VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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御挨拶




アットホーム・アセンション 〜突撃、天音 永遠の実家 其の壱〜

7/23……………遂に此の時がやって来た、やって来てしまった。

 

「緊張するなぁ………。おじさんとおばさん、元気にしてるだろうか」

 

夏期休暇前最後の大学講義、そして今日のコンビニバイトを終えた梓は現在、天音 永遠より送られてきたメールに貼られた『上空写真』を頼りに、単身其の場所を目指して歩き続けていた。

 

時刻は午後四時半過ぎ、昼間程の暑さでは無い物の其れでもジリジリと肌を焼いて、体内から水分を奪う茹だる様な。其れでいて蒸し暑い時のジットリと、湿気を含んだ嫌な物でもある気候なので勘弁して欲しい。

 

(荷物は必要な物だけに絞り込んだし、実家に帰省する分とアパートに帰るまでの交通費も大丈夫。持ち帰る物も今日アパートを出る前と大学に、バイト先のコンビニの従業員室でも確認して不備は無かった。後はちゃんと、俺が永遠の家に着けるかだが)

 

「お、アレか?」

 

小走りになりつつ近付いて行けば、住宅街に建つ一つの家が見えてきた。其の家は周りとよく似たデザインであり、コンクリート製の壁に郵便受けが埋め込まれ、上部の白石には『天音家』と黒字で彫られていて。梓が己の脳内に保管している記憶を探れば、彼女と一緒に過ごしていた頃よりも少し綺麗になり、家の正面も大分改修されているのが解る。

 

正面に立って深呼吸。意を決してインターホンを鳴らせば、ピンポーン♪と何処にでも有るベーシックな音声が聞こえ、其れから数秒後に出たのは──────

 

『やぁやぁ、あーくん♪ようこそ我が家に、さぁさぁ上がって上がって』

「うん、御邪魔します」

 

自分の恋人であり、そして世界に誇る日本最高峰のカリスマモデル──────天音(あまね) 永遠(とわ)其の人だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天音(あまね) 久遠(くおん)は困惑し、そして頭痛に襲われていた。

 

彼は天音 永遠の実の弟にして、あまりにも有名過ぎる姉のネームバリューにコンプレックスを抱く、現役バリバリの中学生である。

 

そんな彼は現在、目の上のたんこぶ…………或いはコンプレックス其の物というべき、分厚過ぎる猫の皮を被った傍若無人の黒幕魔王たる、天音 永遠の帰省によってゲッソリとした表情になっていた。

 

(シャンフロやろうにも、色々言われるだろうなぁ…………)

 

天音 永遠の弟ながらも、彼自身は気付いていないのだが整った顔立ちや程良く締まった体型は、三下じみた言葉遣いによって台無しになったり、其れを永遠から色々と言われているので、逆に黙っていれば普通に人気が出る………そんな少年なのだ。

 

しかし実家を出て一人暮らしをしている姉が、何故こんなタイミングで帰省して来たのかは、久遠は一切知らない上に解らないでいる。

 

(早く帰ってくんねーか…………此方は頭痛とストレスで狂いそうだ………)

 

人は誰しもコンプレックスを抱えている。自分の場合は其れが唯でさえ大き過ぎる上、下手を打てばボコボコにして来るのだから、溜まったもんじゃない。

 

事実として彼はシャンフロで此迄に築き上げた物を一度、彼女(ペンシルゴン)によって跡形も無く粉砕された経験が有る為に、其の警戒と疑心は大きく膨らんで何時か破裂する予感が有るのだから。

 

と、そんな時に家のインターホンが鳴って、自分の姉がトタタタタと受話器に向かって移動するのが聞こえ、また姉の友達か何かがやって来て自分が雑用に駆り出されるんだろうかと、そんな妄想を抱いてイライラしながらも一体誰だと思い、自室の窓のレースを少しだけ上げて外を覗き、彼は目を丸くしたのだった。

 

「あ、アズサ兄…………だと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俗世間が夏休みなので、年齢や学歴的に見て夏休みを満喫しようとしたら、因縁大有りなキャラクターが実家に突撃して来るといった、ある種の突発的かつ回避不可避の強制イベント発生──────なんていうのは、ゲームの中にだけして欲しい。

 

「おーい、愚弟〜。あーくんとアタシに麦茶入れてー」

「はぁ!?なんで俺が」

「あ"?何か言った?」

「…………………チッ、クソ姉御

「永遠、久遠に対して相変わらず当たりが強いぞ。少し優しくしてやって」

「アタシ此れでも優しいんだけどねぇ〜???」

 

立ち話も何だとリビングに移動し荷物を置いて、洗面所で手洗いと嗽をして戻って来た所、今目の前で行使された『姉特権』によって、三人分の冷えた麦茶をコップに注いでいる久遠は、まさに其れに近しい感情で有るだろうし、此方がされたら堪ったもんじゃない。少なくとも一言文句を言わなければ、腹の虫が収まらないのは間違い無いと思う。

 

「……………で、だ。何でアズサ兄は俺等の実家に来たんだ?」

 

回りくどく聞かず、単刀直入に目的を問いに来た久遠。永遠ならきっと色々とはぐらかしそうだが、生憎大事な話であるは為に先延ばしは好ましく無い。

 

故にこそ、梓は久遠へキッチリと伝える…………何れは『家族』という間柄になる者にして、小さい頃から弟の様な存在でも在った彼に、自分と彼が毛嫌いしている姉が『如何なる関係』に至ったのかを。

 

「久遠、大事な話が有るから聞いて欲しい」

「何だよアズサ兄…………」

「君の姉さん…………天音 永遠と俺は今、恋人(・・)同士として御付き合いをしているんだ」

 

其の言葉により、久遠の動きが金縛りじみた様に止まる。表情からして『嘘だろ!?』か、或いは『はぁ!?』か『マジ???』みたいな、色々な感情でグチャグチャになっている…………そんな所だろう。

 

「いや、いやいやいやいや………………。流石に冗談だろ??」

「……………………………」

「……………………マジ?」

「大真面目に。永遠の本性(・・)も、本質(・・)も含め。其れ等『全て』を引っ括めて、彼女の事が好きだと言っておく」

 

彼女の左手に右手を添えながら、久遠に対して堂々と宣言すれば、永遠の両頬は赤みを帯びて『女』の表情へと変わり。梓の発言と永遠の顔から、久遠は二人の関係が全て本当の事だと察したのか。

 

「……………親父達に連絡入れるわ」

 

そう言いつつ、此れから先々に於いて『姉の理不尽』が彼に向く事を、心の内にて合掌したのであった…………。

 

 

 

 






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