VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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進め、進め、進め




其の人の第一印象は初手で八割方が決定する。また其れは他の生物達も同条件である。

シグモニア前線渓谷(フロントライン)よりアイトゥイルのゲートでキャッツェリアに戻り、其のキャッツェリア在る峡谷と巨大な大河、火山灰の降る荒野を進み。

 

道中を阻む敵を討ち果たしながら、前へ前へと進み続けた一行は遂に、目的地たる『グレイブヤード積竜火山(せきりゅうかざん)』の周辺付近に到達した。

 

「此処が目的地、か。………しっかしでっかいなぁ」

肯定(あぁ):アレがグレイブヤード積竜火山。我々征服人形(コンキスタドール)による環境調査の尽くを阻んできた、『赤き竜達』が生まれ棲まい、最後に果て逝く場所。其れがあの火山だ」

 

轟々と燃えて黒い灰を空に放ち続ける光景は、まさにゲームに例えるならば『ラスボスが居る城にやって来た勇者一行』とも見て取れる。

 

尤も其の勇者は前衛偽装の元バックパッカーに王子様系女子征服人形、呑兵衛風来女黒兎とヤンデレ系最強種雌狼の分け身という、イロモノ揃いの一癖二癖では収まらない面子ばかりなのだが。

 

「こういう時は第一村人を探したりと、情報収集が基本だ。此の近辺に居る筈の『鉱人族(ドワーフ)』を探しに行かないとか。アイトゥイルはコートの中へ、ノワは俺の影、ヒトミさんはインベントリアに」

 

各員に指示を出て隠し、ペッパーは近くの岩場に退避。窮極致超越(アレフ・オブ・トランジェント)の自傷強化・局極到六感(スート・イミュテーション)の感覚強化・天空の神眼(ラトゥルスカ・ゴッドアイズ)の俯瞰視点からの見下ろす三種のスキルを点火。続けてエクストライズ・トリデュート(複数のスキル使用によるスキルの強化)ファウラム・チャージング(複数使用のスキルのリキャストタイムを短縮)による補助。

 

そして『スキル使用後の再使用時間(リキャストタイム)が長ければ長い程に、使用したスキルの再使用時間がレベルに応じて短縮される』というレベル表記持ちのスキル『リライジングブースト』を乗せて、彼女()は『自身から半径400メートルの領域を俯瞰視点から見下ろす広域探査(サーチ)』を行い。

 

其の範囲内ギリギリの所で『肘から先が鉱石に侵食されている身長130cm程度の少女が、周りを見渡し怯える様子で大河の水をバケツに汲んでいる』のを目撃する。

 

「………腕の部分が鉱石って事は、もしかして鉱人族か?」

肯定(そうだ):鉱人族は腕の半分が鉱石で覆われているのが特徴だ。契約者(マスター)、もしや見付けたのか?」

「えぇ、目に関するスキルを使って。あと其の娘はどうにも『怯えてる』みたいなんですよね………」

「そりゃそうじゃ。何せ今の鉱人族は『単に醜悪(ブス)』という理由だけで、当代の赤竜(せきりゅう)ドゥーレッドハウルに『虐げられとる』らしいからのぉ………」

 

聞き覚えの在る声にバッと振り向けば、ヴァイスアッシュの『古くからの友公(ダチコウ)』であり、彼からは『数多の知識を修めた極星大賢者(スターラウズ)』と呼ばれ、新大陸の数多の種族との面識を持つ老ゴブリン。

 

そしてペッパーの中で、ウェザエモンやクターニッド、ジークヴルムとオルケストラ、リュカオーンにゴルドゥニーネにヴァイスアッシュと同じ…………『ユニークモンスター疑惑』を持つレベル200のヤバい存在──────『ポポンガ』だった。

 

「ポポンガさん、御久し振りです。何故此処に?」

「久方振りに鉱人族の作った酒を飲みたいんと次いでに、『赤系の竜人族(ドラゴニュート)』にもちょいと顔出しをと思っての。ふらっとしとったら、お前さん達を見付けたんじゃ」

 

大型のモンスターが居るエリアで一体どうやってふらっとしていたのかは聞かないでおく事とし、森人族(エルフ)魚人族(マーマーン)鳥人族(バーディアン)以外にも未だ見ぬ種族が、新大陸に居たらしい。

 

一先ず鉱人族の少女に会う為に、岩陰を利用しつつ距離を詰めながら近付き、道中でポポンガから情報を引き出す為にロールプレイを絡めた会話を展開した結果、赤系竜人族達は赤竜ドゥーレッドハウルから『奉仕種族の扱い』を受けており、赤竜の寝床にて生活をしているのだとか。

 

「聞けば聞く程にドゥーレッドハウルの『クズさ具合』が上がっていく…………」

「同意:」

「酷いもんさね」

『グルルル…………』

「まぁ儂から言わせれば、ドゥーレッドハウルは『小物じみたヤツ』じゃからの。まぁ其れでもヤツは当代の色竜が一角、もし戦うならば『決して侮る無かれ』じゃ」

「勿論です。『竜相手に嘗めて掛かれば、其の者の末路は死在るのみ』ですから」

 

ファンタジーしかり、どのゲームでも竜や龍は中盤から終盤の道中や、ボス系列に当たるモンスターが多い。そんな相手に最高打点の攻撃を行わなかった結果、逆にボコボコにされたというパターンは『ゲーマーあるある』の中に当て嵌まる。

 

そんなこんなで移動を続けつつ、周辺に敵が…………更に言えばドゥーレッドハウルが居ない事を確認。あと残り百メートル付近に入った所で、岩の隙間から『わざと』見付かる様にして顔を出せば、少女は驚愕と共にビクン!と小さな身は跳ね。

 

封雲の撃鉄(タイタントリガー)に隠した右手、其処に刻まれたリュカオーンの愛呪が放つ威圧にガタガタと震え、バケツを置き去りに一目散に逃げ出そうとしたのだが、状況を見ていたポポンガが前に出る。

 

「久しいの『ミモリザ』ちゃんや、随分大きくなったな。()()()()()は元気にしとるかい?」

「あ、大賢者様…………!えっと、はい。『父ちゃん』含めて、皆元気です………」

 

ポポンガの口から出たのは、深淵のクターニッドを撃破してルルイアスから脱出後、船でフィフティシアに戻る最中にアラバから聞いた鉱人族の名前。どうやらミモリザと言う少女は、ガンダックの娘に当たる人物で。

 

彼女はカラメル色の鉱石に覆われた、褐色肌の赤短髪。オーバーオールとシャツの組み合わせからなる服装で、生活や鍛冶に使う水を汲みに来ていると見て取れる。

 

「ドゥーレッドハウル様に見付かったら、酷い仕打ちを受けるから………。ちゃんと居ない時を、見計らわないといけなくて…………」

「そうか、そうか………。実はな、ミモリザちゃんや。此方に居るのは『儂の友達』であり、ちょとした『恩人』なんじゃよ」

「えっ……………」

「初めまして、ミモリザさん。自分はペッパー………ペッパー・天津気(アマツキ)と言います。此方のヴォーパルバニーはアイトゥイル、足元に居るのがリュカオーンの分け身のノワ、自分と契約している征服人形(コンキスタ・ドール)のカルネ=ヒトミさんです」

「アイトゥイルなのさ」

『ワンッ!』

「カルネ=ヒトミだ、以後御見知り置きを」

 

名前隠しの効果をオフにして頭上に示しつつ、他のメンバーも含めて自己紹介をした所、ミモリザから「ヒエッ」と声を漏れた。インパクトが余りにも強過ぎたらしい。

 

「ミモリザさん。もしかしてドゥーレッドハウルのせいで、鉱人族の皆さんは飲水も満足に飲めないのですか?」

「………………はい。皆、日々を生きるのに………精一杯、ですから…………」

 

憔悴に無気力、希望が見えない暗闇…………そんな雰囲気を漂わせながら、ミモリザは答え。

 

ペッパーにとっては其れだけで──────彼女を含めた鉱人族達を『赤竜ドゥーレッドハウルの支配から救い出す』には、()()()()()()()となった。

 

「ミモリザさん、俺達をガンタックさんに。鉱人族の長の所へ案内して下さい。俺は勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)の一つ『聖盾(せいじゅん)イーディス』に所持者として認められた者です」

 

インベントリアから取り出した純白と金色の鏡面が輝く、星の願いと共に発露した、其の大いなる盾を握り締めながら──────ペッパーは力強く、ミモリザへと言ったのだった。

 

 

 






勇者は来る


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