴方は何を言っているんだ」

 

思わずツッコミを入れてしまった。やっぱり此の人頭オカシイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(要するに何だ?アンドリュー・ジッタードールは征服人形を…………いや『シュテルンブルーム』を此の世界に遺したかったのか?)

 

アンドリュー・ジッタードールの大いなる計画を聞かされた事で困惑するペッパー、難し過ぎる話は興味無しとばかりに酒を飲み始めたアイトゥイル。そもそも何を言っているのか解らないが故に丸まったノワと、宇宙猫みたいな状態に成っているヒトミという、此れまた『カオス』な空間が広がっていた。

 

こんな時に秋津茜(アキツアカネ)が入れば、超意訳して理解り易くなるのだが、無い物ねだりしても仕方無しと割り切ったペッパーは、己の思うままに言葉を乗せて問い掛ける。

 

「要するに、だ…………アンドリューさんは征服人形を、いやシュテルンブルームを後世の世に遺したかった………と?」

『其の通りだ、ペッパー・天津気。ベヒーモスに『Q.E.D.』が搭載され、二号計画を稼働させる事が決定した其の時点で、母体が苦難を乗り越え、子宮で子を育て産み落とす事。ゼロから成体の肉体を構築・コピー&ペーストの人生(バックボーン)を脳に焼き付ける時点で、年月による教育の二つの『絶対性』は消失した。ならば二号人類と三号人類の違いは、其の肉体を構築する物質が『()()()()か』。其れだけの違いでしか無いのだ』

「た、確かに…………」

 

ベヒーモスは同じ肉体・同じ性格の人類を狂い無く、完全に量産出来る都合上、アンドリューの言葉は完璧に()が通ってしまっている。

 

同じゲームと同じ環境に置かれたゲーマーでさえ、主義思想によって様々な形へ進化する、其れを踏まえて考えれば確かに二号人類と征服人形の違いは、臓器の有無か何かくらいにしかならないだろう。

 

『故に三号計画なのだ……。至高の文化たるシュテルンブルームを、後世に伝える為の偶像(アイドル)であり!自ら思考し、人に寄り添い、そして歌って踊る!此の寂しい星に賑わいと彩りを齎す救世主(アイドル)!其れこそが!!私の研究の全て!!!』

「な、成程………」

 

つまりは『シュテルンブルーム』の、嘗て存在していた『アイドルグループという文化』を、此の世界から消さない事…………『断絶させない事』こそが、アンドリューが征服人形を産み出したという理由なのだろうか?

 

そう考えれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()説明が付く。寧ろ此の人的に見て征服人形は、断じて『使い捨ての存在』等と微塵も考えていない節が在るのでは無かろうか?

 

そしてアンドリューが立つ、其の後ろには。

 

 

 

 

 

七つの最強種に関係する、神代の大いなる遺産が納められた鋼鐵の箱(タイムカプセル)が一つ、静かに鎮座していたのである。

 

 

 

 






知って欲しいからと、男は叫ぶ


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