VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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レベリングの幕開け




ユニークは成長し、胡椒は鉛筆と共に往く

考察クラン・ライブラリのリーダー、キョージュとの話し合いから2日後。大学の講義やコンビニのバイトに勤しみ、漸くシャンフロをゆったりと出来る日が来た梓。

 

早速ログインして、梓からペッパーに成った彼は、最後にセーブした兎御殿内の休憩所のベッドにて目が覚めた。

 

「…っし!今日のレベリング頑張るぞ!先ずはシクセンベルトで、マッドネスブレイカーの成長形態を回収だ!」

 

時刻は午後3時を過ぎ、ペッパーはシャンフロに同期させたEメールアプリにて、ログインした事をペンシルゴンに伝えていく。

 

「ええっと…『ペンシルゴン、今ログインした。修繕した武器を回収してから向かうので、少し待っててください』…此れで良し。アイトゥイルー!居ますかー?」

「ほほい、ペッパーはん。ワイを呼んだかいさ?」

 

今回はベッドの下のスペースから、ひょっこり頭を出してきたアイトゥイル。毎回神出鬼没な登場だ、いつか天井から飛び出してきたりするのだろうか?

 

「ペッパーはん、ペッパーはん。ビィラック姉さんから、預かっといた物が有るのさ」

「もしかして…!『アレ』が出来たんですか?」

 

「そうさね」とアイトゥイルが取り出したのは、ビィラックに製作を依頼し、四苦八苦の沼荒野で採掘した鉱石を用いて造られた、2本のマッドネスブレイカー達。

 

シクセンベルトに預けるまで使っていた物と、遜色無く仕上がっており、名匠の名に相応しい仕事振りにペッパーは感動した。

 

「ビィラックさん…ありがとうございます。よし、アイトゥイル。シクセンベルトに向かうから、ゲートを頼みます」

「任されたのさ~」

 

兎御殿からシクセンベルトを繋ぐ扉が産み出され、ペッパーは最早恒例ともなった、旅人のマントにアイトゥイルを隠して、ドアノブを握って扉を開く。成長したマッドネスブレイカーを受け取る為に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんくださーい…ってうぉ!?」

「ペッパーさんの事だから、そろそろかなと思っていてね。待っていたよ」

 

シクセンベルトの裏路地を抜けて、武器屋へとやって来たペッパーを待ってましたとばかりに、男が爽やかな笑顔で迎え入れた。

 

「依頼していた物は完成しましたか?」

「あぁ、キッチリ仕事をさせて貰った。此れが駆動鉱石を用いて育てた、マッドネスブレイカーを改め『ギルフィードブレイカー』さ。其れと、ギルフィードブレイカーの製作方法を纏めた『書物』も有るから、君の役に立ててくれ」

 

そう言い、シクセンベルトの武器屋の男がカウンターに乗せたのは、漆黒の光を内封する、噛み合った歯車模様が鎚全体に蔓延る、円型の歯車両面が特徴的な鐵色の小鎚。そしてセカンディルの時にも見た、ノートが一冊。

 

すると製造秘伝書が独りでに飛び出し、ノートは其れに吸収・合併される形となって消滅。

 

小鎚の方はと言うと、肌に触れればシットリした質感を持ち。しかし手に持てば吸い付くようなフィット具合に、確かな重量感を感じ、振れば振る程に自らの身体に馴染んでいくような、中々の逸品だった。

 

ペッパーは早速、成長して変化したマッドネスブレイカーの性能と、秘伝書の中身を確認する。

 

 

 

 

ギルフィードブレイカー(ユニーク武器):マッドネスブレイカーに、神代の鐵遺跡で採掘出来る駆動鉱石(ギアメタル)を用いて育成した、マッドネスブレイカーの成長形態の1つ。

 

遥か太古の記憶を其の身に取り込み、過去の時代に紡がれた力を以て、所持者の現在(いま)を阻む敵を、物を、壁を打ち砕く。

 

然れど其の身に宿りし力は、完全なる覚醒未だ遠く、小鎚に宿る大蚯蚓の魂は今も尚、新たなる鉱石を欲し、更なる成長と真化を目指さんとしている。

 

戦闘時、装備者に最も近いモンスターかプレイヤーに対するダメージ補正が上昇し、攻撃時に相手の武器・防具・装甲・甲殻に対して、破壊属性を付与する。

 

此の武器で鉱物系アイテムを砕いた場合、其のアイテムを破壊し、希少度合に応じて耐久値を回復する。

 

 

 

 

ロックオンブレイカーの製造秘伝書・改式:ユニーク武器・ロックオンブレイカーの生産、及び成長形態を製作する際に必要となるレシピ。武器屋で鍛冶師に見せる事で、素材を用意すれば生産可能となる。

 

此のアイテムはアイテムインベントリには含まれず、他者によるPKをされても、プレイヤーの手元を離れない。破棄不可能。

 

 

 

 

(滅茶苦茶カッコいい名前になってるし、スチームパンク味の溢れるデザインも素敵だが、破壊属性って何?そして鉱物系アイテム砕いての耐久値回復は、ロックオンブレイカー系列共通効果なのね、うん。

 

しかも製造秘伝書は改式に改名してるし、最後どうなるの?極式になるタイプ?)

 

「ありがとうございます。大事に使いますね」

 

心の中で言いたい事を言い切って、ペッパーは武器屋の男に礼を述べ、店を後にする。其の脚で裏路地に入り、見えない場所でアイトゥイルが開いたゲートを潜り抜け、兎御殿に帰還。

 

再びゲートを使い、ペンシルゴンが待つ蛇の林檎に向かう為、サードレマへと飛ぼうとしたのだが……

 

「ペッパーはん、ペッパーはん。最近ワイを置いてきぼりにするのは、ちょっと関心しないのさ。一緒に連れてってくれないと、ゲートを開いてあげないのさ」

 

と、珍しくアイトゥイルが我が儘を言ってきた為、仕方無く同行を許可した。此れによりペッパーは、ペンシルゴンに見付かる危険性を孕んだ状態で、集合場所たる蛇の林檎に向かう事になる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サードレマ・裏路地、蛇の林檎。アイトゥイルをマントの中に隠しつつ、普段使っている裏路地を大回りルートで走り抜け、ガチャリと扉を開いたペッパー。

 

店内は落ち着いた雰囲気が漂っており、2回とも同じ席でペンシルゴンは座っていた。テーブル席に脚を組んで座る其の姿は、さながらパリの小洒落たカフェの独り、待ち人を待っているかのような、スクショすれば漏れ無く映える1枚が撮れるだろう。

 

「待った?ペンシルゴン?」

「ううん、10分前に此処に着いた感じ。武器の方は修繕バッチリ?」

「あぁ。キッチリ仕事をしてくれてたよ」

 

アイトゥイルがマントの中に居るが、多分バレる事は無いだろう。ペッパーはそう思っていた。しかし彼は、女性が持つ『嗅覚』を甘く見ている。特に『思い人』の浮気等を嗅ぎ分ける時に至っては、警察犬の比にならない凄まじさを誇る訳で。

 

「ねぇ、あーくん。サイガ-100さんの時にはして(・・)、おじいちゃんの時にはしなかった(・・・・・)んだけどさぁ。………今日は『臭い』がしているね」

 

 

 

一体何を隠してるのかな(・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

微笑みながら歩み寄るペンシルゴンが、ゆっくりとペッパーの耳元で囁く言葉に、彼の全身の毛と言う毛が一声だけで逆立った。

 

いやマジか…と。上手く隠し切ったと思っていたのだが、ふと思い返せばサイガ-100が帰った後にハグを要求してきた時点で、自分の臭いを嗅いでいたとすれば合点がいく。

 

「トワ、お前………。まさか、あん時のハグから全部『計算』してたのか?」

「ハグに関しては、あーくんに言わなくても解るでしょ?でもハグした時に、君から若干『獣臭い匂い』がしたんだよねぇ~…」

 

改めて思うが、やはりコイツは曲者だ。隙を見せようものなら、此処ぞとばかりに攻め立てるのが、アーサー・ペンシルゴンというプレイヤーな訳で。

 

一部のプレイヤーのみが使う、NPCが運営する蛇の林檎。密会として最適なシチュエーションで、他者に知られる危険を避けて、確実に情報を引き出す。

 

完全に一本取られた。

 

「さぁさぁ、あーくん。私に『隠してる物』は何なのかなぁ?」

「………はぁ。凄いよ、トワは」

 

観念するようにして旅人のマントを開くと、其処にはアイトゥイルが、ペッパーの右脇腹に引っ付く形で掴まっており。ペンシルゴンの視線に気付いて、彼女はサッと背中に隠れる。

 

「…黒毛のヴォーパルバニー?」

「まぁそうだね。此方の特殊クエスト(・・・・)の関係で、一時的にパーティーに入ってるNPC。名前はアイトゥイルって言うんだ」

 

アイトゥイルはユニーク関係なので、此の言葉に『嘘は無い』。しかし此処でペッパーが仕掛けたのは、特殊クエストの絡みであるという『フェイク』。

 

リュカオーンの呪いによって発生し、現在受注している『ユニークシナリオ:兎の国からの招待』で加わったヴォーパルバニーであると、ペンシルゴンから隠す為にペッパーは仕掛けたのだ。

 

「特殊クエストの関係ねぇ…。今回はNPCモンスターがパーティーに加わるタイプなの?」

「あぁ。どうにも、今回のクエストクリアで『新しい武器』が手に入るらしくてね。協力してくれる事になったんだよ」

 

実際は『空を飛べるユニーク遺機装(レガシーウェポン)一式+籠脚』が報酬で、武器たる籠脚は装備の『一部』でしかないが。

 

「ふぅ~ん………。其れにしても、随分和装なヴォーパルバニーなんだね。見た感じは風来坊なのかな?」

「ア、ウン。ソウデスネ」

 

ペッパーは片言のように言いつつ、旅人のマントを下ろしてアイトゥイルを再び隠した。もし此処で「アイトゥイルは女の子だぞ?」なんて言おうものなら、ペンシルゴンはまた変な風に拗らせる可能性が非常に高い。

 

「さて…あーくんが何隠してるか解ったし、気を取り直してレベリング場所に向かうよ」

 

やっと本題に入り、ペンシルゴンは自分のアイテムインベントリから取り出したのは、何かの道順が印された『地図』と『釣竿』だった。

 

「なぁトワ、何故に釣竿?」

「向かう場所は神代の鐵遺跡……其のエリアを『ある道順』で進むと行ける『隠しエリア』が在るの。で、釣竿は其処で必要になるアイテム。実際に行けば解るからさ」

 

「じゃ、往こう?あーくん」と、ペンシルゴンに導かれて、サードレマ・蛇の林檎よりペッパーとアイトゥイルは神代の鐵遺跡に向かう。

 

目指すエリアの名は『涙光(るいこう)地底湖(ちていこ)』。サードレマから行けるエリアの中では、随一に近いレベルで、経験値稼ぎが出来る事で知られる此の場所は、後に『2人のプレイヤー』も利用する事になるのだが、其れはまだ先の話である……。

 

 






再び目指すは、神代の鐵遺跡

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