蘇りて成果を見る
「ペッパーはん、やっと帰って来たのさ」
『ワゥン!』
「おかえり、
「随分と冒険したようじゃな、ペッパーよ」
「やぁアイトゥイルにノワ、ヒトミさんにポポンガさん、ただいまです」
暗転した意識が覚醒し、薄暗い部屋の天井に吊るされたカンテラの灯り、そしてアイトゥイルとノワにオシノビ・カモフラージュ衣装のヒトミに、老ゴブリンのポポンガの顔が視界に映り込む。
起き上がり一匹と一羽を撫で撫でした後に身体を見れば、インナー含めて男物の形状に戻っており、今の状態はサンラクとほぼ同じだと認識しながら、ペッパーは
時刻を確認すれば午後五時と随分長く海に潜っていた様で、大冒険をしたのだと沁み沁みしながらもインベントリアを操作、本題となる逸品を…………冥府よりも尚深い深海の冷気を其の身に受けた、今のアスカロンを左手に持ちながらフレーバーテキストをチェックする。
朽ち照らすアスカロン(
再起への炎と冥府の冷気を宿した英傑の武器。嘗ての力には未だに遠く、武器として使用するには難しき、英傑が振るいし魚神の
一回死んだ価値は有り、朽ち灯るアスカロンは朽ち照らすアスカロンに名称が変更。其の剣身に冷気を宿した事で、次の段階へと歩を進める事が出来た様だ。
更にテキストをじっくりと読めば、アスカロンにはユニーク小鎚三兄弟と同じく『進化分岐』が存在しており、予想としては『次の強化を終えた時点で二種の内の片方を選択し、其の道筋に沿った強化改修をしていく』と思われる。
そして今になって気付いたが、Eメールにはペンシルゴンやサンラクにオイカッツォからの新着メール、クランチャットでは他メンバーからの新着メッセージ、更にはリスポーンした家屋のベッドに近い窓縁には多数のハヤブサ達が列を成して停まっており。
内容に粗方目を通して判明したのは、自分が称号:【
「………………此れはまた楽しい愉しいオハナシに成りそうだなぁ……………」
『目的は果たしたのに、げんなりするのは此れ如何に』な感情が湧いて、ガックリと肩を落としながらも応対していき。一先ず改修に成功したアスカロンだが、剣身からは熱と冷気を起こしており、赫いオーラと蒼いオーラの二つが相対しながら
武器として使用するのは難しいとあるので、ラビッツにてビィラックかヴァイスアッシュに話を聞くのは確定としつつも、ペンシルゴンやサンラク含めたラビッツのユニークシナリオEX受注組に、色々言われる事は間違い無く決定しているので覚悟を決めつつ、一度兎御殿まで戻らんとし。
「あ…………!」
そんな折に声がしたので振り向くと、家の窓枠から此方を覗いているのは、地下都市ホルヴァルキンに案内した
「お、王様に知らせなくっちゃ………!」
慌てた様子で真っ先に走り出したのを見て、ペッパーはアスカロンに関する何かしらの『フラグ』が建ったのを感知。機を絶対に逃さぬとばかりに、アスカロンをインベントリアに収納から、アイトゥイルとノアを抱えながら走り出し、ヒトミはポポンガを抱えて其の後を追う形で一同はミモリザの後を追い掛ける。
「アスカロンには何か秘密が有るのか…………?」
「其の武器の嘗ての持ち主だった、
「………………マジですか、ポポンガさん?」
「マジじゃ」
「………………マジですかぁ」
此のゴブリンは一体何歳なのか。聞いたら駄目な気がする疑問を抱きながら、ペッパーは仲間達と共にミモリザを追い掛け進んで行くのだった…………。
ミモリザの後を追って数分、傍から見れば『モンスターを引き連れて幼女を追い回す一団』という事案的な状況であり、そんな中で彼女を追って辿り着いたのは、『神殿に似た門が在るホルヴァルキンの外縁部分』。
本来なら国という物は内側に重要施設を置くのが基本だが、鉱人族の国は其の逆らしく。彼女はペッパー達を此処まで連れて来た後、門番をしていた二人の鉱人族に話を通した事で、彼等の視線が此方に注がれ。
ペッパーはインベントリアからアスカロンを取り出した所、門番はざわつき、片方が内部へ大急ぎで走って行った後、もう片方はミモリザに何か述べたらしく、彼女は頭を下げて街へと大急ぎで戻って行った。
そして戻って来た鉱人族がペッパー達の案内を引き継ぎ、一向は門を潜り抜けて内部へと入り、回廊と思しき場所を歩き進み。軈て其れなりの距離を進んだ事で、松明に照らされた壁に『何かが描かれている』のを発見する。
目を凝らして見れば、描かれているのは『抽象的な壁画』であり。其の描かれ方も、古代エジプトのピラミッド内部に描かれた物に似ながら、若干ながらも何処かアジアンテイストを含んでいる。
其の内容は単純明快、誰の目にも理解出来る『物語』。描かれているのは──────
『強大な敵から逃げ惑う人々や獣、其れを守らんとして立ち向かう戦士達』
『巨大なる敵に蹂躙され、大地に積み上がる数多の命だったモノの屍達』
『膝を屈せども決して諦めぬ、数人の人間の勇志』
『其の時大地を割って光が溢れ、倒れていない数人の前に現れる、剣・槍・弓・杖・槌・盾の六種の輝く武器』
『其の手に武器を取りて敵を倒す、六人の者達の雄々しくも勇ましき姿』
──────であった。
「……………もしかしなくても『
「其の通りだ。聖盾イーディスとアスカロンを握りし蒼空を舞う勇者、ペッパー・
「ミダス28世殿」
黄金の腕と黄金の王冠を頭に乗せたスキンヘッドの少年ながら、此の地下都市の王にして当代のミダスことミダス28世が声を掛ける。視線から『求められている』と感じたペッパーはインベントリアを操作、朽ち照らすアスカロンを取り出し見せれば、軈て『驚きの感情』を含んでいくのを感じた。
「アスカロンは嘗て、魚人族の英雄ゲネテレが持ち寄った海底の素材を、当時のミダスが友の為に鉱人族が守り継いで来た『黄金のマグマ』を加え、槌を振るい打ちて作り出したという武器…………。荒ぶる深海の王を己の命と引き換えに退け、彼の死と共に失われたと………当時のミダスに魚人族が言い伝えたとされていたが………其れを何処で?」
「深淵のクターニッドさんが根城としている、反転都市ルルイアスにて。其の地で戦ったアトランティクス・レプノルカ"
あくまで予想でしか無いが、状況を鑑みれば自ずと流れは見える物だ。レプノルカの最後の命の爆発にすら耐えたのは、ゲルニカが持ち寄った素材に黄金のマグマ、そしてミダスの腕が有ったからこそアスカロンは原型を留めたまま、今自分の手元に来たのだろう。
ペッパーの答えにミダス28世は静かに頷いて、そうして彼は勇者に伝えたのだった。
「ペッパー・天津気殿。赤竜ドゥーレッドハウルを討ち取れたなら、再び此の場所を訪れて頂きたい。其の時に貴方を、黄金のマグマが沸き上がる『泉』に案内しましょう」
──────と。
約束