VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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楽しい愉しいオハナシの時間




鉛筆と教授に巻き込まれる胡椒

シクセンベルト……シャンフロの大陸でも農業で栄えた此の街は、新鮮な採れたて野菜と、其れを用いて作られる料理達が旨い街としても知られている。

 

そんなシクセンベルトの中でも、取分人気なのがスープや煮込み料理であり、特に『コーラルの釜戸店』で作られる『根菜満天ポトフ』は街の中では一番旨いとされているとかいないとか。

 

今宵コーラルの釜戸店の2階にて、1室を貸し切った考察クラン・ライブラリのクランリーダーたるキョージュと、ペッパー&ペンシルゴンの話し合いが始まろうとしていた。

 

「ペッパー君。君は毎度のように私の予想を斜め上に超えてくるね。よりによって『おじいちゃん』に出逢っちゃってさぁ……。

 

まぁ、話し合い前に連絡したから許すけども?もし前みたいな事があったら、ちょ~っと『オハナシ』案件だったから……ねぇ?」

 

サイガ-100の時と同じような、黒いオーラを纏う鋭利な視線が刺さって痛い。また拗らせそうな予感しかしないと、内心で溜息を溢しつつも、ペッパーはペンシルゴンに言う。

 

「正直ペンシルゴンのオハナシってのは、毎回肝が擦り潰される想いを味わうから嫌なんだよ。例えるなら亀虫の臭いが充たされた青汁を、口ん中へ無理矢理飲まされる奴なんだけど」

「私、此のおじいちゃん相手に、話し合いしたくなかったんですけどー?此の人ライブラリ連中の中でも、兎に角根掘り葉掘り聞いてくるから嫌なんだよねぇー?」

 

相変わらず露骨なまでに嫌そうな顔をしているペンシルゴン、対してキョージュは正反対のニッコニコ顔である。

 

「しかし…シャンフロの悪名高い、PKクランの阿修羅会。其のNo,2たる『廃人殺し(ジャイアントキリング)』に、有望な後輩が居たとはね。因みに彼はフリーなのだろう?どうだい、私と『世界の真実』を解き明かしたくはないかな?」

 

さらっとクランに勧誘してきたキョージュ、其の台詞をペンシルゴンもペッパーも、両者共に聞き逃さない。

 

「………キョージュさん。ペッパー君は、ライブラリに『アゲナイ』よ。私と一緒に、やらないといけない事があるからさ」

「………クラン勧誘は嬉しいですが、俺はペンシルゴンとの約束があります。なので其れを果たすまでは、クランには入れません。ペンシルゴンとの約束を果たして、其れでも俺を迎え入れるつもりであれば、俺は貴方との交渉の席に着くつもりです」

 

黒いオーラを纏いながら、キョージュに対して宣ったペンシルゴン。そしてサイガ-100の時と同じように、自分の意思を明白にした上で勧誘を蹴るペッパー。

 

「…良い目をしているね、ペッパー君。成程成程…クラン・黒狼(ヴォルフシュバルツ)団長(リーダー)が言っていた理由、少し解った気がするよ」

 

二者各々の答えを見届けたキョージュはフフフ…と朗らかに微笑する。

 

「其れでは、互いに有意義な時間にしようか」

 

そして激渋ボイスの魔法少女の一声で、俺達の話し合いは本格的に始まる。ユニーククエストやユニークシナリオ、そしてユニークモンスター・墓守のウェザエモンの存在を絶対秘匿する為の、取捨選択の戦いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が今回、ペッパー君と取引したいのは『リュカオーンの呪い(マーキング)』が、他者とモンスターに及ぼす『影響』と『仕様』についてだ」

 

キョージュが話し合いの場にて交渉してきたのは、自身の身体に刻まれた、リュカオーンの呪い(マーキング)の詳細だった。

 

「今日まで、ユニークモンスターから呪いを受けたプレイヤーはペッパー君を除いて『確認されていない』。其故、君が体験している呪いの『情報』は、とてつもなく希少…後々君と同じような呪いを受けたプレイヤーにとって、仕様に関する情報の有無はプレイに影響を与える可能性が非常に高い」

 

情報がハッキリとしていないからこその『未知』であり、其れを『解き明かす事』が考察クランたるライブラリの使命だと、キョージュはそう言いたいのだろう。

 

「ペッパー君の『呪い』に関する情報に対し、クラン・ライブラリは『七つの最強種の情報』をペッパー君とペンシルゴン君に提供しよう。無論、既に判明しているモンスターに限るが…どうだね?」

「七つの最強種?」

「そう。ライブラリの調査班や他のプレイヤーによって、今まで謎であったユニークモンスターの『総数』が判明した。其れが『7体』、故に私達はユニークモンスターを『七つの最強種』と呼ぶ事に決めた」

 

ユニークモンスターの名前が解るだけでも、万が一遭遇した場合を考え、備える事は出来る。何より他のプレイヤーより先に名前を知れる事は、色々とアドバンテージにはなる。

 

しかし、名前が解ったとしても『特徴』や『攻撃方法』が判明していなくては、ユニークモンスターの『攻略』には繋がる事はない。

 

ペッパーは此の情報をどうするべきかと、ペンシルゴンを見ながら問い掛ける。

 

「…ペンシルゴン、どうする?」

「良いと思うよ。ペッパー君が現状体感してる事、おじいちゃんに教えてあげて」

 

「分かった」と頷き、ペッパーはキョージュにリュカオーンの呪いが刻まれた右手をテーブルに乗せ、話し始める。

 

「リュカオーンから受けたマーキングですが、自分よりもレベルが低いモンスターは、戦闘エリアでも蜘蛛の子を散らすように逃げられてしまいます。今の俺のレベルは30で、其れより弱い相手は逃げてしまって、レベリングに支障が出てます。

 

旅人のマントで隠してても、気配が滲み出ているせいか、NPCとも普通に会話出来てる方が少ないですね。其れでも、セカンディルの武器屋に居る鍛冶師のおっちゃんには、呪いを持ってても会話が出来たり、エンハンス商会のレクスさんは逆に、ハイテンションで話し掛けてきたりしましたが……」

 

自分が体験してきた事を、ペッパーはキョージュに面と向かい合って話をしていく。キョージュもまた、其の話を真摯に聞き、一言一句聞き逃す事が無いようにしているようだ。

 

「ただ、此のマーキングは『無機物系統』か『視覚を持たないモンスター』には効果が無い可能性があって、シクセンベルトに来る前に攻略した『神代の鐵遺跡』のサプレスドローン達は、呪いが有るにも関わらず襲い掛かられました。

 

なので、レベリングをする場合は『ドローンタイプ』や『ゴーレムタイプ』のモンスターと戦うのが良いかと。其れと『エリアボス』達には門番的な性質からか、呪いの効果は無いみたいで、戦闘は普通に出来ました。後はデバフや呪術に対する耐性が在るらしいんですけど……残念ながら其所は、試したりしていないので詳しくは解ってないです……。

 

今のところ、リュカオーンの呪いに関して自分が解っているのは、此のくらいですね」

 

ふぅ…と一息着くように、ペッパーは語り終えた。

 

「成程…とても貴重な情報だ。NPCの情報と有事者からの情報では、後者に軍配が上がるな」

 

ニッコリと微笑むキョージュ、どうやら情報の質に満足したと思われる。

 

「では約束通り、現在判明している七つの最強種についての情報を、ペッパー君達に提供しよう」

 

そうしてキョージュは2人に、七つの最強種たるユニークモンスターの情報を提示していく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ずはペッパー君が戦い、呪いを刻んで行った『夜襲(やしゅう)のリュカオーン』。夜の時間帯にシャンフロ各地を駆け回る、ランダムエンカウントの黒い狼。目撃情報も多く出回り、ユニークモンスターの中では知名度は『一番高い』。

 

また、最近の調査によって性別が『(メス)』であるとの情報が出てきたが、此れはハッキリとしていない」

 

キョージュが最初に語ったのは、自分にとっても因縁浅からぬ敵。サイガ-100率いるクラン:黒狼が、最終目標として討伐を目指し、そして自分が保有する手札の中でも『残照を刻んだ致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)』なる、確定召喚を可能にした爆弾クラスの切り札(ジョーカー)が在る。

 

墓守のウェザエモン共々、公に出来ない秘匿情報だ。

 

「次に『天覇(てんは)のジークヴルム』。全身が黄金に包まれた『金色のドラゴン』で、リュカオーンと同じくランダムエンカウントなのだが、空を飛んでいる為に中々戦う事が出来なかった。

 

だが、2ヶ月前に『気宇(きう)蒼大(そうだい)天聖地(てんせいち)』を探索していたプレイヤーが、頂上にて休息しているジークヴルムを発見し、此処を居住の1つにしている事が判明。人語を喋り、己を超えんとする英雄を常に求めているそうだ」

 

前に見たネットの情報に在った金色の龍、其れが天覇のジークヴルムと繋がった。己を超える英雄を求めるという性格から、ペッパーはジークヴルムなるユニークモンスターは、ある種の『魔王ムーヴ』をしているのかと考えた。

 

無論の事になるが、自分の真隣に座している悪辣外道の黒幕魔王(アーサー・ペンシルゴン)とは、一線を隔てた清き崇高なる魔王として見ての話である。

 

「最後に『深淵(しんえん)のクターニッド』。場所はフィフティシアの裏町に居る、発狂したNPCの発言によって判明した。海に潜み、巨大な足を持った、黒い大蛸のモンスターとされている……。のだが、クターニッドに関しては、リュカオーンとジークヴルム以上に情報が少ない。

 

言ってしまえばユニークモンスターに関しては、何れも此れも謎に包まれ、我々考察クランも暗礁に乗り上げているのだ」

 

夜襲のリュカオーン、天覇のジークヴルム、深淵のクターニッド、そして此方が隠している墓守のウェザエモン。七つの最強種の内、四強が明らかになったが、ペッパーは此処で1つの疑問が浮かび上がった。

 

ラビッツの兎御殿、ヴォーパルバニーの大頭『ヴァイスアッシュ』。身体から溢れる、分厚く重大な覇気を纏った彼は、もしかしたら明かされていない『七つの最強種』の一角なのではないか?……と。

 

「だからこそ…リュカオーンと戦い、其の身に強者たる証を刻まれた君を、上位クランは『戦力』や『情報源』として欲しているのだ」

 

そう言ったキョージュは、画面を開いて操作を行い。ペッパーの前に『フレンド申請画面』が出現する。

 

「フレンド申請…ですか?」

「ユニークモンスターの呪いに関して、私も解らない事が沢山有る。呪いに関して何か判ったのなら、私に連絡を頂ければ此方も、君の役に立つ情報を提供しよう」

 

キョージュからのフレンド申請、此れをどうするべきか、横目でペンシルゴンをチラリと見る。其のペンシルゴンは『駄目に決まってるでしょ!』と視線+ジェスチャーで此方に圧を掛けてくる。

 

「ペンシルゴン。確かにキョージュさんは何考えてるか解らないけれど、信用には値するプレイヤーだと俺は思う」

「ペッパー君?私の事、信用出来ないって言うのかなぁ?お姉さん悲しいぞぉ?」

「そういう意味じゃないんだよなぁ…」

 

確かにペンシルゴンは人の不幸を嘲笑う畜生で、今も何を考えてるのか解らなかったりする時もある。其れでも彼女は決めた事は必ずやりきるし、最後にはあっと驚くような結果を見せてくる。

 

悪巧みをしている時の彼女の顔は、誰よりも生き生きしているし、どんな結末を頭の中で描いているのかと興味も合った。

 

「……ペンシルゴンの事、俺は此れでも信用してるんだよ。悪事や策を憚ったら、俺の知る限りペンシルゴンの右に出る奴は居ないって思ってるし、最後には色々な意味で驚かせてくるからさ」

 

自分の内側に燻るモヤモヤは今尚晴れないが、其れでも言葉にするならば、少しくらいは整理が付くだろうか。

 

「ペンシルゴンは其の…………先輩と、しても……『頼り』に………してるし」

「ッ~~~~~~~~~~~~!!!!!」

「あいったぁ!?ちょっ、痛いって!?」

 

段々と恥ずかしくなって、後頭部を掻き始めてしまったペッパー。其れを聞いたペンシルゴンは、目に艶やかな光が灯り、頬は赤く照りながら、バシバシとペッパーの背中を叩き始めた。

 

「フフフ……良いものを見せて貰ったよ。ペッパー君、ペンシルゴン君。お邪魔虫の私はそろそろ掃けるとしよう。フレンド申請はゆっくり考えて、後日に決めてくれ」

 

其れではと、キョージュは手を振って店を後にし。ペッパーは暫くの間、ペンシルゴンに今の発言を弄られまくり、恥ずかしさで赤面する事になったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーくん、私の事そんな風に思ってたなんてねぇ~♪お姉さん、すっごく嬉しくなっちゃったよぉ~?」

「うごごごご………恥辱だ、マジで恥辱だ……!」

 

コーラルの釜戸店を出て、路地裏に入ってからも、ニヤニヤニマニマと黒い笑顔でペッパーを弄るペンシルゴンに、ペッパーは自身が晒した大き過ぎる隙を見せた事に赤面になりながら、頭を抱えて唸っていた。

 

「フフフ…あーくんは何時も気取った顔してるけど、可愛い顔も出来るんだね。お姉さん、意外な一面が見れて大満足♪」

「ぐぐぐぐ…一生の不覚だ、ちくせう……!」

 

恥ずかし過ぎて、今すぐにログアウトしてしまいたい。顔を赤面させながら、ペッパーは早歩きで路地裏を歩き続けていく。

 

そんな折「あーくん」とペンシルゴンが足を止めて、ペッパーに言ってきて。

 

「2日後に、蛇の林檎で。……またね」

 

そう言って手を振った姿は、幼い頃に見た夕焼けに照らされて、笑顔でまた遊ぼうねと約束をした天音 永遠の顔と同じで。

 

「!……あぁ、またな。トワ」

 

昔の記憶を思い出しながら、ペッパーも手を振って2人は各々の場所へと帰って行く。燻り続けるモヤモヤは今も残ったままだったが、彼女と一緒に居ながら話をして、ほんの少しだが其のモヤモヤが晴れた気がして。

 

2日後のペンシルゴンとのレベリングを行い、甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)の初陣で彼女を驚かせてやろうと、ペッパーは心に誓って此の日のシャンフロを終えたのだった……。

 

 

 






七つの最強種(4/7)


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