VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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梓が向かう




鋼と巌の複合は、強靭な印象が有るという

シャンフロからログアウトし寝間着や下着に洋服の替え、VRヘッドギアをバッグの中に入れて窓やガス元の確認をして部屋を出て鍵を掛け。道中のコンビニでゴムや、薬剤店で精力剤を購入した梓は午後六時前にカリスマモデルの天音(あまね) 永遠(とわ)が住んでいる、都内のタワーマンションにやって来ていた。

 

身バレやパパラッチが見ているとも限らない観点から、帽子とマスクにサングラスの着用だけで無く、普段移動に使っているルート等も変えて進んだのも有ってか、何時も以上に疲労感が身体に伸し掛かる。

 

彼女の部屋番号を入力し、部屋毎に設置されたインターホンを鳴らして暫く待つと、画面越しに彼女の顔が映ったのでサングラスをズラすと、待ち人を待ち望み続けていたと解る晴れやかな笑みが見えた。

 

『やぁやぁ、()()あーくん。良く来たねぇ、歓迎するよ〜♪』

「やぁ永遠、待ったか?」

「さっき帰って来た所だよん。ロック開けるから入って来てね」

 

其処から数秒後、セキュリティによってロックされた入口が解錠によって中に入る事を許された梓は、自動ドアの先へと足を踏み入れて。エレベーターの利用は他の住人との鉢合わせの可能性を考慮し、階段を使って彼女の部屋が在る階を目指し上がって行く。

 

そして目的の階の目的の部屋の前に立ち、インターホンを鳴らせば中からトタタタと音が鳴ってドアが開き。仕事を終えてオフの服装に身を包んだ恋人が顔を出す。

 

「フフフ、来てくれたね。私のあーくん?」

「どーも、貴女の恋人のあーくんですよー」

「よろしい。立ち話も何だし、部屋の中に入っちゃって。あと『もう一人のゲスト』も来るからさ」

 

もう一人のゲスト………此の時点で既に嫌な予感しかしない上に、来たら来たで『修羅場』が起きる気がしたのは、最早自分の気の所為では無かった。

 

「──────まさかとは思うが、永遠の『マブダチ』だよな?…………もしかして『あの人』??」

「……………(ニッコリ)」

「……………マジカヨオマエ」

 

どうやら我が恋人は自分(五条 梓)にとって、少なからずの因縁を持っている人物を呼び寄せている様であり。此処から先の展開は、未知数にして予測不可能の様相になると、頭を抱えながら玄関の天井を仰ぎ見る。

 

「まぁ賢明な思考を持つ私のあーくんなら、()()()()()どうなるかは解ってるとは思うけどネ?」

「清廉潔白だと信じて疑わない、ティーンエイジャー達が皆泣いてるぞ。というかコレ、既に『試練』が始まってると見て良いのか?」

「そゆこと〜」

「……………我が恋人ながら、ホント最悪だな」

「御褒めに預かり光栄でーす」

 

無敵かコイツと思いながら、あの人…………()()は一体どんな反応をするのかと、既に不安な気持ちになり。永遠は『夕飯はディナーセットを頼んで七時半には到着するからね〜』と言い、梓を部屋へと上げる。

 

ガチャリと鍵は締められ、自分は袋の鼠と理解しながらリビングへと向かい荷物を置き。洗面所を借りて、手洗い嗽をしてから戻って部屋中を見渡していれば、超一流のカリスマモデルの部屋に相応しい装飾や家具が置かれる中、此の空間におよそ『的外れな物品』が置かれているのを見て、気になって仕方が無かった彼は恋人に問い掛けた。

 

「なぁ、永遠。俺はつい先日も此の部屋に来た訳だが…………。彼処に置かれている『アレ』、ずっと気になってたんだけども」

「あぁ、アレ?ちょっと昔にSNSで誤爆しちゃった時に、誤魔化す為に購入したんだ」

 

そう言って指を指した先に置かれている物……………日本の伝統行事たる『正月』で使われ、餅米を搗いて餅にする為に用いる『臼と杵の餅搗きセット』だった。

 

「因みに餅搗きセットは今でも使ってるの?」

「モチのロン、正月にはアレを使って餅米を搗いてる場面をアップしてるんだよ。あーくんもやる?」

「餅搗きはやった事無いから、興味は有るかな」

「OK、大晦日に予定明けといてね?」

 

絶対に大晦日と三が日含めて休みを取るつもりだなと確信しつつ、自分も其の辺りの予定は空きを作らなくてはと考えていれば、備え付けのインターホンから『ピンポーン♪』と音が鳴り。

 

永遠から「テーブル席に座って待っていて」と言われた事から、サプライズをするのだと確信した梓は、落ち着いた様子で着席し。応対しに永遠が玄関に向かって行ったのを見つつ、内心気が気で無い状態で待っていれば。

 

 

 

 

 

「やぁやぁ()()()()()、よく来たねぇ?」

「全く………「一緒に夕食を食べよう」と誘った挙句、次いでに「件の彼氏に会わせたい」等といきなり連絡を入れて来たから、VRヘッドギアを取りに行ってから向かう羽目になったんだ。此方はシャンフロのユニークシナリオで忙しいと言うのに…………」

「其の割に随分乗り気じゃなぁーい?」

「お前程の有名人が彼氏を作ったともなれば、どんな者か気になるからな」

 

 

 

 

 

完全に予想が的中した結果、梓は一人頭を抱える事になって。そして永遠の案内でリビングへとやって来た『ゲスト』と、梓の目が合った。

 

茶色系のウルフカットにした短髪に紫色の鋭い目付き、服装はまさに『日本のキャリアウーマン』と呼ぶに相応しい、黒のスーツとスカートにストッキング、白地のシャツを着こなし鞄を持って、其の身に纏う雰囲気から『会社の重役的ポジションに居る』と断言出来る姿。

 

事実、()()()()()の世界にて彼女と刃を交えて、会話をしたからこそ、五条 梓は『彼女の正体』をハッキリと知覚するに至って。テクテクと永遠が腕に絡み付き立たせるや、恋人繋ぎをしながらにこう言ったのだ。

 

 

 

 

「さてと………紹介しておくよ、(モモ)ちゃん。彼は()()恋人にして『シャンフロの世界』じゃ、色々な異名を賜っている人物。ある時は『最大高度(スカイホルダー)』、またある時は『ユニークマグネット』、そしてある時は『ペパ子ちゃん』、更にある時は『性の最大火力(セクシャル·アタックホルダー)』の通り名で知られる、ペッパー・天津気(アマツキ)こと『五条 梓』君なのだ!」

「おい、ちょっと待て今最後聞き捨てならぬ通り名が聞こえたんだが!?……………コホン。えっと、現実(此方)では初めまして。天音 永遠の彼氏の五条(ごじょう) (あずさ)です。以後御見知り置きを──────『サイガ-100』さん」

 

 

 

 

 

彼女のマブダチにして、モモちゃんと呼ばれている女性。そしてシャンフロの世界では嘗て『大規模クラン黒狼(ヴォルフシュバルツ)』を、今現在は『クラン:黒剣(シュバルツシルト)』を率いる最高峰の技量と技術を併せ持つ、廃人プレイヤーが一人。

 

ペッパーやペンシルゴンと同じく、勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)の一振り・聖剣エクスカリバーに選ばれた修正前剣聖勇者こと『斎賀(さいが) (もも)』──────『サイガ-100』其の人だったのである。

 

 

 






巡り合い


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