VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勇者、動く




集え、歴戦の勇志達よ

兎御殿でやる事を済ませ、開かれたゲートを越えたペッパー・アイトゥイル・ノワ・ヒトミが、新大陸のグレイブヤード積竜火山…………其の地の下へと逃れた鉱人族(ドワーフ)達の故郷・地下都市ホルヴァルキンに戻って来た。

 

「ペッパーよ、戻ったか。準備は完了しとるぞい」

「ポポンガさん、御疲れ様です。此方は少ないですがどうぞ、遠慮無く御飲み下さい」

「ほほぅ。こりゃまた善い葡萄酒じゃな、五十年物かの?」

「はい、エンハンス商会で購入した葡萄酒です」

 

ホルヴァルキンの一角、言うなれば『公園』とも呼ぶべき広場にて、複数の魔法陣を刻んで準備を整えた老ゴブリンに感謝を伝え、インベントリアからエンハンス商会で手に入れた最高級の葡萄酒達を取り出し贈呈し。

 

ポポンガは指先で其の内の一本を浮遊させるや、封じるコルクを魔法によって引き抜き、他の指を器用に振るいながら中身の液体をグラス一杯分取って、口の中へと含んで味わった後にゴクンと飲み込み言った。

 

「うん………香りと甘さと酸味、良い木を用いた酒樽で熟成させたのが解るわい。ありがたく貰っていくぞ」

 

長く生きているからか、相応の酒達と巡り合い、味わって来たからこその発言だろう。魔法でコルクを嵌め直し、渡された葡萄酒達を全て何処かへと仕舞ったポポンガは、改めてペッパーと向き合えば、其の視線は真剣で曲がる事が無い状態で注がれた。

 

「さて、午後九時じゃな。今こうして用意した魔法陣は合計で『十五』在る。ペッパーが望んだ者達を、儂の魔法にて此の場所へと『召喚』する。まぁ、簡潔に言えば『開拓者が目覚める場所を描かれた魔法陣に移し替える』()()なんじゃがな」

「「「えぇ……………」」」

 

サラッとセーブポイントの変更という、えげつない事をやらんとしているポポンガに、ペッパー・アイトゥイル・ヒトミは戦慄(ドン引き)した。其の言葉を信じるならば『ポポンガの気分次第で宇宙に魔法陣を作り出し、其処に対峙した者達を放り出してリスキルさえも容易に出来る』と受け止められるに等しい。

 

やっぱりポポンガって、ユニークモンスターじゃないの?開拓者のリスポーン地点の強制変更したり、空の果てに行けば行く程にマナ粒子が少なくなる中で、宇宙空間に魔法陣作るとか何やったらそんな事が出来るの?と、ペッパーが真面目に考えてしまうレベルにはヤバいのだ。

 

「──────では、ペッパー・天津気(アマツキ)よ。御主が此の地に呼ぶ、有志達の名を想起せよ」

 

此処でポポンガからの言葉で、ペッパーも思考を切り替えた。今回呼ぶ旅狼(ヴォルフガング)メンバーは決まっているが、残りのメンバーをどうするかという問題が有る。

 

彼自身は勇者武器(ウィッシュドウェポン)の関係者達を呼んで、ユニークシナリオ【勇ましの試練】や鉱人族が守っている『黄金のマグマ』を共有して色々役立てたいという考えや、狼双戦争(デュアルウルフウォー)で招集したは良いが控えで活躍が無かったサバイバアルにスポットを当てたりと、組み合わせ次第で様々な戦い方が出来ると確信しているが故に。

 

「始める前に一つ、質問をしても良いでしょうか?」

「構わんよ」

「ありがとうございます。呼び出せる人数の最大上限は何名まででしょうか?」

「一つのパーティーで組める上限の『十五人』じゃな。儂は外れとるから、お前さんが今回呼べるのは『十四人』になる。其れと此の魔法は『三日に一回しか使えん』からの」

「了解しました。皆を一時的にパーティーから外してっと。では………………サンラク、エムルさん、アーサー・ペンシルゴン、ゼッタさん、オイカッツォ。サイガ-0、エクシスさん、ルスト、モルド。サイガ-100さん、草餅(くさもち)さん、イムロンさん、サバイバアルさん、そして──────火酒夏(カシューナッツ)さんを此の地に呼んで下さい」

「うむ、心得た」

 

パーティーを一度解消して入れられる空き枠を増やし、其の上でプレイヤーとNPCの名を述べれば、ポポンガは言葉と共に頷いて。

 

得物の年季が在る杖を頭上にて振り回せば、地下都市ホルヴァルキンの暗闇に『魔力で出来たアストログラフ』が浮かび上がり、其れに比例して地面に刻まれた魔法陣が様々な彩りと共に光を放つ。

 

「我、此処に乞い願う者。人の声に寄り添いて、勇姿を此の地に誘う者」

 

杖尻を地に着け、ポポンガが詠唱を開始する。溢れる光はアストログラフと共に灯り、夜空に星の海を作り出すが如く、輝きは魔法陣に力を齎して、彼の言霊によって紡がれた十と四つの輝きを、更に強くしていく。

 

「悠久なる空、果て無き地平、隔てし大海。境と世界を越えて、勇姿の到来を約束せり」

 

慈愛の聖女イリステラと同じく、プレイヤーやNPCの行動によっては『崩星の名を冠する最強種』と成り得た其れは、数多の亜人種や不滅の最強種との交流、そして蒼空を舞う勇者によって『人類の味方』へと転じた。

 

「世界に生きる一なる星よ、砕けども再起する二なる星よ。我が友の声に応え、此の地へ出でよ──────!!!」

 

彼との交流の中で好印象を与えた者に開かれる、魔法使い職の『隠し最上位職:極星大賢者(スターラウズ)』、其の究極転移魔法【超次元召喚(サモン・オブ・ビヨンド)】が発動し、ペッパーが述べた十四の有志達は地下都市ホルヴァルキンに召喚されたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………取り敢えず、自己紹介をしておこうか。クラン:黒剣(シュバルツシルト)のリーダー・サイガ-100だ」

「同じく黒剣のサブリーダー・草餅です」

()阿修羅会&PKer()()()サバイバアル」

「わた………うおっほん!俺ァイムロン、ホルヴァルキンを目指してたら此処に召喚された」

「ほろ酔いで船に揺られながら釣りしてたら、知らない場所にテレポートさせられた火酒夏でーす。よろよろ〜♪」

 

ポポンガの転移魔法によって呼び出されたメンバー達の自己紹介を経て、旅狼に在籍しているメンバーの視線がペッパーに注がれる。

 

「勇者武器オールスターズだねぇ、()()あーくん?」

『グルルルルル……………!』

「………ペンシルゴン、()()()()()だろ?」

「ゴメンゴメン、100(モモ)ちゃん?」

「ってかサバイバアル、そっちは就職出来たのかよ?」

「まぁな。戦った時はトゥールが相手で、教えるのもトゥールだったからな………。マジでランダムの可能性が有る」

「地下都市ホルヴァルキン………ドワーフの故郷、か」

「ペッパー、此処に勇者武器関係のユニークシナリオが有るのか?」

「え"っちょっ待っ、初耳何だけど!?」

「何か私、凄い事に巻き込まれたっぽいかなぁ……………」

 

三者三様十人十色の感情が渦巻く中、ポポンガによって地下都市ホルヴァルキンに呼ばれた者達が、此処に顔を合わせた。

 

ユニークシナリオ【赤竜の叫び、断ち切るは我が意志】は此れより、更なる進行を成していく。

 

 

 






彼等彼女等は開拓者


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