VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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時は来た




人は船で海へと駆り出し、勇者は空駆け火山へ向かう

7/31…………此の日シャンフロは大きな熱狂を受けていた。

 

ワールドストーリーの進行による、新大陸行の三隻の豪華客船級の大型木造調査船の製作。其れが遂に完了した事で開拓者(プレイヤー)達は待ちに待って待ち焦がれた、新大陸へと出立する事が出来る様になったのだ。

 

とあるプレイヤーの手により、第一の街・ファステイアに眠る超巨大宇宙船バハムートが明かされた事により、此の世界は『中世文明に魔法と超文明科学が混ざり合ったハイサイエンスファンタジー』という認識に書き換わり。

 

そしてベヒーモスの内部にて行われる数多の試練踏破者の手には、此処まで長らく待ち望まれた銃火器やロボットが齎され、新大陸の環境にて暴れに暴れてやろうと躍起になる者達が多く居る。

 

そんな彼等彼女等は現在、第二の旅立ちの地にしてシャンフロでは第十五の街たるフィフティシアに集い、ギルド所属者や抽選で選ばれた者、身分の高い者を含めたNPC達も三隻の船へ乗り込んでいく。

 

三つの巨大調査船…………シャンフロでは『三神教』の神々の名を冠し、そして後にライブラリのバハムート内調査チームによって、其々が『バハムート』の名に由来した物と判明する事になる、王族級のNPCや関係者が乗り込む『ズィーズィー号』、ギルド等の組織に属するNPCやプレイヤーが乗る『リーバイオスヌ号』、他の組織に属さないプレイヤー達が抽選の果てに乗り込む『ベルヘモルス号』に分かれ。

 

ある者は未だ謎多き新大陸に思いを馳せ、ある者は何れ来るジークヴルムとの戦いに己の相棒と共に名を刻むと決意を、またある者は抽選で落ちたので積荷やらに紛れて新大陸へと企む等、人の数だけの夢や野望を乗せて船は港を出港し。

 

リアルタイムで七日間という船旅を経て、新大陸に到達する………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁファストトラベルの御陰で、旧大陸と新大陸の往来が可能だからなぁ……………。船酔いで七日間悩まされる必要が無いなら、其れをやらないに越した事は無いし」

 

昨日の会談の後、ペンシルゴンと共にラビッツへと戻りセーブ&ログアウトを行って、其の日のシャンフロを終えた翌日。今日は一日休みなので、朝食とトイレに水分補給を済ませてシャンフロにログイン。

 

現実世界(リアル)の梓からペッパーとなり、ラビッツの休憩室にて覚醒した彼女()は、アイトゥイル・ノワ・ヒトミと合流し、一人一羽一匹一機のパーティーはビィラックの仕事場たる鍛冶場へ辿り着く。

 

「おぉ、来たけぇ。ワリャが頼んだ武器防具の修繕に、『例のモン』も仕上げといた」

 

そう言いビィラックが取り出すのは、シグモニア前線渓谷(フロントライン)にて使用した武器達に、トレイノル種との生存競争を演じる間柄であり不倶戴天の関係を持つ、要塞蜘蛛ことフォルトレス・ガルガンチュラ。

 

其のフォルトレスの女王個体たる、フォルトレス・ガルガンチュラ・エンプレス達の素材を大量に用い、彼女に製作を依頼した事で産み出された、数多の乳白色や薄紅色、或いは其の両色が含まれた武器と一式防具達。

 

そして皇金世代(ゴールデンエイジ)の素材の力を引き出す為に必要な、新大陸に在る超上質素材『黄金のマグマ』を掬い上げる為に必要不可欠となる、皇金世代の甲殻を用いて作られし皇帝陛下の金色のバケツだ。

 

「一式装備はワリャの注文通り、名を『要塞城の厳壁凱鎧(キャッスェル・ガルガーナ)』としといた。此の大剣は『重城装の大断剣(ガンガトール・パニッシャー)』で、巨大戦鎚が『重城装の砦戦鎚(ガンガトール・インパクター)』。

其の籠脚(ガンドレッグ)は『蜘蛛城の重剛脚(ヴォーパン・ガッドルグ)』、大盾が『女帝城の顕壁盾(ヴォーバン・ガルガンチュラ)』じゃ大事に使えや。後は此れじゃ、件のマグマを掬う為のバケツ…………ワチ謹製の『皇金桶(おうごんとう)カイザーバケット』じゃ、二つ出来たけぇ!」

「金ピカなのさ」

『グルル』

「眩しいな、此のバケツは」

「凄い………ビィラックさん、ありがとうございます」

 

薄紅を帯びた美しい乳白色の一式鎧に、分厚い乳白色の重量大剣。薄紅色の巨大重戦鎚と、超重量で重厚な籠脚、そして薄紅を帯びた美しい乳白色の大盾の五種で、其のどれもが共通して『凄まじく重い』というのを、両手で持った事でよりハッキリする。

 

皇帝陛下のバケツに関しては、兎にも角にも『滅茶苦茶頑丈』であり、試しにコンコンとドアをノックするつもりで叩いた所、自分の拳にダメージが入って体力が削れ、カイザーバケットにはノーダメージという此の時点で『耐久がヤバい』とペッパーは確信した。

 

「フォルトレスの武器達は製作に用いた素材の量と質により『重量』が左右され、出来上がった武器はどれも『相応の筋力』を要求する。…………ただ持つだけ振るうだけでも『凄まじく重い』、故にこその『要塞城の厳壁凱鎧』じゃ。コイツが在れば其の武器達の重量に負けんくなるが、代償に装備者の俊敏性やら機動力は失われる。まぁ一回はドンと腰を据えて、真正面から確りと構える戦法もアリじゃろ」

聖盾(せいじゅん)イーディスを使いながら走り込んでガードするって、ある意味『辻タンク』みたいな事してますからね…………」

 

ゲームには『辻ヒーラー』の様なプレイスタイルを持つプレイヤーが居る様に、颯爽と現れて敵の攻撃から味方を守る『高機動タンク』が居ても良い筈だ。

 

現実では敵味方の弾丸飛び交う戦場に突っ込んで壁になろうとした結果、四方八方からの弾丸の嵐で蜂の巣Endだろうが、シャンフロ含めた数多のゲームならば『何にだって成れる』し、やりたいと思う事も『やれる様に突き詰めれば出来る』のが、特権にして醍醐味と言っても過言じゃないのだから。

 

ビィラックに今一度礼を述べ、一同はラビッツの実戦的訓練及びアクセサリー等の実験場としても使っている、ヴォーパルコロッセオに移動。アイトゥイル・ノワ・ヒトミをコロッセオ備え付けのベッドエリアに置いて、黒之十束(クロノトツカ):百刻式(ヒャクコクシキ)要塞城の厳壁凱鎧(キャッスェル・ガルガーナ)に切り替え、蜘蛛城の重剛脚を両脚に装着。

 

手始めに巨大(ビッグスケール)メイスたる重城装の砦戦鎚をインベントリアから出した所、ヴォーパルコロッセオの地面に突き刺さり、地面にバキバキッ!と罅が迸ったのを見た事で『フォルトレス恐るべし』と結論付けながら、左手で灼骨砕身(シャッコツサイシン)を握って右手の愛呪の権能を相殺。

 

両手で巨大戦鎚を握り締め、地面から引っこ抜いて踏ん張った瞬間、足元に衝撃が襲い掛かって両脚が地面に埋まっており。片脚に力を込めつつ、もう片方の脚を上げた事で前へと出、歩く度にコロッセオの地面に蜘蛛城の重剛脚の足跡が減り込み、動く度に『巨人の歩行』を思わせる痕跡と、地響きが刻まれる。

 

そして周囲確認による安全確保を行い、両脚を踏ん張りメジャーリーガーが野球ボールをホームランするが如く、思いっきりスイングした瞬間、周りの空気が圧縮されて空圧という名の『砲弾』が飛び出し飛んで行ったのだ。

 

「うへぇ…………要求ステータスに『筋力1000』必要としてる時点でヤバいのに、キッチリ装備出来たら特に何の制約も無しの『遠距離攻撃』。しかも空気圧による『不可視』でブッ放すし、要塞城の厳壁凱鎧と蜘蛛城の重剛脚の『セット運用前提』とはいえ、うわぁ…………マジですかい………」

 

一式装備を必要とする上、敏捷がほぼ死ぬ事を是としたならば、フォルトレスの武器防具は対物理方面のモンスターに対し、最強クラスの耐性を誇る事を。同時に此れは『タンク職の革命装備』に成り得る可能性を秘めた物となる気がするのだ。

 

特にコレを『マッシブダイナマイト』に装備させて使わせたなら、敵の攻撃を踏ん張って受け止めた後に、カウンターで敵が吹き飛ばされていく………そんな光景が『ハッキリ』と脳内に浮かび上がった程には。

 

そうこうしている内に灼骨砕身の効果が切れて、両手武器である巨大メイスは装備不可能となり、彼女()はインベントリアに収納、代わりに巨大な大盾たる女帝城の顕壁盾を顕現、左手に掴み取りドッシリと構えれば、遠目に見ても『重装甲タンク』にしか見えない姿になった。

 

「女帝城の顕壁盾は地面に突き刺して壁にするのも有りか………。要塞城の厳壁凱鎧の耐性と合わせて、物理面がほぼ『無敵』になるじゃん………。流石にカレドヴルッフとかの装甲貫通やガード貫通には無意味だが、にしてもエグいなコレも」

 

要塞に等しいモンスターから作られた盾であり、最悪オブジェクト化しても敵の攻撃に耐えてしまいそうな予感を抱きつつ、地面に深く突き刺して最期に取り出すは武器種:大剣の重城装の大断剣。灼骨砕身は一日一回とノワとの約束である為に今日はもう使えないが、大剣を『スキル』で運用する手段ならば有る。

 

其のスキルの名は『刀剣大神(とうけんだいしん)』……………レベルキャップ解放と同時に習得し、同調連結(ハイコネクション)の後のスキル整理中にエルクに見て貰った事で判明した、爆駿流疾走(ブラスタ・ファラウェイ)星幽界導線(アストラルライン)業撃(ごうげき)茨木俱緞(いばらきぐだん)】と同じ『三桁スキル』の枠組みに有り、能力として『片手で斬撃属性の両手武器を装備可能』な、謂わば『隻腕で大剣や大太刀を扱う』というロマンに溢れたスキルなのだ。

 

早速起動して重厚重圧な乳白色の大剣を左手に取れば、リュカオーンに呪いを刻まれて一度は諦め掛けた大剣の装備が出来た事実に、ペッパーは静かに泣いたのである。

 

余談だが、消費アイテムの『的当て案山子』を用いて重城装の大断剣を振ってみた所、まるで魚の骨を骨切り包丁で両断するが如く一撃で真っ二つにしてしまうだけで無く、剰えコロッセオの地面を一部割ってしまう程の威力を誇っていた為、此の武器もセット運用で相当な出力を繰り出す武器だと確信し。

 

要塞城の厳壁凱鎧含めた装備から、何時もの奏でる者の旋律羽衣(ダ・カーポ・シェイルンコート)へ切り替えた後にコロッセオの罅割れを整地して、アイトゥイルのゲートを通じてシグモニア前線渓谷(フロントライン)に居るウィンプ達に、エフュールに作って貰ったツァーベリル帝宝晶製のアクセサリーを届けに行くのだった…………。

 

 

 






マグマ採取の前に様子見へ


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