飲水を汲みに来た
そして『ある物』──────即ち『黄金のマグマ』を赤竜に奪われぬ様にと、地下に逃れて暮らしているという、彼等彼女等の本拠地『地底都市ホルヴァルキン』に続く無数の地下トンネルの一つを使って進んでいた。
「
「そうなのか…………実物を見たのは初めて?」
「はいっ、他の勇者様の武器も見てみたいですけど…………」
回復ポーションを飲みながらペッパーは思考を巡らせる。極論で言えば『
何とかして此の場所に
代わりにシグモニア
「着きました、此処が私達の国『ホルヴァルキン』です」
ミモリザの声で視線が移る。地下トンネルを抜けて辿り着いた其の場所は、更に一段下の領域に作られた名前の通り『地下都市』の様相を呈しており。居住区として建ち並ぶ建物は土を焼き固めた煉瓦や、石を切り出し加工した造りで建てられ、其の並び方は何処か『平安時代の京の都』の如く在った。
だが地下都市の構造を見ていたペッパーは少し違和感を覚え、地下都市に暗闇が在るという条件を満たした事で
「わ………リュ、リュカオーンと、同じ………色の………」
「えっ?」
「ぴゅい!?」
ミモリザにビビられたペッパーは、理由は何だとイーディスを鏡として己の顔を見れば、其処には『リュカオーンと同じ目の色をした』自分が居たのだ。
「…………黒狼の鋭眼発動中って、こんな感じだったのか」
『グルルン♪』
夜の帝王の寵愛たる愛呪を受け、レベルキャップの解放と共に刻まれたスキルは、リュカオーンの権能をプレイヤーが行使出来るらしい。
鋭眼が発動している間『私と御揃い♪』とばかりにノワが尻尾を足首に巻き付け、マーキングするかの様に身体を擦り当てる姿に、ミモリザは恐ろしい物を見た表情を浮かべ、ポポンガは「随分と懐いとるな」と言いつつ、アイトゥイルと酒を飲み交わし、ヒトミは周辺観測をしている。
暫くして黒狼の鋭眼の効果が終了し、眼の色は元の状態に戻った所で、再びミモリザの案内で地下都市ホルヴァルキンに居る、アラバの知り合いの鍛冶師で彼女の父親たるガンタックに………延いてはポポンガの話で此の都市の長の『ミダス28世』に謁見するべく、ペッパーは引き続き聖盾イーディスを装備したまま、一行は彼女の後を付いて行くのであった。
というより分け身とはいえ、リュカオーンを連れて来たともなれば先ず間違い無く、鉱人族に『敵対』されるのでは?と、そんな不安が
だがそう思っていたのは、どうやら自分だけだったらしい。
「聖盾の勇者………!まさか大賢者様の御知り合いだったとは…………」
「波導の先の地にて、武勇知ら示せし蒼空を舞う勇者………!」
「彼の国の使者より話は聞いたが、まさか本当だったのか…………」
「墓守の御人の名を受け継ぎ、夜の帝王の分け身を従え、深淵の盟主を打倒し、黄金の龍王に名を覚えられたという、強く気高き者………!」
「だが話では男であった筈では?」
「使者によると深淵の盟主に関わる品により、男から女へと姿を変えられると有った」
「成程、では其れであると………」
何故だろう、物凄いデジャヴを感じる。記憶を掘り返せば、ベヒーモスの第三階層で他のプレイヤーに取り囲まれた時と大分状況が似通っていたのが当て嵌り。かの国というのはおそらくラビッツの事を指し、使者というのはレーザーカジキのパートナーで、忍者なヴォーパルバニーのエストマの事だろう。
自分を見るまではミモリザと同じ、憔悴に無気力と希望が無い状態であったのが、見た瞬間から希望を見出だして近付いてきたのだから、此方も少なからず引く。そして彼等彼女等は相変わらず、リュカオーンの分け身たるノワにはビビっている様子だが。
「御久し振りです、大賢者ポポンガ殿。そして蒼空を舞う聖盾に選ばれし勇者、ペッパー・
そんな折、人混みを割く様にして青年の一声が響くや、周りの同族達は左右に分かれ。其の中央を歩いてきたのは、周りの男の鉱人族が髭を生やしている中で、キッチリと剃られた髭に薄い眉、髪は完全に剃り上げられたスキンヘッドに身長155cm程のオーバーオールと半袖を着ている。
青年の頭に乗せた金色の王冠と、其の王冠と同じ金色の両腕を持つ彼は、ポポンガが言っていた地下都市ホルヴァルキンの長。ギリシャ神話では『触れた物全てを黄金に変える能力』を持つとされる『ミダース』に由来する『ミダス28世』なのだろう。
「うむ、久しいの『ミッちゃん』や」
「大賢者殿も御変わり無い御様子で」
開幕初手鉱人族の長たるミダスを『渾名呼び』したポポンガに、ペッパーは固まった。やっぱり此の老ゴブリンはヴァイスアッシュ達と同じ、ユニークモンスターのカテゴリーに居る存在なのでは?──────という疑惑がより強まる中、ペッパーは自己紹介を行う。
「初めまして、ミダス殿。自分はペッパー、ペッパー・天津気と申します。此方に居るのが彼の国の頭の御息女たるアイトゥイルに、夜の帝王の分け身であるノワ、そして自分と契約した
片膝を着きつつ騎士の如く頭を下げれば、アイトゥイル・ヒトミも此方に合わせて片膝を付いて頭を垂れ、ノワも遅れながらも自分達を真似して。
軈てミダスは此方を…………聖盾イーディスを見て。そしてペッパーが行ったのと同じ様に片膝を着き、ミモリザも含めた他の鉱人族の者達も同様に行い、彼は言葉を紡ぐ。
「聖盾イーディスを手にせし者、どうか我等の願いを御聞き下さい。赤き叫び…………赤竜ドゥーレッドハウルに弾圧され、地下に逃れた我々
『ユニークシナリオ【赤竜の叫び、断ち切るは我が意志】を開始しますか?【Yes】or【No】』
勇者武器を所持して訪れる事か、
ペッパーの目の前には『ユニークシナリオ発生』を報せる画面が表示され、彼は迷う事無く【Yes】のボタンをタッチした。
ユニークシナリオ発生