VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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鉱人族(ドワーフ)の国へ




勇者は鉱人の声を聞き、そして立ち上がる

飲水を汲みに来た鉱人族(ドワーフ)のミモリザ…………魚人族(マーマーン)のアラバが言ったガンダックの娘たる少女の案内で、極星大賢者(スターラウズ)のポポンガを加えたペッパー達一行は、鉱人族が赤竜ドゥーレッドハウルの被害に遭わぬ様に。

 

そして『ある物』──────即ち『黄金のマグマ』を赤竜に奪われぬ様にと、地下に逃れて暮らしているという、彼等彼女等の本拠地『地底都市ホルヴァルキン』に続く無数の地下トンネルの一つを使って進んでいた。

 

聖盾(せいじゅん)イーディス………壁画で見たのと同じ………。キラキラしてて、とってもキレイ…………」

「そうなのか…………実物を見たのは初めて?」

「はいっ、他の勇者様の武器も見てみたいですけど…………」

 

回復ポーションを飲みながらペッパーは思考を巡らせる。極論で言えば『聖杖(せいじょう)アスクレピオス』の所有者である『火酒夏(カシューナッツ)』が何処に居るかは知らないが、聖剣エクスカリバー・聖槍カレドヴルッフ・聖弓フェイルノート・聖槌ムジョルニアの持ち主とは面識が有るという事。

 

何とかして此の場所に()()出来れば楽なのだろうが、生憎『其の手段が無い』のもまた事実で、其れをやったら先ず間違い無く『オハナシ』は避けられない。

 

代わりにシグモニア前線渓谷(フロントライン)の空洞に置いたブリュバスを回収し、ホルヴァルキンに置いてサンラク・ペンシルゴンのファストトラベル拡張…………というパターンもアリだろうが、やるなら目的地に到着からのランドマーク更新が絶対必須だ。

 

「着きました、此処が私達の国『ホルヴァルキン』です」

 

ミモリザの声で視線が移る。地下トンネルを抜けて辿り着いた其の場所は、更に一段下の領域に作られた名前の通り『地下都市』の様相を呈しており。居住区として建ち並ぶ建物は土を焼き固めた煉瓦や、石を切り出し加工した造りで建てられ、其の並び方は何処か『平安時代の京の都』の如く在った。

 

だが地下都市の構造を見ていたペッパーは少し違和感を覚え、地下都市に暗闇が在るという条件を満たした事で黒狼の鋭眼(アーテオル・ガウス)を起動し、暗闇を昼と同じ状態にして眺めた事で、本来都市の中央に建っている筈の長が住む建物や重要施設が無い事に気付く。

 

「わ………リュ、リュカオーンと、同じ………色の………」

「えっ?」

「ぴゅい!?」

 

ミモリザにビビられたペッパーは、理由は何だとイーディスを鏡として己の顔を見れば、其処には『リュカオーンと同じ目の色をした』自分が居たのだ。

 

「…………黒狼の鋭眼発動中って、こんな感じだったのか」

『グルルン♪』

 

夜の帝王の寵愛たる愛呪を受け、レベルキャップの解放と共に刻まれたスキルは、リュカオーンの権能をプレイヤーが行使出来るらしい。

 

鋭眼が発動している間『私と御揃い♪』とばかりにノワが尻尾を足首に巻き付け、マーキングするかの様に身体を擦り当てる姿に、ミモリザは恐ろしい物を見た表情を浮かべ、ポポンガは「随分と懐いとるな」と言いつつ、アイトゥイルと酒を飲み交わし、ヒトミは周辺観測をしている。

 

暫くして黒狼の鋭眼の効果が終了し、眼の色は元の状態に戻った所で、再びミモリザの案内で地下都市ホルヴァルキンに居る、アラバの知り合いの鍛冶師で彼女の父親たるガンタックに………延いてはポポンガの話で此の都市の長の『ミダス28世』に謁見するべく、ペッパーは引き続き聖盾イーディスを装備したまま、一行は彼女の後を付いて行くのであった。

 

というより分け身とはいえ、リュカオーンを連れて来たともなれば先ず間違い無く、鉱人族に『敵対』されるのでは?と、そんな不安が彼女()の思考には過っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそう思っていたのは、どうやら自分だけだったらしい。

 

「聖盾の勇者………!まさか大賢者様の御知り合いだったとは…………」

「波導の先の地にて、武勇知ら示せし蒼空を舞う勇者………!」

「彼の国の使者より話は聞いたが、まさか本当だったのか…………」

「墓守の御人の名を受け継ぎ、夜の帝王の分け身を従え、深淵の盟主を打倒し、黄金の龍王に名を覚えられたという、強く気高き者………!」

「だが話では男であった筈では?」

「使者によると深淵の盟主に関わる品により、男から女へと姿を変えられると有った」

「成程、では其れであると………」

 

何故だろう、物凄いデジャヴを感じる。記憶を掘り返せば、ベヒーモスの第三階層で他のプレイヤーに取り囲まれた時と大分状況が似通っていたのが当て嵌り。かの国というのはおそらくラビッツの事を指し、使者というのはレーザーカジキのパートナーで、忍者なヴォーパルバニーのエストマの事だろう。

 

自分を見るまではミモリザと同じ、憔悴に無気力と希望が無い状態であったのが、見た瞬間から希望を見出だして近付いてきたのだから、此方も少なからず引く。そして彼等彼女等は相変わらず、リュカオーンの分け身たるノワにはビビっている様子だが。

 

「御久し振りです、大賢者ポポンガ殿。そして蒼空を舞う聖盾に選ばれし勇者、ペッパー・天津気(アマツキ)殿」

 

そんな折、人混みを割く様にして青年の一声が響くや、周りの同族達は左右に分かれ。其の中央を歩いてきたのは、周りの男の鉱人族が髭を生やしている中で、キッチリと剃られた髭に薄い眉、髪は完全に剃り上げられたスキンヘッドに身長155cm程のオーバーオールと半袖を着ている。

 

青年の頭に乗せた金色の王冠と、其の王冠と同じ金色の両腕を持つ彼は、ポポンガが言っていた地下都市ホルヴァルキンの長。ギリシャ神話では『触れた物全てを黄金に変える能力』を持つとされる『ミダース』に由来する『ミダス28世』なのだろう。

 

「うむ、久しいの『ミッちゃん』や」

「大賢者殿も御変わり無い御様子で」

 

開幕初手鉱人族の長たるミダスを『渾名呼び』したポポンガに、ペッパーは固まった。やっぱり此の老ゴブリンはヴァイスアッシュ達と同じ、ユニークモンスターのカテゴリーに居る存在なのでは?──────という疑惑がより強まる中、ペッパーは自己紹介を行う。

 

「初めまして、ミダス殿。自分はペッパー、ペッパー・天津気と申します。此方に居るのが彼の国の頭の御息女たるアイトゥイルに、夜の帝王の分け身であるノワ、そして自分と契約した征服人形(コンキスタ・ドール)のカルネ=ヒトミで御座います」

 

片膝を着きつつ騎士の如く頭を下げれば、アイトゥイル・ヒトミも此方に合わせて片膝を付いて頭を垂れ、ノワも遅れながらも自分達を真似して。

 

軈てミダスは此方を…………聖盾イーディスを見て。そしてペッパーが行ったのと同じ様に片膝を着き、ミモリザも含めた他の鉱人族の者達も同様に行い、彼は言葉を紡ぐ。

 

「聖盾イーディスを手にせし者、どうか我等の願いを御聞き下さい。赤き叫び…………赤竜ドゥーレッドハウルに弾圧され、地下に逃れた我々鉱人族(ドワーフ)達を…………どうか御救い下さい」

 

 

 

 

 

 

『ユニークシナリオ【赤竜の叫び、断ち切るは我が意志】を開始しますか?【Yes】or【No】』

 

 

 

 

 

 

勇者武器を所持して訪れる事か、開拓者(プレイヤー)が地下都市ホルヴァルキンに到達する事か、或いは其の両方が条件だったのか。

 

ペッパーの目の前には『ユニークシナリオ発生』を報せる画面が表示され、彼は迷う事無く【Yes】のボタンをタッチした。

 

 






ユニークシナリオ発生


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