VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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アイデアを閃く時、人は己の進化を知る


棚ぼたのアイデアを打開策に変えて

「スキルとポイント色々手に入ったなぁ、さてコレをどう調理しようか」

 

『特殊クエスト:岩砕きの秘策』で現れた小鎚持ちのヴォーパルバニーを倒して、ファステイアに戻るペッパーは其の道中、自身に加わった新しいスキルとレベルアップで得たポイントを見て、ほっこりしていた。

 

最初にポイントを振った時は、採掘効率を上げる為にスタミナと筋力に5づつ分けて効率化を高めたが、今回は巌喰らいの蚯蚓へのリベンジを踏まえ、当初のキャラビルドに沿った振り方をしなくてはならない。

 

「攻撃が当たらなければ体力が減る事はないから、現状HPにはポイントを入れなくて大丈夫。あのムカデミミズ、デカい図体で結構速く動いていたし、ポイントは敏捷多めに技量を少し振っておくことにしよう。

 

アイツに挑む以上、スキルの把握と理解にレベリングも含めた準備は念入りにしておかなくちゃ」

 

現状のポイントの振り方を決め、次に手を付けるべきはスキル。手に入れた手札(スキル)が巌喰らいの蚯蚓に有効か、其れを調べなくてはならない。

 

「ただ、此処はモンスターも出現するエリア。闇雲にスキルを使ってクールタイムで襲われて、ガメオベラでリスポーン……なんてのは避けたい」

 

一先ずはファステイアに帰り、依頼となっている致命の小鎚(ヴォーパル.レッジ)を武器屋の店主に見せることを優先する為、ペッパーは森を駆けていく。

 

やるべき事は未だ沢山残っている。

 

 

 

 

 

「おっちゃん、帰ったよー」

 

ファステイア到着後、ペッパーは其の足で武器屋へと直行し、アイテムインベントリから取り出した致命の小鎚をカウンターに乗せて言った。

 

「おぉ、帰ったか…ってコイツは…!」

 

致命の小鎚を見た店主は、目を見開いて手に取るや、振ったり質感を調べ始める。

 

「おっちゃんが示した地図の場所に、小鎚を持ったヴォーパルバニーが居て、倒したら入手出来たよ。ヴォーパルバニーって全員此のハンマー持ってるの?」

 

「いや…普通のヴォーパルバニーは『包丁』を持ってるんだよ。だが『小鎚』を持っていた……。つまりは、奴等の中にも包丁でブッ刺す従来の連中と、此の小鎚でブッ叩く新しい連中の二極化が起きてるってこった……!」

 

独自の考えを話す其の目は真剣で、邪魔はしたら失礼だと、ペッパーは「そうなのか」とだけ言い、成り行きを見守る。数分後、店主は静かに致命の小鎚をカウンターに置き、ペッパーに礼を述べた。

 

「ありがとうよ、あんちゃん。中々御目に掛かれねぇヴォーパルバニーの武器を見せてくれてよ」

 

致命の小鎚を、名残惜しそうに見ていた店主。一先ず目的は果たしたペッパーだったが、此処で有ることを閃く。

 

「あ、あの!もし宜しければ、其の小鎚と白鉄の短刀の耐久値を、回復させることって出来ませんか?いざ戦闘になった時に、万全を期したいので!」

 

ペッパーがこう述べた理由の1つに、先程の戦闘で耐久が減った白鉄の短刀と、既に3割程度の耐久値を失っている致命の小鎚を、巌喰らいの蚯蚓に挑む為に全快状態にしておきたいと思ったのである。

 

無論、店主が致命の小鎚を名残惜しそうに見ていたので、もう少しだけ見ていても良いかな?という、そんな配慮も有ったのだが。

 

「お、おぉ…そりゃ別に構わねぇが、良いのか?」

 

「はい。実は此方も、新しく覚えたスキルを試したりしたいので。よろしくお願いします」

 

「……よし、分かった。コイツはキッチリ面倒みてやるから、安心して自分の事をやってきな、あんちゃん!」

 

鍛冶師の店主に武器を預け、ペッパーは自身のスキルを確かめるべく、再びファステイアを立ち、ビギナーズエリアへと向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ビギナーズエリア、到着っと……」

 

ファステイアから走り出し、ビギナーズエリアへとやって来たペッパーは、辺りにモンスターが居ないか警戒しつつ、先ず始めに自分が覚えたスキルと其の能力を確認する。

 

「レベルアップで覚えたスキルは……『フラッシュカウンター』に『ブームスロー』、『スポットエッジ』、其れから『ステップワーク』とな」

 

1つ目のフラッシュカウンターというのは、パリィからのカウンターに補正が入るスキル。パリィとは敵の攻撃を『弾く』行為であり、受・即・反撃の行動に役立つだろう。

 

次にブームスロー、此方は武器やアイテムの投擲に補正が乗るスキルで、使用者の筋力(STR)器用(DEX)の数値が高い程、より正確に狙った位置へ物を投げられる。

 

3つ目はスポットエッジで、敵の頭部・目玉・核への攻撃にダメージ補正が乗るという物。詰まるところ、コレは弱点に駄目押しを叩き込む技と見て良い。

 

最後にステップワーク、サイドステップやバックステップで消費するスタミナを減らすというスキルで、敏捷とスタミナが秀でたプレイヤーが用いれば、かなり強力だ。

 

「正面を避けて横に回り込むステップワークと、ステップワークのリキャスト中に使えるフラッシュカウンター、スラッシュで牽制して敵の観察。

 

ブームスローは相手を動かす為に使い、其の隙にスポットエッジや刺突で頭部を攻撃……が、基本的な戦術になるか」

 

普通のモンスターならば、今のスキルを組み合わせて充分に戦闘は可能だ。しかし、ペッパーにとって其の戦法ではヤツを倒せないと踏んでいる。

 

「ただ………ガロックワームの硬い表皮に、斬撃武器では余り期待は出来ない。となると、打撃系統の武器もしくはスキルが必須だ。

 

武器屋のおっちゃんが直してくれてる致命の小鎚━━あの武器が、俺のムカデミミズの切札といっても過言じゃない」

 

前の戦いで、投擲に使い破壊されたゴブリンの手斧はもう無い。つまり、此のエリアでのレベリングで如何にゴブリンを討伐し、手斧を何本入手出来るかによって巌喰らいの蚯蚓に与えられるダメージが決まってしまっている状態にあると言っても等しいのだ。

 

「あ~…やっぱり『打撃武器』が致命の小鎚1つだけってのは、かなり危険なんだよなぁ~…。耐久限界で破壊された場合、武器の『替え』が効かないのが本当に痛い……。

 

せめて、あのムカデミミズの身体に付いた岩を『剥がせ』られ…れば……?」

 

直後、頭に電撃が迸る。突如降りてきた天啓に似た其れが、彼の思考と此迄に得た巌喰らいの蚯蚓に関する情報と重なり、新しいアイデアが完成しようとしている。

 

 

――――鉱脈に化けて採掘者を喰っちまう化物ミミズさ

 

――――巌喰らいの蚯蚓は漁りに喰らった鉱物を身に纏う

 

 

「…………はははっ、『有った』わ。ガロックワームの攻略法━━━!」

 

とんでもない事を思い付いた結果、獰猛にして真っ黒い笑みを浮かべるペッパー。何しろ彼は『打撃武器』という認識で巌喰らいの蚯蚓を攻略しようとしていた。

 

しかし此の方法ならば、新しい武器を調達する必要も無く、予備を揃えれば十分な上に、最適な場所で練習し放題の一石二鳥。寧ろ今の今まで、何故其れを思い浮かばなかったのかと自分を殴ってやりたい気持ちになる。

 

「はぁ~!よっし、早速レベリング開始だ!一番経験値が旨いヴォーパルバニーを捜すぞー!」

 

巌喰らいの蚯蚓への攻略法を確立し、ペッパーは戦いに備えてレベリングを開始する。

 

ファステイア近辺の森エリアにはゴブリンにオーク、アルミラージ、稀に出現するヴォーパルバニーと遭遇しては、スキルの使用感を確かめながら戦闘し、己を鍛え続けていく。

 

そうして1時間程のレベリングを終えた辺りで、討伐したモンスターのドロップアイテムをインベントリに入れた時、彼の身体は少し動きが鈍くなったのを感じた。

 

「んぉ…?!何か動きづらい…!」

 

まるで冬場でもないのに、登山用厚着を何重にも重ね着したような其れに、ペッパーは難儀する。このままモンスターと戦う事になれば、鈍重な身体ではフットワークに影響が必至だ。

 

因みにペッパーのメイン職業(ジョブ):バックパッカーのアイテムインベントリは、初期状態で他の職業のおよそ2倍近くの容量を誇り、現在の彼と同じだけのアイテムを所持したプレイヤーは、まともに動くことさえ出来ない状態になる。

 

「もしかして…アイテム持ち過ぎた!?」

 

急ぎインベントリを開くと、武器や素材でアイテム欄の殆どが埋め尽くされている。

 

探索家の子の恩恵によって探索したエリアでのドロップに補正が乗り、優秀な素材や希少な武器がドロップしたからと、調子に乗ってインベントリに仕舞いまくったペッパー。

 

其の答えが重量過剰による、あらゆるアクションの鈍化だった。

 

「…………うん。バックパッカーで探索家の子だからと、アイテムはホイホイ拾わないようにしよう……」

 

インベントリの中身を見ながら、泣く泣く一部のアイテムを破棄して、アクションが行える状態への持ち直しに追われる事となる。

 

余談だが、整理中にインベントリの奥底に封印したゴブリンの目玉が、まるで『コンニチワ!』と言ってきてるように見えたペッパーは、再び何も見なかった事にしてインベントリの奥に再封印したそうだ………

 

 




攻略法は出来た、後は其れを証明せよ
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