ペッパー、
「はぁぁぁぁぁぁぁ………。全く、脚防具の上から装備出来る両脚武器に、3形態に成長派生するユニーク武器って…………おねーさんを驚かせるのが趣味だったりするの、ペッパー君?」
午後8時を過ぎ、シャンフロの空も夜闇と静寂で満ちる頃、涙光の地底湖から、神代の鐵遺跡を脱出して、サードレマに戻って裏路地に逃げ込んだ、二人一羽の混種パーティーは、ペッパーの隠した情報にペンシルゴンが深い溜め息を付いていた。
「んな訳有るかい、ペンシルゴン。ユニーククエスト進めながら、武器育成したら鍛冶師にそう言われて、俺だって驚いてるんだから」
実際、ペッパーもフォスフォシエで聞いた時は驚かされた物だ。マッドネスブレイカーに宿った3つの可能性、
ビィラックのお陰で、マッドネスブレイカーは2本製作済みであり、後は各々の鉱石が眠る場所に行き、採掘するだけだ。
「取り敢えず…ユニーク小鎚と籠脚の情報は、今後とも出来る限り秘匿しといてね?どうしようも無くなった場合に限り、自衛の手札として他者への開示を許可します」
「良いのかよ、事前相談しなくて?」
全部を知りたがるペンシルゴンにしては、随分とあっさり退いてきたので、何か罠が有るのかとペッパーは問い掛け、彼女は其れに対してこう答えを返した。
「君が持ってる製造秘伝書はPKされた所で誰にも強奪出来ないし、仮に教えたとしても、素材集めをしてる間に逃げる時間も稼げるでしょ?
其れに籠脚に関しては、私でも造った鍛冶師が誰だか解らない、情報面での『アドバンテージ』は君に有るんだから、図太く利用しちゃいなさーい」
ぷくぅと頬を膨らませたペンシルゴン。彼女とのオハナシの中で俺は、ビィラックとアイトゥイルの関係やラビッツの事を含めた秘匿情報を、マッドネスブレイカーの秘密や籠脚の事を引き換えに、何とか死守する事に成功したのだ。
「と……私はそろそろ、自分のクランに帰るよ。あんまり遊び過ぎちゃうと、家のクランリーダーが癇癪起こして大変だから。じゃあね、あーくん。また今度♪」
「あぁ、また今度な。トワ」
手を振りながら、無垢な笑顔で別れたトワの背中を見送り、気配が完全に消えきった事を確認し終えたペッパーは、大きな溜息を吐く。
1日でレベルが8も上昇し、目的としていた甲皇帝戦脚を装備しての脚パリィも完成、充実した時間を過ごす事が出来た。
「しかし…あのロブスターは本当に強かったな。お陰で首輪付いてるのにレベルは3も上がったし、素材も手に入ってウハウハだ」
そう言い、ペッパーは自身のステータス画面を開いて、成長した自分を確認する。
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PN:ペッパー
レベル:38
メイン
サブ
体力 15 魔力 10
スタミナ 90
筋力 70 敏捷 80
器用 35 技量 50
耐久力 26 幸運 25
残りポイント:36
装備
左:
右:リュカオーンの
両脚:無し
頭:皮の帽子(耐久力+1)
胴:隔て刃の皮ベスト(耐久力+4)
腰:隔て刃の皮ベルト(耐久力+4)
脚:隔て刃の皮ズボン(耐久力+4)
アクセサリー
・鎖帷子(耐久力+10)
・旅人のマント(耐久力+2)
・
所持金:1400マーニ
スキル
・ラダースラッシュ
・
・レペルカウンター
・ドライブスロー
・アルゼイドエッジ
・メイアスワーク
・バルガストライク→ボルベルグストライク
・ダイナモインパクト→グラシャラスインパクト
・剛撃 レベルMAX
・アクセル レベルMAX
・ラッシュ レベル7→レベル9
・見切り レベル6→レベル7
・ハイプレス レベル8→レベルMAX
・六艘跳び→七艘跳び
・スケートフット
・ジェットアタック
・水平斬り レベル6
・垂直斬り レベル5
・バリストライダー
・ハイビート レベルMAX
・アクタスダッシュ レベル5
・ステックピース レベル4
・握擊 レベル3
・投擲 レベル4
・クライムキック レベル5
・首断ち レベル3
・ムーンジャンパー
・ボディパージ レベル1→レベル3
・ライフオブチェンジ
・ストレートフィスト
・背面蹴り レベル1→レベル4
・ワンスフリップ→デュアルフリップ
・フルズシュート レベル1→レベル2
・オプレッションキック レベル1→レベル3
・
・
・
・挑発 レベル1
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「色々覚えたし、格好良い名前のスキルも有る。そろそろ『合体』しても良い頃かな?」
シャンフロを始めた頃からずっと、利用したいと考えていた施設『
「ペッパーはん、スキルを合体するのさ?なら、ワイの妹が経営してる特技剪定所が、兎御殿の中に在るんよ。あと、其所はラビッツの所よりも良いスキルの巻物も置いてあって、ちょっと特別なのさ」
「そうなのか、なら利用しない手は無いな。でも其の前に…素材売って換金してからの方が、選択肢は広がるだろう」
思い立ったら即行動、ペッパーはマントにアイトゥイルを隠しつつ、暗闇を駆けて行き、エンハンス商会・サードレマ露店通り支部に駆け込む。
其所で彼はライブスタイド・レイクサーペントの鱗や牙、ライブスタイド・デストロブスターの一部素材を売却。シャンフロとしては初めて、15万マーニ超えの大金を収入として手にした。
そうしてアイトゥイルと共にラビッツへと続くゲートを潜り、一路兎御殿に在ると言う特技剪定所へと向かったのである………。
ラビッツの兎御殿に戻り、正面入口に向かって右側へ進み、デフォルメウサギ模様の障子窓を右手に見ながら、縁側廊下を暫く歩いた先に、特技剪定所の文字を刻みし暖簾が垂れる場所が見えた。
「ペッパーはん、此処が兎御殿の特技剪定所なのさ。ワイの下の3つ子の妹の1人が、合体特技を作るのに長けてるさね」
「ほほぅ、其れは期待出来そうだ。」
暖簾を挙げて中に入ると、其所には日本風味溢れる箪笥に瓶詰めやフラスコ等が置かれており、受付には薄桃色の毛並みに、三角形の眉と垂れ目、垂れ耳にイヤリングを二種類の計四つ。赤桃色の上着と碧緑の薄着を着、ほんわか雰囲気の1羽のヴォーパルバニーが居た。
「いらっしゃあーい。あらぁ~アイトゥイル姉さんに、ペッパーさんじゃなぁい」
自分の名前が知られている辺り、兎御殿でも知名度は其れなりに有るのだろう。
「ペッパーはん、此方がワイの妹の『エルク』さね。ワイ等の中じゃ、一番スキルの合体何かに長けとるのさ。あと銭ちょば!?」
「姉さぁ~ん?世の中には言っちゃいけない事も有るのよぉ~?」
アイトゥイルが何か大事なワードを、自分に向けて伝えようとした瞬間、いつの間にかアイトゥイルの背後へ回っていたエルクが口を塞いで、地面に組み伏せる。
「ペッパーさぁん、よろしくねぇ?」
細目ながらも纏い放つ黒い圧力は、ペンシルゴンに匹敵しており、ペッパーは思わず固唾を飲み。
「え、えっと…はいよろしくお願いします」と頭を下げて、御世話になる事を伝えた。
「それでぇ?今日はどんな御用~?」
兎特有の強靭な跳躍で跳ね、受付に舞い戻ったエルクはペッパーに要件を聞きに来る。
「アイトゥイルから此処で、スキルの合体が出来ると聞き、強化したいと思いまして。出来ますか?」
「出来るわよぉ。わたしぃそういうの得意だからぁ、お父さんにぃ言われて担当してるのぉ~。早速スキルの合体をするのねぇ?」
言うが早いか、ペッパーの目の前には合体可能なスキルだけが表示されて、一覧として見易く連なっていた。
「レベルMAXまで育ったスキルも在る…此処等で整理して強くしちゃおう」
「あ、ペッパーさぁん。スキルはレベルが高い物同士を組み合わせると、すっごぉく強くなるわよぉ?」
スキル合体は、強い×強い=滅茶苦茶強いみたいな、掛け算方式だと知り、認識を改めて自身のスキルに向き合う。
「コレとコイツを合わせると、そうなって…。だとしたら此のスキルは…コレに……。なら此処は、コレと合わせたら……うん。良い感じ」
無数に存在する選択肢の中から、スキルの内容・効果を合成した場合に出来る事前の結果から、脳内で
「まぁ…こんな感じだろうか?」
およそ30分の長考の果てにペッパーは今回、8つのスキルを合成し、4つのスキルに変化させる事にした。
「ふんふん、此のレシピで良いのねぇ。因みにスキルは連結1つに付き、1000マーニよぉ」
「では、此方が費用になります。よろしくお願いします」
「はぁい、直ぐに作るから待っててねぇ~」
マーニを受け取ったエルクはそう言い、スキルレシピが記された巻物を持って、店の奥へと向かっていった。
其れから十数秒後、戻ってきたエルクの手には不思議な模様のリボンが巻かれた丸底フラスコが在り。中身は緑と土色が入り混じった変色に、木の枝や葉っぱが混入された如何にも不味そうな液体が、たぷんたゆんと揺れている。
「コレを飲めば、作ったスキルを直ぐに覚えられるわよぉ~。ささ、イッキにどうぞぉ」
現実では絶対に飲みたくは無いなと思いつつ、ペッパーは手渡されたフラスコの中の液体を、意を決して一気に飲み干した。
すると自分の身体がポゥ…と淡く光り輝き、新しくスキル4つを一挙に習得する。
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PN:ペッパー
レベル:38
メイン
サブ
体力 15 魔力 10
スタミナ 90
筋力 70 敏捷 80
器用 35 技量 50
耐久力 26 幸運 25
残りポイント:36
装備
左:
右:リュカオーンの
両脚:無し
頭:皮の帽子(耐久力+1)
胴:隔て刃の皮ベスト(耐久力+4)
腰:隔て刃の皮ベルト(耐久力+4)
脚:隔て刃の皮ズボン(耐久力+4)
アクセサリー
・鎖帷子(耐久力+10)
・旅人のマント(耐久力+2)
・
所持金:151,100マーニ
スキル
・ラダースラッシュ
・
・レペルカウンター
・ドライブスロー
・アルゼイドエッジ
・メイアスワーク
・ボルベルグストライク
・グラシャラスインパクト
・ストレングス・スマッシャー レベル1
・オーバートップビート
・インファイト レベル1
・七艘跳び
・スケートフット
・ジェットアタック
・十字斬 レベル1
・バリストライダー
・アクタスダッシュ レベル5
・ステックピース レベル4
・握擊 レベル3
・投擲 レベル4
・クライムキック レベル5
・首断ち レベル3
・ムーンジャンパー
・ボディパージ レベル3
・ライフオブチェンジ
・ストレートフィスト
・背面蹴り レベル4
・デュアルフリップ
・フルズシュート レベル2
・オプレッションキック レベル3
・
・
・
・挑発 レベル1
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様々な組み合わせを事前段階で試し、気に入った合体によって産まれたスキルが、色々と手に入った。
連続攻撃スキル:ラッシュに、回避スキル:見切りを合成して産まれたスキル:インファイトは、超至近距離下での格闘にダメージ補正を付与する物で、籠脚を装備出来る身としては、とても頼りになるスキル。
熟練度カンストに至るまで、戦闘や移動で御世話になったアクセルとハイビートの組み合わせで出来た、スキル:オーバートップビートは発動から3分間、筋力・敏捷を2倍に引き上げる代わりに、スキル終了後より3分間は敏捷・スタミナ・スタミナ回復量が半減するハイリスクハイリターンの二面性を内封した物。
斬撃スキル:十字斬。此れは水平斬りと垂直斬りの合成から産まれ、二連続で十字に切り裂いて直撃箇所に裂傷状態のデバフを付与するそうで、裂傷状態の場所に斬撃武器や斬撃スキルを加えると、クリティカルのダメージ補正が大きく働くらしい。
そして個人的に一番気に入ったのは、剛撃とハイプレスの組み合わせから合成された、ストレングス・スマッシャー。此れは通常のダメージに加えて、筋力を参照とした強力なノックバック補正が働く。小鎚や籠脚を含めた打撃・格闘の両アクションに対応しているので、かなり優秀なスキルだ。
「ペッパーさぁん、ペッパーさぁん。因みにラビッツでしか取り扱ってない、スキルの秘伝書が有るのだけれどぉ~。いかがかしらぁ?」
そんな折、エルクが此方に御特な話を持ち掛けてきた。
「ラビッツ限定の秘伝書…ですか?」
「そうよぉ~アイトゥイル姉さんのお気に入りだから、お安くしますよぉ。ちなみに…ご予算は如何程かしらぁ?」
アイトゥイルが言い掛けた台詞は、おそらく『銭ゲバ』と見て間違い無い。であるならば、涙光の地底湖で消耗した武器の修繕を踏まえると、少しばかり手元にマーニは残しておきたい所である。
「そうですね…。武器の修繕をビィラックさんにお願いしたりするので、12~13万マーニ程になります」
「あらぁ、それなら色々買えちゃうわね~」
そう言ったエルクが巻物を広げると、ペッパーの目の前に買い物画面が表示される。其所には『致命』の名を冠した技の数々が在り、剣術や刃術に槍術や体術等の豊富な品揃えだった。
だが問題は種類や数では無く、スキルの秘伝書の『値段』で、安くて5万マーニから高いもので10万マーニと言う、ぼったくりレベルの金銭要求である。
「おおぅ…此れは中々……!」
「さぁさぁどれにしますかぁ~?」
一覧に有るスキル名を見つつ、何れにするべきか精査していると、ふと1つのスキルに目が止まる。
値段は8万マーニではあるが、5万マーニで買える
「エルクさん、此の『
其れから『
「お買い上げぇ、ありがとうございますぅ~♪」
購入品を決めてペッパーが大金を支払うと、ニッコニコの営業スマイルでエルクが言った。此の2つの秘伝書の技と、新しく手にしたスキルは明日以降試す事にして、ペッパーはアイトゥイルと共に、特技剪定所からビィラックの居る鍛冶工房に突撃。
ライブスタイド・レイクサーペントやライブスタイド・デストロブスターとの戦いで消耗した武器の耐久値回復を依頼して、本日のシャンフロを終えたのだった……。
其れは己が積み重ねた証