クライマックス
『一号計画及び二号計画……即ち『バトンタッチ』が実行される事となり、リヴァイアサンとベヒーモス………二機のバハムートは一時的に歴史の舞台から其の身を隠す事になった。其れが何を招くか解るか、ペッパー・
未だ続く、アンドリューの人格や思考を搭載したAIこと『アンサーコード・トーカー Type アンドリュー・ジッタードール』の話。
問い掛けたのは『リヴァイアサン』と『ベヒーモス』………即ち星の海を渡りて神代の人類と共に旅をした、巨大宇宙船が隠れた事で起きた『影響』に対する質問だった。
「ベヒーモスの内部に存在する数多の資料に、三号計画の内容。其れを踏まえるとシュテルンブルームを始めとした、神代の文化が『断裂』する………でしょうか?」
『素晴らしい、其の通りだペッパー・天津気!通信の断絶した『ジズ』を除けば、ベヒーモスとリヴァイアサンには嘗て人類が捨てた母なる星から、星の海を旅して此の星に辿り着くまでの歴史!そして文化の全てが記録されている!!其れ等が『歴史の影に隠された』ならばッ!新たな人類は『文化』をッ!シュテルンブルームを知らぬままに『歴史を作る』事になるではないかッッッ!?!』
シュテルンブルームという、嘗て存在したアイドルグループを
「ゲーム含めてコンテンツが死ぬ時って、人から『忘れられる』事ですからね………。其れは凄く解ります」
レトロゲームでもそうだが、人気絶頂の中で開発側の不手際や続編の大失敗で打ち切り等々が原因により、ゲーム業界から姿を消す事も『あるある』なのだ。
数多くのレトロゲームと出逢い、ナンバリングもプレイして、次回作に期待していた所で会社が倒産…………悲しい別れを経験したからこそ、アンドリューの気持ちが理解出来ない訳では無い。
『……………認めよう。確かにシュテルンブルームは、もう既に過去の存在だ。私が彼女達の輝きを知った時には、既にメンバー全員が天寿を全うしていたからな。……後八十年早く生まれていれば…………。如何に科学を極めたとて、時間の不可逆性に人類が手をかける事は出来なかった』
「つまり『タイムマシン』を作る事は出来なかった………という訳ですか」
仮にタイムマシンを作って『何を』するのかは別として、アンドリューは其の言葉に頷いて。しかしながら『だがっ!!』と力強く拳を握り締め、堂々たる宣言を。死して今尚失われぬ情熱と、己を突き動かす動機を高らかに叫ぶ。
『
要するに『シュテルンブルームを永遠に愛され推されるコンテンツにする』、というのが『三号計画の最終到達目標』と見て良いのだろう。
『
「疑問:征服人形の基礎プロトコルは『
と、此のタイミングで征服人形のヒトミが、征服人形の産みの親たるアンドリューに質問を投げ掛けた。
『三号計画は凍結されたからね』
「
『仮にも
「成程」
(……………ん?『ジーク』?)
ペッパーの記憶の琴線にアンドリューの台詞が触れる。浮かんだのは『七つの最強種』が一角、金色の偉大なる龍王『天覇のジークヴルム』。彼の言ったジーク・リンドヴルムと何か関係が有るとしたなら、其れは此の先の戦いで優位に成り得る可能性が高い。
だが其れに関しては後でも良い、今はヒトミに関係するイベントだ。集中を切らすな、時間は午前四時半だが此処は耐えろ、眠気に負けるなと己の心にて自らを叱咤する。
『とはいえ、だ…………。シュテルンブルームを永劫の存在とする為なら、私は『多少の妥協』は受け入れる。そうして凍結した三号計画を多少改良し、認めさせた
「うーん…………アンドリューさん、其の案は具体的に『どう』変えたのですか?」
一度は否決された計画を可決に覆したという事は、サブプランも綿密に練っていたという事だろうと思い、聞いてみたペッパーに対してアンドリューはこう答えた。
『何も?』
「………………へ?」
『元からあった『未完成』を、さも改善点のようにピックアップし、同時に報告書を見目良く書き換えただけだ。要するに『人間』と表記したのが、他の者からして気に食わなかったんだろう。ならばと、当時の私はこう考えた!『最早シュテルンブルームは、人間という枠組みすら超越した存在なのだ』…………とね!!!』
「えぇ…………」
シュテルンブルームのファンを通り越して、神格化しているアンドリュー。此れをペンシルゴン含めた外道衆が見たら、一体何を思うのだろうか。
「質問:征服人形に元から存在する『未完成』とは?」
『無論教える。其の『未完成』はシュテルンブルームのファンたる私では無く、
新たなる人がバハムートに辿り着く事が、神代の天才達によって定められた目標であると言うのならば、
『おめでとう、カルネ=
───────Nパッチ、インストール……………完了。
「…………………」
『…………………』
『…………………』
「…………………あれ?何も起きて無くない?」
『いいや、既にインストールは完了している。Nパッチが導入された事で、ヒトミの感情に掛けられていた『感情の
「感情上限?」
『そうだ。
まるで巣立ちの雛から距離を取る親鳥の様に、最後の
『君は主観的な感情に、知性を忘れる事になるだろう。愚かな選択をして、後悔する事になるだろう。或いはより強く浮き彫りとなった、死の恐怖に怯えるかもしれない。だが同時に君は、主観的な感情による喜びを得るだろう。非合理の先に、新たな境地を見るかもしれない。或いはより強く浮き彫りとなった、生の実感を楽しむ事が出来る』
喜怒哀楽。人間の感情を理解り易くした四字熟語であり、其れを感じられ、思考の範疇に置けるからこそ、人は人として生きていられるのだと。
『征服人形は設計段階から『賢く』生きていける………万が一にも全滅しないよう『合理的な判断』を下せるよう設計した。他にも二号計画との合流に、蒐集計画における規定や戦術。ある程度の幅が在る二号計画と異なり、征服人形は生産された瞬間から一流の
「………あれ?」
ペッパーの脳内に過った予感。其れは自分がやらかした事に対する物。アンドリューの話から察するに、本来ならば『長期的に征服人形と人類が接触し、長い時間を掛けての交流を交わした後にやるべきイベントなのでは?』と。
何せ征服人形と
だが始まってしまったイベントは止まらない、フラグは成立すると逆行する以外に対処法は存在しない、破壊不可能のオブジェクトと化す。其れがグッドエンドだろうが、バッドエンドだろうが、或いはトゥルーエンドだろうが。
アンドリュー視点ではアイドルとして戦って来たヒトミの、新たな旅立ちを見送る一人の父親の様であった。
「感情:其れは非合理な選択だ」
『だが其の
「理屈だけでは収まらない物………って奴ですね」
非合理こそが人生。アンドリューの為になる言葉を聞いて、ペッパーも静かに頷いた。そして…………
「アンドリューさん。俺からの質問なんですが、新たに『二つ程』追加されまして。彼処に置かれている『箱』と、アンドリューさんが語った『ジーク・リンドヴルム』という人物について、教えて欲しいです」
と、そう質問を投げ掛けたのである。
渡されたモノ