VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ハイアーザン・ファイティングレスキュー

「確認:此のシグモニア前線渓谷(フロントライン)はトレイノル種とガルガンチュラ種による生き残りを賭けた戦闘領域であり、同時に中央に在る現在は紅蓮(・・)に輝く『ツァーベリル帝宝晶』の場所には『帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)』が居る事を、以前に何人かの姉妹機(シスター)が合同調査をした事で判明している」

 

シグモニア前線渓谷の谷底に居るという、エルマ型317号機と彼女が回収したという存在の救助の為、ペッパーとヒトミは万が一にも備えて離れた場所………外縁ギリギリにセーブテントを設営し、救助作戦に向けたブリーフィングを行っていた。

 

「トレイノルとガルガンチュラは不倶戴天の敵であり、片方が起きればもう一方も起きてくる。下手に手を出すのは避けておきたいが、問題は奴等が『何を求めている』のかが解らないと、文字通り『行って来ます』が『逝って来ます』になるんだよな………。ヒトミさん、何か解っている事って有りますか?」

「残念ながら、当機の保有する情報には此れ以上の事は無い」

「解りました。一先ずヒトミさんはエルマ型317号機との通信を行い、詳細な位置を教えて下さい。判明次第インベントリアへと入り、俺が其の地点まで一気に空中を駆け抜けます」

 

そうなるとやはりトレイノルとガルガンチュラが何を求め、何故に争っているのかが判らなくては、救助作戦も難しい可能性が高い。

 

仮に救助出来たとして、使い捨て魔法媒体(マジックスクロール)を使っての脱出ならば容易では有るものの、仮にエルマ型317号機が回収した存在が『モンスター』であった場合、先ず間違い無く他のプレイヤーから狙われるだろう。

 

そうなったら面倒な方向に拗れる事は、最早避けられぬ運命と化す。何より自分は此の世界で、()()()()()()()()()()()のも原因だ、色々と悪目立ちも振り切ってしまっているので救い様が無い。

 

通信完了(潜伏地点判明):契約者(マスター)、現在エルマ型317号機と回収目標重要度(ターゲットランク):総動員級(フルスクランブル)は、此のフィールドの谷底に在る空洞にて身を潜めている。光か何かを目印とすれば発見出来、近くに到達すれば回収目標重要度:総動員級が空洞へ続く道を開けるとの事だ」

「ありがとうございます、ヒトミさん」

 

ヒトミをインベントリアに避難させ、紅蓮に輝く水晶に照らされたフィールドの状況を鑑みて、ペッパーは離れた場所で身体を動かして心拍数を高め、何時でも超星時煌宝珠(クロック・スタリオン)を発動出来る様に準備を整えて。

 

「…………行くぞ!」

 

星天昇向跳躍(アーシェン・エトワール)・ムーンジャンパー・魔天飛躍(まてんひやく)の跳躍系スキル種の起動。使用者の任意で跳躍距離や速度を操り、垂直跳躍に置ける補正を受け、最大高度に至りし空と宇宙の境界線にまで届き得る跳躍が、彼の身をシグモニア前線渓谷の上層空域まで押し上げる。

 

「そして、駆け抜け落ちる──────!」

 

ミルキーウェイ、グラヴィトン・レイ、シューティングスター。三つの星天秘技に加えて、真界観測眼(クォンタムゲイズ)とアサイラム・フェイトに速界見眼(シンクロ・アイズ)を併せながら、トルクチャージにゲニウス・チャージャーを加えて、駄目押しとばかりにファウラム・チャージングにエクストライズ・トリデュートを重ねて点火。

 

万が一にも攻撃が襲い掛かった場合に備えたスキルの効果時間の延長に、再使用時間(リキャストタイム)短縮を上乗せしながら封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)(スペリオル)を指パッチンで起動。紅蓮夜光の渓谷に緋色星が瞬いた直後、ペッパーが発動していた真界観測眼が『光の波』を感知する。

 

其れはまるで、鋭角的な軌道を描きながら反射を続けており。そして其れが極放熱(ウルティマヒート)効果によって産まれ、空中で切り離されて置き去りにされたヘイト付与の陽炎(デコイ)を、()()()()()()()()()が一瞬で飲み込んだのだ。

 

「ッ…………気付いたか、帝晶双蠍!」

 

サキガケルミゴコロ点火、アサイラム・フェイトによって無数に展開された安全圏へと進むルートに垣間見える、己が死に向かう未来を知覚。思考加速と高速化された情報処理を用いて、己の体(アバター)を動かしながらに全速力で走り抜ける。

 

残された陽炎が次々と極太ビームに飲まれて消滅し、代わりとなるが如く陽炎が生まれ、緋色の炎を纏ったペッパーは外縁と渓谷の中間地点を見定め、秀刀(しゅうとう)白金(しろがね)】を逆手で握って、ウツロウミカガミを点火。陽炎とは異なる一度攻撃を受けようが消えない虚像にビームが殺到するが、当のペッパーは其処には既に居らず。

 

だが外縁の削られた地面にビームが直撃し、地面が罅割れて石ころが谷底に転げ落ちていった事で、地面から人間大サイズの雄蜘蛛『アーミレット・ガルガンチュラ』がワラワラと湧き出た。

 

其のガルガンチュラ種が『フィールドに一定体数以上居る事』をトリガーとしたのか、列車砲顔負けのサイズを持つ『トレイノル・センチピード』が飛び出して、アーミレット・ガルガンチュラ達を押し潰し轢き殺しながら、背中の大砲めいた砲台から毒液を発射。 

 

アーミレット・ガルガンチュラ達を汚染し殺し、其れをゴングとしたのか今度は巨岩に擬態していたガルガンチュラ種の雌個体、要塞蜘蛛と言うべき巨大な身体を誇る『フォルトレス・ガルガンチュラ』が目覚めて。トレイノル・センチピードに向けて背中の穴からアーミレット達を放ち取り付かせ、膨らんだアーミレットは自爆した事で、トレノイルの甲殻には少なくない傷が刻み込まれる。

 

対するトレイノルは渓谷の壁面を高速で這いながらに肉薄、アーミレットの被弾も許容してフォルトレスの背後へ回り込むや、其の巨体で絡み巻き付き締め上げると、フォルトレスの甲殻から圧力による摩耗によって装甲に亀裂が入り、ギチギチギチギチ!と悲鳴に似た音が零れ。

 

そして水晶群蠍(・・・・)の亜種であり、音に過剰なまでに敏感な帝晶双蠍達は下層で争う者共の騒音に対し、文字通りブチギレ(・・・・)たのか『黙らっしゃい!』と叫ぶが如くビームの雨を降り放ち、戦場は益々の混沌の一途を辿っていく。

 

「マジでバチバチの大戦争じゃねーか!くそ、何処だ!?何処に隠れてるんだエルマ型達は!!?ヒトミさん!」

感知(見付けた):契約者(マスター)、エルマ型の通信波長を再感知。現時点より北北東方面、最短挙動の進行で300m先の壁面に有り」

「了、解──────ッッッッッ!!!」

 

トレノイルの毒液砲撃・アーミレットの連続爆撃・帝晶双蠍のビームの中を、神威光臨進(かむいこうりんしん)爆駿流疾走(ブラスタ・ファラウェイ)の連続点火。ミルキーウェイとグラヴィトン・レイの残り効果時間が迫る中、紅蓮の光に碧の閃光雨と砲火戦嵐吹き荒れる地獄を、彼は走り駆けて行き。

 

「あ!きた!きたー!」

「んん!?」

 

爆音鳴り止まぬ中で一際ヘタレた(・・・・)声が耳を劈き、其の方角を見れば岩肌である場所にポッカリと穴が空いており。

 

「はやく!はーやーくー!」

「今行く!」

 

穴から見えた人影を目視し、指パッチンで撃鉄を解除。神律燼風(しんりつじんふう)で体勢と速度を調節し、ペッパーはスライディングの形で空間に滑り込んだのだった…………。

 

 

 






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