VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

686 / 1072


一方の新大陸




インパクト・オブ・ザ・ワールド 〜夜と共に奴は来た〜

「ペッパーさぁ……………」

「わかる、わかるぞ………其の気持ち」

「新大陸に行く前に、ベヒーモス起こして欲しかったんだがなぁ…………」

「マジで其れな」

 

ペッパーを首領としたクラン大連盟、七天極星(グランシャリオ)会談が始まって一時間が過ぎた頃。此処は新大陸に先陣隊として辿り着いた開拓者によって構築された、港町兼前線基地。今日も今日とて開拓者達は金槌を振るい、鋸を鳴らして木材や新大陸産のモンスターの素材を加工し、釘を打って着々と設備を含めた町作りを続けており。

 

其の中で疲労を紛らわせる為の話題として選んだのが、自分達が居る新大陸とは別の旧大陸………其処で再稼働と踏破によって明かされた、恒星間航行(バハムート)級アーコロジーシップ・三番艦ベヒーモスの最奥第十階層に在る『レベルキャップ解放設備』や、プレイヤーの手で銃を作れる様になる『ガンスミスライセンス』の事だった。

 

「ペッパーさぁ……………」

「此方はレベルキャップ解放出来ず、あっちはレベルキャップ解放しての殴り込み…………」

「しかも銃火器とロボットだろ?不公平じゃねーか、こんなんはよぉ…………!」

「わかる」

「せやな」

「少なくとも新大陸のレベルキャップ解放設備まで、最短距離で行けるルートが解りゃあなぁ…………」

 

彼等彼女等の不満の種は、やはりというかバハムートを先んじて利用出来た事による、圧倒的なまでの『アドバンテージ』と『此方へのマウント』だろう。

 

何せ旧大陸にもレベルキャップ解放が可能で、ガンスミスライセンスでハンドメイドガンの製作に、ロボット及びパワードスーツの確保で暴れ回るという、今の自分達に足りない所か喉から手が出る程の要素を楽しんでいるが故に。

 

「N.M.M.とライブラリの先遣隊がやってるらしいが………、此処のモンスター的にもキツかろう」

「…………というかペッパーで思い出したんだが、アイツって確か【最大高度(スカイホルダー)】だろ?『新大陸の空中写真』を撮ったりしてるんじゃね?」

「………………………あ」

「ありえる………っうか、絶対やってそう…………!」

「ペッパーさぁ……………」

 

一人が気付き、其れが波紋となって伝播していく。そうと決まれば話が早い、先遣隊として来ているライブラリのメンバー達に話を通し、ペッパーが新大陸の空中写真を撮っているという大前提の元、開示をする様に働き『ほぉ?此処が貴様等の住まいか、人間(むし)共』

 

星が瞬き、月光が満る夜空が()に染まる。無機質な視線と声に開拓者達が何だ何だと見上げた刹那、見張り台に登っていたプレイヤーが叫び声を上げていた。

 

「敵襲だ!敵襲ッッッ!!恐竜キメラとケルベロスティラノが来てるぞ!!!各員戦闘準備ッッッ!!!」

「空に()()居る!!アレは………『黒い竜』だ!!『ノワルリンド』だ!!!」

 

ざわりと皆が武器を取らんとした直後、密林をブチ破り恐竜キメラ達が『狂乱状態』になりながら、我先にと港町へ殺到し。其処に黒い漆黒のブレスが飛来から、見張り台に登っていたプレイヤー達を一瞬で焼き尽くし、剰え近くの建造物までも同じ運命を辿らせる。

 

『踊れ、脆弱なる人間(むし)共よ』

 

黒竜ノワルリンドの一声。そして咆哮と共に黒竜の手によって『モンスタートレイン』された恐竜と恐竜キメラの大狂乱による侵撃が、容赦無く港町とプレイヤー達に叩きつけられたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ……このままじゃボコボコにされるぞ!」

「チッキショーが!?!やり口がみみっちいぞ、あのクロドラゴンがッッッ!!!」

「増援来るぞ!っげぇ?!」

「ウッソだろ、よりにもよって『傷だらけ(スカー)』が来やがった!?」

「アイエエエ!?スカー!?スカー、ナンデ!?」

 

複数の防衛ラインを守り続けるタンクと、前線を押し上げんとする近接職達、そして其れに護られていた生産職にヒーラー達が吹き飛ばされる。大規模パーティーによる討伐隊の何重にも渡る攻撃をも跳ね除け、逆に全滅や壊滅に追いやった程の力を。

 

プレイヤーによって此のペンヘドラント大樹海地帯の、或いは『ストーリー進行上に於けるボス疑惑』を持つ存在…………『ドラクルス・ディノサーベラス"傷だらけ(スカー)"』は咆哮を上げながら、道行く先に居る者や物を薙ぎ倒し、次いでとばかりに建造物を踏み潰して、己の心が成すがままに突き進む。

 

「誰でも良い!スカーのヘイトを他のモンスターに押し付けろ!!」

「っく、こんにゃ…………ぐべぇ!?」

「また増援かよ、ふっざけるな!!!」

「教会や船に、手は出させません…………!!」

「最悪、重要施設だけでも守れ!家や宿舎は此の際切り捨てるつもりで!!」

「壊されたらまた直す!兎に角、重要施設だけは死守を!」

 

黒竜ノワルリンドは樹海に潜むモンスター達を挑発して気仕掛け、傷だらけが暴れ回りながらに咆哮を轟かせる。プレイヤーも負けじと、笑みリアを始めとした実力者達の掛け声で最終防衛目標たる開拓船、そして一週間後には新大陸に到着する慈愛の聖女イリステラと、王族達が入る教会だけは死守する方針で陣形を立て直す。

 

「何が『我が爪を振るうまでも無い』だ!!あの黒トカゲがァ?!!」

「モンスターがモンスタートレインするとか、みみっちすぎるでしょ!?」

『ほう、よく吠えた。我が直々に踏み潰してくれよう』

「あ、やっぶく!?!」

「ぴきゃ!!?」

 

ノワルリンドに文句を言えば、其のプレイヤーは真っ先に潰されてポリゴンを崩壊させる。何より『殺し方』が酷い、小蝿に巨大な蝿叩きを使うが如く叩き潰し、ゴルフボールをゴルフパッドでホールインワンするかの様に海へと弾き飛ばし、明らかにオーバーキルと言わんばかりの威力でプレイヤーを次々と倒していく。

 

『ふん……弱い、あまりにも弱過ぎる。貴様等の様な脆弱な虫共は、黙って我に隷属すれば良いのだ』

「エネミー風情が生意気言ってるんじゃないわよっ!【フレイムジャベ……ッきゃああ!?」

「うわぁあああ!?」

 

ノワルリンドが一体で襲撃していたならば、プレイヤー達はゾンビアタックを絡める形を取る事で、何とか拮抗………或いは撤退を判断させれていた『可能性が有った』。

 

だがしかし…………ノワルリンドと傷だらけの同時襲撃、モンスタートレインで放り出されて狂乱状態となったモンスター達の波状増援と、唯でさえ拠点防衛の難易度が跳ね上がった状態では、第一陣のプレイヤー達だけでは『あまりにも人手が足らな過ぎていた』。

 

何よりも──────事態が『最悪な方向』に動いたのも、先遣隊にとっての不運であり。

 

『ふぅむ…………『アレ』は貴様等の()()か? であるならば、其れを壊せば貴様等は一体『どうなる』であろうなぁ……?』

『『『ゴアァアアアアアアアアア!!!』』』

「不味い!不味いぞ!?」

「クソが、傷だらけとノワルリンドの『両方』に、船狙われてんぞ?!ヘイト奪い取れ!!破壊されたら元も子もねぇ!?」

「傷だらけは俺が、ぎゃばうん!?」

「させっ………ぐおぁ?!?!」

 

事態は黒竜の口に力が込められ、漆黒の炎が高まり燃える。傷だらけが咆哮と共に、船へ目掛けて突撃する。

 

開拓船は頑丈なれど、其れはあくまで『正面』からの攻撃に対してであり、船の『側面』から受ける事は人間で例えるならば、肋骨を砕かれるリスクを背負う事に等しく。

 

其れを止めんとしたプレイヤー達は馬の身体にトリケラトプスの頭が付いた、恐竜キメラの『ドラクルス・ディノケラス』により轢き殺され、其のドラクルス・ディノケラスは傷だらけに突貫するが、逆に吹き飛ばされて宙を舞う。

 

そして…………ノワルリンドの放った無慈悲なる漆黒のブレスが一直線に、新大陸調査船へ放たれ──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『幾星霜にも満たぬ相対だが、其の『しつこさ』()()は一級だな………()()()()()()よ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命中寸前、船とブレスとの間に降り立った『()()』が、其の背に生やす四翼を大きく広げた其の瞬間。プレイヤー数十人を消し炭にして、辺り一帯をも焼け野原にし得る程の威力を秘めた漆黒の息吹が、プレイヤーやモンスター達の前で『跡形も無く消し飛び』。

 

其の刹那に伸びた黄金の(かいな)が、傷だらけの巨体を掴み上げ。抵抗する傷だらけの巨体を軽々と、まるで『マンガ投擲』の如くグルグル回しから、樹海目掛けて『ぶん投げた』のだ。

 

プレイヤー達は見た。モンスター達は見た。そして黒竜ノワルリンドは()()を見て。其の両眼に『怒り』を顕にし、血走りを浮かび上がらせながらに…………叫ぶ。

 

 

 

『おぉ……おぉお……!其の()()……!其の姿()……!忘れはしない……!忘れてなるものか………!貴様から受けた『屈辱』を………!幾度蘇れど、我は決して忘れはせぬ……………ッ!!』

『ふん…………。『世界に寄生する胞子の怪』が、上等をほざくではないか』

()()()()()()ゥゥゥウウウウウウ!!』

 

 

 

先陣達が作った前線拠点が半壊し、燃え落ちる中で黄金の覇龍が現れた。果たして其れは、シャングリラ・フロンティアという世界の運命神による悪戯か、天を覇する金色の龍王の開拓者達に対する、せめてもの情けか、或いは慈悲か。

 

恐竜や恐竜キメラを狂乱させ、港町を混乱へ陥れた原因たる漆黒の黒竜を前に、七つの最強種(ユニークモンスター)天覇(てんは)のジークヴルムが立ち塞がり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金と黒は夜風吹く、新大陸の夜空の下に激突した。

 

 

 

 






人と黄金と漆黒


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。