VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勇者は来たる




唯一人に捧げる招待状

「はぁ…………疲れたぁ…………」

 

午前八時からコンビニバイトのシフトに入り、午前十一時から午後十一時半の休憩を挟んだ後、午後十一時半から午後三時まで働いた梓は午後四時過ぎに住んでいるアパートへと帰還を果たした。

 

バイト中、他の店員や客から昨日の事を聞かれまくったり、ティーンエイジャーからは嫉妬やら含めた様々な感情を向けられ、あまつさえ写真を撮られそうになる等のトラブルに見舞われた梓だった。

 

だが店長は彼や店員達を守るべく、梓は裏方の仕事に回すと共に、店内で騒ぐ面々に対して『店内での声出しや写真撮影は他の御客様の御迷惑、並びにプライバシーの侵害となりますので、其れ等の行為は御止め下さいますよう御協力をよろしく御願い致します』と注意喚起をしたのである。

 

其の後も梓を一目見ようとティーンエイジャーやら野次馬やらが次々と訪れ、其れを見越してか他のバイトメンバーが店内売筋商品をピックアップしたポスターを更新したり、新商品を簡単PRしたりと商魂を発揮。そして此の隙を利用して梓が着てきた服を裏方メンバーが交換・囮役を担って梓が帰る為のサポートをしてくれた。

 

其のメンバーに店長を含めて「幸せになりなよ、梓(君)」と応援され、彼は「後日コンビニスイーツを奢らせていただきます」と約束。そうしてバイト先の仲間達の力を借り、何とか帰って来る事が出来たのだ。

 

「二日振りの我が部屋だ………」

 

玄関の鍵を閉めて荷物を置き、手洗いと嗽をした後に夕食は冷製ワカメスープと簡単サラダを作り、メインは冷凍炒飯をレンジでチン。十五分掛けて食べ終えて、ネットで簡単オススメの腹筋とスクワットを調べて実施した其の後は、歯磨きとシャワーで身体を綺麗に洗って髪を乾かし、デートで購入した衣服達をタンス内の収納スペースに入れ。

 

鞄の中の着替えた衣服に下着に靴下を洗濯機に入れ、二日間触らなかったVRヘッドギアとシャンフロのソフトを入れたパッケージからソフトを取り出し、動作を確認。布団を敷いてギアを頭に装着から布団に寝転がり、久し振りの世界(シャンフロ)に飛び込んで行ったのである………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めた視界に映るのはブリュバスの天井、地響きと爆発音が耳に響くシグモニア前線渓谷(フロントライン)内に在る(比較的)安全地帯の空洞。そして黒毛のヴォーパルバニー・アイトゥイルに、ユニークモンスター・夜襲のリュカオーンの分け身たるノワが此方の覚醒(ログイン)に気付いたか、覗き込む様にして顔を見せる。

 

「あ、ペッパーはん!」

『ワゥン!』

「やぁアイトゥイル、ノワ。良い子にしてたか?」

「勿論さね。ゴルドゥニーネ………じゃなくてウィンプはんとサミーちゃんはんは、特に動きが無いというか料理して戦って寝ての繰り返しをしてたのさ。…………時々サイナはんにコッテリ(しご)かれてたさね」

 

どうやらウィンプも二日の間に随分戦っていたらしく、彼女の話によれば多少マシ(・・)には成れども、未だ『ヘタレ』な部分は否めない上に時折悲鳴を上げている事から、まだまだ道は険しい状態の様だ。

 

契約者(マスター)、漸く目覚めたか。貴方に渡したい物が有る」

 

そんな時ブリュバスの出入口に姿を見せたのは、ペッパーと契約している征服人形(コンキスタ・ドール)のカルネ=ヒトミ(103)であり。其の衣装はキャバクラ運営ゲームでキャストが着ている様な、もしくは舞台に立つ女優の様な衣装を着こなして『一通の封筒』を持っていた。

 

「此れは………手紙ですか?」

否定(違う):契約者(マスター) ペッパー・天津気(アマツキ)はプロトコル『オルケストラ』における設定条件を満たした。其れによって征服人形(コンキスタ・ドール)の暫定規約に基づき、当機()から契約者(マスター)へ『コンサート』の()()()が進呈される」

 

そう言って渡された紙………或いはヒトミが言った招待状を受け取り開くと、其処には簡潔な文面が書き記されていた。

 

 

 

 

『───(コレ)は、貴方を待っています。どうか、貴方の為に歌を』

 

 

 

 

簡単に、されど強い感情が込められた文章。そして封筒を開く事が条件(トリガー)であり、普通ならば見る事は早々無いだろう()()()()()()()。其れも『ユニークモンスターのシナリオウィンドウ』が表示された事で、ペッパーは否応無しに状況を理解する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユニークシナリオEXの条件を達成しました』

『ユニークシナリオEX【あなたに捧ぐ旋律(ウタ)】を開始しますか?【Yes】or【No】』

『称号【七つ星の観測者】を獲得しました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ジークヴルムさんのシナリオがまだ進展してない状態で、ゴルドゥニーネにオルケストラのユニークシナリオまで来るとか、どう考えても交通事故にも程が有るでしょ………。

というかコレ、ユニークモンスターのシナリオコンプリートしちゃったよ俺………。わぁいって喜んでる場合じゃないわ、此処から先の事を考えなきゃ面倒な事になるわ………)

 

おそらくペンシルゴンやサンラク含めて知られたら、先ず間違い無く『オハナシ案件』は避けられないと確信しつつも、取り敢えずはオルケストラのユニークシナリオが如何なる条件で発生するのかを、ペッパーはヒトミに対して質問してみる事にした。

 

「ヒトミさん、質問しても良いでしょうか?」

許可(問題無い):」

「ありがとうございます。では、プロトコル『オルケストラ』の条件について、教えていただけますか?」

「了解及び解説:一つ目に『征服人形との契約』、二つ目に『暫定規約に基づいた旧人類知識の一定量の保有』、そして三つ目に『規定ラインに到達する戦闘力の保有』が挙げられる」

 

ヒトミの発言から予想するに、オルケストラのユニークシナリオは『征服人形との契約を必須』とし、神代(旧時代)の出来事や歴史に関する『様々な知識を学んでおり』。かつプレイヤーがモンスターや他のプレイヤーと戦闘し培ったレベルか、もしくは隠しステータスの『歴戦値』が一定のラインを超過する、或いは其の両方を満たす事がシナリオの発生条件なのだろう。

 

おそらく神代の知識は、ベヒーモスで勉強していれば満たせる上、彼処の環境生物達を相手にしていれば歴戦値は大いに高められる。問題の征服人形は件の影法師と遭遇、満足させてドロップするコートを装備し、オルケストラの試練を超えれば捜し出す事は容易になる点を加味しても、どうしても『緩い条件』と思わざるを得ないのだ。

 

「まぁ取り敢えずライブラリに、オルケストラのユニークシナリオを発生させた事を伝えるのは確定として………だ。先ずはラビッツでビィラックさんに頼んで武器や防具の修復に、後ウィンプさんの事を先生に事情説明をしなきゃか…………」

「あ、ペッパーはん。ゴルドゥニーネの事ならサンラクはんがエムルと一緒に、オカシラへ事情説明をしていたのさ」

「えっ、そうなの?」

 

どうやら先んじてサンラクが行ったらしく、詳しくはエムルかサンラクに話を聞いてくれという。暫く思考したペッパーは、自分も報告しに行くべきだと思い。

 

ヒトミには帰って来た時にウィンプ・サイナ・サミーちゃんに何か起きた場合に、状況を纏めて報告する事を御願いし、彼はアイトゥイルが開いたゲートを彼女とノワを連れて潜り、ヴァイスアッシュに報告とビィラックに会うべくラビッツに向かって行ったのである…………。

 

 

 

 






やる事をやりに行く


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