VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

678 / 1075


ラビッツに戻りて 




戻る前に万全の用意を。其れが彼のスタイルであるからこそ

ベヒーモス・第十階層から使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)でラビッツに帰還し、街のアイテムショップでポーション等の回復アイテムを購入しながらも、今日だけで随分と情報を撒き散らしているなと、ペッパーは思う。

 

ベヒーモスの秘密に、スキルの再習得を含めた育成方法。更にはガンスミスライセンスという神代技術による、ハンドメイドガンに至る道筋を公開した事で、他のプレイヤー達が狂乱と興奮の坩堝に陥った事を含めても、シャンフロの環境は大いに動いただろう。

 

一通りの回復アイテムを補充から兎御殿へ戻り、キュルアの店で使い捨て魔法媒体を購入、道中でピーツと出逢って彼から「ペッパーはんが帰って来たら、ビーねーちゃんが呼んでたって伝えてくれっちゅーてたわ」と言伝を伝えたので、善は急げとビィラックの鍛冶場へと向かった先で彼等が見たのは、踏み付けられて歓喜な表情になりながら大きなアタッシュケースらしき鞄を握るアラミースと、青筋を浮かべるビィラックの姿だった。

 

「おぉ!ペッパー殿に乙女の妹君に、リュカオーンの小さな分け身よ!久しいな!」

「来たけぇ、ペッパーよぉ」

「御久し振りです、アラミースさん。もしかして、以前キャッツェリアに依頼した、水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)金晶独蠍(ゴールディー·スコーピオン)の糸と布が出来たのですか?」

「うむ。キャッツェリア最高の宝石匠(ジュエラー)・ダルニャータも、開拓者が己と同じ領域に足を踏み入れた事で負けてられぬと普段以上に躍起となっている。其の為か水晶群蠍と金晶独蠍の加工品以外で、幾つかの『逸品』を渡したいとの事で派遣されたのだ」

 

コホンと咳き込んだアラミースが大きな鞄を開き見せれば、其の中には以前依頼した時に見た、美しい輝きを持つスコルスタ・ストリングとスコルスタ・ヴェール。そして金晶独蠍の素材を加工し、作り出されたで有ろう『黄金色の美しい糸に布』。

 

更には『ローエンアンヴァ琥珀晶が親指の先端部分に埋め込まれた右手用の革手袋』と、明らかにヤバい気配が漂う『白波が立つ渦潮らしき非物質的な物が、渦を巻き続けている楕円形の何か』が同梱されていた。

 

「蒼空を舞う勇者ペッパー・天津気(アマツキ)殿へ、我が国キャッツェリアの宝石匠ダルニャータが逸品、スコルスタ・ストリングとスコルスタ・ヴェール。金晶独蠍の素材を加工せし糸と布たる『ゴルディーア・ストリング』及び『ゴルディーア・ヴェール』。そして此方は宝石塔の中より発掘されし、()()()()()()のローエンアンヴァ琥珀晶二つを用いた、ダルニャータ渾身の逸品『封雲の撃鉄(タイタントリガー)(スペリオル)』と『混海覇印(アルカ・ク=リンゼン)(スペリオル)』に御座います」

「キャッツェリアとダルニャータさんの技術と協力に、深く深い感謝を。有事の際には御力を添えさせていただきますので、其の旨を伝えて下さい」

 

ロールプレイを絡めて礼を述べ、手渡された逸品達を見る。スコルスタ・ストリングとスコルスタ・ヴェールはエフュールが天啓を受けた『何か』を作り出したい事と、ゴルディーア・ストリングとゴルディーア・ヴェールは水晶群蠍の人形と同様に、金晶独蠍の人形製作に充てるつもりだ。

 

問題なのはダルニャータがラピスへの対抗心を燃やしたのか、はたまた壁は高いんだと知らしめたいのか、如何なる想いを持って作り出した此の二つのアクセサリー。ペッパーは早速、其の効果をチェックする事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

封雲の撃鉄(タイタントリガー)(スペリオル)

 

 

右手を覆う琥珀の装飾を持つ手袋。右親指の琥珀部分で鳩尾を叩く事で、琥珀に封じられた効果が発動する。更に装備者に一定時間【特殊状態:大雲(タイタン)(スペリオル)】を付与する。

 

『密封の琥珀』シリーズは、琥珀の中に封じ込められた属性の他に封じ込められた物の危険度でクラス分けがされる。クラスは【(クルード)】【(デンシティ)】【(ピュア)】【(ハザード)】【(スペリオル)】の五つに分けられ、其の中でも極級は雑味無く、過密であり、純粋で、災禍の言葉ですら不足する究極の凝固である。

 

 

琥珀の撃鉄(ハンマー)引き金(トリガー)は使い手の意思。

 

 

・特殊状態:大雲(タイタン)……対象は周りに浮遊するマナ粒子と水分を変質させ、雲の羽衣を纏う。追加効果として『物理攻撃耐性(大)』、『発動中体力及びMPにリジェネ効果(極)』を付与する。

 

・追加効果【(スペリオル)】……効果発動中、自身に極想雲(ウルティマタイクン)効果を付与する。極想雲状態が継続する限り、発動者の周囲に存在するマナ粒子及び水分を吸収し続け、雲の腕や手に脚と足場を作り出す。さらに死亡時には纏い産み出した雲が質量を持った状態で、周囲に超高速で噴出する。

 

 

 

 

 

 

混海覇印(アルカ・ク=リンゼン)(スペリオル)

 

 

神ならざれど、祀られ、其の身を顕現させし覇王の断片。此のアクセサリーを装備状態で、敵に一定回数以上の攻撃を行う事により、琥珀に封じられた効果が発動する。

 

『密封の琥珀』シリーズは、琥珀の中に封じ込められた属性の他に封じ込められた物の危険度でクラス分けがされる。クラスは【(クルード)】【(デンシティ)】【(ピュア)】【(ハザード)】【(スペリオル)】の五つに分けられ、其の中でも極級は雑味無く、過密であり、純粋で、災禍の言葉ですら不足する究極の凝固である。

 

名を刻み、肉を授け、命に貶める。故にこそ()の叫びは果てをも超えて、界域の外すら呑み込む。

 

 

※特殊状態「禍波のアビス」……状態付与時、プレイヤーの攻撃モーション及び武器に特殊な圧力が発生する。此の圧力を受けた対象に対し、武器を用いてのパリィは不可となり、防具と肉質を含めた耐性に関わらずダメージ軽減が発生せず、攻撃を受けた場合には必ず一定のダメージが適応される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撃鉄シリーズの一つである封雲に、テキストを読んで更にヤバい物品だと確信した渦を巻く楕円形。両方共に極という、等級的に見て最上位の存在から作られ、形となった其の逸品達の性能を確りと確認し、十全に扱える様にならなくてはならないだろう。

 

特に混海覇印はぶっつけ本番で使ったならば、漏れ無く大事故に発展し得る可能性が纏わり付いている……………そんな予感を抱いている。

 

「おぅおぅ、随分と『懐かしい(モン)』をダルニャータの奴ぁ扱ったみてぇだな」

「──────えっ、ヴァッシュ先生!?」

 

此処で声を掛けたのは、ラビッツの大親分たる『ヴァイスアッシュ』其の人ならぬ其の兎であり。突然の来訪に此の場に居る全員が漏れ無く驚く中、ペッパーが受け取った品の混海覇印をジッ……と見、まるで魔法使いの如く指を振れば、楕円形の其れがフワリと独りでに浮かび上がり、彼の掌の中に収まり。

 

其れを暫く眺めたヴァイスアッシュは、ペッパーに返してこう言ったのだ。

 

「コイツの中に入ってるのはよぉ…………()()()()()()()()だぁ。むかぁしむかしにオイラが調伏(たお)した、嘗て全てを飲み込まんとした『波』だわなぁ」

「血肉で、波…………?」

 

何処かの漫画で国家を人体に例え、金は血液の政治家が臓器といった、そんな台詞を放ったキャラが居た様な覚えが有る。ヴァイスアッシュが懐かしむ様に語った、クリンゼンなる波は果たして何なのかと疑問を抱けど、今の情報では其の『答え』に辿り着く事は出来ず。

 

取り敢えずはエフュールの所に向かい、アクセサリーのスロット解放とスコルスタ・ストリング&スコルスタ・ヴェール及び、ゴルディーア・ストリング&ゴルディーア・ヴェールを渡しに行く事を決意。

 

早速出立をといったタイミングで「ペッパー、ちょい待ちや」と、ビィラックが声を掛ける。

 

「どうしましたか?」

「ワリャが頼んどった、トレイノル・センチピード達の素材を使った『武器と防具』が完成したけぇ。フォルトレスの方はもうちっとばかし掛かるが…………此の二つは自信を以て提示出来る」

「早いですね…………」

「ガンスミスライセンスを取ってから、銃含めた機装への理解が随分と深まったんじゃ。御陰で銃の作り出しや機装含めて、神代技術の品を作るも直すも早うなったわ」

 

そう言って彼女が取り出したのは、防具が何処からどう見ても『くノ一衣装』とも呼べる装束一式が二着に、武器は『長い筒に青のラインが走り、持ち手は赤のラインが走るロングバレルタイプのリボルバー』が数丁であった。

 

「防具の方は秋津茜(アキツアカネ)を見とったら、ふと『天啓が舞い降りてな』。名は『黒之十束(クロノトツカ):百刻式(ヒャクコクシキ)』っちゅう感じじゃ。アイツの分も作ったから、届けて渡してやってくれ。そして此方のケンジューは、ガンスミスと古匠の技術にトレイノル種の特性を理解し、其の能力を活かした渾身の一作!其の名も『刻毒銃(ウォーポイド):強暴過乱(イシュアナ)』じゃけぇ!!」

 

彼女のネーミングセンスに、ヴァイスアッシュの片鱗を感じる今日此の頃。黒之十束:百刻式は『女性用一式装備』である事や、明らかに古き良き『くノ一』の見た目を除いても、毒と爆破属性に対して高い耐性を得るらしい。

 

他にも装備者のスタミナ数値倍増と、装備者の任意でMPを消費する事によるスタミナ回復速度の超強化という、シグモニア前線渓谷(フロントライン)で生きる巨大な百足達らしい能力に纏まっていた。

 

刻毒銃:強暴過乱は元となったトレイノル・センチピードの持つ『毒の特性』が濃く反映されている様で、装填(チャージ)した弾丸を自分か相手に撃ち込むと、全く『異なる効果』を発揮する上に、超過機構(イクシードチャージ)を使用した射撃は、其の特性を『何倍にも引き上げる可能性』が極めて高い。

 

おそらく其れを鑑みて、黒之十束:百刻式と『セット運用』を想定しているのだろうか?

 

「着てみても良いですか?」

「ん、構わん」

 

許可を得てから、インベントリアに入れている青の聖杯を手に取って性別反転で女体化。服装をインベントリアに入れて、黒之十束:百刻式に着替えた上で刻毒銃:強暴過乱を左手に握る。

 

「おぉ、軽くて動きやすい。銃は持ち方を工夫して、自分に撃ち込む感じになるか………。ビィラックさん、ありがとうございます」

「ワリャの性格的に『初陣でブッ壊す』………何てこったしないじゃろうが、大事に使えな」

「肝に銘じます」

 

黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト・イン・パーケ)の存在を考えると、質の良い装備を壊せば防御力は当然上がるが、彼女に何を言われるか解らないので、店売りの防具で代用する事としつつ、ヴァイスアッシュやアラミースにも深々と頭を下げて。

 

アイトゥイル・ノワを連れてエフュールの店へと向かい、出来上がったツァーベリル帝宝晶のアクセサリーを受け取り、続いてスコルスタ・ストリングとスコルスタ・ヴェール、ゴルディーア・ストリングとゴルディーア・ヴェールを渡し、天啓を受けた品と金晶独蠍の人形製作を依頼。

 

最後に彼女にアクセサリースロットを開いて貰い、ダルニャータ渾身の力作たる封雲の撃鉄を右手、混海覇印をセットすると『頭上に渦を巻いた輪っか』が出現し、指先で振れば確かな感触と反応が返って来た。

 

此れにて準備は整い、彼は自身が開示した情報によって喧騒に満ちて居るであろう、ベヒーモスへと向かうべくアイトゥイルが開いたゲートを潜り、一路ファステイアへと飛んだのであった………。

 

 

 






手にした品々


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。