ラビッツに戻りて
ベヒーモス・第十階層から
ベヒーモスの秘密に、スキルの再習得を含めた育成方法。更にはガンスミスライセンスという神代技術による、ハンドメイドガンに至る道筋を公開した事で、他のプレイヤー達が狂乱と興奮の坩堝に陥った事を含めても、シャンフロの環境は大いに動いただろう。
一通りの回復アイテムを補充から兎御殿へ戻り、キュルアの店で使い捨て魔法媒体を購入、道中でピーツと出逢って彼から「ペッパーはんが帰って来たら、ビーねーちゃんが呼んでたって伝えてくれっちゅーてたわ」と言伝を伝えたので、善は急げとビィラックの鍛冶場へと向かった先で彼等が見たのは、踏み付けられて歓喜な表情になりながら大きなアタッシュケースらしき鞄を握るアラミースと、青筋を浮かべるビィラックの姿だった。
「おぉ!ペッパー殿に乙女の妹君に、リュカオーンの小さな分け身よ!久しいな!」
「来たけぇ、ペッパーよぉ」
「御久し振りです、アラミースさん。もしかして、以前キャッツェリアに依頼した、
「うむ。キャッツェリア最高の
コホンと咳き込んだアラミースが大きな鞄を開き見せれば、其の中には以前依頼した時に見た、美しい輝きを持つスコルスタ・ストリングとスコルスタ・ヴェール。そして金晶独蠍の素材を加工し、作り出されたで有ろう『黄金色の美しい糸に布』。
更には『ローエンアンヴァ琥珀晶が親指の先端部分に埋め込まれた右手用の革手袋』と、明らかにヤバい気配が漂う『白波が立つ渦潮らしき非物質的な物が、渦を巻き続けている楕円形の何か』が同梱されていた。
「蒼空を舞う勇者ペッパー・
「キャッツェリアとダルニャータさんの技術と協力に、深く深い感謝を。有事の際には御力を添えさせていただきますので、其の旨を伝えて下さい」
ロールプレイを絡めて礼を述べ、手渡された逸品達を見る。スコルスタ・ストリングとスコルスタ・ヴェールはエフュールが天啓を受けた『何か』を作り出したい事と、ゴルディーア・ストリングとゴルディーア・ヴェールは水晶群蠍の人形と同様に、金晶独蠍の人形製作に充てるつもりだ。
問題なのはダルニャータがラピスへの対抗心を燃やしたのか、はたまた壁は高いんだと知らしめたいのか、如何なる想いを持って作り出した此の二つのアクセサリー。ペッパーは早速、其の効果をチェックする事にした。
右手を覆う琥珀の装飾を持つ手袋。右親指の琥珀部分で鳩尾を叩く事で、琥珀に封じられた効果が発動する。更に装備者に一定時間【特殊状態:
『密封の琥珀』シリーズは、琥珀の中に封じ込められた属性の他に封じ込められた物の危険度でクラス分けがされる。クラスは【
琥珀の
・特殊状態:
・追加効果【
神ならざれど、祀られ、其の身を顕現させし覇王の断片。此のアクセサリーを装備状態で、敵に一定回数以上の攻撃を行う事により、琥珀に封じられた効果が発動する。
『密封の琥珀』シリーズは、琥珀の中に封じ込められた属性の他に封じ込められた物の危険度でクラス分けがされる。クラスは【
名を刻み、肉を授け、命に貶める。故にこそ
※特殊状態「禍波のアビス」……状態付与時、プレイヤーの攻撃モーション及び武器に特殊な圧力が発生する。此の圧力を受けた対象に対し、武器を用いてのパリィは不可となり、防具と肉質を含めた耐性に関わらずダメージ軽減が発生せず、攻撃を受けた場合には必ず一定のダメージが適応される。
撃鉄シリーズの一つである封雲に、テキストを読んで更にヤバい物品だと確信した渦を巻く楕円形。両方共に極という、等級的に見て最上位の存在から作られ、形となった其の逸品達の性能を確りと確認し、十全に扱える様にならなくてはならないだろう。
特に混海覇印はぶっつけ本番で使ったならば、漏れ無く大事故に発展し得る可能性が纏わり付いている……………そんな予感を抱いている。
「おぅおぅ、随分と『懐かしい
「──────えっ、ヴァッシュ先生!?」
此処で声を掛けたのは、ラビッツの大親分たる『ヴァイスアッシュ』其の人ならぬ其の兎であり。突然の来訪に此の場に居る全員が漏れ無く驚く中、ペッパーが受け取った品の混海覇印をジッ……と見、まるで魔法使いの如く指を振れば、楕円形の其れがフワリと独りでに浮かび上がり、彼の掌の中に収まり。
其れを暫く眺めたヴァイスアッシュは、ペッパーに返してこう言ったのだ。
「コイツの中に入ってるのはよぉ…………
「血肉で、波…………?」
何処かの漫画で国家を人体に例え、金は血液の政治家が臓器といった、そんな台詞を放ったキャラが居た様な覚えが有る。ヴァイスアッシュが懐かしむ様に語った、クリンゼンなる波は果たして何なのかと疑問を抱けど、今の情報では其の『答え』に辿り着く事は出来ず。
取り敢えずはエフュールの所に向かい、アクセサリーのスロット解放とスコルスタ・ストリング&スコルスタ・ヴェール及び、ゴルディーア・ストリング&ゴルディーア・ヴェールを渡しに行く事を決意。
早速出立をといったタイミングで「ペッパー、ちょい待ちや」と、ビィラックが声を掛ける。
「どうしましたか?」
「ワリャが頼んどった、トレイノル・センチピード達の素材を使った『武器と防具』が完成したけぇ。フォルトレスの方はもうちっとばかし掛かるが…………此の二つは自信を以て提示出来る」
「早いですね…………」
「ガンスミスライセンスを取ってから、銃含めた機装への理解が随分と深まったんじゃ。御陰で銃の作り出しや機装含めて、神代技術の品を作るも直すも早うなったわ」
そう言って彼女が取り出したのは、防具が何処からどう見ても『くノ一衣装』とも呼べる装束一式が二着に、武器は『長い筒に青のラインが走り、持ち手は赤のラインが走るロングバレルタイプのリボルバー』が数丁であった。
「防具の方は
彼女のネーミングセンスに、ヴァイスアッシュの片鱗を感じる今日此の頃。黒之十束:百刻式は『女性用一式装備』である事や、明らかに古き良き『くノ一』の見た目を除いても、毒と爆破属性に対して高い耐性を得るらしい。
他にも装備者のスタミナ数値倍増と、装備者の任意でMPを消費する事によるスタミナ回復速度の超強化という、シグモニア
刻毒銃:強暴過乱は元となったトレイノル・センチピードの持つ『毒の特性』が濃く反映されている様で、
おそらく其れを鑑みて、黒之十束:百刻式と『セット運用』を想定しているのだろうか?
「着てみても良いですか?」
「ん、構わん」
許可を得てから、インベントリアに入れている青の聖杯を手に取って性別反転で女体化。服装をインベントリアに入れて、黒之十束:百刻式に着替えた上で刻毒銃:強暴過乱を左手に握る。
「おぉ、軽くて動きやすい。銃は持ち方を工夫して、自分に撃ち込む感じになるか………。ビィラックさん、ありがとうございます」
「ワリャの性格的に『初陣でブッ壊す』………何てこったしないじゃろうが、大事に使えな」
「肝に銘じます」
アイトゥイル・ノワを連れてエフュールの店へと向かい、出来上がったツァーベリル帝宝晶のアクセサリーを受け取り、続いてスコルスタ・ストリングとスコルスタ・ヴェール、ゴルディーア・ストリングとゴルディーア・ヴェールを渡し、天啓を受けた品と金晶独蠍の人形製作を依頼。
最後に彼女にアクセサリースロットを開いて貰い、ダルニャータ渾身の力作たる封雲の撃鉄を右手、混海覇印をセットすると『頭上に渦を巻いた輪っか』が出現し、指先で振れば確かな感触と反応が返って来た。
此れにて準備は整い、彼は自身が開示した情報によって喧騒に満ちて居るであろう、ベヒーモスへと向かうべくアイトゥイルが開いたゲートを潜り、一路ファステイアへと飛んだのであった………。
手にした品々