VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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パワーレベリング突入





胡椒と鉛筆と黒兎、サーモンとサーペント

神代の鐵遺跡には『とあるルート』を通る事で行ける、隠しエリアが存在している。

 

遺跡へと突入し、地下1階を真っ直ぐに進むと、真ん中に穴が空いたプレートが在り、其のプレートの左側を進む。暫く道なりに進むと、大きな亀裂で谷の様になった場所が在るので、其処を飛び越えると四方が欠けているプレートが見える。

 

此のプレートは通常の物とは軌道が異なり、地下2階と3階の隙間に向かう、特殊なルートになっているので、逃さずに飛び乗る事。

 

「━━━そうして先に進んで、最後に大穴へ飛び込む事で、隠しエリア『涙光(るいこう)地底湖(ちていこ)』に辿り着く……か。しかしまぁ、こんなルートをよく見付けたなトワ」

「ふふん♪此処発見してから暫くの間、レベリングする時に通い詰めたからね。隠しエリアで出現するモンスターは経験値が美味しいし、何よりタフだから覚えたスキルの実験台にも向いてるの」

 

サードレマ・蛇の林檎から神代の鐵遺跡にやって来た、ペンシルゴンとペッパー、アイトゥイルの2人と1羽のパーティーは、彼女が書き記したルートに従って、遺跡とプレートで出来た道を、飛んだり跳ねたりしながら進んでいた。

 

「っと…あーくん、着いたよ」

 

そう言ったペンシルゴンが指差す先には、地面を繰り貫かれた様な大穴が空いており、底の方は真っ暗で見えないようになっている。

 

「なぁトワ。俺のキャラビルド、低耐久高機動の物理型なんだが、此処降りたら死にますみたいな事って起きないよな?大丈夫か?」

「随分と深いのさ……」

「斜面はスロープみたいに滑らかだから、耐久が低くてもダメージ受けないし大丈夫だよ。というか、アイトゥイルちゃん喋れるんだ…」

 

大穴を覗き込み、罠を想定した思考で言葉を発するペッパーと、実直な感想を述べたアイトゥイルに、連れ歩くヴォーパルバニーが喋った事に反応するペンシルゴン。

 

「ささ、あーくんとアイトゥイルちゃん、ほれほれ入った入った」

「う~ん…アイトゥイル、酔息吹を頼んだ」

「任されたのさ」

 

瓢箪水筒の酒を含み、火炎放射で闇が満ちる穴を照らす。どうやらペンシルゴンが言った通り、スロープ状にはなっているのでダメージは受けなさそうだが、念には念を入れて、アイテムインベントリから致命の小鎚(ヴォーパルレッジ)を装備。

 

壁を背中に足裏を着けながら、罠の可能性を鑑みつつ、慎重にゆっくりと降りて行って━━━━━辿り着く。

 

地下とは思えぬ昼間に似た明るさは、地底の地層から放たれる『白照石(はくしょうせき)』と呼ばれる岩が放つ、天然のLEDライト。そして水底さえも透き通る程の、最上位クラスの水質たる地底湖が其処には在った。

 

「とても綺麗さ……」

「神代の鐵遺跡の中に、こんな場所が在ったんだな…」

「綺麗でしょ?此処が隠れたレベリングの穴場『涙光の地底湖』だよ」

 

そう言いつつ、ペンシルゴンは釣竿をインベントリから引っ張り出して、針に餌をくっ付けるや湖の奥目掛けて釣糸を垂らした。

 

「ほらほら、あーくん。フィッシングだよ、フィッシング。此処で釣り上げられるモンスターは、経験値が美味しいんだから」

「わかった、わかった。ちょっと待ってて」

 

ペンシルゴンに急かされながら、ペッパーはアイトゥイルを肩に乗せて、渡された餌を針に付け、湖に投げる。と、開始早々いきなり釣竿が引っ張られた。

 

「うおっ、いきなりヒット!」

「ペッパーはん、中々やるのさ」

「お~、あーくん運が良いねぇ」

 

筋力50以上から成るパワーで竿を引き、対象を湖より釣り上げる。水飛沫が舞い踊り、針に食い付いていたのは……栄養を其の身に蓄え、丸々と肥え太った1匹の『鮭』だった。

 

 

 

ライブスタイドサーモン

 

生命の潮流に住まう鮭。その身は食した者の体力を回復させ、その卵は優れた魔法触媒となる。大いなる大地にも命があり、血と命が巡る。

 

 

「あら、あーくん残念。其れは此処でしか釣れない魚で、料理人を職業に持ってるプレイヤーかNPCに調理して貰うと、美味しく食べられるよ」

「……つまりハズレって訳かい。まぁ、いざって時に使える回復アイテムと考えれば良いか」

「お、此方もヒットしたよ」

 

アイテムインベントリに鮭を入れていると、ペンシルゴンの釣竿が弛み、彼女がレベルカンストの筋力で湖から獲物を引き上げる。

 

其の魚影は小さく、しかし途中から大きな物へと変わり、水柱を纏って現れるは、ライブスタイドサーモンに噛み付き、髭と牙を生やした、ヒレや各部の鰭を鋭利な物へと変えた、10メートルは有ろう赤身掛かった巨大鰻。

 

「あーくん!コイツが『ライブスタイド・レイクサーペント』、経験値が美味しいモンスター!」

「よっしゃ、狩るぞ!」

「はいさ!」

 

ペッパーが致命の小鎚を振るい、アイトゥイルも嵐薙刀・虎吼を構え、ペンシルゴンもインベントリから武器を取る。

 

彼女の武器の形状は『槍』、しかし纏う気配は『魔法』や『呪術』の類いに似た物で、白黒の混沌たる『カオス』が織り成す槍である。

 

「トワは『槍使い』か、接近戦に強そうだ」

「ちょっと違うね。私の()のメイン職業(ジョブ)は『魔槍使い』、キャラビルドは『対人戦を想定した』体力・筋力・スタミナ・器用に重きを置いた、長期戦仕様。本当は『ある槍』を使ってるけど、ウェザエモン戦の為に『担保』にしてるから、今は他の槍で頑張ってる感じ」

 

もう既に墓守のウェザエモン(七つの最強種)の攻略の為に準備をしており、メイン武器を担保にしているのも、PKによるデメリット回避の為に取った行動だろう。

 

「さぁ、彼方さんが来るよ!」

『ジャアアアア!!』

 

ライブスタイド・レイクサーペントが吠え、鋭い牙でペンシルゴンに突撃してくる。

 

「アイトゥイル。俺が大鰻の側面に回る、奴の身体を切り裂きまくって」

「任されたのさ、ペッパーはん」

 

アイトゥイルを肩に乗せて、ペッパーはハイドレートワークを起動。ペンシルゴンが注目(ヘイト)を買う中で、彼は大鰻の『死角』を意識し、スキル:五艘跳びで跳躍。レイクサーペントの側面に降り立ち陣取る。

 

「バルガストライク!」

「無双閃刃!」

『ギジャア!?』

 

斬打応酬、意識外からの手痛い一撃を食らうも、レイクサーペントは直ぐに注目を変更。湖の水を器用に尾鰭で救い上げ、ペッパー達へ水遊びの様に吹っ掛けてきた。

 

食らったらヤバい!━━━そんな予感がペッパーの脳裏を過り、スキル:アクセルが起動。直撃寸での所で、間一髪の回避に成功する。

 

「アイツそんな器用な事出来るの!?」

「危ないのさ…!」

 

油断出来ない相手に、ペッパーとアイトゥイルは気を引き締めて直して、各々が己が持つ武器を強く握り直す。

 

「大鰻ちゃん、あーくん達に気を取られて良いのかな?」

 

ふと、レイクサーペントが聞いたのはペンシルゴンの声であり、両手に握る白黒の魔槍━━━『混沌魔槍グリサイア』を跳躍しながら振るい。

 

黒闇と白夜の泡沫(ダース・ホォル・フロース)!」

 

魔槍の切っ先に白と黒のオーラが紡ぎ、ライブスタンド・レイクサーペントの脳天を一刺しにする。

 

『ギジャアアアアアアア!!?』

「あーくん!アイトゥイルちゃん!ヤっちゃって!」

「任せろ!」

「解ったのさ!」

 

レベルカンストの暴力から成る筋力と、重力エンジンを用いた落下と共に、ペンシルゴンが大鰻を地面に組み伏せる。引き抜かれ、破壊部位と成った額部分にアイトゥイルのスキル:風来刃・夜叉斬りと、ペッパーのスキル:ダイナモインパクトが炸裂。

 

ライブスタンド・レイクサーペントを構築するポリゴンが爆発して、ペッパーのレベルが1つ上昇。同時に此処までの戦闘経験を元に、スキルが進化・変化を起こし、新たなスキルが開眼する。

 

「すげぇ…あの大鰻、経験値が旨いな…」

「ペンシルゴンはん、強いのさね…」

「ふふん♪見直しちゃったかな?」

 

ライブスタイド・レイクサーペントの経験値効率。致命魂の首輪が有る状態で1体討伐する毎にコレならば、十数体以上狩る必要こそ有るものの、今日中にレベル35に到達出来るとペッパーは確信した。

 

2人は再び釣りをする。己が目標を叶える為、其の者と少しでも長く居る為に。

 

 






鮭を釣り上げ、水蛇を狩り取れ



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