VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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鐵遺跡のエリアボスとの一戦へ




錆び朽ちる守護者(ルイン・キーパー)に、安らぎの鎮魂歌(レクイエム)

「改めて思うけど……遺機装(レガシーウェポン)とは何ぞや?」

 

ハイビートのデメリット解除とスタミナ回復を待つ間、ペッパーはアイテムインベントリに納めた、レディアントシリーズ一式に記載されるワードに首を傾げる。

 

此れが神代の時代に造られた物であり、そして蒼空を飛翔する願いが込められた物であるのは解る。だが此れはどうやって造られたのか、一体何を素材にしたのかまでは解らない。

 

「ビィラックさん、遺機装って何か解ります?」

「わち自身鍛冶師じゃけんど、ソイツ等ん事は全く解らんのじゃ」

 

名匠ビィラックですら解らない、異質な防具と武装達。何よりペッパーが疑問視していたのはレディアント・ソルレイアであり、此の武器のカテゴリーは『籠脚(ガントレッグ)』……以前ビィラックに製作を依頼して完成したが、現状練度規定値(レベルキャップ)未到達により、アイテムインベントリ内で置物と化している、甲皇帝戦脚(エクスパイド・ウォーレッグ)と同じ武器種。

 

現状ファステイアやセカンディル、フォスフォシエの武器屋のカテゴリーにも無かったので、おそらく第三段階クリアで正式にシャンフロ各地で解放される武器カテゴリーであると思われる。

 

「じゃが…遺機装(コイツ)の扱い方は、オヤジなら解るかもしれん」

「先生が?」

「あぁ。オヤジはラビッツの頭をエードワードの兄貴に継がせて一線を退く前までは、ばりっばりの鍛冶師じゃったけ。わちはオヤジから鍛冶師としての『いろは』を叩き込まれたからの」

 

ペッパーはヴァイスアッシュがラビッツの国王かと思っていたが、実際は隠居して自分の子供の中の長男らしいエードワードなるヴォーパルバニーが引き継いでいる事が解った。

 

時折彼が兎御殿に居ないのは、ある程度の(しがらみ)から解放されて、自由を謳歌出来るようになったのだろうかと、ペッパーは考え。

 

「お、ハイビートのデメリット解除完了。じゃあ御二人共、行きましょうか。エリアボス討伐に」

「はいさ~」

「うっし、打ちのめしちゃるけぇ」

 

全スキルの再使用時間並びにスキル:ハイビートのデメリット解除を皮切りとし、旅人のマントを再着。アイトゥイルとビィラックと共に、此の先で待っているエリアボス、ルイン・キーパーの御尊顔を拝みに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神代の鐵遺跡・地下5階……地上から地下を降り続けてきた開拓者が、外へと出るべく最後に辿り着く此の場所で、門番をしている全長5m程の人間に象られた機械人形が居る。

 

老朽と風化に晒されながらも原型を留め続け、苔が生えた装甲を各部に纏う、昔の映画であった天空の城で産み出されたロボットのような其れは、侵入者を生きて此処から出すまいと起動し、ペッパーと2羽の黒兎達の前に立ち塞がった。

 

「コイツが鐵遺跡のエリアボス…!」

「違い無い、ルイン・キーパーじゃ…!」

「随分古ぅゴーレムさ…!」

 

見るからにスクラップ寸前なのだが、初動でペッパーを狙い繰り出してきた右腕の振り下ろしで、其の浅はかな考えを修正する。

 

「うおっ!?コイツ、思った以上に機敏に動ける!」

「腐ってもエリアボスじゃ!ペッパー、決して油断するなよ!」

 

回避を挟んで聞こえたビィラックの忠告に、ペッパーは「はいっ!」と答え、アイテムインベントリから彼女が耐久値を回復してくれた、マッドネスブレイカーを左手に装備して、ルイン・キーパーと向き合う。

 

「ロボットやゴーレムタイプの敵との戦いは、先ず機動力を削ぐ事に有る…!俺とアイトゥイルで隙を作るので、ビィラックさんはルイン・キーパーの膝関節を狙って下さい!」

「任されたさ、ペッパーはん!」

「分かった、気ぃ付けんよ!」

 

巨大ロボット系を倒すには幾つか手段がある。機動力となる脚部を壊すか、核が在る胸部を壊すか、全機能を処理する頭部を壊すか。

 

ペッパーが選んだのは『脚部の破壊』━━━頭部は高い場所に在る為に避けられる可能性が高く、胸部は劣化と風化しているルイン・キーパーの中では『比較的』進行が遅い為、破壊には苦労すると踏んだからである。

 

「こっちさね~」

「此方も居るぞ!」

 

膝関節攻撃の鍵となるビィラックから注目(ヘイト)を逸らすべく、ペッパーとアイトゥイルはルイン・キーパーの動きを制限するよう、機動力を駆使した立ち回りで誘導を掛けに行く。

 

と、ルイン・キーパーの頭部がいきなり180度回転、ステップで後ろに移動していたビィラックの方へと視線が移る。

 

「な、なんじゃと!?」

「うっそだろオイ!?」

「そげん事出来るのさ!?」

 

人形のゴーレムで有りながら、まさかのギミックを搭載していた事に、一向は三者三様の驚き方をした。そして驚いている間にも、ルイン・キーパーは巨体の駆動を止める事をせず、右足を動かして右腕による裏拳をビィラック目掛けて叩き込まんとする。

 

「させっっっ……かよぉ!!!」

 

其の声と共に動いたのはペッパーで、スキル:アクセルによる敏捷と筋力上昇を加え、マッドネスブレイカーのダメージ補正上昇能力、打撃系スキルたるハイプレスに、更にはバルガストライクを掛け合わせたフルスイングを、ルイン・キーパーの足首目掛けてブチ当てる。

 

「足首を…挫きやがれぇぇぇ!!!」

 

此の機械人形が『人体を模した物』であるならば、全身の重量を支えるのは『2本の脚』だ。其の内の1本が崩れるだけでも人は容易く転ぶ、其れが軸足であれば尚の事。

 

だが、ルイン・キーパーは裏拳を即座にキャンセルし、右腕を折り曲げ、肘を挟む形で転倒を防いで、直ぐに体勢を立て直しに掛かる。やはりエリアボス、そう易々とは沈んでくれないようだ。

 

「ペッパー、今のお陰で隙が作れた。感謝するぞ」

 

そんな折、ビィラックの声が聞こえて。彼女がルイン・キーパーの左脇腹に肉薄する。

 

「食らいなぁ、ルイン・キーパー!」

 

ビィラックのスキル:マテリアルフォーカスが発動。命中精度の向上が行われ、同時に王鬼の戦鎚(スレッジ・オーガ)が、赤い業火を纏いて燃え上がる。放つは城塞を打ち砕く戦鎚の一撃。

 

「フォートレスブレイカー!!!」

 

ルイン・キーパーの脇腹を渾身の一撃が直撃、勢いそのままに立て直された体勢が再び崩れ、地面に押し倒される。其の衝撃たるや凄まじき一言で、遺跡の地面にはクレーターが出来上がり、朽ち錆びの機械人形の胸部装甲が爆ぜて、核となるコアが白日の元に晒された。

 

R18Gのゲームなら、先ず間違いなく胴体の内臓はミンチとなって消し飛び、胸より上と腰より下だけが残った凄惨な死体が出来上がるだろう。

 

「今じゃ!いけ、ペッパー!アイトゥイル!」

「はいさ、ビィラック姉さん!」

「分かりました!」

 

嵐薙刀・虎吼が無双閃刃による刃の刺突連擊が、マッドネスブレイカーのダイナモインパクトが。各々ルイン・キーパーの胸部に納められた核を無数に穿ち、心臓破壊の一振は剛擊と成って機械人形の核を砕く。

 

ルイン・キーパーを構成したポリゴンは崩壊し、ペッパーの目の前には『苔生(こけな)した装甲板(そうこうばん)』がドロップする。

 

「ルイン・キーパー。何千年も此の遺跡の門番として、相違無い実力だった。機転の効かし方、転倒防止の行動……得られる物は多かったぞ」

 

ドロップアイテムを拾い上げ、消えたルイン・キーパーに述べ、彼は駆け寄るビィラックとアイトゥイルにハイタッチをした。

 

日が傾き、夜の帳が世界の空を満たす頃、神代の鐵遺跡の地下より脱出したペッパー達一向は、目の前に拓かれた山に等しい、相応の高度を誇りし大きな丘を、月が昇り始める辺りに漸く踏破。

 

シャンフロ第6の街であると共に大陸では一番の農業によって栄え、片や天にまで伸びる雲海に覆われた落下死が常に付き纏う道、片や足を滑らせば轟音と激流貫く大河に呑まれる道の、二つに一つを選ぶ場所『シクセンベルト』に到着する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同時刻……ファステイアでは新しいプレイヤーが、シャンフロの世界に降り立った。

 

「お~…すっげ、身体がスムーズに動くわ」

 

金髪のツインテールを揺らし、オレンジの虹彩が揺め煌めく、初心者装備一式に身を包んだ女子プレイヤーが顕現する。

 

しかし其の声は男性の其れであり、男子が女性プレイヤーでプレイする、所謂『ネカマ』に当たる物なのだが、ゲームのプレイスタイルは十人十色の千差万別━━━━気にしては負けなのだ。

 

「じゃ…見せて貰いますかね。文句無しの神ゲー(シャンフロ)の実力って奴を」

 

そう言った女性プレイヤー………『オイカッツォ』は、ファステイアに在る各施設でチュートリアルを受ける為、一人動き始める。

 

だがオイカッツォ……『魚臣(うおみ) (けい)』は気付かない。自分のメイキングしたアバターが、女性化した場合の自分をほぼ鏡写しにした様な状態である事に。

 

 

 

 






胡椒はシクセンベルトへ、プロゲーマーはファステイアより動き出す


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