VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

608 / 1074


カムバック、シャンフロ




鍛冶とは旧い時代から人が格上たる存在を倒す牙を創り出す為に磨いた技術である

久方振りに幕末の空気を吸い、暫しの休息という名の別ゲープレイから午後九時、梓はペッパーとしてシャンフロの地に数日振りに戻って来た。

 

「あ、ペッパーはん。目が覚めたのさ」

『ワン!』

「随分と眠っていたな、契約者(マスター)

「アイトゥイル、ノワ、ヒトミさん。良い夜ですね」

 

今回ログインした理由、其れは数日前にシャンフロの最高峰たるプレイヤー鍛冶師の『イムロン』によって、ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスの素材を用いて作ったという、二本の『ハンドメイドガン』が漸く完成したので時間を見付けたら取りに来て、との伝書鳥(メールバード)を貰ったからだ。

 

「そうそう、ペッパーはん。ビィ姉さんが『長いジューが直ったから、ワチの鍛冶場に取りに来るけぇ』って言ってたのさ」

補足(其れと):個体名サンラクとサイガ-0は、大鎌とツーハンデッドソードの関係に付いて調べる為に出立している」

「大鎌とツーハンデッドソードに付いて?」

 

ヒトミ曰く、ビィラックが反応したのは『黒死の天霊(トゥルー·クワイエット)のドロップアイテムにして武器の黒天無塵鎌(ノーブルー·サイスレント)』、及び『喪失骸将(ジェネラル·デュラハン)のドロップアイテムを元の姿に修繕した焔将軍(ほむらしょうぐん)斬首剣(ざんしゅけん)』という二つの武器だったらしい。

 

思い返せばベヒーモスの第五階層にて象牙(ゾウゲ)が呼び出し、回復ポーションを叩き付けまくって討伐した時に、サイガ-0が一人だけ鎌を引き当てていたのと、サンラク自身も何時だったかツーハンデッドソードを使っていたので、おそらく其の二つと職業:鍛冶師の最上位『名匠』以上のプレイヤーかNPCが居る事で、何かしらの『イベント』が発生するのだろう。

 

そしてビィラックの放った言葉を聞いた、アイトゥイルとヒトミの二人の発言を纏めた所──────

 

 

『此の鎌と剣には強い繋がりが在り、其の繋がりは決して生半可なモノでは無い。もしワリャ等が『此の先』の事を知りたいと望むなら、剣の持ち主である『喪失骸将』こそが何かの手がかりになる』

 

 

──────と、彼女は言ったのだとか。

 

 

「鎌と剣の持ち主に、強い繋がりが在る………かぁ。所謂『恋愛イベント』的な何かかな?」

「恋の話なのさね?」

『グルル〜』

「サイガ-0が随分と興味を示していたのは記憶している」

 

取り敢えずは頭の片隅に置きつつ、ペッパーはアイトゥイルの伝言通りにビィラックが居る鍛冶場に向かい始める。

 

「あ、ペッパーさん!こんばんわ!」

「御晩で御座るな」

「御久し振りです!」

「久方振りで御座るよ、ペッパー殿」

「皆、久し振り。ベヒーモスから出たのか?」

 

其の途中で秋津茜(アキツアカネ)・シークルゥ・レーザーカジキ・エストマと出逢ったペッパー達。

 

話を聞くと二人は他プレイヤーと協力して、昨日の時点でベヒーモス第八階層まで到達。秋津茜は『ニンジャ・アーツ疾風迅雷の巻』を、レーザーカジキは『マクセル・ドッジアーツ』のフラッシュメモリーで其々スキルを習得。

 

第九階層攻略に向けた回復アイテム等の購入に、一度ベヒーモスから外へと出てラビッツに戻ったのだという。

 

「ペッパーさんは此れからの予定は有りますか?」

「さっき『狙撃銃』が直ったって報告が入ったから、ビィラックさんの鍛冶場に行って受け取りに行くんだ」

「狙撃銃ですか!僕も同行させて貰っても良いでしょうか……?」

「実は私も、狙撃銃に興味が有ります!」

 

どうやら修復されたシャンフロの遺機装(レガシーウェポン)の一つ、別の世界(ゲーム)では超々距離から対象(ターゲット)を撃ち抜く事すら可能な狙撃銃に、二人は興味津々の御様子。特段困る事でも無いので、二人と二羽が加わった一同は意気揚々と、ビィラックの鍛冶場へと向かう。

 

「ビィラックさーん、狙撃銃が修繕したと報告を聞いたので来ましたよー」

「おぉ来たけぇ、ペッパー。ワリャが渡した長いジュー………此処に全て直し終えたけの」

 

鍛冶場に来るや、待っていたとばかりにビィラックが顔を出し、無骨な鍛冶場の床を狙撃銃達が彩っていく。其の狙撃銃達も大きく分けて『三種類』在り、玩具の造形でよく見掛けるポピュラーな形状の『ヴィキュラス』が十二本、銃口が四角で穴が空いている対戦車を想定した『グェン=サーシャ』が十本、対人に比重が置かれた『モンテ:ネルロ』が十一本の、合計『三十三本』となっていた。

 

「おぉ…………」

「……カッコイイ!」

「凄いですね!」

 

黒漆で塗られた鮮やかで触れた箇所に吸い付く様な、何処か『しっとり』とした感触が指先に伝わって来るのが解る。個人的には対戦車狙撃銃のグェン=サーシャの形状が、昔レトロサバイバルFPSで初期から御世話になったスナイパーライフルの其れと似ていたので、三つの中から一つだけ選べるならば此の狙撃銃にしたいなと、ペッパーが想いを馳せていた時だった。

 

「ペッパーよ、一つ良いか?」

 

声を掛けたビィラックが、真剣な眼差しで彼を見つめていて。レトロゲーマーとしての直感が、何か大事なイベントに繋がり得ると思った彼は、彼女と視線に合わせる様に身を屈めた所、彼女はこう言ってきたのである。

 

「昨日、オヤジに聞いたんじゃ。『此等を含めたジューってのは、ワチに作れるのか?』…………と。其れに対してオヤジは『バハムートでジューを作る為の、特別な許可………即ち()()()()()を所得すれば、ジューは()()()()創り出せる様になる』──────そう言っとったんじゃ」

「銃製作のライセンス!?そんなのが有るのか…………」

 

正直に言えば初耳だ。何せ土錆びた遺機装を直せるのは鍛冶師の中の最上位、隠し職業の一つである古匠にしか出来ない芸当であり、銃製作も同様では無いのかと考えていた所に、まさかの情報が転がり込んで来たと言って良い。

 

「頼む、ワチをバハムートの…………ベヒーモスに在ると云う、ジューを創る為のライセンス所得を手伝ってくれんか?もし其れが叶ったなら、ワチは古匠として更なる高みに行ける気がするんじゃ…………!」

 

己の利き手を握り締めたビィラックの言葉をトリガーとしてか、此の場に居るペッパー・秋津茜・レーザーカジキの三人の前に、一つの画面が表示されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユニークシナリオ【銃を識りて、銃を紐解く(ガンズノウ&ガンズアライバル)】を開始しますか?【Yes】or【No】』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラン:旅狼(ヴォルフガング)が所持する数多の手札の中でも、開示すれば文字通り絶大な破壊力を発揮する鬼札(ジョーカー)の一つ『古匠』。

 

現状ヴァイスアッシュを除いて唯一、其の領域に立ったビィラックを隠しながらバハムートに赴くという、今までのシャンフロのユニークシナリオの中でも、過去最大最上級難易度を誇る『護衛シナリオ』の火蓋が切って落とされたのである。

 

 

 

 






新たなるユニークシナリオ(旅狼的超々高難易度)


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。