VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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帰還して




輝きは等しく、されど影もまた其処に

契約者(マスター)、大丈夫か?」

「右手が吹っ飛んだ代わりに、充分な成果を得られたと確信してるよ。討伐報酬は帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)の貴宝殻三十九枚に明輝爪九本と光玉脚八本。蓄光鋏三つに封晃尾が二本の、至晶針二本と双核宝が二個。採掘結果はツァーベリル帝宝晶が三十一個と、ポストイ・ツァーベリルを四個だ」

「成程、S-評価と言って良いな」

「カルネ=ヒトミ、其処は低く見積もってもA+にするべきかと」

「核を二つ出した時点で契約者的に見れば、既に充分だという確信が有るぞ。エルマ=サイナ」

 

今回のリザルトを聞いて、何やら言い争いを始めたヒトミとサイナ。右手が現在潰れている手前、左手首に装着・一体化したインベントリアを操作出来ない以上、一度蘇生によって右手を再生させないと話にならない。

 

ブリュバスに飛び乗り、備え付けられたベッドを確認。セーブを行った後に、左手に秀刀(しゅうとう)白金(しろがね)】を装備したペッパーは、幕末や時代劇で見た切腹の要領で腹を斬っ裂きいた事で、一定以上の幸運保持による自刃によるダメージを食い縛りが発生。続け様に心臓に刃を突き立てた事により、残り体力が尽き果てて意識が暗転し、セーブしたブリュバスのベッドにて目を覚ます。

 

「よし、戻らないと『ワンッ!』……………ワン?」

 

起き上がった刹那に、非常に聞き覚えのある鳴き声とデジャヴとも呼べるシチュエーションに振り返れば、煌めく宝石の首輪を巻いたノワが、アイトゥイルを背中に乗せて何時の間にかブリュバスの室内に居たのだ。

 

「ペッパーはん!ノワはんに引っ張られて、影を潜って此処まで連れて来られたし、外がドンパチ戦場してるけど一体何処なのさ?」

「アイトゥイルにノワ。此処はシグモニア前線渓谷(フロントライン)……………今から見せる者に対して、少なからず驚いたり思う所が有るかも知れないけど、どうか落ち着いて見て欲しい」

「?」

『?』

 

アイトゥイルに至っては納得出来るか、感情を優先して斬り掛かるかという部分が有る。何せ此処に居るのが『奴』で在る以上、彼女とパーティーを組み続ける身からして『避けては通れない道』なのだから。

 

一羽と一匹を抱えてペッパーがブリュバスから降りれば、ゴルドゥニーネとヒトミにサイナが目を向け、見えないがサミーちゃんの気配も近くに在る。そして至極当然ながら、アイトゥイルとノワの視線はゴルドゥニーネに向けられ、アイトゥイルは無言で薙刀を取り出し、ノワは嗅覚でサミーちゃんを察知したのか其の方向に目を向ける。

 

「待て、アイトゥイル。君が友の敵を討たんとしているゴルドゥニーネは彼女(・・)じゃないだろう?」

「……………ペッパーはん、ゴルドゥニーネはワイ等ラビッツにとっての()なのさ」

「気持ちは解る、だがアイトゥイルよ。サンラクの撮ったスクショと彼女を見比べても尚、君は其の刃を彼女に向けるか?」

 

そう言いつつ、サンラクがEメールに付与した『スクショ』を拡大し、アイトゥイルの前に示す。其れを見た彼女は写真のゴルドゥニーネと、自分の目の前に居るゴルドゥニーネを見比べて、薙刀を握り締める手の力は強くなれども鋒を下ろした。

 

「…………………其処のゴルドゥニーネの従えてる眷属と、ゴルドゥニーネはどれくらい強いのさ」

「代理回答:回収目標ゴルドゥニーネ…………名称は『WIMP(ウィンプ)』としましょう。古い言葉で凍えた暗黒物質を意味する天文学用語であり、斯様な性質を持ちながら征服人形(コンキスタ・ドール)の捜索及び同種別個体の殺戮行動からも逃げ切った、其の驚異的な隠密性を当機(ワタシ)は評価します。彼女は鎮圧用スタンによる鎮静化に対して著しい効果を示し…………結論としてとても弱く、サミーちゃんの方がずっと強い」

「うぅ…………って、ウィンプっていいなまえね!きにいったわ!」

「えぇ…………」

 

ウィンプというのは罵倒(・・)の意味が込められていた様な気がしたが、後で調べてみる事にする。そしてゴルドゥニーネの本体(・・)の強さを『よく知っている』アイトゥイルはと言えば、サイナの発言に対して『驚愕』と『呆然』と『お前そんなんで良いのか』の、三つの感情が入り混じった顔をしてウィンプを見ていた。

 

そしてノワはと言えば、透明化しているだろうサミーちゃんの方をジッと見つめ続けて、対するサミーちゃんも透明化を解除して、ノワをジッと静かに見る。沈黙が場を支配し、ペッパーとウィンプが見守る中で、ノワとサミーちゃんは声を発する。

 

『ワゥ』

『シュ〜』

 

互いに敵意や殺意は感じない。されど『そっちが手を出さない限りは、此方も手は出さない』といった、ある種の『相互不干渉』の約束を敷いたのか……………其れ以上の事はせず、互いに主人の元へと戻って行く。

 

そんな中でペッパーは片膝を身に付け、アイトゥイルと同じ視線に近付けながら、言葉を紡ぐ。

 

「……………アイトゥイル。今直ぐに『ウィンプさんと仲良くしろ』とは言わない。大事なのは『自分が復讐を果たす相手を決して見間違えるな』って事だ」

「…………………………」

「……………友達をゴルドゥニーネに殺された其の気持ちは、俺も別の世界で同じ様な経験したからこそ少なからず解る。其の時は力が無くて逃げる事しか出来なかった、だからこそ仇討ちの為に己の力を磨き続けてきた。そうだろう?」

「………………………!」

 

アイトゥイルの耳がピンッと張り、自分に目を向けている。他のレトロゲームで操作キャラが体験した事を言ってみたが、どうやら彼女も其の心境と同じ物を抱いているらしい。

 

「ある人が言っていた…………『復讐は何も生まない』、と。其れは其れで『美学』でも有るが、世の中には『仇討ち』をする事でしか先に進めない者達も居る。心に刺さった棘や、ポッカリと空いた穴を埋める事が『其れ』であり、其れを果たす事で初めて『先に進める』んだと」

 

そう言ってペッパーは、ロールプレイを総仕上げに持っていく。アイトゥイルの気持ちを尊重しつつも、彼女の見据えるべき先を見失わない様に、進むべき道を示す様に言葉に気持ちを込める。

 

「だからこそ、自分の中に在る『揺らがない灯火』を吹き消させない様に守り抜く事。アイトゥイルが目指す『無尽のゴルドゥニーネの本体』を倒す時に、其の守ってきた灯火を業火に変えて。ゴルドゥニーネの本体を、一片残さず焼き尽くす為にもね」

「……………………ありがとうなのさ、ペッパーはん」

「相棒の頼みだからな、力になりたいのに理由なんていらないよ」

 

クリティカルの手応えを感じた。左手を拳に変えて差し出せば、アイトゥイルは「イー兄さんが好きなヤツなのさ」と右拳を作って、コツンと合わせてくる。一先ずはだが、アイトゥイルの殺意がウィンプの方に向くのは抑えられた………のかは定かでは無い物の、取り敢えず防止出来たのは大きいと見るべきか。

 

取り敢えずは帝晶双蠍の素材やツァーベリル帝宝晶をアクセサリーや武器に加工して、戦場外の安全圏に何時でも脱出出来る様に手筈を整えなくては──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、此処がシグモニアの空洞かぁ〜。新しい素材(マブダチ)が此処に居るのか、ペッパーよぉ?」

「やぁやぁ、私のあーくん。何やら面白い事をしてるらしいじゃなぁい?」

「「あ、わわわあ、あわわわわわ……………」」

 

ブリュバスから声が響き、サンラク・ペンシルゴン・エムル・ゼッタがやって来たのである。

 

 

 

 

 

というかどうやって来たの貴方々???

 

 

 

 






半裸と魔王と二羽の兎がやって来た


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