VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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三人で過ごす時




人は恋を知りて大人に成れり

天音(あまね) 永遠(とわ)の住むマンションに、サイガ-100こと斎賀(さいが) (もも)がやって来た。立ち話も何だとテーブルに座り、色々と些細な会話をしたりしながら、配達を待つ事数十分。

 

頼んでいたディナーセット…………『フランス料理のフルコース的な物』を配達来た配達員に永遠が応対し、梓が食器や道具を並べて準備を整え。彼と永遠が隣同士で、永遠と相対する位置に百が座る。

 

「はい、という訳で。些細ながらも私、天音 永遠に彼氏が出来ました事を親友の百ちゃんに御知らせすると共に、百ちゃんがクターニッドとの決戦勝利祈願としまして…………乾杯!」

「乾杯」

「素直に乾杯、と言わせて貰おう」

 

永遠と百はシャンパンを、梓は気分はシャンパンという形にする為に炭酸水をグラスに注いで、乾杯時には軽く触れる程度にして飲み干す。

 

「うん、美味しいねぇ♪」

「ビールとはまた違う美味さが有るからな」

「フランス料理のフルコースは初めて見たが、何時かは本場のフルコースを頂いてみたい所だな…………」

「シャンフロでもニーネスヒルに最高級のホテル『獅子の栄光』が有って、王国が威信を掛けて創り上げた場所が在るんだ。其処では現実世界さながらの『最高級フルコースディナー』が振る舞われたりするんだって」

「あぁ、あのホテルか。私も一度だけ行った事は有るが、最高級の部屋での一泊は『数千万〜億越えのマーニ』は持っていかれる、其の位のレベルだからな」

「……………現実世界が極一部の一握りの、御金持ちの人間にしか出来なさそうですね…………」

 

グリルされた肉や魚の料理は絶妙な火加減で、外はカリッと中はジューシーな食感が病み付きになり。新鮮な野菜を使用したサラダはシャキシャキと瑞々しく、冷製仕立てのスープは喉越しが素晴らしい。

 

何より凄いのは、料理に掛けられている『ソース』。其々の料理の味わいにアクセントを、普通に食べていても美味しい料理達に、欠けていた最期のピースを埋める様にして、此の料理達を一つの芸術品として完成に導き、完全なる調和を齎している。

 

そして食事が進み、何事も無くデザートまで食べ終わり。永遠がコーヒーメーカーでブラックコーヒーを作り配って、大型のソファーと小さなソファーでゆっくりと一息付いた段階で、永遠が百へ話題の口火を切ってきた。

 

「そういえば百ちゃん、クターニッドのユニークシナリオは何処まで進んでるのかな?」

「……………昨日の段階で、クターニッドが根城としている中央の城は『粗方調べ尽くした』。クラン:午後十時軍含めた参加メンバー全員のログインが出来次第、深淵のクターニッドを倒しに行くといった形で解散している」

 

参加メンバーにライブラリのメンバーやキョージュが居たので、城の細部まで虱潰しに調べ尽くしていると予測していたのだが、やはりというか何というか平常運転である御様子。

 

「其れからもう一つ。ライブラリのリーダー・キョージュからペッパー君………いや此方では梓君だったな、君に『言伝』が有る」

「言伝、ですか」

「内容は『ルルイアスの城の中に在った王族の日誌に記されていた物、そして最上階の天井壁画に描かれていた物の詳細に付いて、ルルイアスから脱出した後に是非とも七極天星(グランシャリオ)の面々と話を聞きたい』、との事だ」

「……………『話し合いの場にペンシルゴンを同席させる』という、旅狼(ヴォルフガング)側の条件を飲んでくれるならば」

「──────解った、私から伝えておく」

 

簡潔に話は纏まり、深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)の事を七極天星のリーダー格含めて説明する事が決定し、其のやり取りで性能を何処まで明かすべきか、他のプレイヤーから『装備を着させてくれ!』とせがまれた場合の対処法。

 

更には十中八九、武器狂い(SOHO-ZONE)が荒振った場合に其れを防止する為の方法として、慈愛の聖女 イリステラが居る教会を会場にするべきか等を含めて頭の片隅で思考していれば、永遠が梓の隣までスススッと寄って来る。

 

横目でチラリと見れば、シャンフロでは女王様的雰囲気と魔王ムーブで他者と身内をドン引きさせる彼女にしては、随分とデレデレな気配を漂わせて腕組みまでしてきた事に、梓と百は意外だといった表情になった。

 

「どうしたんだ、永遠?」

「ん〜?()()あーくんはシャンフロでの話し合いでどうしようかなと考えて、両耳が無意識にピクピク動いているのが可愛いなってね♪」

「……………そりゃあ、旅狼の活動にも関わる訳だし」

「細かい交渉事は私が、説明に関してはあーくんに御願いするよ」

 

そうして梓と永遠の目が合って。百が見ている前にも関わらずキスをしてきたかと思えば、舌まで絡めながらに横目で彼女の方へ視線を送り、当の本人はギョッとした表情になっていた。

 

「おい、永遠。流石にコレは『アカン』のでは?!」

「えー、本当にそうなのかなぁ?あーくんのは随分『元気』な御様子だけどぉ??」

「流れる様に『ヤろうとするの』、ちょっと待って貰って良いですか!?」

「ん〜?あーくんってヤッてる時に誰かに見られたりすると、一気に萎えちゃうタイプ?」

「どう考えても、モラルの問題じゃないかなぁ!?!」

 

嗚呼、コレはもう駄目だ。永遠からして友人の目の前でイチャコラする事で、完全に恋人としてのマウントを取りに行く腹積もりらしい。

 

ファスナーを下ろされ、腰のベルトも外された。永遠の目にはハートマークが浮かび上がり、既に臨戦態勢に突入済みという状況で、コレは流石に詰んでいると見て間違い無い。

 

「ちょっと………待って。ちょっと待ってッ…………!」

 

が、此処で百が声を上げる。流石にこんな目の前でイチャコラするのは悪いと、大人の女性として対応に当たってくれると、梓はそう思っていた。

 

だが梓は知らない…………斎賀 百、彼女の身体に流れる斎賀家の女系達には代々、天から『あらゆる才能を与えられた文武両道の家系』で有りながら、共通して『恋愛運を全没収された』という、致命的な欠点を抱えている存在である事を。

 

勤め先の会社とシャンフロをハイスペックを維持し、両立する完璧超人(と思われている)な百もまた、其の血筋同様『恋愛運没収』された人物であり。昔に実家の奨められて行った御見合いでも相手方に「欠片も貴方に興味無いけど、実家への義理立てで見合いに来ました」と言って、視線だけで相手が逃げたというエピソードが在る。

 

恋愛を見事に成就させ、目の前で幸せそうな表情と共にイチャコラを展開する悪友。シャンフロでペッパーと本気の戦いを演じて胸の内に灯った『感情』は、ペパ子の声を聞いた事で更に大きくなり。そして最終的にはシャンパンによる酒の酔いが回り、己を縛る理性(リミッター)が外れた事が引き金となって。

 

 

 

 

 

 

 

 

「永遠を抱くなら、私も抱けぇ!?!?!」

「いや何でそうなるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

スーツとシャツのボタンを外し、ブラジャーを取っ払った事により、俗に言う『メロン』に例えられる胸を晒して、グルグル目をしながら叫んだ事で、梓の混乱は更に加速する事となったのだった。

 

 

 






事態急変


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