VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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思考を止めるべからず




一日しか休みが無いなら、其の一日をどう使うかが大事

シャンフロからログアウトし、ペッパーから梓に戻った彼は、冷凍パスタ・牛乳・カットしたリンゴ・手作りの一人前サラダの昼食を取って、暫くの休憩から腹筋含めた初心者にも出来る筋トレを行い、梓はペッパーとして再度ログインする。

 

「今は午後一時、約束の時間まで八時間。こっからは一分一秒の勝負になる………!」

「ペッパーはん、ペッパーはん。ブツブツ言ってるけど何か有ったのさ?」

『ワンッ!』

契約者(マスター)、個体名ポポンガは現在ミダス28世と会話をしています。其れと契約者(マスター)に言伝が一つ、内容は『九時過ぎにペッパーが名を述べた者をホルヴァルキンに()()する』──────と」

「…………其れ『リスポーン地点の強制移動的なヤツ』かな?」

 

やっぱりポポンガって、カテゴライズ的に『ユニークモンスター』クラスの存在じゃないの?と常々思う。

 

プレイヤーのリスポーン地点は『原則として最後に更新した場所に限定される』筈だが、ヒトミの発言を噛み砕き考察した事で、ペッパーはポポンガの魔法は此の世界の常識に『干渉』してる可能性が極めて高いと予測を立てた。

 

魔『法』・法『律』・世『界』…………シャンフロ、即ちシャングリラ・フロンティアというゲームは、シャンフロシステムを搭載した事による現実世界と遜色の無い現象が起きる、魔法と科学の融合から成る『ハイサイエンスファンタジーVRMMO』だ。

 

クターニッドの出自に関わる『世界の真理書【深淵編】』を読んで解ったのは、魔法とは世界に刻まれた『概念』である事、そしてあらゆる『反転』という概念其の物が『深淵のクターニッド』であるという事。

 

魔法という世界の概念或いは法律に干渉し、別の場所に在る物を己の意志で『任意の場所に置いたり』、やろうと思えば『重力方向』や『圧力の強弱』すらも、ポポンガは己の手で『意のままに操れるのでは無かろうか』?

 

(性別を男から女へ、重力の上下ひっくり返すのだけでも大分無法寄りなのに、其れを別の概念に置き換えや干渉するって、やってる事が相当エグいな…………)

 

シャンフロに置ける七つの最強種である為、七体倒せば世界の真実が解き明かされるのだろうが、今後何らかの形でユニークモンスターが現れるとしたなら、ポポンガも其の候補に入る可能性が在る。

 

「とと、いけないいけない。考察するのも良いが、やらないといけない事が有るんだった。アイトゥイル、フィフティシアにゲートを繋いで欲しい」

「フィフティシアに?」

「うん。此れから『単身海底ダイビングチャレンジ』をしに行くからさ」

 

残り時間は七時間五十分。海底でデスポーンする都合上、今回道中はノーデスクリアが必須条件だ。

 

用意する物は海中で動き回る為の生命線の『甦機装(リ·レガシーウェポン):深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)』と、海中での呼吸と海水の冷気に抗う為のアトランティクス・レプノルカの素材を用いた『マクティスシリーズの装備一式』。

 

最後に超深海領域の海水圧に耐える為に必要不可欠となる、アトランティクス・レプノルカとアーコリウム・ハーミット、そしてスレーギウン・キャリアングラーの深海三強達の素材を使い、エフュールが仕立ててくれた『鏡と剣と勾玉の三種のアクセサリー』。

 

アイトゥイルとノワを思いっきり撫で撫でし、身体の緊張を解したペッパーは、装備を切り替えとアクセサリーを装備し直し、装備によって全身からアトランティクス・レプノルカの覇気と、リュカオーンの愛呪の権能を振り撒く姿へと変わり。

 

「さぁ、急ぐぞ…………!」

 

開かれたゲートを潜り抜け、彼女()はフィフティシアの裏路地より海を目指し機動力系スキルを起動から裏路地を駆け抜けつつ、パトリオ・ストイックの跳躍着転即行動(リボル・イン・ドライブ)+崖壁握蹴昇降進(ウォールフォー・エレベイツ)を利用した街中高速立体挙動を駆使し、海に直接飛び込める港を目指して直走る。

 

「あれ?」

「どうした?」

「今何か通らなかった?」

「はい?」

「さっき水晶みたいな鎧付けたプレイヤーが通った様にも見えたんだが…………」

 

道中真後ろを通り抜けたり、空を眺めていたプレイヤーの視界に映り込んだりしたが、生憎止まって話を聞いている暇は無い。午後九時までに深海の冷気が在る場所………『断絶(だんぜつ)大海(たいかい)』の最深部に到達する必要が在る以上、今は兎にも角にも海に潜る必要が有るのだから。

 

「空中を突っ走ってダイビングシーもアリか、よっしゃこうなったらやってみよう!ゲームならやりたい事が出来るんだからな…………!」

 

シャンフロプレイヤー内最高高度到達者の称号【最大高度(スカイホルダー)】、其の真骨頂たる空中機動のスキルを使い、勇者の身は地より離れて蒼空を駆ける。当然ながら真昼間に『そんな事』をすれば、誰かに気付かれるのは必然であり。

 

「えっ、何アレ!?」

「人が空を走ってる………」

「スキルで空中殺法出来るのかな?」

「………ってアレ、ペッパーじゃん!?」

「マジで?!」

「望遠鏡と視覚強化スキルで見た!ペッパー・天津気(アマツキ)だ!」

「マジか本物!?!?」

「何処に向かってる!?」

「海だ!というかはっや!?」

 

地上から声は聞こえているが、ペッパーは其の声をスルーして走り続ける。加速に加速を重ね、街と海の境界線を越えて、沖合に出た所で昔テレビで観た飛び込み選手の如く、十メートルの高さから垂直飛び込みで海面にダイビング。

 

いきなり何かが飛び込んだ事に、職業:釣り人のプレイヤーやNPC達は驚き、其の後にやって来たプレイヤー達によって飛び込んだのがペッパーと知り、更に驚かされる事になったのである…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空から射し込んだ太陽光が、水面に光の帷(サッシュ)を引いている。さながら其の光景は『雨上がりの日の太陽が西に傾き始める頃合いに、曇の隙間から日が地上へと射し込む』という、神秘的な風景と似ていたりとは一体誰が言ったのだろう?

 

(マクティスシリーズと深厳戟響脚様々だな…………水中呼吸と足場調節が出来るから、こうして神秘的な海中写真の撮影も出来る)

 

もう少し見ていたい………そんな気持ちに駆られるペッパーだが、深海の更なる下に在る領域に向かう以上、のんびりしてはいられないのも事実で有り。深厳戟響脚の機能の一つ【弾けよ(Poping-up)】と心で唱えまくり、海中をブーストして一気にカッ飛びながら、緩やかなグラフ線を描く様に海底を目指して単身で進軍を開始する。

 

途中シャンフロの浅瀬に居るであろう、小魚や中型の魚達の群れを見掛けたり、大型の魚や其れを狙うモンスター達と遭遇するが、何れも装備しているマクティスシリーズとリュカオーンの愛呪の放つプレッシャーに気圧された結果、我先にとUターンや天敵から逃げ延びる勢いで、必死に泳いで行ったので戦闘に突入する気配は一向に無く。

 

ゆっくりと下降するする度に水面の光が届いていた『表層』は遠ざかり、軈て浅瀬から光が届かなく成り始める『中層』を抜けて、辿り着いたのは光が届き得る場所と届かなくなる場所の境界線たる『漸深層(ぜんしんそう)』に到達したペッパーは、一定以上の心臓の鼓動を刻んでいる事を発動条件した『超星煌耀宝珠(クロック・スタリオン)』を両手を合掌。

 

温かく強い白光を身体より放ちながら満ちる光が、マクティスすらも染め上げる程に白く輝き、まるで海中に輝く太陽となった彼女()は、何時でも格納鍵インベントリアを起動出来る様に備えながら、恐れる事も無く境界線を越えて更なる深みへと降りていったのだった……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、潜水途中で身体が『エイの姿』をしている魚人族(マーマーン)と出会い、マクティスシリーズによって水中呼吸が出来るなら、海中会話も可能では?と疑問に思って実践した所、ニュアンスにこそなったが会話は成立。

 

彼に『アラバさんによろしく伝えて下さい』と御願いし、ペッパーは再び海の底を目指して潜って行ったのである………。

 

 

 

 

 






海の深みへ


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