さぁ、始めよう
ベヒーモスでの一幕、様々な秘密が暴かれた日の翌日。
日付は7/30・午後八時半。バイトを終えて帰り掛けにハンバーガーショップで食事をし、帰宅して手洗い嗽を兼ねたシャワーと歯磨きで身体と頭を洗った梓は、ドライヤーで髪を乾かし、水分補給をした後に布団を敷いてヘッドギアの動作チェックを行い、シャンフロへとログイン。
兎御殿にてペッパーとして覚醒して、アイトゥイル・ノワ・ヒトミと合流すると、其処に聖杯の力で男性状態のままのペンシルゴンとゼッタがやって来た。
「やぁやぁ、
『グルルルルルル…………!』
「ペンシルゴン、ノワ、喧嘩は駄目だよ。出来る限り重要秘匿事項を隠したい所では有るけどな…………」
ノワは右手・ペンシルゴンは左手で、愛情を込めて優しく撫で撫ですれば、両者共に御機嫌な表情となり。落ち着いた所でゼッタがゲートを開き、シャンフロ第十五の街・フィフティシアへ。
旧大陸の終わりの街であり、何れは新大陸への旅立ちの街となる場所に在る、慈愛の聖女 イリステラが居る教会にして、クラン:
午後九時、聖盾輝士団の本拠地たる教会。其の一室に在る応接間にはクラン:
SF-ZooからはAnimaliaとヴェット、ウェポニアはSOHO-ZONEにアヴァランチ、ライブラリからはキョージュとセートの、聖盾輝士団はジョゼットとクラリス。
午後十時軍は『久し振りに早上がり&二日の有給を勝ち取った』と感涙を流して喜んでいたカローシスUQと、錚々たるプレイヤー達が席に座り。室内には同席する形で、イリステラも居たのである。
「さて…………こうして皆揃ってくれた事、感謝するよ。此の会談を有意義な時間としよう」
キョージュが音頭を取り、チラリとセートを見て。其れを始まりとして、セートは言葉を発する。
「一先ず、七天極星の六クランによる『ユニークモンスター・深淵のクターニッド』の攻略が完遂出来た事、本当に大きな成果となりました事、心から感謝すると共に『クターニッドのユニークシナリオの重大要素』を伏せた上で公表しますが………よろしいでしょうか?」
シャンフロのユニークモンスター、其れに通じるユニークシナリオは絶大な力を誇る。ましてや現状判明しているユニークシナリオの中で、ユニークモンスターを『周回可能』ともなれば、其れだけで独占をしようとする輩が現れる可能性も有る。
だが此れについては、既に全クランも考えている事は同じであり、そして答えは決まっていた。
『異議無し』
「了解です。では
セートが文章を打ち込んでフクロウを呼び出し、ライブラリの本拠地たる
其れは他のプレイヤーにとっては、ある種の『攻略本』の様な存在で、ライブラリにとっては『涎が出て喉から手が出る』程の情報量を秘める、凄まじい『設定集』。そして此の一冊に関しては『周回時』に際して、アドバンテージを発揮する物。
「さて、だ。此処からは七天極星にとっても大事な話になる。旅狼を除く六クランは今回、深淵のクターニッドを撃破してペンシルゴン君が示した、『世界の真理書【深淵編】』を始めとした様々な報酬を獲得出来た。其れによってユニークモンスターを撃破すれば、其のモンスターに関する『出自』を知る事が可能になる書物を手に出来ると、証明された事に他ならない」
「ユニークモンスター撃破の共通報酬として『設定集』という名の世界の真理書、其のユニークモンスターに関わる『逸品』、そして撃破した場合にステータスポイントを200ポイント獲得出来ましたからね………。苦労と苦戦に見合うだけの価値は有りました」
キョージュの説明に聖盾輝士団の副団長・クラリスが頷き。ジョゼットは彼女から献上された、クターニッドの反転能力が一つ・性別反転を宿した青色の聖杯を見せる。
「クターニッドの聖杯は『八つ』存在して居たが、選べる杯は一つだけだったな………。おそらく其れ故に周回可能となっていたのだろう」
「まぁ、全ての聖杯をコンプリートしたい所では有りますが、流石に其れをやると他のプレイヤーからも怒られそうなので止めておきます」
要素を反転させる聖杯の価値は絶大であり、一つでも凄まじいが其れを全て手にしたならば、凄まじいアドバンテージを得られる。だがクターニッドのシナリオが周回可能であり、他のプレイヤーにも知られれば、初めて挑むプレイヤーにも迷惑が掛かってしまうのは明らかだ。
コホンと咳き込んだキョージュに、ペッパーとペンシルゴンのアンテナが警戒信号を発している。おそらく此処からが本番だと、そう警告を促す様で。
「ライブラリから旅狼に、一つ『御願い』がある。君達が持っている物と、私達が獲得した物…………つまり世界の真理書【深淵編】を
先んじてクリアした旅狼と、今回クリアした六クラン。キョージュからすれば、其の発言は『同じ真理書でも内容が異なる可能性が在るのか?』という、シャンフロの世界の謎に迫る者としての『純粋な興味』。
そしてクラン:旅狼の誰かが『七つの最強種に関係する装備を探せるシナリオを受注している』という事実から導いた、一つの『確信』たる発言だった。
「…………此の場に居る『全員』が、イリステラ様と旅狼に誓って、此処で見た物を『外部に
対するペッパーもまた落ち着いた様子で条件を示す。此の場に居るSOHO-ZONE………武器防具に関して狂える程の情熱を持った彼が目撃すれば、話し合いは混沌の様相に至るのは目に見えているが故に、そう言ったのだ。
「解った、約束しよう。SOHO-ZONE君、良いかね?」
「旅狼には銃を修復して貰った大恩が有ります、反対する理由は有りません」
「了解した」
「私も良いわ」
「此方も問題無いですよ」
「イリステラ様に誓って、我々も約束を守る」
クランリーダー含めてサブリーダーも頷き、ペッパーは「ペンシルゴン、頼めるか?」と問い、
ペンシルゴンがインベントリアから世界の真理書【深淵編】を取り出し、席から立ってキョージュに手渡す前に交渉し。最終的に『三億マーニ』を毟り取った上で見せる形となり、キョージュは早速書物を開いて、食い入る様に二冊の書物を読み始め。
ペッパー・ペンシルゴン・ジョゼット・クラリス以外の全員が、キョージュの周りに集まって呼んでいる物と、自分が持っている物を見比べ……………そして『真理書内のある項目』を目視し、真理書を見比べた事で目を見開いてざわつき始めたのだ。
「ペンシルゴン」
「多分『アレ』だね、あーちゃん」
自分がそうである様に、彼女もまた同じ答えに辿り着いているのが解る。軈てざわつきは収束して全員が席に戻ったものの、彼等彼女等の視線はペッパーとペンシルゴンに注がれており。
「ペッパー君、ペンシルゴン君」とキョージュは立ち上がり、世界の真理書【深淵編】を返しながらに歩きつつ、
「私達が獲得した真理書と、君達旅狼が保有している真理書。其処には『ユニークモンスターに関する出自やギミックに関する記載』が載っていた。だが我々の持つ真理書には『記載されていない情報』が、君達の真理書には『記載されている』という違いが有った。此れは『大きな違い』であり、世界の真実を知る上では『凄まじいアドバンテージの有無』に繋がる…………そう言っても過言では無い」
だからこそ。そう述べたキョージュは、ペッパーとペンシルゴンを見ながらに言ってきた。
「ペッパー君、ペンシルゴン君。君達のクラン:旅狼が保有している『
そして約束通り、此の情報も連盟に在籍するクランメンバー全員に対し『外部に決して漏洩しない』事を此処に誓う。もし違反したならば、其の者には『所属クランからの除籍処分を下す』事を約束する」
──────と。
同じの様で違う物