件を終えて
プレイヤー鍛冶師の最高峰、イムロンに名匠の先に存在する境地の一つたる古匠の就職条件を伝え終え、
「やぁやぁ、あーくん。イムロンちゃんとのオハナシは上手くいったかな?」
「上々だね。其れと前に言ってた『ハンドメイドガン』、完成したのを受け取って来た。名前は翡翠の方が『
インベントリアを操作し取り出せば、合体状態で大剣となっている物と其々分離した状態の二種類が、一同の前に提示される。
「もしかしてコイツ、俺の
「正解。イムロンさんは此れを作るに当たって、対抗戦で見たサンラクの勇魚兎月と俺が持っている
という訳で、とペッパーは合体状態をインベントリに。残っていた碧羅と金漆の二つを抱え、サンラクへ譲渡申請を飛ばした。
「良いのか?」
「此れを作れたのはサンラクの御陰でもある。遠慮せずに使って欲しいのと、碧羅と金漆に付いて聞かれたら『イムロンさんが作った』と宣伝して欲しいとの事」
「其れあからさまな『広告塔』じゃねーか…………」
「わかる」
其れは其れとして、病気や厄介事以外の貰える物は貰っておきたいのは、人間の一つの真理であるのは間違い無く。ペッパーからの譲渡申請を受諾した事で、所有権が移った碧羅と金漆の二本を手に取りつつ、危なく無い様に距離を取った所でサンラクが其れ等を振るい、投げたり回したりしながら感触を確かめた後にこう言った。
「うん、悪くは無いんだ悪くは。だが、うん………何と言うか…………『玩具感』が否めねぇ…………!」
「「「「「わかる(わかります)」」」」」
『ワンッ』
壮絶に玩具じみた部分さえ許容出来たなら、此の武器達は素晴らしい性能を誇っているのは間違い無い。そして話は本題、古匠持ちのビィラックがベヒーモスで銃製作のライセンスを取らんとし、自分達が協力するという事についてだが。
「まぁ、レイちゃんかサンラク君に『ファッション擬態』してくっ付いて貰って、ベヒーモスの第八階層にトラベルするのが一番でしょ」
「あとファステイアにランドマーク設定してるし、時間的にも深夜帯を主な活動時間にしているプレイヤーも来るだろうから、早めに行動しちゃおう」
善は急げとよく言う物で、さっさと行動してパパパッと終わらせた方が良いのは、一つの真理でも有る。ビィラックはサラシを解いてファーコート化からサイガ-0がマント代わりに纏い、ペッパー・アイトゥイル・ノワ・ヒトミが先んじてファステイアに行く事で自らを囮とする作戦を取る事になり。
エムルが開いたゲートを越えて、ペッパー達が先にファステイアへと向かったのである…………。
「あ、ペッパーさん!ベヒーモス攻略戦に行くんですか!?」
「ヒトミちゃんは居はるん!?」
「ノワちゃん!ノワちゃん!」
「アイトゥイルちゃんは何処ですの!?」
ネームバリューとは時々自身の足枷に成り得るとペッパーは非常に遠い目をしながら、周りに集って来たプレイヤー達に対して囮の役目を果たすべく、どうしようかと思考を巡らせる。
何せ初心者の人混みに紛れてライブラリや
(さて、どうやって時間を稼ぐか………)
「
「路上ライブ………えっ、マジで?」
「無論だ」
そんな時インベントリアから声が聞こえ、白いワンピース形状にブルーベルトサッシュが付いた『アイドル衣装』を纏ったヒトミが、神代製の腕輪の中から現れるや周りのプレイヤー、特にヒトミに対しての事を聞きに来たプレイヤー達はわぁっと湧き立ち、興奮の色に染まり。
同時にヒトミは周りに居る全てのプレイヤー達に聞こえる様に、力強く堂々たる声を持って宣言する。
「認証省略並びに自己判断にてプロセス開始。
何やら壮大な事が始まると予感したペッパーや、他のプレイヤー達は一斉に彼女が指定した空間から退避し。直後にヒトミの周囲の虚空から出現するは、音楽ライブで使用される
「ヒトミさん、此れって
「
「ロマンが有るなぁ……………」
「ペッパーさん、其の気持ち解ります!ロマンですよね!!」
男の子やロボ好きは特にそうだが、武装の一斉展開からの
其の上展開された機材の一つ一つも作り込みが凄まじく、一部のプレイヤーからは『開発陣にアイドルガチ勢かステージ構成のプロフェッショナル居るでしょ…………』と、ガチ目の関心の声が零れた程なのだ。
そしてスタンドマイクに指先を添え、ヒトミは力強く其の歌を歌い始める。
「──────遠き日に夢見た世界、絵本に綴られた雄々しき巨木
神世の地にて天を衝く、其の勇士の名はユグドラシル
強く大地に根を張り巡り、天をも目指して留まらない
気高く、揺らがず、逞しく
真っ直ぐに空を目指して、其の巨樹は上を向く
強く、強く、強く
大地を揺るがす戦禍の轟きに、砕けず倒れぬ強い意志
世界を支え育み育つ、雄々しき勇士此処に在り」
ヒトミの唇が紡いだ歌に、プレイヤー達は拍手と歓声を挙げさせた。ある者は感涙に咽び泣き、ある者は征服人形との契約を目指す事を新たに決意し、またある者はペッパーの事をアイドルプロデューサーと認識していく。
そして一機の征服人形は二番の歌詞を、更には最後の歌詞を歌い綴り、其の声は他のプレイヤー達を魅了していったのである……………。
始まりの街で、歌姫の歌声は響く
アンドリュー・ジッタードールのシュテルンブルーム解説
曲名『ユグドラシル』
作詞作曲:カルネ・アーヴェンハール
『カルネ・アーヴェンハールのデビュー曲にして、彼女が絵本で見たユグドラシルに憧れ、そして
彼女は元々アイドルとは無縁の人生を送っていたが、ある日にセイラン・鈴川の歌声に感銘を受けて、アイドルの世界に飛び込んだという。自身の佇まいや歌声からして数多在るシュテルンブルームの曲の中でも、知名度が高い曲の一つであり、特にレイカ・ホンゴーとのデュエットでは当時のライブ会場の観客全員を、黄色い歓声で染め上げた程だったのだとか。
一番の歌詞が其の神樹の壮大さを、二番の歌詞が其処に辿り着くまでの苦難を歌い。そして最後は神樹は枯れ、次なる生命に輪廻が繋がるとした歌は、まさに人の歴史を象徴するかの様に高らかな(以下略)』