VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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皇金世代という存在




衝動は尽き果てず、其れこそが不可能を超える

不世出の存在(エクゾーディナリーモンスター)金晶独蠍(ゴールディー·スコーピオン)"皇金世代(ゴールデンエイジ)"。

 

其の出自は水晶群蠍の老成個体にして、水晶巣崖(すいしょうそうがい)其の物に等しい『歩く大地』とも称される『水晶群老蠍(エルダー·クリスタル·スコーピオン)』の背中にて産まれ。

 

老生個体から『種族を守る次代の決戦個体』として育てられた、同族喰らいでしか腹を満たせない偏食個体たる水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)………金晶独蠍が『育て親たる老生個体の身体を喰らい尽くし、時に己に付き従う通常種が自らを捧げた肉体や、或いは通常種達が狩って献上された偏食個体を喰らって成長した姿』である。

 

水晶群蠍達が食らう事が出来ず、積み重なった宝石塔を始めとして、時に己の身すらも捧げる民達や、水晶巣崖を荒らす偏食個体を喰らい。産まれてから『月光の魔力を受信する事に秀でた』個体は、幾千もの夜の中で煌々と輝く美しき月光の魔力を取り込み続け、大いなる黄金の巨体となった其れは、老生個体にこそ及ばずとも他の一線を隠す程に巨大だ。

 

また前肢の鋏たる『剣鋏』は、時に歴戦の闘士の武技の如く、時に命の尽くを奪い取る死神の鎌に等しく、或いは歴戦の剣士の剣技に等しい、三形態を切り替え振るう多連多彩な変幻自在の動きを見せるだけで無く。尻尾に掲げし月光の魔力を蓄え続けた『聖剣』は、かの勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)の一振りたる、聖剣エクスカリバーの威光にも負けず劣らぬ輝きを放つ。

 

 

 

 

 

また金晶独蠍という種は『夜行性に特化した生態』であると共に、月光を受ける事で身体を構築する水晶の成長を促して傷口を塞ぐという『再生能力』じみた特性、同族を狩る為に更に攻撃的に進化した部位と圧倒的な『戦闘能力』が特徴で有るが、"皇金世代"は其の再生能力を『強敵』と相対した時に行う暇等無く、其れが自分の死に直結する事を『理解』しているからで有り。

 

もしも仮に。万が一にも──────蠍達の皇帝が『命の危機に瀕した場合』。或いは己の一部と同時に、皇帝何たるかを民達に示す"皇金世代"としての象徴たる『聖剣』が、相対した者の手によって()()()()()()()()()

 

此の世界に産まれ出でて、此の瞬間に至る時までに溜め込まれた魔力を爆発的に消費し続け、欠損した聖剣や剣鋏の内側から『超光熱のレーザーソード』を展開・構築する『激昂月光態(バーストモード)』へ移行し、蠍達の皇帝は『聖剣』を壊した宿敵を己の命を以て倒さんとする。

 

此の状態に成ったが最後、消費し続ける魔力の流出を"皇金世代"が止める手立ては『一切無く』。敵を撃滅して勝利しても、或いは己の命を削り取られて敗北しても、如何なる結果に成ろうとも、最後に"皇金世代"を待ち受けるのは己の()という『絶対不変の未来』のみ。

 

だが其れこそが。時に自らの身をも己に捧げて献身する、水晶群蠍達に対する"皇金世代"の『矜持』であり、人類の格言たる『ノブリス・オブリージュ』の其れに近い物であり。

 

 

そして"皇金世代"が己の『命の輝き』を民草に示す、最後の瞬間なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう『怒り』じゃないでしょ…………、どう見ても『ブチギレ』って奴でしょ…………」

「彼処まで理解出来るヤバい状態って、シャンフロのシステム凄い…………」

「まぁそうだな。寧ろ金晶独蠍や不世出個体の『ブチギレ条件』が、全種通じて『尻尾の破壊』ってのは確定した訳だ」

 

ライブラリ所属のプレイヤー、くの一装束の天鞠(テマリ)・軽戦士のロック・ガンナーのパイロンが震えながら見る中、皇金世代の両鋏と聖剣を斬り落としてインベントリアに仕舞い込んだペッパーは、緊張しながらも何処か落ち着いた様子で、蠍達の皇帝を見据えている。

 

対する皇金世代だが、斬り落とされて失われた鋏と聖剣が在った場所から、超高出力の光熱を放つレーザーソードを展開して、甲殻に出来た亀裂からは光熱のソードを出力して現せた姿と共に、下手人たるペッパー達に極重なる殺意と威圧を放ち、真っ直ぐにぶつけて来る様たるや、まさに『お前達は絶対にブチ殺す』と宣言しているのが解った。

 

しかし同時に超高出力のレーザーソード達の輪郭には、時折古いテレビの画面が僅かに『ブレ』たりする現象が有るらしく、不自然な揺らぎが見えている事から『超高出力の魔力を常に消費し続けている可能性』が有り、そして『皇金世代の体内魔力が底を着いた時に死ぬ可能性が高い』という予測が、ペッパーの脳内に浮かび。

 

だが彼は『手負いの獣程死ぬ間際が一番恐ろしい』事を、他のゲームの経験から重々理解しているが故に、グランシャリオの柄に最も近い場所に収まった宝玉を二番目の位置に移動させ、剣と刀に籠脚(ガンドレッグ)を装備して皆の前に躍り出る。

 

「あのレーザーソード、多分受けたら『焼き斬られる』だろうし、まともに食らったら『即死』と見て良いな。まぁ黙って殺されるつもりも無いし、皇帝陛下が自滅するのを俺は許容しないがな」

「ペ、ペッパーさん…………」

「ん?」

 

いざ決戦へと思っていた中、ロックがペッパーに声を掛けて来る。彼は皇金世代が何時動くかも解らぬ中、目を離す訳にはいかず、振り返らぬまま聞いていた。

 

「怖く、無いんですか?もし、負けたらって………考えた事は、無いんですか?」

「……………………負けるのは悔しいし、他のゲームでも先に狩ろうとしてたモンスターを狩られたら、そりゃあ落ち込むさ。俺だって人間であり、ゲーマーだしな」

 

だけど、そう言った彼は僅かに視線を後ろに向け。背中で語る男の如く、ロックに向けてこう言い切る。

 

「始めから負ける事を前提(・・)に遊ぶゲーマーなんて、此の世界には居ないんだ。其れにゲームってのは『楽しんでこそ価値が有る』。事実、今の俺は三人と一緒に戦えてて『すごく楽しい』し、此のまま勝ち残って凱旋したいって思ってるしなッ!!!」

「!」

 

そうしてペッパーは走り出し、同時に皇金世代も動き始め。明らかに先程以上の速度を出し、ダンサーじみた足捌きで動く皇帝を相手に、大いなる星剣を掲げる勇者は、天地無用の高速立体機動を以て仲間達を守り抜かんと対抗する。

 

「楽しむ、かぁ…………。忍者ジョブ手に入れて御使いやっていったら鎖鎌に辿り着いて、少しずつだけどシャンフロを楽しめる様になって以来かな。こんなにヒリヒリでワクワクする戦いはさ」

「天鞠…………」

「負ける前提で挑む奴はいない、ね…………そりゃそうだ。勝つ為にゲームをやってる奴だっている。俺も此のまま狙撃だけで終わりたくねぇし、皇帝陛下に一泡吹かせてやりたいぜ!」

「パイロン…………。そう、だな………そうだよな」

 

ぱしんっ!と両頬を引っ叩いて、弱気な自分を切り捨てる。ロックの視線に光と炎が灯り、あの金晶独蠍に一矢報いてやると目標を定め、自分の持ち物と武器から戦略を練り始めた。

 

戦いはクライマックスへ突入する──────。

 

 

 






煌めき、輝き


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