戦闘開始
「エクゾーディナリーモンスター…………。アレがライブラリへの調査報告の中に上がってた、
「す、凄い……………!」
「頭悪い金ピカな姿…………」
流石はライブラリ、こんな状況でも観察して居る辺り精神は余程図太い様子。考察要素が飛び込んで来たのだから、そうなるのは当然というか必然というか。
そんな此方の即席パーティーに相対する金晶独蠍、不世出個体たる『
まるで『先手はお前達に来れてやる、何処からでも掛かって来い』とばかりに、此方を挑発している様にも見える。
「あの両鋏…………90度で鎌モードと180度で剣モードって事は、折り畳んだ状態は『鋏モード』なのか?」
「いや『拳モード』じゃない?折り畳んだ時の形が其れっぽいし」
「其れより『尻尾の先の剣』、サイガ-100の『聖剣エクスカリバー』に似た雰囲気を感じる……………」
「確かに。となると、遠距離攻撃がデフォで搭載されてるのかな?」
「ペッパーさーん!私達で観察して情報提供するんで、タイマン御願い出来ますか!?」
「承った!周りの水晶群蠍の動きに注意するのと、ちょっかいを出すのは止めて下さいね!何をして来るか解りませんから!!」
藪を突付いて蛇を出すくらいなら、見え透いた罠は踏まないに限る。覚えゲーの死に覚えは精神面にも疲労を蓄積させる、一瞬の油断がノーダメ攻略を水泡に帰させるのだから、慢心駄目絶対は御約束だ。
左手にギルフィードブレイカーを装備、二刀流相手には速攻で叩いて即離脱を心得ながら、
ギルフィードブレイカー達は鉱石系で身体を構築したモンスター相手に対して、其の防御力を削って自身の耐久値回復に繋げる、謂わば『特効とガンメタでブッ刺さる小鎚武器』。そちらが先手を譲った時点で、相応のダメージを受ける覚悟が御有りと見える。
だが黄金の皇帝が取った行動は、此方の予想を越えた『非常にシンプルな物』。
鎌モードの右鋏でギルフィードブレイカーの面を受け、右鋏の付け根を『人が手首を回して捻る挙動』を取る事によって、此方が仕掛けた鎚攻撃を
「ッ──────ォア!!!」
だがペッパーの身体が空中で超高速回転するや、迫った左鋏の一撃がギャウイン!!と甲高い音を鳴らして弾かれ、水晶のバトルフィールドに彼の身体が着地する。
フラッシュメモリー:パトリオ・ストイック、其の中で一番の当たりスキルたる
「此れ──────
幕末で得てきた直感が、上から襲い掛かる輝ける美しき剣が迫る事に警鐘を鳴らし、即座にレーアドライヴ・アクセラレートの起動で二度瞬間移動し、皇金世代の正面に陣取る。
そして彼を突き刺す筈だった剣の鋒は地面に。一点に凝縮された一突きは地面に突き刺さるが、刃先の周りに『一切の罅割れ』を残さず。直ぐ様に抜かれて『正眼の構え』の如く、元の位置に戻された。
「おいおい、皇帝陛下よ………!思った以上に『戦闘スキル』が高いじゃないか………!」
戦闘スキル…………所謂『ダメージコントロール』や『武器の扱い方の巧みさ』、或いは『突発的なコンボの算出』等の戦闘中に置けるプレイヤーやモンスターを『外面や内面の強さ』を示す物。レベルの概念が存在するゲーム以外では、此のスキルの高さが攻略難易度に直結する事が往々にして存在している。
二合打ち合った事でペッパーの脳内で産出された金晶独蠍"皇金世代"の印象は、『高い戦闘スキルと凄まじい耐久を誇る甲殻を持ち合わせながらも、敵の挙動に合わせた攻撃を使い分ける蠍達の皇たる強敵』という物が弾き出された。
「こりゃあ、此方が今持っている手札と武器のリソース。フル稼働させて戦わなきゃ、皇帝陛下に失礼極まりないな…………!」
レベルキャップを解放しても未だに満たされる事は無い、強敵への挑戦するという『意欲』と『挑戦心』が、業火の如く燃え上がる。負けられない、負けたくない………そんな彼の熱は闘気と成って、再び彼の背中を押して身体を前へと進めていくのだ。
「此処で討ち取らせて頂こうか、皇帝陛下ッッッッ!!!」
「うわぁ…………」
「凄いなぁ…………」
「いや当たってたって所を躱してるって、最前線走ってるプレイヤー怖い…………」
ペッパーが皇金世代との戦闘を開始し、幾度のぶつかり合いを繰り広げる中でライブラリ所存のプレイヤー・くの一装束の女アバターの
ペッパーが攻めれば皇金世代はカウンターを仕掛け、逆に皇金世代が仕掛けたならばペッパーは三桁の機動力で振り切り、互いに一進一退の攻防を繰り広げる光景はさながら、黄金に輝く皇帝に勇者が挑むという『御伽噺の一幕』に等しく。
彼は常に、周りの水晶群蠍や皇金世代の凶刃が何時三人に襲い掛かるとも解らない中で、皇帝から注がれる殺意や観客の蠍達の眼差しを、己の身一つに注目させる様に動き続けていた。
ペッパーの強みは幾つか有り、掲示板等によって纏められたのはあらゆる事態を想定・微弱で些細な可能性も捨てない『圧倒的な思考深度』。対峙したプレイヤーやモンスターが繰り出した、ありとあらゆる様々なモーションを自身の記憶と結び付けて戦略を構築する『インプットアウトプットの速さ』といった、二本柱で支えられているプレイヤー………との評価を下されている。
確かに其の見方は『間違いでは無い』。が、同時に其の見方は『正しくも無い』。彼を支える柱は『もう二本』…………其れは『自分が今迄にゲームで経験した出来事を、己自身や相手の立場に立ち、己の思考と身体に重ね合わせて行う
『相手が自分で有るならば此のタイミングで仕掛けられると明確に嫌だと思うタイミング』を思考し、其処から敵は『どの様に繫げる事で最高出力を出せるか』。はたまた其れを手札の一部としか見ておらず、其れは何か別の『確実に当てる為の別の一手という認識か』等、自分を相手・相手を自分に置き換えて戦う事により、
そして其の彼の強さは両方の鋏を様々なモードに
此の瞬間を『楽しんでいる』という光景を、此の場に居る全ての命に示すかの様に在ったのである…………。
やってやる