VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

610 / 1075


件を終えて




レッツゴーで、コーラス奏でて

プレイヤー鍛冶師の最高峰、イムロンに名匠の先に存在する境地の一つたる古匠の就職条件を伝え終え、使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)を用いてラビッツへと帰還したペッパーを待っていたのは、ペンシルゴンを含めたラビッツのユニークシナリオ受注者全員だった。

 

「やぁやぁ、あーくん。イムロンちゃんとのオハナシは上手くいったかな?」

「上々だね。其れと前に言ってた『ハンドメイドガン』、完成したのを受け取って来た。名前は翡翠の方が『碧羅(ヘキラ)』で、黒黄金の方が『金漆(ゴンゼツ)』。因みに命名権を貰ったので俺が名前を付けたのと、ライフルみたいな見た目をしてるが武器種は『片手剣』、二刀流を推奨していて合体すると『大剣』になります」

 

インベントリアを操作し取り出せば、合体状態で大剣となっている物と其々分離した状態の二種類が、一同の前に提示される。

 

「もしかしてコイツ、俺の勇魚兎月(イサナトゲツ)を参考にしたっぽい?」

「正解。イムロンさんは此れを作るに当たって、対抗戦で見たサンラクの勇魚兎月と俺が持っている風神刀(ふうじんとう)碧千風(そうせんふう)】の特徴を洗い出し、自身の持ってる技術を総結集の果てに作り上げたんだってさ」

 

という訳で、とペッパーは合体状態をインベントリに。残っていた碧羅と金漆の二つを抱え、サンラクへ譲渡申請を飛ばした。

 

「良いのか?」

「此れを作れたのはサンラクの御陰でもある。遠慮せずに使って欲しいのと、碧羅と金漆に付いて聞かれたら『イムロンさんが作った』と宣伝して欲しいとの事」

「其れあからさまな『広告塔』じゃねーか…………」

「わかる」

 

其れは其れとして、病気や厄介事以外の貰える物は貰っておきたいのは、人間の一つの真理であるのは間違い無く。ペッパーからの譲渡申請を受諾した事で、所有権が移った碧羅と金漆の二本を手に取りつつ、危なく無い様に距離を取った所でサンラクが其れ等を振るい、投げたり回したりしながら感触を確かめた後にこう言った。

 

「うん、悪くは無いんだ悪くは。だが、うん………何と言うか…………『玩具感』が否めねぇ…………!」

「「「「「わかる(わかります)」」」」」

『ワンッ』

 

壮絶に玩具じみた部分さえ許容出来たなら、此の武器達は素晴らしい性能を誇っているのは間違い無い。そして話は本題、古匠持ちのビィラックがベヒーモスで銃製作のライセンスを取らんとし、自分達が協力するという事についてだが。

 

「まぁ、レイちゃんかサンラク君に『ファッション擬態』してくっ付いて貰って、ベヒーモスの第八階層にトラベルするのが一番でしょ」

「あとファステイアにランドマーク設定してるし、時間的にも深夜帯を主な活動時間にしているプレイヤーも来るだろうから、早めに行動しちゃおう」

 

善は急げとよく言う物で、さっさと行動してパパパッと終わらせた方が良いのは、一つの真理でも有る。ビィラックはサラシを解いてファーコート化からサイガ-0がマント代わりに纏い、ペッパー・アイトゥイル・ノワ・ヒトミが先んじてファステイアに行く事で自らを囮とする作戦を取る事になり。

 

エムルが開いたゲートを越えて、ペッパー達が先にファステイアへと向かったのである…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ペッパーさん!ベヒーモス攻略戦に行くんですか!?」

「ヒトミちゃんは居はるん!?」

「ノワちゃん!ノワちゃん!」

「アイトゥイルちゃんは何処ですの!?」

 

ネームバリューとは時々自身の足枷に成り得るとペッパーは非常に遠い目をしながら、周りに集って来たプレイヤー達に対して囮の役目を果たすべく、どうしようかと思考を巡らせる。

 

何せ初心者の人混みに紛れてライブラリや黒剣(シュバルツシルト)、ウェポニアにSF-Zooのプレイヤーがチラホラと散見され、既に面倒臭い雰囲気がプンプンと漂っているからだ。

 

(さて、どうやって時間を稼ぐか………)

契約者(マスター)、路上ライブでもやるか」

「路上ライブ………えっ、マジで?」

「無論だ」

 

そんな時インベントリアから声が聞こえ、白いワンピース形状にブルーベルトサッシュが付いた『アイドル衣装』を纏ったヒトミが、神代製の腕輪の中から現れるや周りのプレイヤー、特にヒトミに対しての事を聞きに来たプレイヤー達はわぁっと湧き立ち、興奮の色に染まり。

 

同時にヒトミは周りに居る全てのプレイヤー達に聞こえる様に、力強く堂々たる声を持って宣言する。

 

「認証省略並びに自己判断にてプロセス開始。

簡易格納機構(インスタント・インベントリ)展開(オープン)重奏支援拡声機(ハーモニクス・スピーカー)設置完了(セットアップ)自律浮遊照明(スポッティングドローン)起動(スタート)光子仮想有線(ノンイグジステントケーブル)誘導接続(エンゲージ)…………完了(コンプリート)。──────当機()カルネ=ヒトミを中心とし、半径1メートル空間を領域指定。偶像概念舞台(アイドライズステージ)形成(ビルドアップ)を行うので、巻き込まれたく無ければ速やかに下がる事を奨める」

 

何やら壮大な事が始まると予感したペッパーや、他のプレイヤー達は一斉に彼女が指定した空間から退避し。直後にヒトミの周囲の虚空から出現するは、音楽ライブで使用される拡声器(スピーカー)にスポットライト、更にはステージにスタンドマイクが構築された。

 

「ヒトミさん、此れって征服人形(コンキスタ・ドール)の機能ですか!?」

肯定(あぁ):此れは征服人形達が共通して持つ『基本機能』、他の征服人形によっては歌い方が若干異なる為に、使用する機材もまた変わる。エルマ型はマイクは無粋であり、リリエル型は手持ちのマイク、当機含むカルネ型や他の機体はスタンドマイクと拡声器だ」

「ロマンが有るなぁ……………」

「ペッパーさん、其の気持ち解ります!ロマンですよね!!」

 

男の子やロボ好きは特にそうだが、武装の一斉展開からの全門一斉射撃(フルバースト)に心が昂ぶる様に、身体の構造が出来ている生き物なのだ。其の点を含めても、征服人形達の生みの親たるアンドリュー・ジッタードールは『ロマン』が何たるかを深く、そして確りと理解出来ている。

 

其の上展開された機材の一つ一つも作り込みが凄まじく、一部のプレイヤーからは『開発陣にアイドルガチ勢かステージ構成のプロフェッショナル居るでしょ…………』と、ガチ目の関心の声が零れた程なのだ。

 

そしてスタンドマイクに指先を添え、ヒトミは力強く其の歌を歌い始める。

 

 

 

 

 

 

「──────遠き日に夢見た世界、絵本に綴られた雄々しき巨木

 

神世の地にて天を衝く、其の勇士の名はユグドラシル

 

強く大地に根を張り巡り、天をも目指して留まらない

 

気高く、揺らがず、逞しく

 

真っ直ぐに空を目指して、其の巨樹は上を向く

 

強く、強く、強く

 

大地を揺るがす戦禍の轟きに、砕けず倒れぬ強い意志

 

世界を支え育み育つ、雄々しき勇士此処に在り」

 

 

 

 

ヒトミの唇が紡いだ歌に、プレイヤー達は拍手と歓声を挙げさせた。ある者は感涙に咽び泣き、ある者は征服人形との契約を目指す事を新たに決意し、またある者はペッパーの事をアイドルプロデューサーと認識していく。

 

そして一機の征服人形は二番の歌詞を、更には最後の歌詞を歌い綴り、其の声は他のプレイヤー達を魅了していったのである……………。

 

 

 

 






始まりの街で、歌姫の歌声は響く





アンドリュー・ジッタードールのシュテルンブルーム解説


曲名『ユグドラシル』

作詞作曲:カルネ・アーヴェンハール

『カルネ・アーヴェンハールのデビュー曲にして、彼女が絵本で見たユグドラシルに憧れ、そして原点(オリジン)たる歌が此の歌だ。人は誰しもが自分にとっての原点が在る様に、彼女の歌の中でも「私はこんな存在に成りたい」「何時か誰かにとっての原点に成りたい」との気持ちが押し出された一曲である。
彼女は元々アイドルとは無縁の人生を送っていたが、ある日にセイラン・鈴川の歌声に感銘を受けて、アイドルの世界に飛び込んだという。自身の佇まいや歌声からして数多在るシュテルンブルームの曲の中でも、知名度が高い曲の一つであり、特にレイカ・ホンゴーとのデュエットでは当時のライブ会場の観客全員を、黄色い歓声で染め上げた程だったのだとか。
一番の歌詞が其の神樹の壮大さを、二番の歌詞が其処に辿り着くまでの苦難を歌い。そして最後は神樹は枯れ、次なる生命に輪廻が繋がるとした歌は、まさに人の歴史を象徴するかの様に高らかな(以下略)』



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。