攻略開始
ベヒーモス・第九階層。
第三階層と第四階層を複合して、一部に大樹やら岩肌が露出しているエリアたる此処は、前のエリア以上に環境が『整い過ぎている』空間であり。象牙の手によって産み出されたモンスター達が、当たり前の様に闊歩している状態に在った。
『此の階層のクリア条件は一時間以内に此の階層に生きるモンスターの中から、最も強いモンスターを探し出して討伐する事です、我が子達よ』
「質問、仮に一時間以内に倒せなかった場合は?」
『出直して来て下さい』
「わぁお直球」
要するに制限時間で討伐出来なければ、GAMEOVER不可避の状態に成ると見て間違い無い。周りを見渡せば飛んでいるモンスターやら、地面から這い出して来たモンスターが居たりするが、サンラクの刻傷に反応して近付くも、ペッパーの愛呪によって直ぐに逃げ去って行くという、随分と面白い光景が出来上がっていた。
「さて、どうする?」
「一時間以内に倒せる様に調整されてると考えるなら、まぁ温情とするなら温情では有るが…………」
「取り敢えずペッパーの周りに居れば、121以下のモンスターは寄ってこねぇし、秋津茜と俺がレベル99以下を弾ける。兎に角先ずは対象となるモンスターを探し出して、一発殴って確かめる」
「突っ付いたら解るだろうからねぇ」
サンラクとペンシルゴンが意見を述べる中、ペッパーは聖盾イーディスを構え。フィールドとモンスターの状況を踏まえて、視覚系と感覚系のスキルの一部を点火。強化された視力と共に俯瞰の視点から此の空間内に生きるモンスター達を見据える。
古今東西、
「あ、皆さん!何か彼処の大きな木の穴の所で、一瞬何か『光りました』よ?」
そんな中で秋津茜が声を上げたので、皆が其の方角に目を向けてペッパーは目に意識を集束しながらに、ズッ友コンビスキルたる
周りのモンスターが活発に動き回っているのに対し、其のモンスター…………見た目は『軽自動車級の大きさを持つガチョウ型のモンスター』であり、樹洞の中にてひっそりと静かに座っているのだ。其れも『随分と落ち着いた様子』で…………である。
「皆、秋津茜が言った先に金色のガチョウタイプのモンスターが居た。大きさは軽自動車クラスで、今は随分落ち着いているが何をしてくるかは、俺にも解らない。取り敢えず仕掛け鏃を使って、奴を
インベントリアを操作、聖盾イーディスとバトンタッチで取り出すは、
其の能力もシンプル──────弓による矢の射撃時に『プレイヤーの筋力を参照した飛距離と速度上昇』であり、加えて
次の瞬間には矢が刺さった事で起きた爆発が響き、穴の中で起きた煙を振り払いながら飛び出した一羽のガチョウが、プレイヤーとモンスター達の前に現れた。
「さて、奴さんは何……を──────ッ!?」
ポコン、ポコン、ポコン。ポコポコポコポコポコポコ…………!と、
ガチョウの尻穴…………正確には『産卵』に使われる穴を通り、次から次に駝鳥サイズの卵がマシンガンの一斉射レベルで生み出され。地面に落ちた瞬間に殻にヒビが走るや、中から『人間の赤ん坊サイズの雛鳥』が続々と孵り、ワラワラと物凄いスピードで増殖している。
「あーちゃん、どーするのアレ」
「うーん…………、取り敢えず『やらかした』ってのは間違い無いな」
「どんどん増えてるし、何か雛鳥が他のモンスターに襲い掛かって『つつき殺してる』し…………」
「ミツバチのスクラムだなアリャ」
「あ、ヒヨコ………さん達が此方に気付きました!」
「津波に、なって……来てません……か?!」
「全員退避ーーーー!!!」
ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨと増殖し、手当たり次第に他のモンスターを食い荒らす其れは、下手なゾンビゲーも真っ青な恐ろしさで。おそらくアレに啄み殺されたなら、先ず間違い無くトラウマを植え付けられるだろう。
「ちょっ、どんどん増えてない!?」
「此れ不味いね、あの本体たるガチョウを倒さないと手に負えなくなる………!」
「おい、象牙!アリャ何だ!?」
増え続ける雛鳥から足の襲いレーザーカジキを抱えて逃げつつ、サンラクが叫べば象牙が現れて。そして無限に卵を産み続けるガチョウの正体と、其の『恐るべき能力』を明かしたのだ。
『アレは『無尽臓マザー・グース』。此のベヒーモスで産み出された『失敗作』の一つであり、アレには
嗚呼さようなら、倫理観。
嗚呼こんにちは、地獄絵図。
そんな表現が過ったのは、果たして誰の脳裏なのか。
「アイトゥイル、ノワ、ヒトミさん!エムルさんにシークルゥさん、ビィラックさんはサイガ-0さんに秋津茜と協力して、卵を産み出しているガチョウを叩いて!!俺とサンラク、ペンシルゴンとレーザーカジキは雛鳥を殲滅しつつ、足止めをするッ!」
ペッパーの呼び掛けでメンバーがフォーメーションを切り替え、最大出力で此の雛鳥津波を大絶賛生産中のガチョウを叩きに走り出し。
ペンシルゴンは聖槍カレドヴルッフを、レーザーカジキは『赤・青・緑・茶の四色の球体が浮かんだ長杖』を、サンラクは
其れの名は『
「こんな状況でも、畏れる事無く戦おうか!」
そしてペッパーは何と無くだが、自身のゲーマーの琴線に『とあるワード』が触れていた。おそらく其れを言った所で、何かが劇的に変化する訳では無いのは解っている。
だが…………此れを『言わなければならない』という予感が有る。人間が食事を取る時に食前に『いただきます』を、食後に『ごちそうさまでした』を唱えるのと同じ位に大事な事だと、そんな確信が有って。
「……………『変身』!!」
其の言葉を叫んだ瞬間──────ペッパーが装備していた隔て刃シリーズ一式が、木っ端微塵に弾け跳んだ。
魔法の言葉を唱えて