VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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やって来ました




其の話は温泉の源泉が如く

シャンフロ旧大陸・第八の街エイドルト。サンラクやペッパーが世話になっている水晶巣崖(すいしょうそうがい)に向かう際に立ち寄る街にして、此の世界(ゲーム)最大手の考察クラン:ライブラリが本拠地を構えている場所でも有る。

 

アイトゥイルが開いたゲートを越えて道行く人々の死角を縫いながら、図書館とも言えるライブラリのクランハウスに辿り着いたペッパーは、其の圧倒的な迄のネームバリューによって案の定囲まれて、様々な質問攻めに晒され。

 

しかしながらペッパーは「セートさんか今現在ライブラリのクランハウスを任されている、プレイヤーの方に話が合って来ました」と、此処に来た本題を決して忘れる事は無く。ケケケーラというプレイヤーがセートに連絡を入れ、数十分後に猛スピードで走って来たからか、息を絶え絶えにしたセートがクランハウスに到着した。

 

「ど、どうも………ベヒーモスから、エイドルトまで………マラソンして来ました、セート………です…………」

「どうも、御疲れ様です。実は今日此方に伺ったのは話したい事が有り、おそらく自分以外にも他のプレイヤーも受注する事になると思われますから」

「成程…………では、教室で話を聞きましょう…………」

 

そうしてセートの案内で教室へと移動し、二つの机を向き合わせてペッパーとセートが対面状態で座り、他のライブラリのメンバーが囲う形で二人を見守る中、話し合いは始まった。

 

「さて、ペッパーさん。今日は我々にどんな情報を御恵み下さるので?」

「えぇ、此の情報は何れ他のプレイヤーも受注する事になる………事実上『独占は不可能』だと確信しています」

「………其れは『ゴルドゥニーネのユニークシナリオ』ですか?」

 

其処でゴルドゥニーネの話が出た事に、ペッパーは僅かに驚くも脳内に蓄積された記憶を繋ぎ合わせ、ライブラリに情報を流したのは『サンラクもしくはペンシルゴン』だと確信。ゴルドゥニーネのユニークシナリオがペッパーから見ても『バトルロワイヤル』で有る可能性が高く、独占は逆に自分達の首を絞めると睨んでいたので、先んじてライブラリに情報を流す事により、情報優位(アドバンテージ)を構築したのだと結論に至った。

 

「………『ユニークモンスター・冥響のオルケストラのユニークシナリオEXを発生させた』──────と言ったなら。其の言葉を貴方達(ライブラリ)は信じますか?」

 

ペッパーの示した答えに、ライブラリの面々は大きくざわめいた。冥響のオルケストラに最も近く、最も輪郭を掴んでいるペッパーの発言は、彼の言葉に強さと重さを宿し。

 

極め付けにペッパーは、ヒトミから手渡されたオルケストラからの招待状を見せた事により、ライブラリのメンバー達は彼の言葉が本当であると確信したのだ。

 

「冥響のオルケストラのユニークシナリオEXの発生条件は、自分が契約しているヒトミさんの情報では『三つ』有ります。一つ目が『征服人形(コンキスタ・ドール)と契約している事』、二つ目が『暫定規約に基づいた旧人類知識の一定量の保有』──────つまり『神代に関する知識を一定以上知っている事』。そして三つ目に『規定ラインに到達する戦闘力の保有』、此れは『強敵達と戦う事で蓄積される隠しステータス歴戦値と受注者のレベル』に関係が有ると思われます」

「……………成程、成程……………」

 

セートが考え出し、ライブラリの面々も顔を見合わせてざわついている。と、そんな中で一人のプレイヤーがペッパーに質問をして来た。

 

「あ、あの、ペッパー………さん。えっと…………」

「大丈夫。落ち着いて話して下さい」

「あ、ありがとうございます。えっと………先程言った『歴戦値』って、何ですか?」

「歴戦値はステータス画面では『確認不可能』な隠しステータスの一種で、プレイヤーが戦ったり死亡したりすると高まっていく物で有り、強敵と戦った場合は其の上昇数値は跳ね上がる傾向に有るみたいです」

 

落ち着くのを待って答えた事で納得して貰えたのか、ペコリと頭を下げたライブラリのプレイヤー。しかし其れが呼水となったのか、他のプレイヤー達の知識欲を刺激して質問の大洪水が発生する。

 

「ペッパーさんって今レベル幾つですか!?」

「神代の知識ってベヒーモスで勉強してれば身に付いたり?」

「イムロンさんに古匠の情報を流したと聞きましたが、其れって本当なんですかペッパーさん!!」

「新大陸のモンスター狩った成果って有ります?」

「影法師の試練に挑戦中なんですけど、ペッパーさん的な対策って有りまっか!?」

「ペッパーさん、サイン下さい!」

「ペパ子ちゃんにはならないんですか!?」

「ペッパー君!」

「ペパ子ちゃんボイスが欲しいんです!!!」

「ペッパーさぁーん!」

「ペパ子ちゃんになってー!!!」

 

「静粛に」と手を叩いたセートの一声で、ライブラリのメンバー達が静かになる。

 

「今し方、私からキョージュにメールを送り、其れから話が返ってきました。内容はこうです…………『ペッパー君の話から察するに、オルケストラのユニークシナリオEX自体は発生条件は其処まで難しくは無いだろう。クターニッドのユニークシナリオが終わり次第、是非とも内密に話を聞かせて欲しい』…………だそうです」

「了解です」

 

此方が真摯に条件を開示したからか、キョージュは此方の状況を大体把握した答えを返しに来たらしい。流石は考察クラン最大手のリーダー、下手に尻尾を出せば色々と探りを入れられる。

 

「あ、因みにキョージュさん達は現時点でクターニッドのシナリオはどの辺りまで進みましたか?」

「少々御待ちを……………。………………『先程、SOHO-ZONEさんが血眼になって『アトランティクス・レプノルカ』を十度のデスポーンを経て討伐し、()()()()()()を手にして狂喜乱舞している。我々は四体の封将なる敵を倒し、翌日から城の探索に入る』…………だそうです」

 

SOHO-ZONEからの要請は冥王の鏡盾(ディス・パテル)の製作依頼、ライブラリは冥響のオルケストラの事、ユニークシナリオ参加メンバーはクターニッドと力を分けた一式装備の開示だろうと予想し、記憶の中へと紐付け繋ぎ合わせたペッパーはセートへ「ありがとうございます」と礼を述べ。

 

そしてライブラリのメンバー達の質問の大洪水には、答えられる事に関しては親切丁寧に真摯に答え、重要事項に関しては徹底的に秘匿する方針を貫き徹し、此の局面を乗り切ったのである………………。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、自分は此れから水晶巣崖に行くんですけど……………」

「「「「御供しても良いですか!?」」」」

「アッハイ」

 

 

 

 






いざ、水晶巣崖へ

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