VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

612 / 1075


攻略開始




ストロングセンスなモンスターハンター

ベヒーモス・第九階層。

 

第三階層と第四階層を複合して、一部に大樹やら岩肌が露出しているエリアたる此処は、前のエリア以上に環境が『整い過ぎている』空間であり。象牙の手によって産み出されたモンスター達が、当たり前の様に闊歩している状態に在った。

 

『此の階層のクリア条件は一時間以内に此の階層に生きるモンスターの中から、最も強いモンスターを探し出して討伐する事です、我が子達よ』

「質問、仮に一時間以内に倒せなかった場合は?」

『出直して来て下さい』

「わぁお直球」

 

要するに制限時間で討伐出来なければ、GAMEOVER不可避の状態に成ると見て間違い無い。周りを見渡せば飛んでいるモンスターやら、地面から這い出して来たモンスターが居たりするが、サンラクの刻傷に反応して近付くも、ペッパーの愛呪によって直ぐに逃げ去って行くという、随分と面白い光景が出来上がっていた。

 

「さて、どうする?」

「一時間以内に倒せる様に調整されてると考えるなら、まぁ温情とするなら温情では有るが…………」

「取り敢えずペッパーの周りに居れば、121以下のモンスターは寄ってこねぇし、秋津茜と俺がレベル99以下を弾ける。兎に角先ずは対象となるモンスターを探し出して、一発殴って確かめる」

「突っ付いたら解るだろうからねぇ」

 

サンラクとペンシルゴンが意見を述べる中、ペッパーは聖盾イーディスを構え。フィールドとモンスターの状況を踏まえて、視覚系と感覚系のスキルの一部を点火。強化された視力と共に俯瞰の視点から此の空間内に生きるモンスター達を見据える。

 

古今東西、見た目(ビジュアル)が素晴らしいのに雑魚敵であったり、可愛らしいのに即死攻撃をブチ撒け続ける奴等が居たりと、外見的情報ではエネミーやラスボスを判断するのは至難の技。故にこそ、限られた時間と得てきた情報から正しく判断し、最適な攻撃方法を洗い出して攻略する事が必要不可欠なのだ。

 

「あ、皆さん!何か彼処の大きな木の穴の所で、一瞬何か『光りました』よ?」

 

そんな中で秋津茜が声を上げたので、皆が其の方角に目を向けてペッパーは目に意識を集束しながらに、ズッ友コンビスキルたる清明界玉到観(クリスタル・アドバンテージ)&界域を見定む眼(ターゲ・ザ・ワールド)の合せ技で見つめれば、其処には秋津茜が言った通り『モンスター』が居て。

 

周りのモンスターが活発に動き回っているのに対し、其のモンスター…………見た目は『軽自動車級の大きさを持つガチョウ型のモンスター』であり、樹洞の中にてひっそりと静かに座っているのだ。其れも『随分と落ち着いた様子』で…………である。

 

「皆、秋津茜が言った先に金色のガチョウタイプのモンスターが居た。大きさは軽自動車クラスで、今は随分落ち着いているが何をしてくるかは、俺にも解らない。取り敢えず仕掛け鏃を使って、奴を樹洞(あな)から引き摺り出す」

 

インベントリアを操作、聖盾イーディスとバトンタッチで取り出すは、金弓宝剛剣(ゴルト・ヴァーシュ)と仕掛け鏃。左手に剣弓を握って中央を押し込み弓モードへ、右手に矢を持ちながら弦に乗せつつ、レベルキャップを解放した事で得た弓系スキル『破魔(はま)一弓(いっきゅう)』を起動。

 

其の能力もシンプル──────弓による矢の射撃時に『プレイヤーの筋力を参照した飛距離と速度上昇』であり、加えて星幽界導線(アストラルライン)の補助を乗せながら、己の視界の虚空の内に描き出された放物線をなぞるが如く、引き絞った弦より指先を離せば矢は放たれ、樹洞の中に吸い込まれるが如く飛んで。

 

次の瞬間には矢が刺さった事で起きた爆発が響き、穴の中で起きた煙を振り払いながら飛び出した一羽のガチョウが、プレイヤーとモンスター達の前に現れた。

 

「さて、奴さんは何……を──────ッ!?」

 

ポコン、ポコン、ポコン。ポコポコポコポコポコポコ…………!と、其れ(・・)は突然何の脈絡も無く鳴り始めた。

 

ガチョウの尻穴…………正確には『産卵』に使われる穴を通り、次から次に駝鳥サイズの卵がマシンガンの一斉射レベルで生み出され。地面に落ちた瞬間に殻にヒビが走るや、中から『人間の赤ん坊サイズの雛鳥』が続々と孵り、ワラワラと物凄いスピードで増殖している。

 

「あーちゃん、どーするのアレ」

「うーん…………、取り敢えず『やらかした』ってのは間違い無いな」

「どんどん増えてるし、何か雛鳥が他のモンスターに襲い掛かって『つつき殺してる』し…………」

「ミツバチのスクラムだなアリャ」

「あ、ヒヨコ………さん達が此方に気付きました!」

「津波に、なって……来てません……か?!」

「全員退避ーーーー!!!」

 

ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨと増殖し、手当たり次第に他のモンスターを食い荒らす其れは、下手なゾンビゲーも真っ青な恐ろしさで。おそらくアレに啄み殺されたなら、先ず間違い無くトラウマを植え付けられるだろう。

 

「ちょっ、どんどん増えてない!?」

「此れ不味いね、あの本体たるガチョウを倒さないと手に負えなくなる………!」

「おい、象牙!アリャ何だ!?」

 

増え続ける雛鳥から足の襲いレーザーカジキを抱えて逃げつつ、サンラクが叫べば象牙が現れて。そして無限に卵を産み続けるガチョウの正体と、其の『恐るべき能力』を明かしたのだ。

 

 

 

 

 

『アレは『無尽臓マザー・グース』。此のベヒーモスで産み出された『失敗作』の一つであり、アレには()()()()()()として食料問題を解消出来る様に、『無尽のゴルドゥニーネの増殖性質』と『夜襲のリュカオーンの複製性質』を組み合わせたのですが…………思った以上に増え過ぎてしまいました』

 

 

 

 

 

 

嗚呼さようなら、倫理観。

嗚呼こんにちは、地獄絵図。

 

そんな表現が過ったのは、果たして誰の脳裏なのか。

 

「アイトゥイル、ノワ、ヒトミさん!エムルさんにシークルゥさん、ビィラックさんはサイガ-0さんに秋津茜と協力して、卵を産み出しているガチョウを叩いて!!俺とサンラク、ペンシルゴンとレーザーカジキは雛鳥を殲滅しつつ、足止めをするッ!」

 

ペッパーの呼び掛けでメンバーがフォーメーションを切り替え、最大出力で此の雛鳥津波を大絶賛生産中のガチョウを叩きに走り出し。

 

ペンシルゴンは聖槍カレドヴルッフを、レーザーカジキは『赤・青・緑・茶の四色の球体が浮かんだ長杖』を、サンラクは碧羅(ヘキラ)金漆(ゴンゼツ)を手に取り、ペッパーは奏でる者の旋律羽衣(ダ・カーポ・シェイルンコート)から装備を変更、インベントリ内の奥底に眠っていた隔て刃シリーズ一式全てを装着しつつ、インベントリアから『あるアイテム』を……………『掌サイズの黒いクリスタル』を手に取った。

 

其れの名は『黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト・イン・パーケ)』。ベヒーモス・第五階層で象牙が呼び起こした死神であり、其れを癒し倒した事によりドロップした其れは、特定の条件を満たさなくては起動しない代物。

 

「こんな状況でも、畏れる事無く戦おうか!」

 

そしてペッパーは何と無くだが、自身のゲーマーの琴線に『とあるワード』が触れていた。おそらく其れを言った所で、何かが劇的に変化する訳では無いのは解っている。

 

だが…………此れを『言わなければならない』という予感が有る。人間が食事を取る時に食前に『いただきます』を、食後に『ごちそうさまでした』を唱えるのと同じ位に大事な事だと、そんな確信が有って。

 

 

 

 

 

 

「……………『変身』!!」

 

 

 

 

 

 

 

其の言葉を叫んだ瞬間──────ペッパーが装備していた隔て刃シリーズ一式が、木っ端微塵に弾け跳んだ。

 

 

 






魔法の言葉を唱えて


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。