VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ひたすらに




深く静か、深き蒼、深い場所

シャンフロの海は開拓者(プレイヤー)からすれば、未だ『未踏の領域』というのが共通認識だ。

 

理由は水中や海中に置ける呼吸手段が、現状五分間の短さしか保証されていない、オキシケルプと呼ばれる海藻を連続で口に含む事。対水中及び海中で、水圧による圧死を防ぐ為の水圧耐性に富んだ防具。そして水中海中での挙動を補強する、アクセサリーが必要になるからである。

 

現状水圧耐性と水中呼吸を併用して持っているのは、アトランティクス・レプノルカの一式装備である『マクティスシリーズ』、もしくは深淵のクターニッドと力を分けた神代の大いなる遺産の一つ『深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)』以外に無く。

 

ペッパーとサンラクを含めて其の存在を秘匿しているが故に、未だ多くの挑戦者は其の深海に潜む神秘に挑み、そして例外無く圧死していった。そんな多くのダイバーの夢を阻み続ける此の世界(シャンフロ)の海の底を目指し、単身で漸深層(ぜんしんそう)に到達から深層に向かって潜り続ける者が一人居る。

 

彼女()の名はペッパー、ペッパー・天津気(アマツキ)

 

(大振りの武器は水圧の影響で振り抜き()()()が『遅くなってる』か。そうなると水中で真髄を発揮する武術…………、海で暮らしてる魚人族(マーマン)に其の手の戦法は有りそうかな?)

 

漸深層の中盤付近に差し掛かった所で、嘗てルルイアスで遭遇したギガリュウグウノツカイこと『アルクトゥス・レガレクス』との戦闘に突入、慣れない海中戦でペッパーは苦戦を強いられながらも、インベントリアエスケープ+深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)の能力で齎された機動力で食らい付き。

 

最終的には胸鰭にしがみついて、暴れ狂うアルクトゥス・レガレクスのエラに海洋生物系に特攻能力を持つ、雑種剣(バスタードソード):海喰の雑剣(バスタード・ブルー)を何十にも渡って刺突による弱点攻撃&クリティカル連打で漸く討伐に至ったのだ。

 

ルルイアスという環境がクターニッドによって『特殊』であったが故に、ユニークシナリオ中は楽に討伐出来たのが、純粋な海中での戦闘ともなればアドバンテージは向こう側に在った。だが其れでも、武器や装備によってはプレイヤーもこうして勝つ事が出来ると証明されたので、良い経験になったのは間違い無い。

 

(アルクトゥス・レガレクス。深層を煌めき泳ぐ虹の如く美しく、そして獰猛なる海の猛者よ。また戦える時を、俺は心から待ち望んでいます)

 

巨体を構築するポリゴンが崩壊し、単騎(ソロ)での討伐+サブ職業(ジョブ)にセットされた神秘(アルカナム):運命の輪(ホイール·オブ·フォーチュン)の効果で、アルクトゥス・レガレクスのドロップアイテムが海中に大量放出。

 

骨や頭蓋に鱗や鰭、食材アイテムのアルクトゥス・レガレクスの魚肉等をインベントリアに収納し、サンラクがビィラックに依頼して製作していた紅蓮海の拳帯(レガレクス・セスタス)や、自分が持っている紅蓮海の撃鞭(レガレクス・ウィスパー)の強化に当てたいと思いつつも、未だ底知れない海の底を目指して彼女()は進み続ける。

 

(にしても深海ってこんなに『寒い』のか………。マクティスシリーズの一式全種装備で加わってる氷耐性:極の御陰で、手足が悴む事が無いのは救いかも知れない………)

 

装備無しで潜れば先ず水圧によるスリップダメージに襲われ、海中を潜る程に水温低下によるアバター其の物の動きに制限が掛かり、最終的には取り込んだ酸素が尽きて溺死する運命が待つといった具合だろう。

 

想像したくも無いし、やられたくも無い結末だが。

 

(漸深層もあと少しかな?何にせよ更に潜るに越した事は無いんだけどね)

 

深厳戟響脚の機能を使用し、再び海の底を目指してカッ飛んでいくペッパー、光も既に遠くなる中で両手の合掌による超星煌耀宝珠(クロック・スタリオン)の起動を行い、深海に光を灯して更なる深みへと降りて行く…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャンフロの深海。其処は修羅にして地獄の世界。

 

アトランティクス・レプノルカ、アーコリウム・ハーミット、スレーギウン・キャリアングラーの深海三強による強過ぎる生物への『オシオキ』による間引きが行われる形で、環境が保たれている領域。

 

其の中で下手に目立とうとするならば、此の場に居る存在の全てに狙われる訳だが、現在ペッパーにはリュカオーンの愛呪の効果による『自分のレベル以下は確定逃走、及びレベルが同じならば戦闘許否』という、下手な存在では手を出す事が出来ない状態に在る。

 

実際此方に襲い掛からんとしたチェーンソーノコギリザメは、ペッパーと同じレベルで有ったからか襲撃に戸惑い、其の隙を横から襲来したアルクトゥス・レガレクスに噛み付かれた挙句、接射ブレスによって倒されて口に含まれながら何処かへと連れて行かれ。

 

其のアルクトゥス・レガレクスも他の魚系モンスターを従えながら、遠くで優雅に泳ぐスレーギウン・キャリアングラーの放つフェロモンに嗅いだ事で操られ、従順するべくフラフラと泳いで行ってしまった。

 

(リュカオーンの愛呪が無かったら、今頃スレーギウン・キャリアングラーに取り込まれてたんだろうなぁ…………)

 

何かの事故で空母鮟鱇が死亡しないかなと、そんな淡い期待を抱けど時間を見れば午後三時半過ぎであり、今日の予定は深海の最深部までノーコンティニュークリアを目指している。

 

故にこそ思考を切り替え、海の底を目指して進軍をしようとした其の矢先、突如海中を揺らす衝撃と共にスレーギウン・キャリアングラーに向かっていたアルクトゥス・レガレクスの横っ腹を何かが襲い。列車砲に匹敵する巨体は『くの字』に曲がって吹き飛び、口に含んでいたチェーンソーノコギリザメが海中に投げ出された。

 

死に体のチェーンソーノコギリザメに『海月の触手』が()()()で殺到、蜘蛛の糸の如く巻き付いて引っ張られて行き、ペッパーが視線を移した先に居たのは『超巨大な要塞寄居虫ことアーコリウム・ハーミット』と、其の巨大な貝殻の上に乗ったキメラモンハナシャコこと『キリューシャン・スフュール』のタッグが。

 

アルクトゥス・レガレクスが捕らえた獲物を横から強奪し、キリューシャン・スフュールはチェーンソーノコギリザメを食しつつ、其の視線は『次はお前だ』とばかりにアルクトゥス・レガレクスに向けられており。

 

同時にペッパーの前には、其の二体のモンスターを示す『画面』が──────嘗てルルイアスの地にて巡り合った思い出が、鮮明に蘇るが如く目の前に表示されたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『モンスター不世出の発見(ディスカバー·エクゾーディナリー)!』

『討伐対象:キリューシャン・スフュール"恕志貫徹(ファースリィオ)"』

『エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されます』

 

 

 

『モンスター不世出の発見(ディスカバー·エクゾーディナリー)!』

『討伐対象:アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"』

『エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されます』

 

 

 

 

 






今再び巡り合う


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