ビィラックの護衛任務
シャンフロのユニークシナリオやユニーククエストは何の脈絡も無く、突発的に発生する場合が多い。そして其のフラグもまたノーヒント状態で見付け出し、世界観を考察して答えを導かねばならない為、僅かなアンチは其の部分を叩く場合が殆どである。
「ど、どうしましょう………」
「…………取り敢えず、ペンシルゴン達に要相談するのは確定としてだ。ビィラックさん、ベヒーモスには直ぐに向かいますか?」
「出立のタイミングはそっちに任せるけぇ」
「強制イベント………という感じでは無いんですね」
「其処はシャンフロのシステム側から、俺達プレイヤーに対する
ビィラックのユニークシナリオである以上に、古匠としての育成イベントと言って差し支えない其れは、おそらく発生条件に『職業:古匠を持つNPCが一定数以上の銃の遺機装を修繕している事』が、可能性として存在している。そして見事にシナリオをクリアすれば、其の古匠持ちのNPCは銃を創れる様になる……………そんな『流れ』なのだろう。
問題なのは、
(……………其れに関しては解決策は有るには有るが、此れをペンシルゴン達がどう受け止めるか何だよな……………)
先々の事に不安を覚えつつも、ペッパーはEメールを用いてサンラク・オイカッツォ・ペンシルゴン達に、古匠持ちのNPCの現状を報告。
数分後にサンラクは『目処が着きそうだからレイ氏とラビッツに戻るわ』、オイカッツォは『ユニークユニークユニークユニークユニークユニークry』と続き、ペンシルゴンは『先行投資と考えるなら悪くないかな』と有ったが、全員の見解は『やっちゃえペッパー』と一致した物であった。
「秋津茜、レーザーカジキ。俺は今から少し出掛けて来る。出来るだけ早く戻るから、ラビッツで待機していてくれ」
「はい!」
「解りました、気を付けて!」
万が一も有るので、インベントリア内に
新大陸・ティアプレーテン。
夜という時間に加え、此の地にまで到達出来た者も数えられる程度しか居ない中、ファストトラベルによってやって来たペッパーは、旧大陸の大都市・サードレマに匹敵するレベルの広さを持つ田舎町を歩き、元々は空き家で今はシャンフロ最高峰の鍛冶師プレイヤーの『イムロン』が滞在している、小さな一軒家へと足を運べば
「待ってたわ、ペッパーさん」
「御待たせしてすいません。伝書鳥を見ました、自分が渡した双皇甲虫の素材を使った『ハンドメイドガン』が完成したと」
「因みに掲示板にも載せたわ」
「えっ、そうなのですか?」
コクリと頷いたイムロンに対し、ペッパーは遠い目をしながらも自分はネームバリューが凄まじいから、何れ使っている武器やら防具やら含めてスクショ撮られて、何処かしらに掲載されるんだろうなと思いつつも、逐一目くじらを立てても仕方無いと気にしない事に決めた。
そんな事を思っていればイムロンがインベントリを操作・虚空より展開させたのは、『翡翠色と黄金色の二本のライフルの形状をした物体』が各色二本の計四本。
片やティラネードギラファの鋏に甲殻を加工しただろう『翡翠色の片刃の剣』に、片やカイゼリオンコーカサスの角と甲殻を用いた『黒黄金色の片刃の鞘』の様な物である。どうにも此れを見ていると、サンラクが持つ『
更に言えば双方共に、一般的な銃に必要不可欠な『
ティラネードギラファの片刃剣は、剣と銃の合体事故が起きた様な、其の見た目も剣の持ち手がグリップに差し替わった『
「此れこそッ!ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサス!双皇甲虫と謳われしモンスター達のドロップアイテムのフレーバーテキストを、此れでもかと読み込んで酒のテンションと共に頭を働かせェ!! そしてクラン対抗戦でサンラクさんが使った『水晶の対刃剣』と、ペッパーさんが持っている『
ロールプレイは何処に置き忘れたのか、自信満々に渾身のドヤ顔を決めたイムロンがフンス!と、鼻息を高らかに鳴らして胸を張る。
「因みに此の武器達の種類って?」
「どっちも『片手剣』で
イムロンの言葉からするに、此の二つの武器は『対刃剣』の様な存在で有りながら、其の実は『二刀流推奨の片手剣』にして、合体する事で武器種が『両手武器』に変更される…………と見て良いだろう。
そしてイムロンはペッパーに対し、こんな事を言ったのだ。
「其れとね、ペッパーさん。此の子達に『名前』を付けてあげて欲しいのと、此の子達を『宣伝』して欲しいんだ」
「名前を?というか何故に宣伝を?」
「そう。貴方が素材を持って来てくれたから、私は鍛冶師として『壁』を乗り越える事が出来た。だからこそ、此の武器達の『命名』を貴方にして貰いたい。そして鍛冶師プレイヤーでも、ハンドメイドガンは『製作可能』だと言う事を、高らかに他のプレイヤーに示して欲しいの」
何と言うか、ある種の『ユーザークエスト』を提示された気分になりつつも、ペッパーは二つの片手剣達を見た後にイムロンに「手に取っても良いですか?」と許可を願い出て、
武器種が片手剣なだけあって相応の重さが掌に感じるが、
イムロンの視線が呪い相殺の短剣に向けられたが、ペッパーは其れに対してスルーを決め。両手に翡翠と黒黄金の片手剣を握り、イムロンから少し離れてブンブンと武器を振るえば、武器に搭載された『ゲージ』が高まり始めた。
では其々の引き金を引いたら、此の武器達は一体どうなるのか?──────そんな当たり前の疑問を解決するべく、指先を引き金に乗せ、迷う事無く引けば蓄積されたゲージが目減りし。
翡翠の片手剣からは『空気を斬り裂く鎌鼬』が、黒黄金の片手剣からは『空気を貫く電撃を纏う刺突』が、其々の鋒から『撃ち出され』たかと思えば、家屋の壁に『斬撃痕と刺突痕』の二つの傷跡を遺したのである。
其れを見てペッパーは『攻撃行動をトリガーとしてゲージが増加、其のゲージを消費する事で其々に対応した属性を含む遠距離攻撃を撃ち出す』といった能力を、此の二つの武器は搭載しているのだと予測を立て。
呪い相殺のタイムリミットが迫る中、双方の剣のゲージをMAXまで溜めるべく振り抜く速度を高め続けながらに外へと出るや、翡翠の刀身を黒黄金の鞘に納めるが如く『合体』させた事で、イムロンが軽く説明した通り武器種が片手剣から『大剣』に変更。
二つのグリップを握り締め、夜空に銃口を向けて翡翠の片手剣の引き金を引けば、蓄積されたゲージが『二倍』の消費と共に風と雷の二属性が『回転しながら融合』し、まるで戦艦の『
「凄い、ですね…………」
「でしょ〜?何せ私特性の逸品だもの、当然と言えば当然よッ!」
フフン♪と、再びドヤ顔を噛ましたイムロン。武器の形状やギミック的な面と言い、どうしても『玩具感』が否めない事を除けば、シャンフロ最高峰の鍛冶師プレイヤーが作ったのだという確かな『事実』。
もう少しばかり性能を確かめたかったが、灼骨砕身の効果が切れて両手武器が装備不可能となった事を伝える、システムウィンドウが表示。両手武器を使える『アテ』は有るが二刀流が出来なくなったので、名残惜しくも詳しい性能調査は翌日以降に持ち越しとなった。
「で、ペッパーさん。武器の使い心地はどうだったかしら?」
「自分なりの感想にはなりますが…………合体する前の状態が元となった双皇甲虫達の其々の属性を搭載し、ゲージを溜める事で遠距離攻撃が可能になるのは汎用性が有って良いですね。合体する事で大剣に武器種が変更される事もさながら、リーチを自在に切り換える事で近・中・遠距離のオールレンジに対応している。合体形態の大剣・形状は両手銃にもなる為、狙える距離が倍増しているのも面白いと思います。一つだけ欠点を挙げるなら、同じく物同士でも合体出来る様になれば良かったかな?…………と、そう思います」
良い点は良いと言い切り、悪い点は改善箇所を含めて伝えれば、イムロンはフムフムと真剣な眼差しと共に、羊皮紙へメモを書き綴っていた。
シャンフロの鍛冶師と言えど、未だに名匠である
「イムロンさん、実は『とても重要な御報せ』をしようと思いまして。此れは貴女や他の鍛冶師プレイヤーにとって、必ずや『役立つ物』になると…………自分はそう確信しています」
そうしてペッパーは、イムロンに開示する。現状で鍛冶師の最上位職業と思われている『名匠』──────其の名匠から更なる高みへ、神代の技術を紐解く事によって新たなる遺機装を創り出せる様になる、隠し職業…………『古匠』の就職条件を。
伝える事