VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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誰かから見た誰かの話




赤竜討伐連合作戦会議

(アレが噂の胡椒さんとツチノコさんかぁ…………)

 

地下都市という薄暗い場所で自分と同様に、ポポンガという老ゴブリンによって召喚された者達を視界内に収めて見ながら、此の一件を起こしたプレイヤーたるペッパーを見て『火酒夏(カシューナッツ)』は心の内にて呟く。

 

彼女はシャンフロに無数に存在しているプレイヤーの一人にして、女性アバターと女性という珍しい同性の、そして何よりも勇者武器(ウィッシュドウェポン)聖杖(せいじょう)アスクレピオスに認められ所有者となった、ゲーム内ではアスクレピオスの性能と特性によって『最高峰のヒーラー』として名を馳せている。

 

(例の対抗戦のミラー動画は見たけど、案外『ロールプレイ』も出来るっぽいんだよねぇ)

 

遠目に見て解ったのは、此の地下都市ホルヴァルキンに住んでいるらしい鉱人族(ドワーフ)達や、此の地に招いたポポンガを他のメンバーに紹介して応対に勤しんでいるペッパーや、ロールプレイを展開して好感度を稼いでいるサンラクを見ている火酒夏は、まるで『見定める』様な視線を向けていた。

 

(此の人選は『対赤竜戦』想定なのかぁ……………。というより、まさか勇者のユニークシナリオに関係有る場所に何の苦労も無く到着しちゃったし、まぁラッキーって事にしようかな。出来れば此の先も『仲良く』なりたいし)

 

火酒夏はヒーラーであり、盤上に居る駒の質を理解する能力に関しては、シャンフロプレイヤーの中でも『最上位』に位置する程に優秀である。アスクレピオスの特性を既に『認知』した上でか、はたまた何も考えずに『勇者武器持ち』という理由だけで選んだのか、彼女に知る術は無い。

 

「……………まぁ呼ばれたからには、キッチリ仕事はするけどね」

 

だが此処でペッパー達との『繋がり』を得る事が出来れば、先々に信用へと持っていく『取っ掛かり』の作れるのも夢では無い。故に彼女は今回呼ばれたチャンスを活かすべく、シャンフロ最高峰のヒーラーとして貢献する事が『最善手』と結論付けたのだった。

 

「初めまして、火酒夏さん。自分はペッパー、ペッパー・天津気(アマツキ)と言います。本日は唐突な招集、御詫び申し上げます」

「あ、はい。火酒夏です、どうも」

 

一礼からの謝罪に握手を求められたので応じ、握手を交わしていれば、此方に歩いて来る黄金の腕を持つ鉱人族の青年が一人歩き、其の後に他の鉱人族達も続いて来る。ペッパーが足音だけで反応した事から、普段から随分と広い視野を持っているのだと火酒夏は思い、彼は聖盾(せいじゅん)イーディスを取り出し左手に握った。

 

まるで其れを合図としてか、ペンシルゴンが聖槍(せいそう)カレドヴルッフ、サイガ-100が腰に掛けた聖剣(せいけん)エクスカリバーを鞘から抜き、草餅(くさもち)が背中に掛けた聖弓(せいきゅう)フェイルノートを。

 

イムロンも腰に吊るした聖槌(せいつい)ムジョルニアを、火夏酒も背中に吊るす聖杖アスクレピオスを。其々の勇者武器を担い手達が手に取れば、周りの鉱人族達は『おぉっ』と湧き立ち、黄金の腕を持つ其の青年は勇者武器達を見つめている。

 

「初めまして、僕はミダス28世。此の地下都市ホルヴァルキンの王である、当代のミダス。そして其の輝きはまさしく、聖剣エクスカリバー、聖槍カレドヴルッフ、聖弓フェイルノート、聖槌ムジョルニア、聖杖アスクレピオス、聖盾イーディスと御見受けする」

「あぁ」

「そうだよー」

「えぇ」

「うむ」

「はい」

「其の通りです」

 

世界の願いに応え、星が産み出した武器達を前に、ミダス28世は暫しの沈黙を経て。自ら片膝を付いたのが波及して、他の鉱人族達も膝を付く。

 

「勇者武器を手にせし者達よ、大賢者殿に導かれ集った強き者達よ。どうか我等の願いを御聞き下さい。赤き叫び…………赤竜ドゥーレッドハウルに弾圧され、地下に逃れた我々鉱人族達を…………どうか御救い下さい」

 

其の言葉をトリガーに発生したユニークシナリオの受注画面表示に、既に受注済みのプレイヤーたるペッパー以外の呼ばれ集ったプレイヤー達は皆顔を見合わせた後、其の指先は迷う事も無くYesボタンをタッチしたのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早速だけど赤竜ドゥーレッドハウル討伐作戦会議を始めたいと思います」

「唐突だなオイ」

「何時もの事でしょ………」

「まぁ、()()あーくんらしいと言えばらしいよねぇ………」

『グルルルルル……………!』

 

ペッパーの案内でホルヴァルキンの家屋に移動し、万が一に備えてセーブポイントやランドマークの更新を行った一向は、対赤竜ドゥーレッドハウルを見定めて作戦会議を行う事になった。

 

「鉱人族がドゥーレッドハウルに『見た目』が酷いという理由だけで虐められていて、もし俺達が動いているのを見られた場合は、奴に『叛逆者を招いた』と疑いの目を掛けられる可能性を考慮して、出来る限り速攻でドゥーレッドハウルを叩きたいです」

「…………つまり数日以内で集合出来る時間を見付け、奴が疲弊して戻って来るタイミングでブッ飛ばそう………って感じか」

「はい。大まかな流れは草餅さんの言っている通りで、ポポンガさんの転移魔法は日を跨ぐレベルの再使用時間(リキャストタイム)を有します。なので此方が呼べるプレイヤーとNPCは『最大三十人』、鉱人族の援護を合わせて百人を揃えられるか……………といった所かと思います」

「──────要するに『決戦は三日から五日後のどれか』………と」

「そういう事になるね…………」

 

旅狼(ヴォルフガング)メンバーを含めて、イムロンや火酒夏にサバイバアルも真剣に話を聞いている。ペッパーは鉱人族とのロールプレイで手にした情報より、自身の手でスケッチした『赤竜ドゥーレッドハウルの大まかなイラスト』を絡め、其の生活ルーティーンや被害を受けた鉱人族や赤系竜人族(ドラグニュート)の言葉を話せば、皆の表情は少なからず『ドゥーレッドハウルを倒す』といった方向に纏まっていく。

 

「ペッパー、数日以内にポポンガの転移魔法が再使用可能になったとして、残りのメンバーは誰にするか決めているのか?」

「其処だよねぇ…………。近接寄りのメンバーが多いから、魔法関係や遠距離関係は一人か二人は欲しいよ」

 

サイガ-100とペンシルゴンの言葉と共に、ペッパーに視線が向けられる。現状ポポンガと友好的な関係を持つプレイヤーはペッパーしか居らず、彼の采配次第でドゥーレッドハウルとの戦いが左右される事になるだろう。

 

「そうですね………先ず遠距離物理攻撃手段のボウガン持ちのSOHO-ZONEさんと、サイガ-100さんに匹敵する実力者のカローシスUQさん。後はデバッファーのAnimaliaさんにバッファーのキョージュさん、其れから物理攻撃としてマッシブダイナマイトさんは確定してますね。ジョゼットさんも呼びたいですが、流石にイリステラ様の護衛が有るでしょうし、クラリスさんは呼べるのかな…………?」

 

ペッパーの人選は対ドゥーレッドハウルを想定し、其の中でも相当の面子をチョイスしている。旅狼を主体としつつも、同盟関係に在る『七天極星(グランシャリオ)』のメンバーも選出しバランスを取るだけで終わらせず、同盟内での贔屓や偏重を防ぐ事で後々の事も見据えているのが解る。

 

「となると、後は十か九人………」

「ヤシロバードとかどうだ?アイツ、弓やら銃やらの扱いに長けてるぜ?」

「マッシブダイナマイトを加えるなら、SF-Zooのタンク五人衆の力も借りたい所では有る。彼等彼女等ならモンスターを一点に留める事に関しては、黒剣(シュバルツシルト)のタンク以上だ」

「サンラクとサバイバアルさん的に見て、ヤシロバードさんはどんな人ですか?」

「冗談混じりで言うと『銃キチ』で、真面目に言うと『密林の合間からマスケット銃で目玉をピンポイント狙撃出来る』高いエイムを持ってるぜ」

「因みに弓矢でも『同じ事が出来る』ぜ、アイツはよ。其の点に関しちゃ俺とサンラクが保証しとく」

「……………『弾道予測』した上でやってるなら、とんでもないな。勇者武器持ちとして負けられない……………」

 

其れから暫く作戦会議は継続され、最終的にSOHO-ZONE・カローシスUQ・Animalia・キョージュ・マッシブダイナマイト・SF-Zooタンク五人衆・ヤシロバードの召喚は確定し、残り五枠を誰にするかといった所にまで落ち着いた。

 

寧ろ此処で呼ばないといった選択肢を取る事も可能であり、判断はペッパーに委ねられている中、彼はドゥーレッドハウルに伝書鳥が見られる可能性も想定し、ペンシルゴンに話し手を御願いして引き継いで貰うと、別の家屋まで移動してアイトゥイルのゲートを潜り抜け、ラビッツへと戻り。

 

伝書鳥のフクロウを使いジョゼットにメールを送って暫く待つと彼女から返事が返り、其の内容を確認後に再び地下都市ホルヴァルキンに戻って情報を皆と共有し合う。会議は最終的に『ドゥーレッドハウル討伐戦は四日後の午後十一時に寝床に戻って来た所に先制攻撃を叩き付け、なるべく広い場所で倒しに行く』事が決定。

 

今回の作戦に於いて鉱人族と赤系竜人族には、出来る限り事を荒立てぬ様に普段と何ら変わらない態度で、ドゥーレッドハウルに悟られない様に心掛けて欲しいと願い、彼等彼女等は此れを了承する。

 

此処に『赤竜討伐』に向けた連合軍は一通り結成され、四日後の決行日に備え、シャンフロでのフレンド登録を行う等の準備をしていくのだった……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、決行日は訪れる。

 

 






編成バランスって大事


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