VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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パーティー設立




叩いて被ってジャンケンポン!

ウィンプ・サイナを加えた、パーティーを組んでから約二時間。深夜帯になったが、取り敢えず情報を整理しよう。

 

先ずは無尽のゴルドゥニーネ…………八番目か八人目か、どっちが言い方として正しいかは判らない物の、No.8のゴルドゥニーネことウィンプ(サイナ命名)をパーティーに加えた所、無尽のゴルドゥニーネのユニークシナリオEX【果て亡き我が闘争】が発生した。

 

恐らくだがユニークシナリオの発生条件は、ウィンプの様な『本体や別のゴルドゥニーネから生き延びているゴルドゥニーネと出会い、会話やら何やらを含めて共に過ごす事』。そしてパーティーを組んだゴルドゥニーネを『守りつつ』、本体となるゴルドゥニーネを撃破する。

 

──────もしくは最悪のパターン(・・・・・・・)として、自分がパーティーを組んだゴルドゥニーネと共に他のプレイヤーがパーティー組んだゴルドゥニーネと戦い、最後の一人になるまで殺し合いを行う、所謂『バトルロワイヤル形式のユニークシナリオ』の可能性が高い。

 

次にパーティーを組んだゴルドゥニーネのウィンプ、現在の彼女のレベルを確認したのだが、何とレベル62という圧倒的なまでの低さ。アイトゥイルがベヒーモスの攻略でレベル99の壁を突破して100に入り、エムルはサンラクの付き添いで色々な冒険をした故にレベル95、ゼッタはペンシルゴンが時折レベリングに付き合ったらしくレベル62になっている事からも、ウィンプ自身の戦闘力がサミーちゃんに依存しており、相当心許無いのが解る。

 

因みにノワのレベルは判らなかった。パーティーを組んでいるのに確認出来ないのは、ノワに対する好感度がまだまだ足らないからか、はたまたシステム側から閲覧をロックされているのか。

 

「ペンシルゴンの戦い観てたから楽勝かと思ったら、テリトリーの境界線見間違えてビームに殺られたわ………」

「百足といい蜘蛛といい、シャンフロの虫って滅茶苦茶強くない?」

 

ブリュバスから出て来たサンラクは帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)に挑戦開始から七回目、ペンシルゴンはトレイノル・センチピード相手に此れで十回目のリスポーンをしながら、其々倒すべき敵を見据えて思考している。

 

そしてペッパーはと言えば、現時点で此のパーティー唯一の空中高速移動方法所持者の為、サンラクを帝晶双蠍の居るバトルフィールドに送り届け、百足と蜘蛛の戦争に頭を突っ込でペンシルゴンが倒したアーミレット・ガルガンチュラや、戦争中に飛び散ったトレイノル・センチピードとフォルトレスの素材を、無理の無い程度に回収しては洞窟に帰還を繰り返しているのだ。

 

「取り敢えずサンラクは帝晶双蠍を一体狩ったら、ウィンプさんの事含めてブリーフィングを行うからね。ペンシルゴンは少し待機しててな」

「あいよー。ペッパー頼んだわ」

「はーい」

 

両脚に深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)を装着から、何度目ともなる紅蓮夜光の戦場にサンラクをおんぶして出陣したペッパーは、列車百足と要塞蜘蛛のドンパチと蠍のビームが飛び交う空間を尻目に、壁沿いを軸として高く跳ね跳んで行き、サンラクが此処まで削ったのだろう左鋏と尻尾の針に、二本の脚を消失した帝晶双蠍の居住空間(テリトリー)まで無事に送り届けた。

 

「お隣さんは下の階の騒音にキレ散らかしてるな……。いや、左右からビームが飛んで来ないだけマシか」

「サンラク、武運を祈る」

「応ッ、今回でブッ倒して凱旋してやんよ」

 

サンラクを送り出し、空中を蹴ってビームや毒液に大地震の喧騒鳴り止まぬ戦場を、命を大事に&生存重視の挙動で空洞まで舞い戻り。少しの休憩を挟んで、ペンシルゴンのサポート兼ドロップアイテムの回収行動に入る。

 

「トレイノル・センチピードにフォルトレス・ガルガンチュラ…………どんだけ仲が悪いんだか」

 

アーミレットと毒液砲弾が飛び交う光景や、戦争レトロゲーの城塞攻撃の背景を見ているに等しく。トレイノルとガルガンチュラの二種族は『同時に相手をする』のでは無く、『片方の陣営に味方するムーブ』をしなくては生き残れないと、ペッパーは確信している。

 

「あーくん!?あーくん!?トレイノルが滅茶苦茶毒液ブッパしてるんだけわぁあああああああああ!?!」

「ぺ、ペンシルゴーーーン!?」

 

毒液の地面着弾からのアーミレットの連鎖爆破によって吹っ飛ばされたペンシルゴンを拾った所に、巨体を支える脚のバランスを崩したフォルトレスの巨大な腹部が倒れ込み。

 

彼女を遠くに投げて深厳戟響脚を解除した瞬間、ペッパーはフォルトレスの超重量と超質量の腹部により──────『プチッ』と。まるで蚊がハエ叩きによって潰されるが如く、其の気持ちを体験するかの様に圧殺され、意識が暗転したのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蚊や小蝿が圧死する時の感覚って、ああいう感じなんだな…………」

 

ブリュバスのベッドから起き上がり、リスポーンによって再生した身体を動かすペッパーは、甲板を居りて空洞内でサイナやヒトミにウィンプとサミーちゃん、アイトゥイル・エムル・ゼッタにノワ達NPCが待機している場所に向かう。

 

其の理由はペンシルゴンが戦い、トレイノルが叩き潰したアーミレット・ガルガンチュラが落とす『ドロップアイテム』であり、正式名称を『アーミレット・ガルガンチュラのゼリーマテリアル』なる淀んだ緑色のゲルゼリーで。

 

何とコレ自体が食す事で一定時間獲得経験値を+5%され、他の経験値ブーストアイテムやアクセサリーと重複しないという、ある意味では『プレイヤーやNPCの育成に適した』能力を持っている。

 

見た目こそアレだが、幸い無味無臭な上にちょっと濃い目の色をした、味無しのメロンゼリーとしてみれば一応生食でもいけなくは無い…………と思ったが、やはりコレは『調理』してこそだろうと考えるくらいには、あまり美味しくは無かった。

 

「ウィンプさん。ゴルドゥニーネの本体と何時か戦わないといけない時に備えて強くなりましょう。幸い此のアーミレット・ガルガンチュラのゼリーマテリアルは、調理をする事で食べやすくなります。食べて鍛えて休んで、食べて鍛えて休む事を繰り返し、サミーちゃんさんを守れるだけの強さを得ましょう」

「同意。個体名ウィンプ、契約者(マスター)の言っている事は少なからず正しい。此処シグモニア前線渓谷(フロントライン)とアーミレット・ガルガンチュラの特性を利用した訓練ならば、君は確実に強くなれる。何より此の方法は契約者と共に居る個体名アイトゥイルや、エムルにゼッタもやりようによっては使用可能だ」

「という訳で、当機(ワタシ)とカルネ=ヒトミで訓練プランを立案しました。個体名ウィンプ、及びアイトゥイル・エムル・ゼッタ、そしてノワ。注目してください」

 

サイナの頷き、ヒトミが両目から光を放つ。其れは一昔前のプロジェクターの様に此の安全圏の壁に映り、サイナとヒトミが構築した訓練内容が図と文章を以て、ウィンプやアイトゥイル達にも理解り易く提示された。

 

第一段階(先ず始めに):此の空間とは別の場所に穴を掘り、訓練場所を構築。此方は個体名サミーちゃんの協力を経て行います。

第二段階(続いて):穴と訓練場所を構築後、其の穴にアーミレット・ガルガンチュラの雄個体群を、我々が()()()気付かせる形で洞窟内へ誘導。通路を一列で進んできた同種族を一体ずつ撃破。

第三段階(最後に):先程個体名ペッパー・天津気が回収した、アーミレット・ガルガンチュラのゼリーマテリアルを摂取した上で訓練を行います」

「重要項目:大事なのはアーミレット・ガルガンチュラを倒すタイミング、並びに訓練後の疲労蓄積と回復。そしてゼリーマテリアルの効率的な摂取方法の確立として、『調理技術』を並行して磨く事を当機()は推奨する」

「ちょ、ちょうり………ぎじゅつ?」

 

警戒しつつもヒトミが言った、調理なる未知の単語に興味を示したウィンプへ、サイナが補足を加える様に説明を続ける。

 

「説明:調理とは刃物…………即ち包丁や俎板を用いて食材を切る、鍋等で食材を焼く・炒めると言った工程を行い、生食での摂取に向かない食材を美味しく食べられる様にする。其れは次世代原始人類種が有史以来、年月を重ねて脈々と受け継いで来た、実に知性(インテリジェンス)溢れる方法なのです」

「ふ、ふーん…………。なんか、ちょっとおもしろそうかも。そのちょうりどうぐって、どうやっててにするの?」

「個体名ペッパー・天津気かサンラク、ペンシルゴンの何れかに依頼する形で入手するのが適正かと」

「自炊出来れば何とかなったりしますからね…………」

 

問題は其のターゲットとなる、アーミレット・ガルガンチュラの平均レベルであり、最低値が123の最大値が144という新大陸側のモンスターである事。オマケにサイズは人間大な上に集団で爆殺しに掛かり、自身は同族の自爆にも耐えるのだから、恐ろしいったらありゃしない。

 

一先ずウィンプの育成方法は決まった、後は此の事を彼に…………ラビッツの頭たる『ヴァイスアッシュ』にキチンと説明する事だ。ラビッツの末席とはいえ国防にも関わった身からすれば、其れはとても『重要な事柄』であり、同時に果たすべき『責務』だと、ペッパーは考えているのだから。

 

 

 

 






鍛えて、磨いて、強くなれ


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