VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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現われた不世出個体




揺らぐ事無き眼差しは、深淵よりも尚深い

キリューシャン・スフュール"恕志貫徹(ファースリィオ)"。

 

今は懐かしき深淵のクターニッドが根城の反転都市ルルイアス、実際は其の昔に暴威を振るった『狂える大群青』を叩き潰して封じ、当時の島国(ルールイア)を深海の底まで持って行った其の地で、アーコリウム・ハーミット"廃罪玉座(ルインスロン)"の背中に乗って現われ、不可視の空気弾を吹っ飛ばし、海月の触手を超高速で這わせ、圧倒的な耐久と耐性を誇る甲殻を纏ったキメラモンハナシャコ。

 

透視スキルによる弱点発見と悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)試作型戦術機獣(しさくがたせんじゅつきじゅう)天王(テンオウ)】との合体、更に当時は星皇剣(せいおうけん)グランシャリオの能力で再現した『晴天流(せいてんりゅう)(なみ)奥義(おうぎ):大時化(おおしけ)』による一投で討伐を果たし、獲得した素材を惜しむ事無くビィラックに渡して彼女が作り上げた傑作、今自分の両脚に装備された甦機装(リ·レガシーウェポン):深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)の原材料でも有る。

 

そんな恕志貫徹はと言えば、脇腹フックを叩き付けてブッ飛ばしたアルクトゥス・レガレクスが怒りに身を震わせながら、突撃して来たのを迎え撃つべく無数の遊泳脚を動かし、海中の流れを制御。己の足下に即席の足場を作り出して身体を安定させるや、ルルイアスで見た髭を動かすモーション………即ち自身の攻撃時に置けるイメージを固め、敵を倒す為に用いる予備動作の『プリショットルーティーン』を行う中、アルクトゥス・レガレクスのブレス攻撃が恕志貫徹を直撃する。

 

下手なモンスターや防御を固めたプレイヤーすらも、海中だろうが焼き尽くすブレスを受けど、成体に至るまで数多の殺意に晒されながら生きた恕志貫徹の甲殻は、火傷は愚か煤すら付ける事は叶わず。なればとアルクトゥス・レガレクスが巨体を畝らせ、己の質量で巻き付いて絞め殺しに掛かったが、ペッパーからすればギガリュウグウノツカイの行動は『悪手』に等しく。

 

刹那、集律視標着目(ワーナリー・スポットヘイト)天空の神眼(ラトゥルスカ・ゴッドアイズ)黒狼の鋭眼(アーテオル・ガウス)狼皇の鼓動(ルプリス・ヴァースリズム)の四種スキル起動で、此の場に居るモンスター全ての注目を真上に移し、即座にインベントリアへエスケープする。

 

「急げ急げ、あんまり時間は無いぞ!」

 

アトランティクス・レプノルカの素材を使ったマクティスシリーズ全てを脱ぎ、代わりにインベントリアに納めたユニークモンスター・深淵のクターニッドと力を分けた一式装備の深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)、対応武装の六道極円盾(リクドウキョクエンジュン)天獄(テンゴク)を装備。

 

格納空間から現実空間へ転移し直す前に、一式装備全種装着中限定機能たる『状況改変(じょうきょうかいへん)』による『我が身は世界の迷彩となる』を唱えた事で三十秒間の間に限り、一定範囲内に限り自身の身体が世界に溶け込み。合言葉で再び深海の海中へ身を投じた彼女()が見たのは。

 

砲弾の如き無数の穴を穿たれ、巨大な胴体を挽き千切られて無残な骸の姿を晒して海を漂いながら、恕志貫徹によって運ばれて廃罪玉座に捧げられるアルクトゥス・レガレクス。其処へスレーギウン・キャリアングラーの艦載機ならぬ艦載魚達が次々と飛来し、其れ等をシャコパンチと海月触手で片っ端から撃墜させながら応戦する姿。

 

(傍から見ても地獄絵図…………!)

 

状況改変によって効力が適している内に、巨剛触手の機能を起動。八本のサッシュは八色の異なる色を持つ蛸足へと変貌、ペッパーの意思によって『脚』としての役割を持ち、地上で発揮された凄まじい機動力を誇るスキル達を海中という領域下で、脳筋並のゴリ押し戦法によるレーン作業じみた連続点火を敢行する。

 

(天地だろうと海中だろうと!蛸足で海を踏めるなら、其れは地上と同じ事だッッッ!!)

 

十中八九『いや其れは違うだろ!?』と、仮に此の場に他のプレイヤーが居たなら、総ツッコミされていたのは間違い無く。しかし此の場は海底、其れに意見する者は誰一人とて居なかったが故に、彼女()は止まらない。

 

物理戦は不利と判断したか、恕志貫徹が飛び出し空母鮟鱇へと肉薄。艦載魚雷の連打に晒されども、廃罪玉座によって育てられた王の鎧は傷付く事非ず。超近接戦(インファイト)の領域飛び込み、四本の突起で同時に繰り出したパンチが下顎にクリーンヒットして、其の巨体をカチ上げる。

 

『海のボクサー』の異名を持ち、海中でも巻貝や甲殻類が纏う殻を砕く打撃が、鮟鱇の柔らかい皮膚を徹して脳髄を叩き砕いたのか、まさかの一撃必殺となり。だが空母鮟鱇もまた、唯では殺られぬとばかりに頭上に掲げた提灯が砕け、自身の腹に乗って皮膚にめり込んだ瞬間、まるで矢を放つが如く吹き飛び、恕志貫徹に襲い掛かった内の一欠片が右目を切り飛ばして視界から光を奪い。

 

 

 

 

『恕志貫徹の空気膜よ、弾けろ』

 

 

 

 

何処からとも無く響いた、力強い女性の声を聞いた其の瞬間。恕志貫徹の超硬度の甲殻類を支える、体内に備えた空気膜がパァン──────!と高らかな(SE)を鳴らして弾け、同時に選ばれた王の脳髄は破壊されて其の身を構築するポリゴンが、ほぼ同時に倒された空母鮟鱇と共に揺らぎ出す。

 

其処に居たのはペッパー、やった事は三十秒経過で再使用可能になった深淵を見定む蛸極王装の機能たる状況改変。恕志貫徹の体内構造を知るが故に、どうすれば負荷を与えずに確殺出来るかを考えた結果の行動であった。

 

(悪いな、恕志貫徹よ。漁夫の利はしたくなかったが、戦いには卑怯もへったくれも無い。戦場で隙を見せた奴から死んで逝くのは、大自然の摂理。だが次に会えたならば、正々堂々真正面から挑みに行くぞ)

 

ペッパーの言葉と共にポリゴンが崩壊、神秘(アルカナム):運命の輪(ホイール·オブ·フォーチュン)によって恕志貫徹と空母鮟鱇のレアな素材を始めとし、艦載魚にされていた魚達のドロップアイテムが海中に大放出され、フィールドは混沌の様相を呈していく。

 

(時間も押してるし、廃罪玉座は此の際無視するつもりで速攻回収ッッッ!)

 

巨剛触手を操り、恕志貫徹のドロップアイテム達を最優先で掴んでは、次々とインベントリアに放り込む。そして自身が見定め育て上げてきた王を目の前で失って茫然自失となった廃罪玉座にで追い打ちを掛けるかの様に、何処からとも無くアトランティクス・レプノルカが登場。

 

蒼炎を燃やしながらに廃罪玉座へ突撃したのを尻目に、ペッパーは戦略級戦艦の放つ放電に大火力のビームに巻き込まれる前に戦場から離脱──────する事はせず、ノーコンティニューでアトランティクス・レプノルカをブッ倒す事を決意し。

 

深淵を見定む蛸極王装の状況改変と巨剛触手をフルに活かした対抗と、超過機構によるビームの跳ね返しによるカウンターで大ダメージを与え、最後は水圧によるスリップダメージを受けて尚も砕けぬと踏ん張った、傑剣への憧刃(デュクスラム)&傑鉄への鐵鎚(タウスレッジ)をによる斬打二刀流の一撃でトドメを刺す。

 

インベントリアエスケープの数秒後にアトランティクス・レプノルカは最後っ屁の自爆をし、廃罪玉座含めた他のモンスター達も吹き飛ばし、静寂が訪れた中で再びペッパーは現れて深海の王に礼を述べた後、素材達を回収して再び深海深層を目指して突き進んで行ったのである…………。

 

 

 






一撃必殺の言霊


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