VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ライブスタイド・デストロブスター戦、此処に決着




堅過ぎるロブスターは、育てた小鎚と籠脚で倒せ(後編)

「おいおいおいおいマジかよ!?トワ、アイツ発狂モードに突入したら、あんなに暴れまくるギミックでも備わってたのか!?」

「いやいや!?発狂したらもっと面倒になるって、何匹か狩っては来たけど、私初めて見たよ!?」

「暴れ馬ならぬ…暴れ海老さね…!?!」

 

涙光の地底湖にてライブスタイド・レイクサーペントをフィッシングし、パワーレベリングを行っていたペッパー・アイトゥイル・ペンシルゴンの2人と1羽の混種パーティーは、ペッパーが釣り上げたレアエネミー、ライブスタイド・デストロブスターとの戦いを繰り広げている。

 

彼女達の協力と共に、ペッパーが新武器のギルフィードブレイカーと甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)の新武器二種で、巨大ザリガニの頭殻を砕いたまでは良かったものの、其れがトリガーになったのかデストロブスターが発狂し出したのだ。

 

「何だよアレ!?口からは水圧光線、鋏は閉じた衝撃から『空圧の砲弾を吹っ飛ばす』とか、アイツ『モンハナシャコ』か何かかよ!?」

 

アイトゥイルを抱え、頭上を間一髪掠めかけた空圧弾に震えながらも、ペッパーとペンシルゴンは脚を止めずに駆け続ける。

 

タダの発狂(・・・・・)ならまだ良かったのだが、頭殻を砕かれた事が余程巨大ザリガニの琴線に触れたのだろう。鋏を打ち鳴らす度に、空圧弾らしき不可視の空圧砲弾が、頭上や身体を目掛けて飛んで来ては、其所に水圧レーザーまでもが飛来し、地面や壁を切り裂き、クレーターを作っていく。

 

「あんまり良くない流れだね…!早く決着を着けないと、ちょっとずつジリ貧になるよ。あーくん」

「此処が崩落する可能性も在るって事だろ?其れが起きては欲しくないが、此れだと本格的にヤバいな…」

 

デストロブスターの暴れ具合に、ペンシルゴンもペッパーも苦い表情を隠せない。此の停滞を打破しなくては、幾らレベルカンストのプレイヤーが居ても、追い込まれていくだけだ。

 

「仕方無い…おねーさんがちょっくら気張ってみるとしますか!あーくん、アイトゥイルちゃん。あのザリガニのヘイトを惹いて欲しいのと、アイツに『両鋏を上に挙げさせる』行動を、何でも良いから『誘発』させてくれないかな?」

 

悪巧みでは無く、本気でライブスタイド・デストロブスター攻略を考える目をしているペンシルゴン。ペッパーは彼女の言葉の真意を其の瞳より見て、最後の確認を取る。

 

「『勝てる策』が有るんだな?トワ」

「『勿論』だよ、あーくん」

「よし、乗った」

「ペッパーはん即答さね!?」

 

幼い時コイツの企みに否応無しに参加させられ、自分がターゲットにされていたりして酷い目に有ったりしたが、こんな時だからこそ頼もしく見えるのは不思議だ。

 

「混沌魔槍グリサイアにバフを重ねて掛けて、投擲スキルで破壊部位に投げ込む。確実にブッ刺す為に、破壊部位の的を見易くして欲しい」

「OK、ダメ押しは任せとけ」

「ワイもやるさね…!」

「良い返事ありがとう。じゃあ…やろうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、巨大ザリガニ!戦闘再開だ!」

「ペッパーはん、無茶はしては駄目さね!」

「おう、アイトゥイルも無茶するなよ!」

 

作戦決定後、二者一羽は各々の得物を取って、ペッパーとアイトゥイルは、ライブスタイド・デストロブスターの前に立ち。ペンシルゴンは離れた位置に移動しつつ、投擲スキルの射程圏を量っていく。

 

『ギュロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ!!!!!!』

 

発狂した巨大ザリガニが、自慢の鋏を1人と1羽に向けて閉じる度、地底湖の空気が震え、不可視の衝撃波が飛び出し、水圧光線が空を斬る。

 

「おおおお!?」

「危ない…さね!」

 

デストロブスターの鋏の方向、口の位置を視覚に捉え。ペッパーはスキル:スケートフットを起動させ、滑走するように空圧砲弾と水圧光線を回避。自ら敵の最も得意とする肉弾戦の決殺距離(キリングレンジ)に飛び込む。

 

「さぁ、どうするよ…巨大ザリガニ!」

 

超至近距離のペッパーに対して、鋏の空気砲弾は隙が大きいと踏んだか、ライブスタイド・デストロブスターは巨大な鋏をハンマーのように叩き付け始めた。

 

「そうだよな?至近距離下じゃ、水圧光線は海老やザリガニの構造上、頭を左右に動かさなきゃ『中央にしか』撃てない。

おまけに空気砲弾は閉じた際の衝撃で打ち出す訳だが、其れやるくらいなら質量と馬力で此方を押し潰した方が、簡単に俺を倒せるもんな!」

 

永遠と彼女の弟と一緒にザリガニ釣りをした時に、ザリガニの動き方や口の形をじっくり観察していた事が、此処でも知識として役に立った。

 

「オラァ!」

 

スキル:見切りを使いつつ、巨大鋏の叩き付けを回避しながら、時折放たれそうになる水圧光線を、甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)で固めた脚蹴りでカチ上げて、ペンシルゴンやアイトゥイルに被害を出さないように立ち回る。

 

「はい…さァッ!」

 

そしてアイトゥイルもまた、ペッパー1人に負荷を掛けさすまいと、酔息吹を嵐薙刀・虎吼の刀身に纏わせ、ライブスタイド・デストロブスターの間接部に出来た僅かな隙間を狙い澄まし、開眼と共に焼き切り裂く。

 

「フォーカスアイズ、エンチャント:ヴォーパル、ブラッティスカー、グロリアス・ブライト…!」

 

アイトゥイルとペッパーが、デストロブスターの周りを跳ねて駆けて、叩いて斬って、注目(ヘイト)を買い集め、両鋏を振り上げる行動を誘発させようと動き続け。

 

其の間にペンシルゴンは自分の持つ魔槍へ、命中精度・クリティカル補正・破壊箇所のダメージ上昇・筋力バフに関わる魔法を次々に点火、付与魔法(エンチャント)を重ね掛けていく。

 

「どうしたどうした!俺は此方だぞ!!」

「海老さん、此方…さ!」

『ギュ…ロロロロロロロロ!!!』

 

うろちょろと己の周りを蠢き、あまつさえ鋏を弾いて頭殻をも砕いてきたペッパー達に、デストロブスターの怒りのボルテージは有頂天に到達。

 

此の一帯を纏めて崩落させるべく、其の身を持ち上げ『自慢の両鋏を天井目掛けて振り上げた』。

 

「今だ、トワ!!」

「ペンシルゴンはん!!!」

 

ペッパー、アイトゥイルの声。其の横目で見る視線の先には、ペンシルゴンの姿有り。

 

「いっけぇ!!乾坤ッ、一ッ擲ィ!!!」

 

混沌魔槍グリサイアへ、ありったけのバフ魔法を掛け重ね、己のスタミナを全てをダメージ補正に引き換えるスキル:乾坤一擲による渾身の槍投げが、アイトゥイルと共に突き刺した首根に、ピンポイントで突き刺さる。

 

『ギュリュロロロロロロ!?!?』

 

青白いポリゴンが間欠泉の如く噴出し、身体は後ろに反れ曲がり、口からは黒く濁った(あぶく)が、窒息寸前の時と同じ状態となって流れ出す。

 

しかし、ライブスタイド・デストロブスターは。此れでも沈まない。其れでも倒れない。

 

「やっぱり沈まないよね…!巨大ザリガニちゃん…!」

 

カンストまで高めたステータスから繰り出し、渾身の投擲攻撃でクリティカルを出しても尚、沈まず倒れない強敵相手にペンシルゴンは悪態を付きたくなる。

 

「いいや、トワ。巨大ザリガニが衝撃で『後ろに反れる』のが、俺が欲しかった事だ!」

 

しかし彼女の耳に届いたのは、ハイビートを点火して疾駆するペッパーの声。彼はギルフィードブレイカーから致命の小鎚(ヴォーパルレッジ)に切り替え、デストロブスターの背後まで回り込んでいた。

 

「ペッパーはん!?」

「あーくん!?」

「槍が刺さった首の位置に、衝撃で反れた身体。もし此の状況で『破壊部位の頭部』に打撃が加わって、頭が前に押し込まれたら……お前はどうなるかな、巨大ザリガニ!?」

 

六艘跳びで斜め上に跳躍し、ライブスタイド・ロブスターの背面より頭部へとペッパーが迫る。彼は『万が一』にも、ペンシルゴンの攻撃で沈まなかった場合を想定し、乾坤一擲発動の瞬間からロブスターの背後に向かって走り出していたのだ。

 

首根に刺さる混沌魔槍グリサイア…頭が押し込まれれば、槍の穂先は更に深く、命に届く程に深く刺さる。其れがペッパーの狙いであり。

 

「コイツでッ、沈めェ!!!!」

 

ギルフィードブレイカーの破壊属性によって砕かれ、肉質が変化した頭殻へ、弱点部位に対するクリティカルに補正が入る、致命の小鎚が振るわれる。

 

其所に重ね掛けられるは、スタミナ消費を引き替えとする、モーションの高速化と攻撃速度を上昇させるジェットアタック。防具を含めた自らの耐久値を半減させて、敏捷と器用を高めるボディパージ。

 

弱点部位へのダメージ補正を上昇させるダイナモインパクトに、剛撃とハイプレスと言った、レベルアップで獲得し、ライブスタイド・レイクサーペントとの戦いで確認してきた、自身のバフと打撃・小鎚系統で繰り出せる、ありったけのスキルを全て使い。

 

『全身全霊』の、致命へ到達する『絶命の一撃』が炸裂。乾坤一擲により投擲されたペンシルゴンの混沌魔槍グリサイアが、ペッパーの一撃でデストロブスターの頭部が押し出された事により、槍の穂先たる刃は首根の内部へ更に深く突き刺さり、神経部分を絶断し切る。

 

『ギュリュ……リュロロ…………ロロロロロロロロロロロロロロ…!!!』

 

断末魔に似た叫びと共に、デストロブスターの虹彩は光を失い、其の巨体は地底湖の大地に倒れ伏す。身体を構成していたポリゴンは爆発四散し、ペッパーは致命魂の首輪が着いているにも関わらずレベルが3も上昇、アイトゥイルのレベルも1つ上がった。

 

「ライブスタイド・デストロブスター…クアッドビートル以上の甲殻とパワー、空圧を飛ばす鋏と水圧光線による遠距離攻撃。トワとアイトゥイルの協力無しでは、倒しきるのに困難を極める相手だったぞ」

 

戦いの後に残されたデストロブスターのドロップアイテムを拾い上げ、ペッパーは消えた強敵へ称賛と共に手向けの言葉を贈ったのだった。

 

「あーくん…『ソレ』何時もやってるの?」

「強敵に対して、戦ってくれた事に感謝するのって普通じゃないのか?」

「ペッパーはん、沼掘りや道化蜘蛛、ルイン・キーパーに対しても言ってたのさ」

「ふぅ~ん…。意外な一面も有るんだ…」

 

デストロブスターのドロップアイテムを回収して、何に使おうかなとワクワク顔をしているペッパーを見て、穏やかな表情をしているペンシルゴン。然して其の表情は直ぐに邪悪に変わり、彼女は彼の肩を掴んで言った。

 

「まぁ其れは其れとして……ギルフィードブレイカーと甲皇帝戦脚について、私と『オハナシ』しましょう?あーくん♪」

 

ライブスタイド・デストロブスターと派手に戦った事で、ペンシルゴンに情報を与えてしまった事実にペッパーは気付き。

 

戦略的撤退(逃げるんだよ)ーーーーーーー!」

戦略的確保(逃がしません)ーーーーーーー!」

「ぎゃぁあああああああああ!?!?」

「ペッパーはぁぁぁぁぁぁぁん!?!」

 

逃走を計るも、当然レベルカンストから成るステータス差の暴力の前には成す術無く。ペッパーはペンシルゴンによって、ギルフィードブレイカーと新武器・籠脚の事を布団叩きの如く、情報を吐かされる羽目になったのだった………。

 

 






開拓者よ更に強くなれ


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