VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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今日も今日とて




まだ見ぬ獲物を求めて、果て無き道をいざ征かん

アパートに帰宅し、手洗い・嗽・シャワーを浴びた梓は髪を乾かして、夕食にレバニラ炒めとワカメの中華スープ、もやしと人参と胡瓜の簡単ナムルに白米、そして市販の牛蒡サラダにレタスとミニトマトを添えた物で作った定食を食べ、一休みの後に機材の動作チェックを行い、シャンフロへとログインする。

 

「あ、ペッパーはん!」

『ワンッ!』

「契約者、よく眠っていたな」

「やぁ、こんばんは。アイトゥイル、ノワ、ヒトミさん。早速だけどキャッツェリアに向かうよ」

「猫の国になのさ?」

「理由としては其の『近所』に向かうってのも有るんだけどね…………」

 

キャッツェリアに着き次第、アイトゥイルとノワは一度御留守番をさせつつ、単身(ソロ)で偵察しに行くのが目的の一つでも有る。何せ自分が向かおうとしている目的地は、旧大陸屈指の危険地帯たる『水晶巣崖(すいしょうそうがい)』に比肩し得る程の。

 

おそらくは部分的に上回る(・・・・・・・)可能性が大有りな、ヤバい場所なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイトゥイルが開いたゲートを潜り、キャッツェリアの国王から与えられた別荘に着いたペッパーは、同時に『ユニークシナリオEX【来たれ英傑、我が宿命は幾星霜を越えて】が開始されました』というリザルト画面と、複数のクリア条件の表示により、立ち眩みを覚えながらも其の足で城へと赴き。

 

現実世界(リアル)では限られた極一部の者にしか許されない所謂『顔パス』で入城を果たして、城仕えの猫妖精(ケット・シー)の案内で王座の間に居た、キャッツェリア国王・ニャイ十三世と謁見。

 

「ダルニャータさんへ水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)金晶独蠍(ゴールディ·スコーピオン)のドロップアイテムを御渡ししますので、其れ等を用いて以前御願いした糸と布への加工を依頼したいです」と頼み。

 

更には突発的に王城へ来た事に対する『御詫びの意志』を示すべく、インベントリアから水晶群蠍と金晶独蠍の各種素材に水晶巣崖の宝石塔を取り出した所、やはりと言うかニャイ十三世にトレーヴィル達は驚愕し、口を開きっ放しの唖然となってしまった。

 

終始………いや、ほぼ全てのイニシアティブを持っていったと思いつつも、ニャイ十三世やトレーヴィルに加え、アラミースが案内して来たダルニャータが、積み上げられた宝石の山々に目を真ん丸にして引っくり返ったを見た事で、ペッパーはクリティカルの手応えを感じ。

 

そしてダルニャータには「開拓者にも最近、貴方と同じ宝石匠(ジュエラー)に至った者が現れました」と、昨日ラピスが作り出した『アムルシディアン・ストリング』を見せながらに説明。其れを受け取り、品質を見ていたダルニャータは「其の開拓者がキャッツェリアに来る事が有ったら、一度顔を見てみたい。コイツは中々筋が良い」…………と言ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャッツェリア内の別荘に設置したベッドでセーブを行い、セーブテントの個数を確認したペッパーは、周辺エリアの偵察という名目でアイトゥイルとノワを御留守番(出立前に思いっ切り撫で撫でしまくった)。

 

ヒトミをインベントリアに入れた状態でキャッツェリアを飛び出し、夜空と星と月明かりに照らされた大地を駆けて行った先、今回の目的地たる『シグモニア前線渓谷(フロントライン)』の周辺エリアまで辿り着いた。

 

「何と言うか………見るからに『真っ赤な天然灯台』だな」

 

ドーナツ状に刳り貫かれた『谷』と其の中央に在る紅蓮に輝く『巨大な光』が、此の周辺の地形を照らして鮮明に写し出す光景は、見るからに『ヤバい』というゲーマーの直感に警鐘を鳴らしている。

 

何せ此処にはペンシルゴン・秋津茜(アキツアカネ)・レーザーカジキがラビッツの実戦的訓練にて戦った、レベル140オーバーのヤバいモンスター達が勢揃いしている『爆薬庫』。下手に手を出して此方も巻き込まれたなら、正直命が幾つ有っても全く足らない。

 

更に言うと清明界玉到観(クリスタル・アドバンテージ)+界域を見定む眼(ターゲ・ザ・ワールド)のズッ友コンボスキルに、狼皇の鼓動(ルプリス・ヴァースリズム)闘心狼魂(ウルフェス・アーハン)からなる二つの視覚・視界系と、二つのバフスキルを起動して前方の『地形情報』を彼は見ている。

 

結果として彼に示されたのは──────

 

 

 

 

『谷底には人間大の無数の蜘蛛と巨大な要塞蜘蛛に、超巨大列車サイズの巨大百足と其れ以上の巨体を持つ百足が地面の中に埋まっているという、叩き起こした瞬間に漏れ無く()()()が開幕を確定している』

 

 

 

 

──────そんな光景が有ったのだから。

 

「うわぁ……………」

契約者(マスター)、また随分と危険な場所に来たな。此処が新大陸屈指の危険地帯『シグモニア前線渓谷』であると認知した上でか?」

「えぇ。此処に水晶群蠍の亜種個体たる帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)や、フォルトレス・ガルガンチュラ達にトレイノル・センチピード達が居るので、偵察がてら隙有らば討伐しようかなと………」

 

見たからこそ、知ったからこそ、ペッパーは自らの力で挑みたいのだ。帝晶双蠍というビームを放つ蠍、其れを使った甦機装(リ·レガシーウェポン)で改修型煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)を新造出来ないかと、そんな想いを馳せていた──────次の瞬間。

 

インベントリアの中に居たヒトミが何かを『感知』し、突然格納空間から現実空間へと出て来たのだ。其れも規格外特殊強化装甲【蛮武(バンブ)】 の一式装備全てを纏い、ベヒーモスで見た狙撃銃を装備した状態でこう言った。

 

報告(今し方):当機()は『征服人形(コンキスタ・ドール)からの救援要請』をキャッチした。場所は此の渓谷の『谷底』から、機体の救援要請時の信号波長(パターン)から『エルマ型317号機』の物と一致。エルマ型317号機は現在『回収目標重要度(ターゲットランク):総動員級(フルスクランブル)』と共に居る」

 

何時だったかヒトミが話していた回収目標重要度、其の中でも総動員級は己の損傷修復を後回しに、対象を回収するべく行動する場合のモードであるのだとか。

 

「止めてくれるな、契約者。私は救助要請が出された征服人形を、見て見ぬ振りして見捨てる事は出来ない」

 

彼女の台詞に何と無く『デジャヴ』を覚えたペッパーだったが、此処で退く様な真似はゲーマーとしてのプライドが許さない。故に彼は『ロールプレイ』を用いて、彼女に己の答えを示す。

 

「ヒトミさん。此のフィールドは、規格外特殊強化装甲を纏ったヒトミさん()()()()()()越えられない」

「だとしても…………!」

「一人『では』──────ですよ。今は俺が居ます。地上が駄目なら空中から攻める、其れでも駄目なら更なる策を講じる。人はそうやって逆境を切り抜けて、世界を拓き、歩を進めたのだから」

 

そうして彼は左手を差し出し、彼女に言う。

 

「ヒトミさんは其の征服人形を、エルマ型317号機を助けたいと願った。ならば、俺にとって理由は『其れだけで十分だ』。其の総動員級が敵であれ味方であれ、其れは助けた後に考えましょう」

 

嘗て憧れた、とあるヒーローが残した言葉を絡めて意志を示せば、ヒトミの表情から切迫した気配が収まる。どうやら普段の落ち着きを取り戻したらしい。

 

「やろう、ヒトミさん。俺達で助けよう」

「了解………そして感謝する」

 

手と手が触れ合い、握られる。此処からは救助作戦…………谷底の何処かに居る征服人形と、征服人形が回収した存在を救助する戦いの始まりだ。

 

 

 






決めたならば即行動


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