VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦いの果て




唯一人の勝者、唯一つの栄光

ペッパーというプレイヤーは圧倒的な思考深度を持っている。

 

其れはゲームに置ける敵キャラの情報だったり行動パターン、攻防の様々なモーションに関する物等が挙げられ、其の一挙手一投足からなる動きを見つつも、此迄に獲得した知識やデータを脳内に備えた図書館から引き出し、適時修正を加えて攻略する。

 

人間は脳内に備えられた記憶容量に予め『限界』を作る事で、頭が情報の濁流による容量限界(オーバーヒート)を防ぐ様にしている。しかし五条 梓(ペッパー)は脳の記憶容量の『扱い方』と記憶を引き出す『速さ』、そして得た情報と記憶の情報の『結び付ける』事が、誰よりも得意だった。

 

其れは中学時代に英語で赤点を取り、夏休みの補習で貴重な休みを潰してしまった事が理由にして、睡眠学習の中で『もう二度と同じ過ちを繰り返さない』という、強い決心と共に身に付けてきた彼の『努力の結晶』なのだ。

 

何度も敗れてきた敵への『リベンジ戦』、事細かに収集した『帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)の情報とモーション』、シャンフロで培い積み重ねた蠍型モンスターとの『戦闘の記憶への結び付け』。重ねて積み上げ結び付けた其の戦略は、着実に確実に一手ずつ、水晶の帝王蠍を『詰ませて』いたのである。

 

「オオオオオ──────リャアアアアアアアア!!!」

 

何十にも渡るツルハシを用いた攻撃と冥王の鏡盾(ディス・パテル)の反射により、帝晶双蠍の全身はゴルドゥニーネの毒に侵された様な罅割れで、下手に動いてビームを放とう物ならば逆に砕け散ってしまう、そんな危うい所まで追い詰められて。

 

されど其の身に滾る闘志は未だに尽きる事を知らず、抱擁タックルからの乱反射ビームを放たんとしている中で、ペッパーはエレメオール・ブレイカーを握り締め、星天秘技(スターアーツ)シューティングスターに星幽界導線(アストラルライン)で道筋をなぞり、業撃(ごうげき)茨木俱緞(いばらきぐだん)】起動で威力を上乗せし、渾身の一撃を頭部に叩き込んだのだ。

 

面と頭部の接触、クリティカルでの直撃。業撃【茨木俱緞】のクリティカルヒット時の効果で、様々なデバフが其の身を襲い。其の中でも気絶・昏倒・脱力・スタンの効果が働き、脚が縺れて転倒した事でビーム攻撃がキャンセルされる。

 

「此れで…………決めるッッッ!!!」

 

エレメオール・ブレイカーの面に光が灯る、狙うは帝晶双蠍の胴体のド真ん中。魔天飛躍(まてんひやく)で高く高く飛び跳ね、プレイヤーの跳躍と落下の行動を行う事によりステータスに補正が入る『舜連撃導(しゅんれんげきどう)』と、プレイヤーの任意で重力方向(ベクトル)を変更出来るグラヴィトン・レイで下へと降り、フィニッシュムーヴに『グレコール・パニッシュメント』を使用する。

 

此のスキルは鎚武器スキルで有りながら、プレイヤーの『戦闘開始時からの()()()()を参照したダメージ計算を行う』という一風変わった能力が有るのだが、此の運動量とはプレイヤーが回避・跳躍・疾走等による、アクセサリーやスキルを含んだスタミナの減少効果を除いた、()()()()()()()で適応されるのが此のスキルだ。

 

シャンフロエンジンによる重力の物理エンジンからなる恩恵、全身が砕けん程にダメージを負った帝晶双蠍。そして一度の攻撃に付き、火・水・風・土の四属性のダメージ判定を叩き付けるエレメオール・ブレイカーの特性。

 

此れで仕留める、仕留めきれなければ自分の負けという覚悟を乗せた、乾坤一擲の鎚撃が胴体に直撃し。全身に走った亀裂と罅割れに更なる負荷が掛かり……………破砕。其れは帝晶双蠍の全身が粉々に砕け散り、其の命を完全に叩き潰したという、十全たる事実を四属性の小鎚を通じて彼に伝えた瞬間であった。

 

「……………帝晶双蠍よ。二色に変わりて限られた世界の中、比類無きビームを凄まじきエイムで放ち貫く、無双の射手よ。次に出逢う時は、リスポーン五回以内で討ち倒してみせるぞ」

 

恒例となったペッパーの御礼口上の後に帝晶双蠍の身体を構築しているポリゴンが崩壊し、今回のリスポーン時にセットした神秘(アルカナム):運命の輪(ホイール·オブ·フォーチュン)&単身(ソロ)討伐によって、戦場跡地に帝晶双蠍の素材達が湧き水の如くドロップし、山を作る程に高く積み上がる。

 

「モタモタして居られない…………!さっさとツァーベリル帝宝晶を採掘して帰還しなくっちゃ!」

 

テリトリー主義者の帝晶双蠍の事だ、恐らく今回の討伐によって此のエリアを根城にしていた蠍が消えた為に、生息範囲にも変化が起きる可能性が非常に高い。戦闘により心臓の鼓動が一定以上のリズムを刻んだ事で条件を満たした超星時煌宝珠(クロック・スタリオン)を合掌、指パッチンで封熱の撃鉄(ニッショウ・トリガー)(スペリオル)を立て続けに起動。

 

朱炎白光を其の身に纏い、ギルフィード・ブレイカーに切り換えた勇者は一人、残された機動系スキルを全て点火。巨大なツァーベリル帝宝晶の塊へと疲労した四肢と身体に鞭打ち、近隣から鳴り響く地鳴りに嫌な予感を抱きつつ、力の限り小鎚の面を紅蓮に輝ける結晶に叩き込む。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!死なない程度の全力採掘を見せてやるぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!」

 

周辺から出て来た帝晶双蠍達、甲殻が変色・鋏や針先に光が灯りて放たれる死地圏で、彼は征服人形(コンキスタ・ドール)とゴルドゥニーネ、そしてサミーちゃんが無事に此の戦場から脱出出来る様にするべく、己と長い付き合いたる小鎚を振るうのだった……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、ペッパーの今回のリザルトは帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)の貴宝殻三十九枚・明輝爪九本・光玉脚八本。蓄光鋏三つに封晃尾が二本、至晶針二本と双核宝が二個に、採掘結果はツァーベリル帝宝晶が三十一個と、ポストイ・ツァーベリルを四個であり。

 

其の途中、邪魔をしてきた隣の帝晶双蠍の一体にある程度ダメージを与えてた物の、ビームによって右手をブチ抜かれて隻手になり。彼は此れ以上は流石にヤバいと水晶冠から脱出を果たし、何とかゴルドゥニーネ達が隠れる空洞へと帰還に成功したのだった………。

 

 

 

 






帰るまでが遠足だ



















ノワ『ワゥルルル………グルル!!ワンッワンッ!!(意訳:彼から私のマーキングが消えた!黒兎行くわよ!!で、影潜り発動&アイトゥイルを引き摺り込む)』
アイトゥイル「へ?わひゃあ!?(呑気に晩酌してたら影に引き込まれた)」



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